人工知能の核心 (NHK出版新書 511)

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制作 : NHKスペシャル取材班  羽生善治 
  • NHK出版 (2017年3月8日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140885116

人工知能の核心 (NHK出版新書 511)の感想・レビュー・書評

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  • 2016年5月に放送されたNHKスペシャル「天使か悪魔か 羽生善治 人工知能を探る」の取材をもとに、羽生さん自身が、その後に重ねた思索等を織り込んだ著書。
    羽生さんは、1996年に複数のプロ棋士へ行われた「コンピュータがプロ棋士を負かす日は?」というアンケートで、米長邦雄氏、加藤一二三氏、村山聖氏らが真っ向から否定する中、その日を「2015年」と答えていたのだそうだ。そして、人工知能の進化を肌身で感じ、それでいて、その進化を、人間を脅かすものと否定的に捉えるのではなく、人間の新たな可能性を切り拓くものと肯定的に考える人であるがゆえに、NHKは番組のレポーター役を依頼したのだという。
    「現在、電王戦を中心としたコンピュータ将棋と人間の棋士との間で起きている様々な事象が、今後、人工知能が社会で応用されていくときに想定される事態を先取りしているように思える」と語る羽生さんは、棋士がコンピュータ将棋を相手にするときに直面する大きな違和感は、「人工知能の思考がブラックボックスになっていること」と「人工知能には恐怖心がないということ」であり、人工知能が今後さらに大きな進化を遂げ、社会的な位置付けが高まったときに、それらは大きな問題となる可能性があると指摘している。
    また、目的を限定した専門人工知能の進歩は順調に進みつつある一方、何でもできる汎用人工知能の開発の道のりは緒に就いたばかりである点について、汎用人工知能とは、人間の脳はどのように知性を成立させているのか、に密接に結びついたものであり、脳の解明と汎用人工知能の実現は「タマゴが先か、ニワトリが先か」のように、いずれかが進めばもう一方も前進する関係にあるのではないかと語っている。
    そして、我々の今後の人工知能との付き合い方として、人工知能の判断はプロセスがブラックボックスであり、かつ決して100%正確なものではないことを、しっかり認識する必要があること、人間と人工知能が共存していくプロセスにおいて、いかに人間らしい価値観や倫理による判断を人工知能に備え付けさせるかが大きなテーマとなること、を挙げている。
    そして最後に、将来高度に発展した人工知能が登場して、人間の知性と比較されるようになってきたときには、人間の知性の特徴が浮き彫りになり、更に、人間も人工知能も包括するような「知性」とは何かが解明されていくのではないか、と結んでいる。
    人工知能の専門家が、その仕組みや産業への影響などを解説したものとは趣が異なり、最強棋士・羽生さんらしい切り口での、人工知能についての考察、人工知能との付き合い方が語り尽くされた、ユニークな一冊である。
    (2017年11月了)

  • 世界最高峰と言われる頭脳を持つ羽生さんがどう言う風に人工知能について考えているかがわかりやすかった。
    人間にできて人工知能にできないものは何か?知性とは何か?など、人工知能と人間の違いをあげながら人工知能とは何かについてせまっていく内容だった。

    羽生さんならではの将棋における、AIの指す手の違和感など「美意識」や「恐怖心」という言葉を使って説明されていた。
    人間とは何か?本当に難しいテーマであるが、
    あいまいなこともコンピューターによって0か1に分類できないものはないと言い切ってここまでテクノロジーが発展してきたが、実は0か1に分けられないものこそ人間らしいものなのではないかと羽生さんが言われているように、
    これからもっと人工知能研究を追求して行くことで「人間らしさ」が見えてくるのだろう。

  • 羽生さんと人工知能、なんの関係があるんだろうと思った。
    将棋ソフトだった。
    昔、父親が夜中に勝つまで必死にやっていたのを思い出した。

    洞察の深さは将棋だけでなく、人工知能への知識にも転用されている。
    技術者よりも意味合いを正確に掴み、芯を捉えているように感じる。
    それでいて一般的な言葉で話してもらえたり、
    また棋士としての経験や意見を交えて話してもらえることで、
    人工知能というものがどういうものなのかを感覚的に掴みやすいようになっていると感じた。

