写真と地図でめぐる軍都・東京 (NHK出版新書)

著者 :
  • NHK出版
3.17
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本棚登録 : 86
感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140884577

作品紹介・あらすじ

戦前、戦中期を通じて、東京は日本最大の軍都だった。近衛師団司令部をはじめ官衙がひしめいていた宮城(皇居)周辺や、大戦下の総司令部として機能した市ヶ谷、武器・弾薬の一大製造拠点だった十条・板橋など。そこに現在も残る軍事遺産を、当時最高精度を誇った米軍撮影の鮮明な空中写真や地図などを手掛かりにたどっていく。歴史ファンから、まち歩き好きまで読んでほしい一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 2015/5/17読了。
    このタイミングで読んでみるのもオツな本。
    各章の冒頭に航空写真が置かれて、それを元に今も残る軍事遺構を紹介していくという構成。淡々と事実を述べる筆致で進む。
    航空写真はすべてアメリカ軍が東京を空爆する計画を立てるため、または空爆した後で効果を確認するために撮ったものだという。巻末の東京大空襲翌朝10時35分の写真は圧巻。こんな写真を撮られて冷静に分析されていたのでは、そしてこんな写真を撮られていたことを知らなかったのでは、いやいや知らなかったわけはないな、頭の上を毎日敵機が飛んでるんだから知らなくても想像ぐらいできるだろう、それでなお戦争を続けようとしていたのでは、まあ焼け野原にされても仕方ない。自国を客観的に分析して想像をめぐらせるって大事なことだ。淡々と事実を述べる著者の筆致はそんなことを考えさせてくれる。
    しかし東京(だけじゃなくて日本全国だけど)にこんなに多くの軍事インフラがあったとは改めて驚く。この巨大なインフラと国家のアイデンティティを支えていた制度や産業が敗戦を境に消滅したということにも改めて驚く。
    これを現代の日本に例えると、たぶん「自衛隊とその基地がなくなりました」じゃなくて、「経団連とその加盟企業がなくなりました」ぐらいな出来事に相当するんじゃないか。だって今の日本人の国家アイデンティティは軍事よりも経済に支えられているわけだから。それが短期間で消滅して、70年後に「かつてここにはトヨタの工場があった、ここにはパナソニックの工場があった、家電量販店やスーパーマーケットやコンビニエンスストアやガソリンスタンドというものが全国に展開していた、かつて日本は経済的に豊かな通商国家だった」と書いて「商都・東京」の跡地を紹介する本が新書判たった1冊にまとまるようなものだ。
    戦争というギャンブルに負けて退き際を誤ると、ここまですってんてんにされるのだと、敗戦国の軍事遺産が教えてくれるのはこの一点だ。次は勝つと考えるか足を洗うと考えるかは、本書の「おわりに」によれば読者の解釈に委ねられている。ギャンブルで全財産をなくした人がいたら、全財産なくすまでハマるようなやつにギャンブルは向いてない、お前は二度と競馬場やパチンコ屋や株屋には近づくな、誘われてもついていくな、ギャンブル以外で生きる道を全力で探せ、って言ってやるのがまともなアドバイスだと僕は思うが。

  • 米軍が撮った空中写真から読みとく、昭和20年頃の東京の市街地の姿。空襲直前の姿は、その数日後に焼夷弾で焼き払われたことを思うと痛ましい。
    広大な軍の敷地は、現在、様々な用途で使われている。刻んだ歴史を遺してもらえたものと、消されたもの……昔の面影を残すものはそう多くないが、歴史を紐解きながら、本を片手に散策したくなる。

    あの巣鴨プリズンがサンシャインシティとして再開発され、戦犯を吊るした五つの絞首台跡はその一角で公園に生まれ変わっていたとは、知らなかった……

  • 2017/6/4知っている場所が随分出てきた。流し読み。★3

  • 東京及び近辺の軍事施設の地図を米軍航空写真をベースに読み込む。軍事国家だった戦前の首都の様相がよく分かる一冊。

  • 東2法経図・開架 213.6A/Ta67s//K

  • 首都東京は軍都でもあった。東京の、今に残る戦時の跡。

    東京は土地勘のあるところとないところが全然違うので、知っているところは興味深く読めたけれど、他はあまりぴんとこなかった。でも、今に残る跡、残らない跡、両方あって、でももう戦後70年を過ぎて、記憶からも実際の跡も消えていく中、忘れてはいけないものだ、と思った。繰り返さないために。

  • 感想未記入。

  • アメリカが焼き払う前の写真を元に、東京の軍事施設をめぐる本。

    写真、解説で東京都心の街ごとに解説していく。中には空襲の被害状況を確認するためにアメリカが撮った航空写真もあり、写真のない東京大空襲の被害がうかがえる。旧陸軍とかに知見がないので、あまり中身は面白くなく。。。たまに入る江戸時代の武家屋敷とかの話の方が面白い。間に入るコラムがまた酷い。
    戦後70年ということで勉強で。

    浦和の紀伊国屋で購入。

  • 2015年4月刊。
    東京大空襲(昭和20年3月)の数日前に米軍により撮影された、東京各地の鮮明な航空写真。撮影の目的は、大規模空爆のための空襲計画。撮影の数日後には撮影範囲の大部分が焼きつくされたとのことで、言葉を失う。

    東京にこれほど多くの軍施設があったとは驚き。航空写真には、施設名が細かく書き込まれている。当時の大規模軍施設の位置を現在の地図で見てみると、大きな公園だったり、商業施設だったり、自衛隊の敷地だったりする。

    歴史番組などでよく耳にする「東京は焼け野原になった」の意味を、視覚的に理解できる本。

  • <目次>
    はじめに
    第1部  都心に残る軍都の面影
    第2部  近郊に広がる軍都の全貌

    <内容>
    第二次戦争中および一部戦後すぐに撮影された米軍による航空写真(戦時中のものは空襲の下調べおよび空襲の効果調べ)を元に、昭和期の東京(都内およびその周辺)が軍都であったことを述べ、そのいきさつやその後の様子、現在の様子を述べたもの。
    米軍の航空写真を用いたところが斬新か。竹内氏はこうした本を多く出版しており、似たものが多い。
    現在は石碑などでしのぶケースが多いが、平和教育及び近代日本の発展過程を石部知ることが出来るのでないか。

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著者プロフィール

1963年愛知県生まれ。文筆家、歴史探訪家。
地図や鉄道、近現代史をライフワークに取材・執筆を行う。
著書に『妙な線路大研究 東京篇』(実業之日本社)、『鉄道歴史散歩』(宝島社)、『ふしぎな鉄道路線』(NHK出版)、『地図と愉しむ東京歴史散歩』シリーズ(中央公論新社)など多数。

「2021年 『妙な線路大研究 首都圏篇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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