恐怖の哲学 ホラーで人間を読む (NHK出版新書)

著者 :
  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140884782

作品紹介・あらすじ

なぜわれわれはかくも多彩なものを恐れるのか?ときに恐怖と笑いが同居するのはなぜか?そもそもなぜわれわれは恐れるのか?人間存在のフクザツさを読み解くのに格好の素材がホラーだ。おなじみのホラー映画を鮮やかに分析し、感情の哲学から心理学、脳科学まで多様な知を縦横無尽に駆使、キョーフの正体に迫る。めくるめく読書体験、眠れぬ夜を保証するぜ!

感想・レビュー・書評

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  • ホラー映画を分析するようなことだけど、これをわかったところで恐くなくなるわけでもなく、さほどオススメではない。

  • p.2016/1/25

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99822494

  • 恐怖という「感じ」を手がかりに感情や意識について。

    おもしろいのだけど、快・不快のいわゆる快原則と恐怖の因果が中心で「他に恐怖と結び付けられるものはないの」と途中で思ってしまった。

    自分はたのしめたけど、ホラー(映画)が好きでないとおもしろくないと思う。最後まで読んで思ったのだけど、認知のところ中心だったら、取り上げる映画は『スクリーム』の1本だけでよかった気もしないでもない。

  • 「哲学入門」で「意味」「機能」「目的」などの「存在もどき」を自然主義・唯物論的に記述するという壮大な試みに挑戦した著者。本作のテーマは人間の恐怖をはじめとした「情動」一般だ。総花的な「哲学入門」よりはテーマも絞られている上有名なメジャーどころのホラー映画が題材に選ばれており、引用も豊富で具体的なイメージが掴みやすい。一方で「哲学入門」同様、ハードプロブレムの回避の仕方にご都合主義な側面が感じられるのがどうしても気になってしまった。

     構成としては、恐怖の本質は何かを探る第Ⅰ部、我々はなぜ恐怖を抱くのかについての第Ⅱ部を経て、情動に伴う「感じ」や「意識」の唯物論駅記述を試みる第Ⅲ部に至る。無論この第Ⅲ部が本論だ。

     第Ⅰ部は、恐怖ならびに情動一般の在り方を問う諸説の比較考量が主体。その中から情動が身体的反応に起因するとする「身体説」と、中枢の認知に起因するとする「評価理論」のハイブリッドであり、ダマシオの「ソマティックマーカー仮説」を一部内包した「身体化された評価説(プリンツ)」が以降の議論の軸に置かれる。ここで用いられる、情動を状況(「中核的関係命題」)をいかに情動が表象するのかについての議論は「哲学入門」で紹介されているミリカン「目的論的意味論」がベースとなっている。第Ⅱ部もその大部分が「哲学入門」と重なっており、同書を読んでいれば議論の流れを掴むのは容易だろう。最後に第Ⅰ部とつながる形で、身体的反応を知覚する「扁桃体」が恐怖と快楽の座であるため、恐怖と快楽を峻別できないまま身体的反応を「感じ」ていることが、我々がホラー映画に恐怖を感じつつ楽しめる理由だとされる。

     そして山場の第Ⅲ部は、詰まるところあの古き良き「ハードプロブレム」を扱うものだ。正面からこの問題を扱うにはページが少ないな、と思ったが、結論からいうと本著でも「哲学入門」同様、「真正面からハードプロブレムを解くことは労多くして功少なしであるので、少しでも果実の多い答えが得られるよう問いを立て直そう」という、ルース・ミリカン「理論的定義」の枠組みに沿った議論が展開されている。つまりここで議論の対象となっているのは通常の意味でのハードプロブレムではないのだ。確かにプラグマティックではあるが、こういった「『得られるべき答え』を超越論的に問いに前置するやり方」を多用するのはあまりフェアでないのではないかという疑念が、どうしても頭をもたげてきてしまう。

