- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140883662
感想・レビュー・書評
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昭和から平成へと時代が変わって二十余年、日本の音楽業界は激変した。なかでも象徴的な例は「歌謡曲の衰退」である。自身のルーツもあわせてヒットメーカーの筆者が語る『歌と昭和』について記されたものです。
現在では表現の活動を作詞から小説などにシフトしている筆者ですが、もともとは作詞家としてヒットメーカーの一人であることはいうまでもありません。筆者が作詞をしていた理由というのは「昭和」という時代に対する愛憎から来るものだ。それが昭和の終焉とともに自分の中で終わってしまったのだそうです。
そんな筆者が「うた」という観点から「昭和」と言う時代を読み解くというものでございます。そこには「歌謡曲」をはじめとして「軍歌」や「演歌」などその時代時代を反映した歌の数々が筆者の解釈とともに提示されていて、「人は世につれ、世は歌につれ」でという言葉を頭の中で思い浮かべながら、ページをめくっておりました。
筆者自身の作詞観や「名曲」が生まれる瞬間のエピソードはもちろん、現在はなぜ「国民歌」とも呼べるような、誰もが知っている歌がないのか。さらに、歌手や作詞家と大手レコード会社との楽屋裏などの話も読んでいて『なるほど、こういう裏話があったのか』ということを知って、思わずうなってしまいました。特に音楽番組とテレビ局が所有しているレコード会社との関係については考えさせられましたね。
僕はここまで『うた』について筆者のような思考を重ねたわけでは無論ないわけではありますけれど、古代からひとの心に寄り添ってきた歌の変遷というものを振り返ってみるということで、読んでいて意義のある本でございました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
なかにし礼の歌謡曲史に関する考察をまとめたものです。Eテレの"佐野元春のザ・ソングライターズ"に出演した時の話がベースになってます。歌謡曲の歴史や産業など多面的に書かれています。歌謡曲シーンの第1線で活躍していた人だからこそ、ここまで書けるんだと思います。本書の定義である"歌謡曲=ヒットをねらって売り出される商業的な歌曲"という前提であれば、特定のターゲットだけを狙った昨今の歌曲は歌謡曲ではないし、これらを培ってきた土壌が崩壊してしまった今、新たな歌謡曲が生まれる可能性もないというのは同意です。
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プロの作詞家の観点から昭和の歌を評価している意見を読めて楽しかった。
57調を使わないという著者のこだわりもなるほどと思えたし、歌は詞・曲共に足りない部分を補う、完璧な詞は詩であるという話もなるほどと思えた。
時代が変わり、老若男女を問わず皆で口ずさめる歌が出来なくなったから作詞家から身を引いたというのは潔く思えるが、些か残念に思える。