流通大変動 現場から見えてくる日本経済 (NHK出版新書)

著者 :
  • NHK出版
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感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140884256

作品紹介・あらすじ

流通業界ではメーカー(上流)、問屋(中流)、小売(下流)の垣根がなくなり、チャネルリーダーのポジションをめぐる戦いが激化している。壮絶な主導権争いは消費者にどのような影響を及ぼすのか。30年間にわたって流通の現場を歩き、「ウォーキング・エコノミスト」と呼ばれる経済学者が、マクロとミクロ両面の視点から大きく動き始めた日本経済を見通す。

感想・レビュー・書評

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  • 何となく、メーカーか流通か、というような軸でとらえがちですが(私は)、流通は上流(素材)から下流(消費者)まで商品が流れていく全ての過程に影響を与え得る、という流通のより大きな可能性を感じさせてくれました。

  • 東京大学大学院の伊藤元重先生の新書。
    経済学やマーケティングなどの教科書も執筆されている同氏だが、現場における講演会や執筆業なども手がけている。流通に関してはかなり以前から携わっているようだ。同書からもそれは伝わってくる。
    個人的にも、過去に何度かお仕事をさせていただいたことがあり、ざっくりとしたお題の講演もきちっとこなしていただき、かつお話が面白い。また、ご自身も非常に謙虚な方で、大手町で講演を依頼した際には、自身の研究室から歩いていらっしゃったこともあった。まだ駆け出しの社会人であった自分にはなかなか感慨深い人である。

    本書において、流通の現場ということで、非常に示唆の富む内容であった。大店法の撤廃などの機微やセブンイレブンの考察、個人的にはダイエーの盛衰についてのお話は自分自身の過去の経験的にも納得のいく内容だった。彼らのビジネスモデルと歴史的経緯でどうしてあのような事態になったのかを理解できた。

    近年ではネットが普及し、利便性も高くなったが、本書は大いに読む価値がある。新書なのでサクッと読めてしまう事もおすすめ。

    ■目次
    第1章 流通から見えてくる日本経済
    第2章 なぜセブン‐イレブンはミールサービスを始めたのか
    第3章 アジアが日本の流通を変えた―ユニクロの成功の秘密を探る
    第4章 そうは問屋が卸さない―いま中間流通に何が起きているのか
    第5章 情報通信技術で変わる日本の流通
    第6章 都市の変容とともに小売業も変わる
    第7章 チャネルリーダーの地位を確保せよ
    第8章 アジアの需要を日本の内需に
    結びにかえて―流通の現場は刺激に満ちている

  •  かなりラフに書かれている。

    【書誌情報】
    『流通大変動 ――現場から見えてくる日本経済』
    著者:伊藤元重
    シリーズ:NHK出版新書;425
    定価:858円(本体780円)
    発売日 2014年01月10日

    ◆壮絶な主導権争いは何をもたらすのか
     流通業界ではメーカー(上流)、問屋(中流)、小売(下流)の垣根がなくなり、チャネルリーダーのポジションをめぐる戦いが激化している。壮絶な主導権争いは消費者にどのような影響を及ぼすのか。30年間にわたって流通の現場を歩き、「ウォーキング・エコノミスト」と呼ばれる経済学者が、マクロとミクロ両面の視点から大きく動き始めた日本経済を見通す。

    [編集部より]
    “「なぜ地元の薬局はベンザエースではなくパブロンをすすめるのか」「なぜサントリーは健康食品セサミンについてはネット直販にこだわるのか」「なぜコンビニ最大手のセブン-イレブンがミールサービスをはじめたのか」……
     著者は大学で教鞭を執る傍ら、日々の暮らしの中で抱いた疑問の答えを探り、30年近く流通の現場を取材してきました。流通業界は社会の変化を先取りして動くといわれています。さまざまな企業が今どう動いているのかというミクロの動きを知ることで、日本経済の潮流というマクロな動きを掴むこともできるのです。
     本書は難しい経済理論は抜きにして、身近で起きている出来事を通して日本経済を理解してもらおうというものです。取り上げている企業も、たとえばユニクロ、ローソン、マツモトキヨシ、TSUTAYA、パナソニック、資生堂、武田薬品、コカコーラ、吉野家、JR東日本などといったように、多くの人が日常生活で接している企業ばかりです。
     アベノミクスの今後の展開は誰しもが気になるところです。その行く末を自分なりに考えながら、生きた経済の面白さに触れていただければと思います。
     冒頭に記した問いの答えが少しでも気になる方は、ぜひ本書を手にとってご覧ください。”
     (NHK出版 水野哲哉)
    https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000884252014.html

    【簡易目次】
    はじめに [003-006]
    目次 [007-013]

    第一章 流通から見えてくる日本経済
    第二章 なぜセブン−イレブンはミールサービスを始めたのか
    第三章 アジアが日本の流通を変えた――ユニクロの成功の秘密を探る
    第四章 そうは問屋が卸さない――いま中間流通に何が起きているのか
    第五章 情報通信技術で変わる日本の流通
    第六章 都市の変容とともに小売業も変わる
    第七章 チャネルリーダーの地位を確保せよ
    第八章 アジアの需要を日本の内需に