     確かに表象に伴う「感じ」の現象的説明は困難だろう。「感じ」を現象的に説明しようとするとどうしても無限後退に陥ってしまうし、正面から向き合っても実入りが少ないというのも理解できる。そのため著者は鈴木貴之という哲学者の「意識の表象理論」に基づき、「表象に伴う感じは表象対象のもつ性質に他ならない」とし、「感じ」を知覚体験から切り離すことでこの問題を回避するのだが、問題はこの説に説得力があまり感じられないところにある。結論に合わせてあらかじめお膳立てされた設定に思えてしまうのだ。確かに「感じ=対象の性質」とすることで志向性の自然化はし易くなるだろうが、これで得られた知見に本当に汎用性があるのだろうか。
     同じ疑念は著者が「反物理主義ゾンビ」を扱う場面でも感じられた。著者は、我々が反物理主義ゾンビが「ありうる」と考えてしまうのは「意識」に関しての知識蓄積が十分でないからだとし、むしろ「意識」の概念を反物理主義ゾンビ問題が生じないよう改定すべし、とするのだが、僕のような素人にはどうしてもこれが「ズルイ」と思えてしまう。

     ただ、プリンツの「AIR理論」と「身体化された評価説」を組み合わせた、身体的反応をひとまとまりの「感じ」として保持した中間レベルの表象が生み出され、それが熟慮の場であるワーキングメモリに送られることで「意識」が生ずるという説明には共感を持つことができた。もちろん前述の通り「感じ」が身体的反応側にあるという部分には説得力を感じないのだが、そのような「自分が自分をモニターする」というフィードバックループが意識の座であるという考え方は、ダグラス・ホフスタッターの思索ともオーバラップするところが多いように思えた。全くの素人考えだが、「意識」だけでなく「感じ」もこのフィードバック機構全体に根拠を求めることで、意外に問題がクリアになるのでは、と思ったり。

     結局、著者が「意識には現時点で既に神経科学的根拠があり、感じには今のところない」と結論づけるほどには、現在の神経科学がまだ発達していない、ということなのではないだろうか。その未だ未発達な見地から、唯物論的・自然主義的な説明をミリカンのロジックを多用して捻り出したとこで、さほど説得力あるものが出てこないような気がする。僕は基本的に唯物論的説明にシンパシーを感じる立場で著者のファンだが、問いを立て直した上での「用意された」結論よりも、正面からの議論のぶつかり合いをもっと見てみたいと思うのだ。

  • 【版元】
    ◆恐怖は知性だ! 前代未聞の哲学入門
     なぜわれわれはかくも多彩なものを恐れるのか? ときに恐怖と笑いが同居するのはなぜか? そもそもなぜわれわれは恐れるのか? 人間存在のフクザツさを読み解くのに格好の素材がホラーだ。おなじみのホラー映画を鮮やかに分析し、感情の哲学から心理学、脳科学まで多様な知を縦横無尽に駆使、キョーフの正体に迫る。めくるめく読書体験、眠れぬ夜を保証するぜ!

