「司馬遼太郎」で学ぶ日本史 (NHK出版新書 517)

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  • NHK出版
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  • / ISBN・EAN: 9784140885178

感想・レビュー・書評

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  • 歴史学者・磯田道史氏が、国民作家として愛され続けている司馬文学作品を通して、戦国時代の下剋上、幕末維新の大転換、明治から<昭和>という「鬼胎の時代」を歩んだ日本史(日本人)の本質を浮かび上がらせ、無謀な戦争に突入した要因に迫った歴史研究書。日露戦争にかろうじて勝利を手にした明治人の精神が目指した「坂の上の雲」。その坂を下った所に<昭和>という恐ろしい泥沼が潜んでいた。軍部はドイツの作戦思想(参謀部)に傾斜、大日本国憲法で天皇に国政や統帥の執行責任がない「統帥権」を掌握、日本の迷走と悲劇が始まった、とある。

  • ブクログで評価が高かったので読んでみました。
    歴史家・磯田道史さんの本。

    司馬文学なんていわゆる司馬史観だ!っていう本だと嫌だなと思いながら手にとりました。結果、全く違いました。
    司馬先生を「歴史をつくる歴史家」とし、どういうことかというと強い浸透力を持つ文章と内容で書かれ、読んだ人間を動かし、次の時代の人間に影響を及ぼした歴史家だとしています。

    また、司馬文学は、時代のダイナミズムや社会の変動を描く「動態の文学」であり、激動の時代を生きる二十一世紀の私たちにとても重要な示唆を与えてくれると言います。

    さらに、司馬文学の背後には、HowよりWhyがあり、それは司馬先生の戦争体験が大きく、「どうしてこういう国になってしまったのだろう?」という疑問が彼に小説を書かせたとしています。

    以上書いたのは序章にすぎず、本書では司馬文学を深く分析しています。示唆に富む指摘が多く、漫然と司馬文学を読むよりもよっぽど良いと思いました。司馬文学を好んで読む方には手に取っていただきたい本です。

  • 著者は、本書の中で歴史文学は、大きく次の三つに分けられると述べている。すなわち「歴史小説」「時代小説」「史伝文学」に分けられると。

    例えば、司馬遼太郎の小説を読むときに、それがどのジャンルのものなのかなんて意識したことがなかった。恥ずかしながら、「史伝文学」なんて言葉はあまり耳にしたことがなかったので、まぁ「歴史小説」だろ・・・と大雑把に思っていた。

    著者によれば、より史実に近い順に、「史伝文学」「歴史小説」「時代小説」となるそうだ。そして、司馬遼太郎の小説は、前の二つに属すると。

    なるほどなるほど。そのことは、司馬遼太郎の小説から、歴史を学ぶことができることの裏付けとなる。

    しかし、司馬遼の小説から学ぶには、司馬遼太郎の視点を知っておかねばならないと本書で著者は教えてくれる。本書では、その視点をわかりやすく教えてくれており、本書は高品質な司馬遼ガイドブックと言えるかもしれない。

    ともかく、本書を読むと、司馬遼太郎の小説が無性に読みたくなる。確かめたくなる。

    これまで正直、司馬遼太郎の視点の凄さを意識することなく読んでいた。こればどちらかというと、「時代小説」の読み方だろうな。

    せっかく「歴史小説」であり、「史伝文学」なのであれば、ちゃんとその史観を知って読むほうがいいですよね。・・・そういうことを知ることができたことは、本書を読んだ大きな収穫だと思います。

  • 歴史が基本的に好きで、当然司馬遼太郎の本は
    学生のころからいろいろ読んできている私にとっては、
    最近よく露出している著者が書いた司馬遼太郎に関連した
    日本史というテーマは読みたくなるのは当然かもしれません
    でした。
    内容としては、単に史実の内容だけではなく、日本人論。
    未来に対しての提言。など重要な話がたくさんあったと
    思います。今の日本においても本当の意味でのリアリズムが
    機能しているのか?情念的な一過性のポピュリズムが
    蔓延して変な方向に走っていないのか?が本当に
    問われているのではないかと思います。

  • 本書は2016年3月に放送されたNHK「司馬遼太郎スペシャル(100分de名著)」の内容に加筆、再構成したものであるが、イメージはかなり違った作品になっている。
    つまりより歴史家としての司馬遼太郎にスポットを当てている。

    坂本龍馬の「龍馬」と言う名を「竜馬がゆく」と文字を使い分けているように、司馬本人は自分はあくまで小説家であって、歴史家ではないと言っているが、世間は「司馬史観」としてあたかも歴史家として見ているという面白い現象がある。

    ただ歴史学者と言われる大学教授が「司馬遼太郎」を論じることはなかったが、大学生は大学教授の本よりも司馬遼太郎の本を読んでいる。
    そういう私自身を翻ってみても、学校での日本史の授業は眠いばかりで頭に入っておらず、日本史の知識は司馬遼太郎の小説やエッセイ・史論からかなりの部分を学んだという記憶がある。