    さすがは羽生さんで、さすがはNHKなのかもしれない。

    (以下抜粋)
    ○さて、そのアルファ碁はどのようにしてあれほどまでにつよくなったのでしょうか。
     ハサビスさんに尋ねたところ、その直接的な要因の一つは、
     アルファ碁同士でとてつもない数の対局をこなしたからだということでした。(P.19)
    ○将棋ソフトに面白い事例があります。
     それは、ソフトの探索部分に、
     「Stockfish」というチェスの公開プログラムを使っているものが多い、という事実です。
     (P.33)
    ○彼の印象は、「努力に裏打ちされた自信家」だ。
     なにしろ毎晩夜中の十二時から朝四時までを、
     世界中の論文を読む時間にあてているという。(P.53)
    ○棋士が次に指す手を選ぶ行為は、
     ほとんど「美意識」を磨く行為とイコールであるとさえ考えています。
     筋の良い手に美しさを感じられるかどうかは、
     将棋の才能を見抜く重要なポイントなのです。(P.75-76)
    ○「音楽というのは数学的な処理がしやすい分野であり、
     そこがバッハ風、モーツァルト風などの作曲ソフトを作りやすい理由ではないか」(P.139)
    ○しかし、私は、「美意識」には、「時間が」大きくかかわっているように思うのです。
     (P.142)
    ○実は、自然界では、むしろ生物の個体それぞれが遺伝的に多様性を持つことが、
     進化のカギとなっています。
     とするならば、全員が同じ選択をすることは、
     むしろ全体から見ると、多様性が失われていて、
     かえって進化が止まってしまう気もするのです。(P.206)
    ○形成判断のような勝負の感を鍛えるためにと、
     目先を変えてラクビーやテニスなどスポーツの試合を観戦したりもしています。(P.209)
    ○羽生さんの負けが続くと、
     「いよいよ衰えたか」「世代交代か」という文字があちこちで踊るが、
     私は少し違った見方をしていた。
     失敗してでもつかみたい何かがあるのではないかーー。(P.227)

  • 羽生さんがいかに知的で将棋以外の物事に造詣が深いかが分かった。

  • 羽生善治の視野の広さに圧倒された。
    「美意識」の根底にある「安心」「安定」と「組み合わせ」、わずかな「破壊的イノベーション」、そして「時間の流れの文脈を読む能力」。各々相反するものであるようであって、相反するからこそのバランスが「美意識」に繋がっているのかもしれない。
    だから美意識は時期によって大きく変化していく。


  • AIの現状を、棋士視点でのAI観をバランスよく織りまぜて論じた一冊。
    専門的なことは読んでも理解できないので、このくらい簡潔に書かれているのが丁度良いです。

  • 興味深い見方がいくつも示されていて、勉強になりました。将棋という多くの人に比較的身近なことに関わっている方の話なので、分かりやすかったです。哲学者に書いてもらうと、さらに多くの事柄を提起してくれそうですが、哲学は馴染みが薄いので、とっつきにくい内容になるかもしれませんね。

  • 人間の強みは、汎用性思考のプラットホーム 人工知能には恐怖心がない 人間にあって、人工知能にないものは美意識 ロボットには五感がない 人工知能には時間の概念がない 自然の中で安定したものを美しいと感じることが、人類が過酷な生存競争を勝ち抜いていく上で、有利だったからなのかもしれません

  • 将棋の視点を活かした人工知能論。人口を通じてみた人間らしさの再発見と言ったほうが本質的かもしれない。

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人工知能の核心 (NHK出版新書 511)の作品紹介

二〇一六年三月、人工知能の囲碁プログラム「アルファ碁」が世界ランクの棋士を破った。羽生善治は、その勝利の要因を、「人工知能が、人間と同じ"引き算"の思考を始めた」とする。もはや人間は人工知能に勝てないのか。しかし、そもそも勝たなくてはいけないのか-。天才棋士が人工知能と真正面から向き合い、その核心に迫る、"人工知能本"の決定版。

人工知能の核心 (NHK出版新書 511)はこんな本です

人工知能の核心 (NHK出版新書 511)のKindle版

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