    結びにかえて 227

  • 良き本

  • 流通業界の全体を俯瞰できる。ただあまり目新しい情報はない。


    2014.05.17 伊藤元重氏と会う機会があるかもしれない。
    2014.05.22 読書開始
    2014.05.23 読了

  • 流通研究の権威である伊藤元重氏による、現在の流通業界に関する書。実例を挙げながらわかりやすく流通について現状を説明している。研究書というより、気楽に書いたエッセイという感じである。流通についての第一人者だけあって、知識、経験が豊富であり面白い。
    「書籍をまとめるには、いろいろな準備が必要だ。図書館にこもって関連の文献を調べなくてはいけない。データを整理して、それが語る動きを読み取ることも必要だろう、読者の方が何気なく手に取った本でも、実はその著者の膨大な作業があって初めてその本ができている」p4
    「日本の個人が保有する金融資産の6割以上は60歳以上の世帯が保有している」p43
    「マクドナルドでは客が注文してから60秒以内に商品を出せるような仕組みを構築しているという。吉野家では、牛丼の注文が来てから商品が出てくるまでに1分というのが目処であるようだ。コンビニのレジでもそうだが、客に無駄な時間を使わせないということが、いかに小売業や外食産業にとって重要であるかがわかる」p58
    「(ユニクロの少品種多量戦略)紳士用のヒートテックのソックスが1時間あたり50足売れるとしてみよう。12時間店が開いているとすれば、600足になる。ユニクロの店舗は全国に2000以上あるので、単純計算をすれば1日の総販売数は120万足ということになる。これを30日間続ければ、3600万足ということになる」p67
    「(ユニクロに)競合する小売業がユニクロと同じように魅力的で低価格の商品を展開しようとすれば、ユニクロに匹敵するだけのボリュームを実現しなくてはならない。そのための店舗数、ブランド認知、アジアでの有力縫製工場の手配、メーカーからの新製品の調達などが必要となる。そうしたものを他社に先駆けていち早く確立し、規模の利益を確立したユニクロを追撃するのはそう簡単なことではない」p68
    「(安い)アジアでの生産メリットを享受するためには、大量のロットを確保することが前提条件となる」p70
    「そうは問屋が卸さない(それだけ問屋の力は強かった)」p89
    「ローソンではある菓子を、売上げランキングでは上の方ではないが、店に常に置くことを決めたという。それは、その菓子を購入している人の多くが継続的にそれを購入していることがわかったからだ。その菓子が手に入ることを期待して来店した人をがっかりさせるようなことがあれば、来店客を減らすことになりかねない。リピート率というのは販売戦略を考える上で重要な指標であるが、ポイントカードを利用することで簡単にその情報がとれるのだ」p131
    「(スマホ、タブレットの業界で)アップルだけが大きな利益を上げているのはどうしてだろうか。その答えを一言でまとめれば「アップルはこの世界でチャネルリーダーのポジションをとったからだ」と言うことができる。価格決定権を握っているのはアップルである」p171
    「戦後日本ではずっと、多くの商品でチャネルリーダーはメーカーであった」p172
    「(生産者保護のための価格補填政策)一定の価格で買い取ってもらえるということで、生産者は質より量を求めるようになった」p229
    「農業者の一部が、農地を手放さないで兼業農家を続けている理由の1つは、農地の転売や貸し出しで利益が出ることを期待しているからだということは専門家から何度も聞かされていた」p242
    「円高が進めば、海外から輸入した商品の価格は大幅に安くなるはずである。しかし、現実には国内での価格下落の動きは非常に鈍かった。流通の構造がそれに深く関わっていることは間違いない」p243
    「企業が持続的に成長を続けるためには、安売りだけではだめなのである」p246

  • レビュー省略

  • 商売、経済の縦の繋がりがよくわかる。
    生産があり、中間流通があり、小売店があり、商品が人々の手に渡る。その流通が、それぞれにプレイヤーがいて、利益を求めている。駅前の百貨店から郊外店、コンビニへ、ネット販売へ。流通は商品と人々をどう結びつけて、その中でコストを下げて他社より有利になるか。

  • 流通はモノの流れで、それは経済の流れそのもの。今流通において主導権を握っているのは誰か、グローバル化、(ネットなどの)技術革新、消費性向等々によって、今後どのような形態が主流になるだろう。それはモノの質にも価格にも直結する。適切な例がわかり易く紹介されていて読みやすく、我々の手に商品が届くまでどんな物語があるか改めて関心を持ってしまった。莫大な人口を抱えるアジアの今後を見据えると、流通というファクターもアジアという枠組みで考えなければならない、そのには日本の更なる発展のヒントもあり、そんな指摘には成程と感じさせられる。

  • 非常に平易な文章で読み進めやすい。
    主観的な記述が多々あるため、事実と筆者の考察は区別しながら読む必要がある。
    全体を通して、流通初心者にはとっつきやすい本だった。

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著者プロフィール

東京大学経済学部卒。経済学博士。現職:東京大学名誉教授・学習院大学国際社会科学部教授。経済財政諮問会議議員、復興推進委員会委員長などを歴任。専門は国際経済学。著書に、『入門経済学』(日本評論社)、『ゼミナール国際経済入門』『ビジネス・エコノミクス』『ゼミナール現代経済入門』(すべて日本経済新聞出版社)など多数。

「2022年 『図解 はじめて学ぶ みんなのお金』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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