「ヒットソング」の作りかた 大滝詠一と日本ポップスの開拓者たち (NHK出版新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140885062

作品紹介・あらすじ

なぜ彼らの歌は色褪せないのか?シュガー・ベイブや竹内まりや、加藤和彦、フリッパーズ・ギター、そして忌野清志郎+坂本龍一の「い・け・な・いルージュマジック」など…、数々の大物ミュージシャンの音楽プロデュースを手掛け、今日まで四〇年以上業界の最前線で活動を続けてきた伝説の仕掛人が、彼らの素顔と、長く愛され、支持され続けるものづくりの秘密を明らかにする。

感想・レビュー・書評

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  • 70年代に入り、安保闘争・全共闘の政治の季節は
    潮が引くように去り、新時代の息吹を運んできたのは
    「新歌謡曲=ニューミュージック」だった。
    ガロ・拓郎・陽水・こうせつ・ユーミンらであり、
    これまでの演歌や歌謡曲=オールドに対する
    「ニュー」、「非歌謡曲」の出現。

    そんなニューミュージック黎明期の1970年、
    エポックメーキングなグループが出現した。
    ロックバンド「はっぴいえんど」。
    ただ、活動は3年と短かく、1972年に解散。
    この間に3枚のアルバムを製作。
    彼らの音楽の特徴は日本語で歌うロック、
    洋楽に引けを取らないハイクオリティな
    アレンジ&サウンド。
    今では当たり前過ぎることが、
    当時の日本ではまだ確立されていなかった。
    その背景には60年代を席巻したGS、
    グループ・サウンズの存在。
    彼らはビートルズをはじめ海外ロックに
    インスパイアされ、日本語カバーからスタートするも
    次第に商業主義に飲み込まれ閉塞していった
    苦い経験が当時の音楽界に拭いがたいシミの
    ように残っていた。
    「日本語ロック」に対する疑念と羞恥。
    その風潮に「上等じゃねえか!」と反旗を
    翻したのがはっぴいえんど。

    彼らの3年間の軌跡はその後数多くのアーティストが
    たどる道となる。
    シュガーベイブ、山下達郎、大貫妙子、竹内まりや、
    フリッパーズ・ギター…。
    そして80年代に入り、ジャパニーズポップスが
    一気に音楽シーンの真ん中へと踊り出し、
    90年代のJ-POPへと昇華する。

    このような胎動を経て萌芽した、
    ジャパニーズポップスを「作り」、
    次代に何かを「伝え残し」、
    才能と才能とを「繋げよう」としたのが
    大滝詠一と加藤和彦であったと。

    著者は大滝詠一を評して、
    「日本のポップスを生み出すために飲み込んだ果実を
    時間をかけて体内で醸造し、それを極上の酒に
    してからでないと人には味わわせようとしない人」
    という賛辞を贈る。

    加藤和彦には、
    「ヒット曲を作る芸能的な仕事をこなしながら、
    芸術的な仕事を同時進行で自在に操る敏腕
    プロデューサー」と敬意を込めて評する。

    本書はジャパニーズポップスの先導者であり開拓者で
    あった「はっぴいえんど」の理論的支柱 大滝詠一と
    音楽プロデューサーという職を音楽業界に楔を
    しっかと打ち込んだ加藤和彦を中心に据え、
    70年代の大滝詠一から90年代のフリッパーズ・ギター
    まで制作に関わってきたからこそ語れる、
    彼らの素顔と私家版ジャパニーズポップスクロニクル。
    当時を想起しなから、ニヤニヤしながら読んだ好著。

  • ほぼ1970年代のみの自叙伝。

  • 大瀧詠一、細野晴臣、山下達郎など錚々たるメンツの話がでてくるので面白い。
    Jポップを支えた人たちの苦労が垣間見える。

  • この著者は業界では有名な人らしい。はっぴいえんどの頃から音楽業界でいろいろなミュージシャンと接してきたようだ。タイトルの「作り方」は具体性はなく、60年代〜90年代初頭の日本の音楽シーン裏話的な内容。坂本龍一と清志郎の「ルージュマジック」仕掛け人だったという話は面白い。

  • 大瀧詠一、山下達郎、竹内まりやなど、私の好きな方たちの昔の話多し。

  • もっと早く牧村さんは、本を書いて欲しかった。ある年代層には、腑に落ちる事が多々ある。

  • たまたまこの新書がポケットに入っている夜、たまたま扉を開けた店が懐かしいレコードをかけてくれるバーで、たまたまディスプレイされていたLPが大貫妙子のミニヨンだったのでターンテーブルに乗せてもらったら、たまたま後から入って来たお客さんがこの春に大学を退官される方で、たまたまかかっていた「突然の贈りもの」に感激されて日本のポップスに心奪われた青春時代の思い出を恥ずかしくそうに語ってくれて、彼の友人の大貫妙子や竹内まりやのディレクターだったこの宮田さんのその後の人生(本書には書かれていない…)を知ることになりました。自分が何者であるか揺れていた時代に身体に刻み込まれた音楽は時を超え場所を超え、こんな小さなたまたまを創ってくれます。前著「ニッポン・ポップス・クロニクル」に比べ、もっと著者の半径3mに起こった極私的たまたまの備忘録なので熱さのカロリーは上がっています。著者の周りにいた実力あるミュージシャンのネットワークが浮上するためには女性シンガーが必要だった、という戦略にもハッとさせられました。ジャンルの興隆って小さな点とそれを取り巻くコミュニティの顕在化によって成し遂げられるものなのかもしれません。この歴史の物語には現代性も十分含まれていると思います。たまたまの夜、出会った大学の先生もこの時代のニッポンポップスってもっと世界に再発見されるべき力あるんだよな、と呟いていました。

  • 大滝詠一氏を焦点に合わせ、自分の音楽の仕事の歴史を書いている本。割と断片的に知っていた事もあったが、興味深く一気に読めました。

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