中東から世界が崩れる イランの復活、サウジアラビアの変貌 (NHK出版新書)
- NHK出版 (2016年6月9日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140884904
感想・レビュー・書評
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イラクやシリア、サウジアラビアを国もどきとする表現は他の本でも読んだ。確かに、原油利権で国民をコントロールしながら、しかし、実際には、宗教だけではなく、民族、聖地なども含めて複雑な成り立ちを持つ国境線は確かに一筋縄では言い表せない。こうした複雑な構造をもつ中東から、自国のエネルギー自給の目処が立ったために急速に興味を失ったアメリカ。日本は、信頼をベースに外交をすべきであると結ばれるが果たしてどうか。脱化石燃料が進む中で、価格調整が為される、日本はもう少し、狡猾な外交をしても良いのではないだろうか。
本著は、イスラム教の解説から中東国の歴史、成り立ちを分かりやすく解説してくれる良書である。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2000年代の中東情勢を概観。中東には「国」と「国もどき」があり、後者の代表格がサウジアラビアである、という解説に最初ギョッとしましたが、読んでいくと、なるほど、国もどき…と腑に落ちました。
良書だし、重版されないのかな。 -
2017.02―読了
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「中東イスラム世界の諸問題には、共通した構図があるように思えてならない。 一つめは、イラクやシリアのような人工的につくられた〝国もどき〟が持つ本質的な矛盾である。つまり本人たちの同意なく、多くの宗派・民族の集団が無理やりに一つの国境線に押し込まれたという現実である。 二つめは、アフガニスタンやイエメンが経験したような、伝統社会から近代社会へと移行する際の困難さである。両者の間を隔てる深い亀裂がある。アフガニスタンやイエメンは、この亀裂を無理をして一気に越えようとした。それがともに失敗し、亀裂に落ちて出口のない内戦状態から抜け出せないでいる。 こうした失敗を見ると、これまで秩序を保ってきた伝統社会のあり方にも敬意を払う必要がありそうだ。」(『中東から世界が崩れる イランの復活、サウジアラビアの変貌 (NHK出版新書)』(高橋 和夫 著)より)
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2016年1月に第1刷発行された本書であるが、
2022年8月現在でも、大変分かりやすい。
現在でも混迷を極めている中東情勢の、
どこに注目して見ていけばいいかを分かりやすく解説してくれている。
ニュース報道で知るだけではまったく理解しきれない中東情勢も、
本書のように分かりやすい著作で補足していけば、
もっともっと身近なものになるのではないか。 -
中東に関しては、高橋さんの書籍が一番信頼が置けます。
中東には“国”は3つしかない(イラン、トルコ、エジプト)。あとは“国もどき”だ。という主張は本当に目からうろこでした。 -
数年前に書かれた本です。シーア派とスンニ派の対立とメディアは単純化するが、実はそうではないということが理解できました。
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中東問題は宗教戦争ではなく、単なる地政学的問題であることを解き明かす。
イギリス・フランス等の列強が国境線を引いた結果、近代国家としてはなりたっていない国家もどきの国が沢山あるのが中東。
サウジも国家もどきの国の一つだが、今後石油のもつ戦略物資としての性質の変化(米国でのシュールガス開発等)により国家の戦略を変えざるを得ない状況に追い込まれている。アラムコの上場もその一環だが上手くいくか否かは不明。
国家もどきの国の境界線が政治要因で変更される可能性が今後高い。(シリアはその典型例) -
2019年9月現在、サウジアラビアの原油施設が攻撃され、イランとサウジアラビアの関係性が更に悪くなってきている。
漠然と宗教の問題だからしょうがない、と割り切って考えていた中で見つけた一冊。
『本書では、宗教のみならず政治や経済にも着目し、問題の真相に光を当てたい』
この文で購入を決定。
本書を読むと、宗教は重要なポイントではあるものの、それだけでいがみ合っているのではないと分かる。
例えば、イラン・イラク戦争ではシーア派人間同士が殺しあっている。
背景は領有権問題。
中東の争い=宗教対立と考えず、ほかの地域と同様に政治・経済の観点も持つべきと分かる。
本書ではイスラム教の成り立ち、プレイヤーとわかりやすく書かれている。
中東問題=宗教問題と考えている人は買った方がいい。