    その意味で本書は、歴史学者である著者が「司馬遼太郎」を正面から取り上げ、司馬作品から入って、体系的に戦国時代から昭和までの日本史を論ずるという面白い試みである。

    著者は、「司馬遼太郎は、作家であると同時に、歴史について調べ、深く考えるという意味においては歴史家でもありました。しかし他の歴史家と、司馬さんは一線を画しています。司馬さんは、ただの歴史小説家ではありません。『歴史をつくる歴史家』でした。」
    「戦争体験を持つ司馬さんは、『なぜ日本は失敗したのか』『なぜ日本陸軍は異常な組織になってしまったのか』という疑問から、その原因を歴史のなかに探りました。」

    ということで、時代的には「国盗り物語」から昭和に至るまでの司馬作品(小説・エッセイ含む)を通じて、司馬遼太郎が日本の歴史をどのように捉えていたかを探る旅に導いてくれます。

  • 20代のころ司馬遼太郎を読んだ時期があって、日本史を知った気になっていた。
    司馬史観とまで言われる歴史観も昨今では色々異見が出ていて、司馬遼太郎も結局は自分の生きてきた範囲の中での発想だったと云うのが最近のネガティブサイドな評価だろう。
    この磯田氏の本で、その頃(小説が発表された時期)はそういう物語、史観が今より共感を得る時代背景も大きかったのだろう。
    今後、司馬遼太郎を読むことは無いだろうが、一時期夢中になって読んでいたことを懐かしく思う。

  • 読友さんのオススメ。とても面白かったです。司馬遼太郎の作品はまだあまり読めていないので、読みたい本も増えました。「花神」、先日DJ日本史で大村益次郎の話題が出たのでますます読みたいです。自己の確立と、共感性を磨こうと思いました。ナショナリズムとパトリオティズムの違いについて知ることも出来ました。司馬遼太郎が日本の歴史をどのように捉えていたか、この本を踏まえて、司馬遼太郎の作品を再読するのも面白いだろうなと思います。ずっしりした長編が多いので気合いは要りますが。。

  • 司馬遼太郎さんの著者で日本史の面白さに嵌ってもう三十数年…
    色々な新説が発見されて歴史の見方に変化が起きても
    司馬遼太郎さんが日本人に送り続けてくれたメッセージの重要性も、小説としての面白さも色褪せない!

    今の若い世代に読んでほしいから、まず磯田さんの解説で司馬遼太郎さんを知ってもらえたら司馬遼太郎さんファンとして嬉しい(^^)

  • 父の書棚にあった本。
    とても読みやすく「司馬遼太郎」作品を解説している。
    磯田道史氏の本を読んだのはこれが初。
    「花神」について紹介されているが、早速、購入し
    2冊目を読んでいる最中である。

    司馬遼太郎から見た
    「なぜ日本が無謀な太平洋戦争に突き進むことになったのか」
    がわかる。
    父も太平洋戦争時代を生きていた。
    これを読みながら共感する部分があったのではないかと推察する。
    司馬氏は兵隊として、戦争へ行かなければならなかった。日本の戦況状況を知りながら戦う事の恐ろしさについて紹介されている。
    昭和初期生まれの父は、よく銃を持って立川から都心へ向け行進したようである。父はそれを誇りに思っていた時もあったようだ。運良く兵隊として戦うことはなかったが。

    • yhyby940さん
      こんばんは。本棚のフォローをして頂き、ありがとうございます。励みになります。私が歴史小説を好きになったのは司馬遼太郎さんが、キッカケです。司...
      こんばんは。本棚のフォローをして頂き、ありがとうございます。励みになります。私が歴史小説を好きになったのは司馬遼太郎さんが、キッカケです。司馬遼太郎さんには、もっと長生きして頂き今の日本の状況を、どのように感じられるのかをお聞きしてみたい気がいたします。蛇足ですが私の叔父さんは昭和20年1月に神風特攻隊として20歳で戦死いたしました。父は生前、そのことを誇りに思っていました。
      2023/09/09
    • ココウメちゃんママさん
      コメントありがとうございます。私も司馬遼太郎氏の作品で歴史小説を読むようになりました。最近、読めていなかったので、ブクログをキッカケにまた少...
      コメントありがとうございます。私も司馬遼太郎氏の作品で歴史小説を読むようになりました。最近、読めていなかったので、ブクログをキッカケにまた少しずつ読もうかと。叔父様は特攻隊だったのですね。うちの父もそうですが、今よりも日本人としての誇りを持っている方が多かったように思います。
      2023/09/10
    • yhyby940さん
      ご返信ありがとうございます。叔父さんの遺書が残っているのですが、20歳の若者とは思えない内容です。両親への感謝と弟である私の父に対する気遣い...
      ご返信ありがとうございます。叔父さんの遺書が残っているのですが、20歳の若者とは思えない内容です。両親への感謝と弟である私の父に対する気遣い。思い残すことは何もありませんと言う言葉。誇りを感じさせてくれます。
      2023/09/10
  • 司馬遼太郎ファンであったので、非常に読みやすかった。主観をなるべく排して、本文を引用して書かれているので、納得できる内容だった。

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著者プロフィール

磯田道史
1970年、岡山県生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(史学)。茨城大学准教授、静岡文化芸術大学教授などを経て、2016年4月より国際日本文化研究センター准教授。『武士の家計簿』(新潮新書、新潮ドキュメント賞受賞)、『無私の日本人』(文春文庫)、『天災から日本史を読みなおす』(中公新書、日本エッセイストクラブ賞受賞)など著書多数。

「2022年 『日本史を暴く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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