所有と国家のゆくえ (NHKブックス 1064)

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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140910641

作品紹介・あらすじ

社会の不平等はなぜ生じるのか?その原点を、「自分で作ったものは自分のもの」というロックに遡る利己的で排他的な「所有」の考え方に見出し、それに替わる「他者尊重」の清新な所有論を展開する。また「市場」が構造的に貧困を生むカラクリを明らかにし、政府の市場への介入や「分配」の理論的根拠を示す。国家の仕組みや人々の権利を原理的に考察しなおし、マルクス主義や権力論など社会再生思想の分析を通して、「もう一つの」資本主義を探究する注目の書。

感想・レビュー・書評

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  • いろんな人がいろんな事を考えているんだなぁ、と、愚鈍の輩的には間抜けな感想しか吐けませんが…

    新天皇即位に絡めていえば、日本国の人格的同一性を皇室が保証しているのか、ってのが気になるのだけど、そういう話はでてこないのね、アカデミズム的にはアンタッチャブルなのか…

    立岩先生のスベカラク連発には苦笑。

  • <本全体、あるいは各章ごとの概要>

    <個人的な知識・ターム>
    * 覚えておきたい事(本全体の主張と関係なくともよい) + キーワードで興味のあるもの
    * 短い説明とページを記入
    <引用>

    <自分の見解>
    * 読後感・意見・反論・補足など書きたいと思ったこと

  • 【目次】
    まえがき(二〇〇六年七月 白金の研究室にて) [007-011]

    第1章 所有の自明性のワナから抜け出す 013
    1.1 社会の基礎に所有がある 014
      福祉国家の概念を壊す
      所有という根本問題
      いまある仕紐みを批判する
      他者から始まる所有論
      政治・経済の基本要素
      私有に対する別の私有
      「みんな」を起点にした議論の限界
      批判・否定のしかた
      分けてしまえばよいもの/分けられないもの
    1.2 どこまでが自分のものか 037
      人とものとの区別
      所有される対象とは何か
      身体の捉え方
      切離できないものが分配されない
      もっと繊細な決まりがある
      左翼はどれぐらいかっこ悪いか

    立岩――「分配する最小国家」について 052
      ◆1 強制力が要求される理由
      ◆2 国家がなすべきこと①加害の抑止
      ◆3 国家がなすべきこと②分配
      ◆4 分配の範囲は国家に限らない
      ◆5 三つの次元でなされる分配
      ◆6 国家がしなくてもよいこと
      ◆7 供給の機構を変える
      ◆8 人の違いに応じた分配の必要とその方法
      ◆9 大きい/小さいの対立は虚しい
      ◆10 成長を目指さない
      ◆11 まず立ち位置を決めようとする
      ◆12 意思は尊重するが合意を必要としない
      ◆13 漸進主義・改良主義
      ◆14 まずできること
     補記   
      「分配する最小国家」ということば
      分配に応ずる「動機」と生産に向かう「動機」について
      道具は道具の場所に置く
      常に別の欲望がある

    第2章 市場万能論のウソを見抜く 065
    2.1 市場のロジックを検証する 066
      人が必ずもつべきもの
      人的資産の二重性
      「売る」と「貸す」の区別
      譲渡できるもの/できないもの
      区別をどのようにつけるか
      平等主義・保守主義市場のダイナミズム
      経済学が想定する初期条件
      取引の自由は選べない
      現状は現状維持なのか
      ニつのタイプの社会モデル
      市場から所有へのフイードバック
      市場社会の不幸な事故
    2.2 分配の根拠を示す 098
      結果の平等はなぜ評判が悪いのか
      歴史原理と状態原理
      嫉妬感情の正当性
      再分配という発想市場
      原理主義の舌矛盾
      社会のダイナミズムと安定性
      「物価」は安定していた方がいい
      市場に対する制限
      国家がやるべき三つのこと

    第3章 なぜ不平等はいけないのか 125
    3.1 平等をどのように規定するか 126
      分配のために、まず国家は要る
      分配的正義と搾取論
      ローマーの「機会の平等」論
      機会の平等と結果の平等
      効用の個人間比較
      フェアネスとは何か
      ゲームのルールにみるフェアネス
      労働を分割する
      能力の差をどう組み込むか
      アソシエーショニズムとは何か
      「国家が」でも、「自分たちで」でも、うまくいかない
      国境を超えた分配
    3.2 マルクス主義からの教訓 161
      マルクス主義の二枚舌構造
      分析的マルクス主義者の青写真主義
      何をするか、しないかを考える
      乱暴に考えないこと
      実行可能性について
      合意は大切だが合意でしかない
      体制変革論の気分的な根拠
      搾取理論の間題点
      不平等こそ問題である
      人間改造思想への危倶
      マルキシズムおよびマルクス
      変革のもとについて
      世界主義
    3.3 権利は合意を超越する 187
      ノージックの権利論
      規約主義と規範主義
      思いを超えてあってほしという思い
      ノージック、ロールズ、立岩理論の違い
      経済学の世代間取引モデル
      次世代の問題をきちんと取り込む