     本書の著者は戸田山和久さん。19万部を超えるロングセラー『論文の教室』、入門書の定番中の定番『科学哲学の冒険』などの著書がある、科学哲学専攻の名古屋大学大学院教授、「日本科学哲学会」の会長さんも務められています。2014年には『哲学入門』というスゴいタイトルの本を上梓されました。
     そんな戸田山さんは、夜な夜なDVD鑑賞にいそしむホラー好き。ここで紹介する新著『恐怖の哲学』は、映画から小説、マンガまで、著者偏愛のホラー*を素材に、いっちょ「恐怖」とは何かをテツガクしてみようという大胆不敵・前代未聞の試みなのです。
     著者とホラーとの出会いは高校生時代にまでさかのぼります。飯田橋の二番館で、70年代ホラー映画の金字塔『悪魔のいけにえ』を観た戸田山少年は、チェーンソー片手に被害者を追い詰める殺人鬼「レザーフェイス」の異様な姿に怯え、吐き気を催すほどの恐怖を覚えたとのこと。ここで少年の心に疑問が生じます。「なんで作りごとだと分かっているのに、嘔吐するほど怖かったのだろう?」、しかし「そんなに怖かったのに、なぜ映画を楽しめたのだろう?」、そして「人はなぜ、かくも多彩なものを怖がるようになったのだろう?」。
     本書ではそんな積年の疑問から、「そもそも人はなぜ恐れるのか?」「恐怖の「感じ」って何だろう?」といった根源的な問いまでを徹底的に考察、人間存在のフクザツさに迫っていきます。おなじみのホラー映画*を鮮やかに分析し、科学哲学専攻の著者らしく生物学や脳科学まで多様な知を縦横無尽に駆使、キョーフの正体に迫ります。
     しかし、本書はお気楽な「ホラー論」ではありません。「恐怖の「感じ」」について論じたパートでは、「意識の表象理論」という最新理論をふまえて、「感じ=意識」とは何かという大いなる問いに果敢に挑みます。真摯な知的格闘の記録でもあるのです。

     そんな著者の情熱あふれる文章を引用しちゃいましょう。
     “哲学は生物学や脳科学とシームレスにつながるべきだ。魂があるから、言語があるから、人間は特別なんだとハナから決めてかかるヘッポコ哲学者には、彼らの思惑に反して、人間のユニークさは決して理解できないだろう。そういう哲学者の首をチェーンソーではねてまわりたい、と思う今日この頃” (「あとがき」より)

     はい。というわけで、本書のオビには白目をむいてチェーンソーをふりかざすレザーフェイス戸田山のイラストを載せました。
     著者の情熱のおもむくままに執筆していただいたら、なんと448ページに達しちゃいました。内容のみならず、厚さもまた前代未聞。めくるめく読書体験、眠れぬ夜を保証するぜ!
    (NHK出版 大場 旦)
    https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000884782016.html


    【目次】
    目次 [003-012]
    まえがき [013-018]

    ◆ I 恐怖ってそもそも何なのさ? 019

    第1章 恐怖の原型としての「アラコワイキャー体験」 021
    1 恐怖の三つの要素 021
      「出ますよ出ますよ」――アラコワイキャーの変奏
      「声だけの敵」が襲ってくる!

    2 恐怖の認知的側面――アラコワイキャーをさらに分析する① 029
      恐怖は志向性をもつ
      われわれは「間違った恐怖」を抱くことができる
      対象への評価はいつ生じるのか
      頭ではわかっていても怖いものはコワイ
      恐怖は身体的反応から始まる

    3 恐怖の「感じ」的側面と身体的反応――アラコワイキャーをさらに分析する② 042
      情動はフクザツに混ざり合っている
      「情動」のさまざまな例
      「情動」と似た言葉を整理する
      恐怖と驚きは分かちがたく混ざり合う
      「恐怖の感じ」の現象学的記述
      なぜ緊迫した状況で恋に陥るのか?
      情動の2要因理論
      「感じ」だけでは情動を特定できない
      恐怖の身体反応
      神経伝達物質のしくみ

    4 恐怖の動機づけ的側面と恐怖の表情――アラコワイキャーをさらに分析する③ 065
      恐怖が促す行動一覧
      恐怖と行動の循環的関係
      なぜ「スクリーム」の犯人は「恐怖の表情仮面」をつけているのか
      悲しい表情をすると悲しくなる?
      次に取り組むべき問い


    第2章 アラコワイキャーのどれが重要なのか?――「部分の問題」を考える 075
    1 情動の本質って何だ?――末梢か中枢か、はたまた行動か 076
      情動とは身体的反応の「感じ」だ――ジェームズ=ランゲ説
      情動はアタマの中で発生する――キャノンの中枢起源説
      扱うべきは刺激と行動の関係だけ――ワトソンの行動主義心理学
      心を行動へ還元しようぜ!――ライルの哲学的行動主義

    2 情動を何と同一視するか?――認知革命以降の考え方 085
      「心の中身はやっぱり重要だ」
      情動とは心的能力の働き方のことだ――処理モード理論
      哲学者は「思考」がお好き――純粋認知理論
      本質主義的探求は時期尚早?

