ルポ 電王戦 人間vs.コンピュータの真実 (NHK出版新書)

著者 :
  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140884362

作品紹介・あらすじ

将棋のプロ棋士がコンピュータに敗れる。つい十数年前まで、そんな話は絵空事にすぎなかった。しかし、いま-。日本中を熱狂の渦に巻き込んだ電王戦の裏には、どんなドラマが潜んでいたのか。開発者や棋士たちの素顔を描きながら、戦いの全貌を伝える迫真のルポルタージュ。将棋とは?知性とは?人間とは?「二一世紀の文学」とも評された決戦の記録。

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった。
    作者としてはもっと頁が欲しかったんじゃないかなぁ。
    あと、図面なしの縛りは意味あるのか疑問。
    62玉の局面だけだって入れれば臨場感でそうなものだが。
    数学読み物の「数式入れれば売れなくなる」定跡と同様、眉に唾をつけておきたい。数学ガール売れてるんでしょ?
    是非、コンピュータシミュレーションで検証してもらいたいものだ。
    笠井さんの登場の仕方は意外性溢れてた。

  • kindle unlimitedに入っていたので読んだ本。
    ルポ、とありますが、将棋ソフトの黎明期からの進化をソフト作者に注目しながら同時期を体験した人の視点で描き出してました。
    電王戦の一局ごとの記述は観戦記のダイジェストのような感じで(何しろ作者は観戦記者)、これはちゃんと観戦記として読みたい。

    2014年に書かれた本なので、プロ棋士よりソフトが強くなってしまった今後に対する不安で最後は終わりますが、2018年の今から見ると、結局ソフトの強さは横において、プロ棋士の勝負での思考過程自体を楽しむような観戦が主流になって、不安は杞憂で終わった気がします。

  • プロ棋士とコンピュータとの戦いの歴史。既にプロを打ち負かせるほどに進歩していたとは驚いた。チェスが勝つのはありと思っていたが、まさか将棋までもとは思っていなかった。また、ルポと称していることもあり、将棋対コンピュータの話を越えた何か哲学的なものも感じた。将棋に少しでも興味があるならば一読を勧める。今後、コンピュータはどこまで進化するのか、興味深い。

  •  佐藤は頭を下げ、投了の意思を示した。それはきっと、歴史的瞬間であったのだろう。いつかは棋士がコンピュータに敗れるときがやってくる。そう多くの人間がどこかで漠然と思っていたはずである。しかしその瞬間が訪れるのは、意外なほどに早かったのではないか。この現実に、どう向き合えばいいのか。とまどいを隠せない棋士や関係者も多かった。
     大盤解説の聞き手を務める女流棋士の山口恵梨子は、一局を振り返って駒を並べ直す際に、思わず泣き出していた。p.133

  • 松本博文氏(1973生、東大将棋部OB、将棋観戦記者)の「ルポ電王戦 人間vsコンピュータの真実」、2014.6発行です。羽生善治が七冠を独占した年(1996年)、「コンピュータがプロ棋士を負かす日は? 来るとしたらいつ」というアンケートへの回答は次の通りです。羽生善治七冠「2015年」、谷川浩司九段「私が引退してから」、加藤一二三九段「来ないでしょう」、森内俊之八段「2010年」、村山聖八段「来ない」、佐藤康光八段「分からない」、三浦弘行五段「分からない」。答えは「2013年」でした!

  • 20160826読了。
    ソフト開発者の方々の話ももっと読んでみたい。

  • 将棋の知識はほぼないものの、家人につきあって将棋番組を見ているうちに、棋士の方々に親しみを感じるようになりました。電王戦のことも知っていたので、臨場感たっぷりに描かれた棋士の方々と電王戦との関わりを、とても興味深く読みました。将棋ソフト開発の歴史からも、将棋の複雑さ奥深さが感じられて面白かったです。

  • 《教員オススメ本》
    通常の配架場所:開架図書(2階)
    請求記号 796//Ma81
    【選書理由・おすすめコメント】
    将来、人間の仕事の多くが機械に置き換えられるといわれている。例えば車の運転も自動化される見通しと言えばその現実味がわかるだろうか。そんな未来の現実に今の時点で矢面に立っているのがプロの将棋棋士であり、彼らは機械学習により格段に進歩した人工知能と対決しているが、旗色は良くない。機械が人間を上回る将来、人間は何を学んでどう生きるべきかの示唆を与えてくれる良書。(化学科 宇和田貴之先生先生)

  • これ一冊で将棋とコンピュータの関係性の歴史がほぼわかる。入門書としては悪くない。

  • 本編最後に紹介されている升田幸三の「見る人を楽しませなければ、棋士の存在理由が無い」という言葉は、いつかは羽生渡辺といった最強のタイトルホルダーが、コンピューターと戦わざるを得ないという宿命を示唆している。本書はその入口までの過程を追った内容。電王戦の結果を知らずに読むと尚面白い。

