恐怖の哲学 ホラーで人間を読む (NHK出版新書)

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著者 : 戸田山和久
  • NHK出版 (2016年1月7日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140884782

恐怖の哲学 ホラーで人間を読む (NHK出版新書)の感想・レビュー・書評

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  • ヒトは何故、怖さを愉しもうとするのか、
    また、
    フィクションだとわかっていながら
    真剣に怖がることができるのか
    ……という疑問に哲学的にアプローチする本。
    ボリューミーだが
    砕けた話し言葉で綴られているので読みやすい。

    ヒトは進化によって
    現前に迫る恐怖の対象だけでなく、
    実在しないものまで恐れることが可能になったので、
    ホラー映画を観て虚構と承知しつつ
    本物の恐怖を体感することが出来るが、
    虚構だという信念が行動を制御するから、
    怖がりながらも
    映画館から逃げ出しはしないのだし、
    ホラーを愉しめるのは
    怖さそのものが快楽をもたらすからだ――等々。
    そして、怖がることによって
    危険を回避しようとするアクションは
    脳の働きが生み出すものだ、という話。
    ヒトの行動を司るのは「魂」なんかじゃないよ
    「脳」なんだよ、と。

    > 唯物論というのは、大雑把に言うと、
    > 心身の二元論を否定する立場のことだ。
    > 脳のような物質の他に、
    > 心という実体が存在するわけではない。
    > だから、意識も含めて、
    > 心のさまざまな性質は究極的には
    > 物質だけがこの世に存在するという前提に基づいて
    > 理解できるはずだ、と考えているなら、
    > その人は唯物論者である。
    (p.341)

    それなら私もそうです。
    以前、目の前に実在しないものを見てしまったとき、
    処方薬の副作用だと直感し、
    ああ、脳が誤った信号を発したのだなと
    納得した経験がある。
    決して「心」が「魂」が、
    どうにかなってしまったのではない、と。
    ちなみに、後日主治医に報告したら
    薬の量を減らされ、結果、
    面妖な物体を目撃することはなくなったのだった。

  • 相変わらず面白い。恐怖、ホラーがメインテーマであることは間違いないのだが、さもすると陳腐な結論で終わりがちな、「人間とは何か」を問う書でもある。参照される思考体系の接続、一歩引いて考え直すタイミングなど改めて感心。小利口な文体と難解な単語で悦に浸っている輩はアホやなと思いながら読み終えたら、あとがきの最後で笑った。
    「魂があるから、理性があるから、言語があるから、人間は特別なんだとハナから決めてかかるヘッポコ哲学者には、彼らの思惑に反して、人間のユニークさは決して理解できないだろう。そういう哲学者の首をチェンソーではねてまわりたい、と思う今日この頃。」
    帯の意味不明だった絵はこれを描いていたようである。戸田山の根底にある思想を表していると思えば本書の白眉とも言えるのか。

  • 哲学という記載はありますが、人が何故恐怖を欲するのか等に関して重点的に記載しております。
    何故怖いのは嫌なはずなのについ見てしまうのか、そこには脳みそから興奮作用をもたらす成分が分泌されているからということがわかりました。
    かなり分厚い書物で敬遠される方もいらっしゃるかと思いますが著者の独特な書きぶりにより飽きることなく読み通すことが出来ました。

  • この人の本は、一般向けでも、ちゃんと論文の構造になっているところが白眉。すばらしい。

  • 「哲学入門」並みの分厚さだが、「哲学入門」よりも具体的な問題設定であるため、わかりやすい。
    緻密な、というか「いやもうそこは”常識”で飛ばしゃいいじゃん」ってとこまでしつこくしつこく突き詰める論理展開は、ああ、これって哲学の醍醐味だなあ、と思わせる。本書もまた形を変えた「哲学入門」なのだ。

  • 軽い文体で書いてあるが、内容が哲学なので、なんだかんだいって小難しい。

  • メディアライブラリー発行の図書館報で紹介された本です。
    【分類】104/To17
    哲学・宗教のコーナーに並んでいます。

  • 借りたもの。
    ホラーを観る(楽しむ)ということ、そこにある「恐怖とは何か」を、哲学の表象として読み解いていく本。
    目次を開いた地点で、文庫なのにその情報量の多さに驚愕……それだけ内容が濃い。

    著者曰く「アラコワイキャー」という一連の流れ、“恐怖”が様々な感情の複合であることに始まり、その“本質”は何かを模索していく過程に、哲学史における表象の解釈の変化をも垣間見る。
    心理学や生物学、脳科学の話にも触れ、哲学という抽象概念を扱っている分野からも少し離れつつ、それを丁寧に検証していく。

    恐怖というものが、自身に迫った脅威の表象から、身体的な知覚表象を越え、実在しないものを恐れるようになる等、高度な認知行動を伴っている事を明かにする。
    フィクションであるホラーだが、それを見て感じた恐怖は本物である。
    しかしホラーは虚構であるという信念が逃避する行動に「待った」をかけること、怖さそのものが快楽をもたらす等……
    恐怖に限らず、ホラーは「人間とはいかなる存在か」を考え直す上で示唆に富んでいる事を明確にする。

    口語調で書かれた文体で、時折、例としてメジャーなホラータイトルが挙げられている。
    『スクリーム』など、教材のように文中には出てくる(笑)
    ‘『スクリーム』は、ホラー映画であると同時に、ホラー映画についての映画(メタホラー)でもある’(p.182)ためらしい。
    私でも観たことがある、メジャー作品ばかりなので、イメージを共有しやすく「なるほど」と思ったり、哲学の話に限らず、ホラー映画談義をしている気分になる。

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恐怖の哲学 ホラーで人間を読む (NHK出版新書)の作品紹介

なぜわれわれはかくも多彩なものを恐れるのか?ときに恐怖と笑いが同居するのはなぜか?そもそもなぜわれわれは恐れるのか?人間存在のフクザツさを読み解くのに格好の素材がホラーだ。おなじみのホラー映画を鮮やかに分析し、感情の哲学から心理学、脳科学まで多様な知を縦横無尽に駆使、キョーフの正体に迫る。めくるめく読書体験、眠れぬ夜を保証するぜ!

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