    3 ハイブリッド理論とアトサキ理論――情動をどうモデル化するべきか 091
      情動ハイブリッド説――デカルトから2要因理論まで
      「判断」が情動に先立つ――認知的評価理論次元がどんどん増えていく!
      ラザルスの実験
      「部分の問題」の正しい解き方

    4 「認知が先か感情が先か」論争―認知的評価理論はダメそうだ 101
      ザイアンスが論争の口火を切る
      ラザルスが迎え撃つ、のだが……
      名行司プリンツが裁く!
      認知的評価理論はダメだ、しかしそこから学ぶことはある


    第3章 これが恐怖のモデルだ!――身体化された評価理論 112
    1 ダマシオと情動の合理性 113
      かつては「機械の中の幽霊」説が優勢だった
      ジェームズとダマシオの相違点  VMPFC損傷は何をもたらしたか
      身体的反応、即、対象についての評価
      わかっていながら不利な選択をしてしまう
      理性と情動は相補う
      合理的行動は理性の専売特許ではない
      ソマティックマーカーの督告を無視すると……
      情動の適切さの基準
      恐怖の不在、恐怖の鈍磨を描くホラー

    2 ところで表象って何だ? 134
      そろそろ表象を定義しておかねば……
      「表す」とは何か? そして「本来の機能」とは?
      「本来の機能」は何で決まるのか?
      「間違った恐怖」もうまく説明できる

    3 これが「身体化された評価理論」だ 144
      プリンツ理論は「いいとこどり」
      情動と身体的反応の関係は?
      情動が表象するのは中核的関係主題
      「情動の対象」という表現は両義的
      要するに情動って何なの?
      「身体化された評価理論」という名前にはワケがある


    ◆ II ホラーをめぐる3つの「なぜ?」 

    第4章 まずは「ホラー」を定義しちゃおう 
      ホラーは表現ジャンルを問わない
      ホラーとSFは重なり合う
      ホラーモンスターは「ノーマルな世界の異常な存在」
      どのようにコワがるべきかを教えましょう
      鏡像効果
      怪物は嫌悪の対象でなければならない
      フランケンシュタインの怪物とレプリカント
      ホラーの三条件
      すれっからしの観客たち


    第5章 なぜわれわれはかくも多彩なものを怖がることができるのか? 
    1 「情動って生まれながらのもの?」論争 186
      論争は「表情」から始まった
      フォア族に見られる「表情の普遍性」
      情動の表出か、それともコミュニケーションの手段か
      ラッセルのツッコミ
      擬似問題としての「氏か育ちか」

    2 アラコワイキャーの対象だってすでに多様だ 195
      「いまそこにある脅威」さまざま
      アラコワイキャーとオシツオサレツ表象

    3 死を恐れるのは実は離れ業 201
      死の恐怖をめぐる誤解 「死そのもの」はなぜ悪いのか?
      反駁の準備――恐れられているのは「状態」ではない
      ゾンビになった学者はなぜ不幸なのか
      剝奪論法のポイント
      剥奪論法はエビクロスを打ち破ることができるか
      「死への恐怖」が要求する表象能力

    4 表象の進化とホラーの深化①――「オシツ」「オサレツ」が分かれるまで 213 
      バクテリアもジガバチくんもなかなかやるね
      オシツオサレツ動物にできないこと
      信念と欲求の独立
      オシツオサレツ表象から準事実的表象へ
      怪物を表象する能力のルーツ
      ネズミはいかに未来を予知するか
      推論・シミュレーションに必要な表象能力

