- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140883686
作品紹介・あらすじ
海外のスラムや路上を数多く取材してきたノンフィクションの俊英が、遺体の冷凍空輸、韓国系教会によるホームレス支援、夜逃げ補償つきの結婚紹介所など、在日外国人たちの知られざる生態を追う。そこに浮かび上がってきたのは、日本人も知らないこの国のもう一つの姿だった!「異文化交流」のスローガンが取りこぼしてきたリアルな人間模様をすくい上げ、新しい視点から日本文化を描く意欲作。
感想・レビュー・書評
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本書は在日外国人の生活の実態を遺体の冷凍空輸、韓国系教会によるホームレス支援、夜逃げ補償つきの結婚紹介所などから追ったものです。異国の地で生きるということの難しさと彼らの逞しさに心打たれます。
あまりそのときのことは詳しく書くことができませんが、僕は20代の半ばくらいまでに、ここに描かれているような環境に生きる人たちのコミュニティーを覗くこともできれば、彼らの生態を間近に感じる環境に身をおいていたことがあったり、他の方の書いたノンフィクションなどを参考にしながらここにも取り上げられている新大久保界隈によく出没していたので、この本を読みながら彼らの息吹や彼らの生活の『におい』香辛料や、油のにおいが主だったかと記憶しておりますが、そんなものが行間から漂ってくるような感じがして、読み終えたあとに不思議な気持ちになったことを覚えております。
実を言うとこの本を読み終わる前にyoutubeにアップロードされた筆者のトークショウのイベントで、この本について語られてある動画を拝見させていただいてから残り半分を読み終えるような感じだったので、後半部に入ったときにはより生々しく、ここに描かれてある事象の数々が頭に浮かびました。内容をざっと垣間見て言うと、日本でなくなった外国人の遺体の冷凍空輸、韓国系教会によるホームレス支援、や果ては夜逃げ補償つきの結婚紹介所など、『日本に住む外国人』のカネ・性愛・そして、死などの事象を追って日ごろわれわれが知ることがないであろう在日外国人の実態を描き出したルポルタージュです。
のっけから頭をガツーンと殴られるような衝撃を受けたのは日本で死んだ外国人がエンバーミング、いわゆる防腐処置を施されて母国へ移送されたり、宗教上での埋葬方法の違いに関する話は以前読んだ『死都ゴモラ』の中にコンテナに満載された中国などのアジア系の人間の冷凍された遺体を船から荷降ろししている場面があって、ここには書いておりませんが、こういうことが『カモーラ』などのような国際犯罪組織などにとっての「シノギ」になるのかなということを連想しながら遺体に関する話を読んでいたことを思い出しました。
さらにはエンバーミングという技術の成り立ちとその発展が描かれていたり、韓国女性が退去して日本の歓楽街でネットなどを活用して『店』を開き、閑古鳥が鳴くようになると潮が引くように地方へと去り、そのせいで地方で昔から営業していた彼らの影響を受けて軒並み潰れていったりするさまや、『売春島』と呼ばれるところでは、現在はいくつもの事情を抱えてかえるに帰れなくなったタイ人がいたりする、という話。新大久保の界隈でホームレスに対して炊き出しを行いながら布教を行う神父と女性ホームレスのエピソードには『支援する側とされる側』という関係というものが描かれていて、自身の経験から『なるほどなぁ。得てしてそういうことはあるもんだな』ということを感じて、しんみりとしてしまったことを思い出します。
そして、章の合間合間にはさまれている「ガイジンに聞け」というショートコラムがなんとも面白く、日本にあるインド料理屋のほとんどはパキスタンやネパール、バングラデシュの人たちが作っていたりすることが多い、という話や中古車を海外に輸出する際の現地人とのネットワークについてのお話は非常に印象深いものがございました。
これを読みながら、現在ではおそらく二度と会うことはないであろうと思われる『彼ら』のことを思い出してしまいました。『異国の地で生きる』ということのしんどさと彼らのたくましさ。その一端を見たこととこの本を読めたということで、自分の生きてきた道が決して無駄ではなかったということを、たった今気づいた次第でございました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2023.02.11
アフターコロナの日本において、本書に述べられたような「社会」がどう変わったのかに関心がある。 -
在日外国人の生活のルポタージュ。
お葬式から病院、宗教、結婚、教育に関してまで幅広いジャンルで日本に暮らす主にアジア、中東、アフリカ、ラテンアメリカの人々の話。
目立つのは歌舞伎町や新大久保も多いが、地方にまで行くことになってしまった理由とか赤裸々な内情が垣間見えてくる。 -
★何かが散漫★著者得意の外国の特殊エリアではなく、日本にある異国を巡る。遺体処理に風俗、宗教と具体的な事例が豊富で読みごたえがあるが、なぜか上っ面に見えてしまう。決してそんなことはないだろうに、どこか一点突破した方が迫力があったのか。宗教を深堀してほしかったかな。
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日本で生活する外国人(金持ちじゃないほうね)の知られざる生活。面白い。
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やっぱりちょっと観点が違うノンフィクション、
さすが石井光太って感じ。
死体の搬送とか知らなかった。
イスラエル人との結婚や病院、占い。
とても面白かった! -
海外の最貧国ルポをずっと書いてきた石井光太が、日本の中の異国――在日外国人たちの暮らしに迫った連作ノンフィクション。
在日外国人を扱ったノンフィクションはこれまでにも山ほどあるわけだが、さすがは石井光太というべきか、これまであまり正面から描かれてこなかった領域にまで踏み込んで、読み応えある内容になっている。
たとえば第一章は、「外国人はこう葬られる」。在日外国人が日本で亡くなったとき、どのように葬られ、遺体や遺骨がどのように祖国に送られるのかをつぶさに追って、目からウロコの内容になっている。
日本における「韓流セックスビジネス」の“隆盛”などを扱った第二章「性愛にみるグローバル化」も、過去の最貧国ルポで性についても真正面から描いてきた石井らしい章で、面白い。
前半二章に比べ、後半の二章――在日外国人の宗教と、彼らが日本で受ける医療について扱っている――はいささか弱い感じ。それでも、印象的なエピソードが随所にあって、一冊の本としては上出来だ。 -
2012-3-4