  • 電王戦のルポというよりはコンピューター将棋のこれまでの発達過程を知るうえで有益だった。しかし棋譜が載っていないのは残念である。

  • ちょうど今(2015年3月25日)、電王戦ファイナルが開催されていて、
    いまのところ人間側が2勝0敗という状況にある。
    過去2年の電王戦では、どちらも人間が1勝だったことを考えると
    これが「棋士の本気」というところか。

    なーんて、数字だけ見ると言えそうなんだけど、
    いやそんな単純な話じゃないのよ、って本書を読んで思った。

    棋士はあくまで人間どうしで将棋をさすのが仕事の人たちであり
    コンピュータと戦うのが仕事じゃない。
    勝って得るものなし、負けると恥。そんな条件で出たい人は
    あまりいない、でも出ないといけない。

    コンピュータというか将棋ソフトウェアにしても、
    電王戦出場ソフトは「ソフト同士のトーナメント」の勝者で
    選ばれていて、別に人間に勝つために最適化されてるわけでもないし、
    第3回電王戦に至ってはハードすら統一されて、GPS将棋が以前見せた
    ようなクラスタ連結の力技も許可されていない。
    また、人間の指示を入れたり、直前のプログラム変更も禁じられている。

    という感じで、2007年に、ある意味「弾み」と言えた
    タイトル保持者渡辺竜王と、全幅探索によって将棋ソフトの
    アルゴリズムに革新をもたらしたBonanzaの対決以後、
    むしろどんどん「野試合」感はなくなってきているのが現状でもある。
    というか、実はある意味でその対決が、本質的には最初にして
    クライマックスだったような気がしなくもない。

    でも、代わりに、電王戦というフォーマットになった結果生まれた
    ものがあって、それは人間のドラマである。
    棋士どうし、ソフトウェア開発者どうし、棋士と開発者。
    さらには、取材をする人や、イベントプロデューサーや、あるいはアマチュア棋士。

    同じ将棋という題材を興味の中心に据えたり、あるいは飯を食ってきた、
    だけどそれまで接点の薄かった人たちを
    電王戦が渦の中に巻き込むことでつなげて、結果おもしろい人間ドラマが
    数々生まれることになった。
    それが最大の魅力であり、価値なのではと思う。

    将棋ソフトウェアと電王戦の状況って、
    何かに似てるなと思って、いま「マネーボール」に似てるなと気づいた。「プロのスカウト」の目なんてあてにならない。
    出塁率や長打率など、徹底して数値を根拠に選手を選んで戦術を立てると
    お金をかけずすごく強いチームが作れたという「データドリブンのスポーツ革命」の
    話なのだけど、
    Bonanza以後の将棋ソフトのアルゴリズム革命のトレンドが
    それに似ているし、さらに棋士のほうもソフトの手を採用するようになった
    なんていうのも、派生してなんとなくそれに通じる話だと思った。

    「マネーボール」が球界を震撼させたように、
    ソフトウェアが数百年(ルーツを入れれば数千年)の将棋の歴史を
    揺さぶっているのが今であり、それをリアルタイムで観られることは
    実におもしろいことだと思うのだ。

  • コンピューター将棋のドキュメンタリー。非常に面白かった。ちょっと考えれば分かることだけど、将棋の複雑なルールと指し手をコンピューターに覚えさせてオートで指させるのは難しい事だと思う。結局、プログラムは人間が組み上げるのだから、その人の設計思想が影響するのが面白い。個人的に一番面白いと思ったのが各駒に評価点を付けた事。歩が一番低くて飛車が一番高いのは素人でも分かるけど、各駒にそれぞれどのぐらいの差があって、何枚持っていたら価値が逆転するのかは分からない。そこを明確に点数を付けたのは画期的だと思う。
    実は以前、格闘ゲームのキャラ調整をロジカルでうまく相対化して誰でもできるようにならないか、という事を友人と話し合った事がある。結論としては、各技に点数を付け、キャラ毎に技を点数で相対化したり、合計点を算出してキャラ評価をしたらどうだろう、という話になった。僕としては大賛成で、その技の評価点を算出する計算式を作りたいと思った。しかし、それをやる時間がなかったのと、こういう仕事は全く評価対象にならないので、時間を犠牲にしてまでやる事に価値を見出せなかった。そもそも、僕は格闘ゲームの開発を担当していなかった。
    そう思って今の格闘ゲームを見渡すと感じる事がある。今の代表的な3D格闘ゲームは飛車角が無くて金と銀で戦うゲームになっている印象がある。2Dゲームは飛車と角しかないキャラ、飛車と角が無いキャラ、歩が無いキャラ、が戦っているように思う。2D格闘ゲームはメタ的組み合わせがあって、それを良しとし、それを覆すところにカタルシスを感じているように思う。はたしてそうだろうか?厳しい言い方をすれば、それを良しとしているプレイヤーや開発者はキャラバランスを考えている事を放棄しているように思う。プレイヤーはキャラを選ぶ時、何を基準にしているだろうか?キャラのルックス、デザインが一番だと思っている。ダサいキャラなんか使いたくない。キャラを選ぶ基準が強さだ、操作性だ、という意見も聞こえそうだけど、それは少数意見だと思う。キャラのルックスに個性が無い方がいい、という主張で作られたゲームもあるけど、正直、魅力がない。強さや操作性もキャラの魅力だとして、それも含めてキャラというのはプレイヤーの代理人である。それはプレイヤーの様々な価値観、美意識が反映されている。プレイヤーがキャラを選んでいるようでキャラにプレイヤーが選ばれている。弱いキャラクターを引き当てたプレイヤーは何を感じるだろうか。その不満を聞いた人の返答のほとんどの意見が「キャラ替えすればいい」だと思う。キャラがプレイヤーの代理人だとすると、キャラを替えることが容易じゃない事が想像できる。弱い、不満のあるキャラを引き当てたプレイヤーはゲームに対して呪いの言葉を吐き続けるか、黙ってゲームを去っていくだろう。そのゲームを遊びたいプレイヤーのネガティブな想いはどこに向ければいいのだろうか?
    400年もある将棋の歴史の中で、コンピューターに将棋を覚えさせる過程で、将棋の仕組みをロジカルに紐解き、明文化したところに意義があると思う。そのプログラムが人間に勝ったのだから、その理論は正しいのだと思う。そして、それを人間が知ったという事は人間も更なるレベルアップができる可能性がある事の裏返しと言えるかもしれない。
    最近の格闘ゲームで最もロジカルにゲームが構築されているのはソールキャリバー5だと思っている。今、格闘ゲームに必要なのは、ゲームをロジカルに解き明かす教本だと思う。歴史が浅いとはいえ、テクノロジーから生まれた格闘ゲームが環境も熱量も将棋には負けている。もっとアカデミックな存在になっていいはずだし、そうなって欲しいと思う。