    5 表象の進化とホラーの深化②――「推論する力」と「他人の心を理解する力」 230
      目的手段推論の四つの特徴
      シリアルキラーは自己中心的表象がお好き
      死の恐怖は「主観と客観の往復」から
      密室の恐怖
      「シミュレーション理論」と「心の理論」
      意図不明なヤツがもっともコワイ

    6 表象の進化とホラーの深化③――自己同一性喪失という恐怖 242
      自己同一性喪失は死と同じ
      自己喪失の悲しさ
      われわれの基本はお掃除ロボットだ


    第6章 なぜわれわれは存在しないとわかっているものを怖がることができるのか? 
    1 解くべきパラドックスはこれだ! 248
      並び立たない三つの条件
      「一致条件」って何だ? 
      何と何の「一致」? 

    2 錯覚説――信念条件を捨てるとどうなるか? 253
      矛盾は消えたとしてもアホになる
      「観客は娯楽として楽しんでる」――批判の根拠
      「半分忘れ、半分信じている」状態
      「意志の力」説の難点

    3 「ごっこ」説――反応条件を否定するとどうなるか? 260
      実在しなくとも、怖いものはコワイ
      ごっこ遊びとホラー映画
      準恐怖って何だ?
      虚構オペレーター
      ごっこ遊びのルール
      引き裂かれた欲望?
      ネタバレなのに、なぜサスペンスを感じるのか
      ウォルトンの回答

    4 ホラーの恐怖はホンマもん!――ウォルトンへの批判 275
      批判①――ホラー=ごっこ遊び説に無理がある?
      驚きは意志でコントロールできない
      批判②――観客は遊びのルールを意識していない?
      ホラー鑑賞のルール
      身体的反応はホンマもん
      「準恐怖」にも無理がある

    5  一致条件を捨ててパラドックスを解く 286
      われわれは他人に代わって恐れることができる
      実在信念がなくとも情動は生じる
      キャロルの思考説
      思考説を洗練させたい
      思考とは表象と見つけたり、私が映画館から逃げ出さないわけ


    第7章 なぜわれわれはホラーを楽しめるのか? 298
    1 パラドックス解消が満たすべき条件とは? 298
      ホンマもんの恐怖をなぜ喜ぶの?
      まずは三つの条件を
      最後の条件:「別種の価値」に訴えないならベスト

    2 ホラーとは抑圧された性的欲望の変形だ!――精神分析的理論① 
      吸血鬼の象徴的意味
      コワさは快楽にいたる道だ
      ゴジラは「抑圧された性的欲求」の産物か?
      抑圧理論ではホラーの両義性は説明できない

    3 ホラーとは抑圧されたものによる秩序の転覆だ!――精神分析的理論② 312
      文化の枠組みがわれわれを抑圧する
      ホラー秩序転覆説の難点

    4 ホラーは「認知的喜び」をもたらす――キャロルのプロット説 318
      ヒュームの見解――「悲劇の喜び」について
      ホラーのキモは「発見・確認」のプロット
      発見の物語は引き伸ばされる
      プロットのポイントは「怪物」
      ホラーがもたらす二つの喜び

    5 キャロルの「解決」にツッコム 326
      キャロル説は三つの条件を満たしていない
      ホラーの怪物は「理解不可能」な存在か?
      キャロルによる両義性の解釈
      しょせんは「にもかかわらず説」
    6 恐怖は本当に不快なのか 332
      「不快」という前提を疑う
      恐怖そのものは不快ではない
      恐怖の「感じ」は大雑把
      第II部のまとめ


    ◆ III 恐怖の「感じ」って何だろう?――ゾンビといっしょに考える 339

    第8章 哲学的ゾンビをいかに退治するか? 343
    1 二種類のゾンビと意識のハードプロブレム 343
      哲学的ゾンビとは何か
      意識体験の本質は「感じ」だ、と哲学者は言いたがる
      機能主義――心は因果的機能で定義できる
      哲学的ゾンビによる機能主義批判
      何でまたゾンビが選ばれたのか
      反機能主義ゾンビと反物理主義ゾンビ
      哲学的ゾンビの再定義:心理学的意識はもっているが現象的意識をもたない
      意識の問題には二種類ある
      本章第2節以降の課題