    第4章 国家論の禁じ手を破る 207
    4.1 批判理論はなぜ行き詰まったのか 208
      国家論の歴史
      「国家道具説」から「相対的自律性」へ
      批判理論への閉塞感
      フーコー権力論の衝撃
      悪者探しの無効化
      フーコーの隘路から抜け出す
      国家は単一の実体ではない
      仮想から始める国家論
    4.2 国家の存在理由 228
      なぜ国家があるのか
      ルーマンの憲法学的な構想
      権利の基底性
      実定法の外側にはみ出すもの
      不平等批判の正しいかたち
      肉体レべルに根ざす不平等感
      ドゥウオーキンの補償理論
      本当に国家に責任はないのか
      責任を問うことの不毛さ
      法的に呼び出される国家
      国際秩序について

    稲葉――経済成長の必要性について 259
      なぜ景気はよい方がいいのか
      実体のない「国際競争力」
      環境問題の解決に不可欠な経済成長
      今後のシナリオ
      市場経済を補完する社会主義

    立岩――分配>成長?――稲葉「経済成長の必要性について」の後に 269
      ◆1 反対がない方を、は採れない
      ◆2 絶対値と相対値
      ◆3 生産・成長について
      ◆4 効果について
      ◆5 分ける前に増やさねばという主張について
      ◆6 インセンティブとしての格差という論に対して
      ◆7 にもかかわらずなぜか、の確認

    注釈 [279-294]
    参考文献 [295-297]
    あとがき(二〇〇六年七月 長かった梅雨が明けたように思われる日に 立岩真也) [299-301]

  • 「市場の前には所有がある」。当たり前だけど、あ、なるほどと思わせてくれる視点を提供してくれたので、良かった。

  • 131109 中央図書館
    ペラペラ捲ってみた時は、面白そうな対談録だと思ったのだが、もう少し身を入れて読み始めてみると、自分としては空想理論にはついていけないと感じた。
    ヒトも社会もすべて自然と物理法則の制約の中にあり、それ以上のものではないというところから出発しないとなあ。こういう文系畑の人々は「自分と言う認識可能な個人」から出発してミクロ視点の議論からマクロへ敷衍するような感じであるべき社会を語るんだけど、そんなことじゃねえだろ、と突っ込みたくなる。

  • [ 内容 ]
    社会の不平等はなぜ生じるのか?
    その原点を、「自分で作ったものは自分のもの」というロックに遡る利己的で排他的な「所有」の考え方に見出し、それに替わる「他者尊重」の清新な所有論を展開する。
    また「市場」が構造的に貧困を生むカラクリを明らかにし、政府の市場への介入や「分配」の理論的根拠を示す。
    国家の仕組みや人々の権利を原理的に考察しなおし、マルクス主義や権力論など社会再生思想の分析を通して、「もう一つの」資本主義を探究する注目の書。

    [ 目次 ]
    第1章 所有の自明性のワナから抜け出す(社会の基礎に所有がある;どこまでが自分のものか)
    第2章 市場万能論のウソを見抜く(市場のロジックを検証する;分配の根拠を示す)
    第3章 なぜ不平等はいけないのか(平等をどのように規定するか;マルクス主義からの教訓;権利は合意を超越する)
    第4章 国家論の禁じ手を破る(批判理論はなぜ行き詰まったのか;国家の存在理由)

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  • 図書館

  • 対談で読み易い文体とはいえ、前提となる社会倫理学の知識が必要。社会倫理学者、経済哲学者等、論者名が頻出。ロールズ、ノージック、ドウォーキン、A・セン…と聞いて、???であれば、先に稲葉氏の『「資本」論』とか、社会倫理学の入門書を読んでおかないとツライ気がする…。とはいえ、対談の内容はむちゃくちゃ面白い!筆者名や専門用語は、一応、巻末に簡略な紹介がある点は良心的。両者の力点や議論の食い違いも読み応えアリ。あくまでも専門的に走っている点が目に付くので、その点で★−1かなあ(思うに、稲葉氏が悪い…)。

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著者プロフィール

1963年、東京都生まれ。一橋大学社会学部卒業。東京大学大学院経済研究科博士課程単位取得退学。岡山大学経済学部助教授を経て、現在、明治学院大学社会学部教授。 専門は、社会哲学。 著書に、『経済学という教養』(東洋経済新報社、増補版/ちくま文庫)、『「資本」論』(ちくま新書)、『「公共性」論』(NTT出版)、『社会学入門』(NHKブックス)『不平等との闘い』(文春新書)、『宇宙倫理学入門』(ナカニシヤ出版)、『政治の理論』(中公叢書)など多数。

「2018年 『「新自由主義」の妖怪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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