    蛇足だけど、過去の格闘ゲームの中で最強のキャラは何か?という事をMUGENというソフトを使って検証した動画がある。色んな意味で面白いので見て欲しい。

  • 人間VSコンピュータ。
    思ったより早く追いつかれてしまった。
    コンピュータ将棋の方に主な視点を置きながら、開発者の簡単なエピソードも交えて、割に淡々と描く。どちらからに入れ込んでいる感じでないところはいい。

  • 盤上で繰り広げられる人間とコンピュータの闘い。第一回~第三回電王戦で対決したプロ棋士とソフト開発者の人間ドラマ。対戦だけでなく,そこへ至るまでの道のりについても概要をしっかり捉えている。
    アルゴリズムの内容等の技術的な話には踏み込まず,棋譜データも載せていないが,両者の熱意と将棋への愛が伝わってくる良本。将棋記者として経験を積んだ著者だけあって,あまり詳しくない人でも楽しめるようになっているのがいい。

  • ソフト開発(と開発者)の側にもしっかりスポットがあたっていて、すごく楽しく読めました。さすがはmtmtさん!

  • しびれる。

  • 多少なりともプログラミングに携わるものとしてはどんなアルゴリズムを使っているのだろうか、どんな評価関数を使っているのだろうか、と興味をそそられます。

    しかし一方で、勝負事の世界に機械が参入することに違和感も感じてしまいました。もちろんその機械(プログラム)を作ったのは人ではあるのですが、、、。
    人間VS機械にも確かにドラマはあって、見聞きすれば気持ちも昂ぶるのですが、人間と機械ではどうしても土俵が違うように思えてしまって、自分は心から楽しむことはできませんでした。

  • 棋士がコンピュータに敗れる日が来たのは、僕の予想より少し早かった。大方の現役棋士も、もう少しあとだと予想していたという。しかしさすがに羽生や森内は早くから、2010年頃には人間が敗れる日がくる、と予想していたというのは、単純に「さすが」と思う。
    機械学習の仕掛けを導入した「Bonnanza」がエポックメーキングであった。
    羽生、森内、渡辺が真剣勝負で指したらどうなるか、という疑問は、未だ残されてはいる。しかし、その後に何が残るのか、というコンセンサスなしには、将棋連盟もおいそれとは受けられないであろう。今後、将棋という空間の中で、人間の棋士 対 コンピュータ という勝負に意味があるのかどうか、関係者が考える期間が必要である。

  • 著者の将棋知識が豊富であるため、読み応えのある一冊になっています。

    将棋においてコンピュータがプロ棋士の実力を上回ったことは認めないわけにはいかないようです。トッププロとは対戦していないようですが、そこは日本的な美学からあえて対戦する必要はないように思います。

    少し寂しい気もしますが、視点を変えればアルゴリズムやプログラミングの進化でもあり喜んでも良いのかもしれません。

    今回の結果で将棋の価値が下がる訳ではないので、悲観する必要はありませんね。逆にプロ棋士を倒すという目標を達成してしまったコンピュータ側がどこに向かっていくのかに注目したいと思います。

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著者プロフィール

1973年、山口県生まれ。将棋観戦記者。東京大学将棋部OB。在学中より将棋書籍の編集に従事。同大学法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力し、「青葉」の名で中継記者を務める。日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継にも携わる。著書に『ルポ電王戦 人間 vs. コンピュータの真実』(NHK出版)。

「2015年 『ドキュメント コンピュータ将棋』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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