    2 哲学的ゾンビに退散願うには 358
      第一の標的は反物理主義ゾンビ
      反物理主義者へのツッコミ
      思考可能性と形而上学的可能性を結びつけることはできない
      理想的思考者はゾンビが存在すると考えるか
      ゾンビの思考実験が示していること

    3 われわれだって、ときにゾンビに変身する 366
      反機能主義ゾンビは退治できない
      無意識の情動はありうるか
      無意識の情動はなぜ否定されるのか
      情動本来の機能は「注意を促すこと」?
      痛みの意識のない痛み
      クモ恐怖症の実験
      実験へのツッコミ
      次なる課題


    第9章 「意識のハードプロブレム」をいかに解くか? 383
    1 意論の表象理論で「感じ」を脱神秘化する 383
      意識体験は表象だ
      意識に伴う「感じ」は志向的対象の中にある
      なぜ「感じは意識体験の中にある」と思いたくなるのか
      それでも表象理論で頑張るとすると……
      表象理論の最大のメリット
      情動に意識の表象理論を当てはめる

    2 意識的情動はいかに生み出されるのか――AIR理論から考える 394
      表象はいかにして意識体験になるのか  さまざまな意識の共通点
      視覚刺激は三段階で処理される
      中間レベルがクサい
      意識昇格へのプラスアルファ
      「注意」が生じる脳内プロセス
      情動システムの階層性
      高次レベルの情動処理はどこで行われているのか
      いくつかの機能障害からの証拠
      AIR理論はいい線いっている

    3 反機能主義ゾンビはダイハード 413
      意識は何のためにあるのか
      視覚意識の機能――中間レベル表象を生み出し、ワーキングメモリに送る
      「中間レベルの恐怖」「高次レベルの恐怖」、それぞれの役割
      反機能主義ゾンビから、再びツッコミが……
      反機能主義ゾンビを黙らせる最後の手段

    4 ハードプロブレムを解くってどういうことなんだろう? 423
      AIR理論は「正体突き止め仮説」である
      答えのない問い
      ハードプロブレムBへの暫定的回答
      本書のまとめ


    参考文献 [431-441]
    おすすめ [431-443]
    あとがき(二〇一五年十二月 戸田山和久) [444-445]

  • 東2法経図・6F指定:104A/To17k/Ishii

  • テーマそのものが面白かった。

  • 哲学という記載はありますが、人が何故恐怖を欲するのか等に関して重点的に記載しております。
    何故怖いのは嫌なはずなのについ見てしまうのか、そこには脳みそから興奮作用をもたらす成分が分泌されているからということがわかりました。
    かなり分厚い書物で敬遠される方もいらっしゃるかと思いますが著者の独特な書きぶりにより飽きることなく読み通すことが出来ました。

  • この人の本は、一般向けでも、ちゃんと論文の構造になっているところが白眉。すばらしい。

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著者プロフィール

1958年生まれ
1989年 東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学
現 在 名古屋大学大学院情報学研究科教授
著 書 『論理学をつくる』(名古屋大学出版会、2000年)
    『誇り高い技術者になろう』(共編、名古屋大学出版会、2004、第2版2012)
    『科学哲学の冒険』(日本放送出版協会、2005)
    『「科学的思考」のレッスン』(NHK出版、2011)
    『科学技術をよく考える』(共編、名古屋大学出版会、2013)
    『哲学入門』(筑摩書房、2014)
    『科学的実在論を擁護する』(名古屋大学出版会、2015)
    『〈概念工学〉宣言!』(共編、名古屋大学出版会、2019)
    『教養の書』(筑摩書房、2020)他

「2020年 『自由の余地』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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