生きるための経済学 〈選択の自由〉からの脱却 (NHKブックス)

著者 :
  • NHK出版
3.56
  • (13)
  • (23)
  • (24)
  • (5)
  • (3)
本棚登録 : 338
感想 : 28
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140911075

作品紹介・あらすじ

「消費依存」「ワーカホリック」「バブル現象」「環境破壊」…現代社会の生きづらさはどこからくるのか。出来るかぎり自由であるために選択肢を増やそうと、私たちは貨幣に殺到し、学歴や地位の獲得に駆り立てられる。アダム・スミスから現代の市場理論にまで通底する、"選択の自由"という希望こそが現代社会を呪縛しているのだ。市場(イチバ)で飛び交う創発的コミュニケーションを出発点に、生を希求する人間の無意識下の情動を最大限に生かすことで、時代閉塞を乗り越える道を探究する、著者渾身の市場経済論。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 異色の経済学者によるユニークな経済学書
    市場理論は相対性理論、熱力学第二法則、因果律を無視する「錬金術」であると喝破する。
    ・選択の自由 批判
    ・創発とは何か
    ・ハラスメントと生命のダイナミクス
    ・共同体/市場の虚構
    ・ネクロエコノミーからビオエコノミーへ

    内容は多岐にわたり決してわかりやすいわけではないが、現代の難問/困惑(アポリア)をときほぐすために有益なヒントを得た気がする。
    さらに安冨ワールドを探索してみたい。

  • 図書館で借りて、イッキに読んだ。
    クレイジーすぎる。読み出したらもう止まらない。

    フリードマンの文章を引用して、その理論の前提となっている事項のアイマイさから、経済学が科学ではなく錬金術だと言い切るのに共感。

    オレも、最近のマネタリストたちの異常な金融緩和を見てると、経済学は錬金術だとしか思えない。財政赤字で首が回らなくなった政府と、経団連のトップが、自分たちの都合の良いように勝手に貨幣の価値を変えたり、為替を操作したりするなんて。そんなイカサマを科学とは呼ばない。

    ポラニーとチューリングが同じ大学の同僚だったという話も面白い。二人とも、考え方がまるで違うのに、お互いに、刺激しあっていて仲も良かったって。

    そして、途中から、フロムの話とか出てきて、経済学から社会学みたいな話にどんどん脱線していって、最終的には「これ、何の話?」ってカンジの、人生相談みたいになってゆく・・・・・。

    経済学の本で、元妻の悪口を言ったりする?
    それから、母親の悪口を言ったりする?
    とてもヘンなカンジがしたし、母親に対するコンプレックスが強すぎて気持ち悪すぎ。
    元妻のモラルハラスメントに追いつめられて、自殺願望が強くなり、鶴見済の『完全自殺マニュアル』を読んでた、とか。
    オレも鶴見済は好きだけど。

    とにかく、この人は、ADHDだ。
    うっかりミスが多い、というのも、この人の脳の特徴だと思う。よく、これで、東大教授とかなれたよね。不思議だ。

    ものすごい狂気。おもしろい。

    • mkt99さん
      lacuoさん、こんにちわ!(^o^)/

      自分は経済学は占星術と同類だと思っています。(笑)
      どちらもそれなりに理論があるのだろうし...
      lacuoさん、こんにちわ!(^o^)/

      自分は経済学は占星術と同類だと思っています。(笑)
      どちらもそれなりに理論があるのだろうし。
      ただ結局はとどのつまり、当たるも八卦、あたらぬも八卦のような感じではないですかね?(笑)
      2016/02/17
  • 自由という言葉ひとつとっても説明する言葉が浮かばない
    でも自由という言葉は普通に使っている
    言葉によるコミュニケーションを主として生活しているのに言葉に無頓着であることはかなり危険な気がする

  • 現代経済学をその前提から根本的に批判し、さらには現代人の生きづらさの正体に迫ろうという、野心的で刺激的な論考。
    合理的な経済人は市場の論理に従ってすべてを選択するという自己矛盾を孕んだ「自由」選択の理論は、人間の行うことはすでに神によって決定されているのであり、自由意志によって選択しているつもりでも神によって事前に決定されたことをなぞっているに過ぎないというプロテスタンティズムの神学と構造的に一致しているという指摘は鋭い。
    そしてこのように人間の自尊心と自立心とを殺す思想は、失われた自我を補塡するする行為に人間を駆り立てる。これが「虚栄」であり、人間を限りなく利己的にする。このとき、他者は自分の道具となる。
    ならばどうするか。
    著者は、生命に引き寄せられる自分の感覚を肯定し、自らを愛せ、という。そのとき人は積極的な意味で自由となり、そのように自由になった人には「創発」が満ち溢れると。
    経済学を根本的に再構築することで、人はいかに生きるべきかを摑みとろうとするまさに「生きるための経済学」の提唱である。

  • 経済学の前提には「選択の自由」がある。しかし現実の人間の意思決定は意識的なものばかりではなく、無意識の判断もあり「選択の自由」は実行不可能。不条理なもの。自由意志ではないために責任逃れを許す。自己欺瞞を生む。私たちは自由になるため選択肢を増やそうとして、貨幣に傾倒し、学歴や地位の獲得に駆り立てられている。これは「選択の自由」による呪縛。近代人の自我は真の自我でなく社会的自我。期待されている社会的役割を演じているに過ぎない。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/62358

  • 追っかけるのがとても大変。テキストの読みもこの人ならではのところも。
    フィンガレットの、責任は今の自分の在り方に対するもので過去に対してではない、免責はあり方を反省し将来に向けて踏み出しそこから抜け出す道をふさぐことになる。ひとたび学習しなくなると再学習の道が閉ざされる。ハラスメントの源泉としての他者からのハラスメント。マーケティングとはがいふから何を求められているのかを察知しそれに作動を適応させること。倫理的な恥。間違いを自分があらためられるかどうか。実用主義的な恥。共同体の崩壊は不安の源泉ではない。貨幣は選択権の束。仕事に没頭することが悪ではない。大切な人と自分に害がない限り。怒りを表明できる場と力。
    いまだとどんな文章になるのだろうか。

  • 安富さんの仕事に興味をもって一冊読んでみた。その論説よりも、所々挿しはさまれる「身近な例え」から感じられる思考の癖みたいなものが面白かった。「論語」や「ハラスメント」という、他の安富さんの著書のテーマになっているものも出てくる。

  • 生きるための経済学 安冨歩 NHKBOOKS

    昔のことだけれど
    地下鉄の駅で「つきじしじょう」と書かれているのに
    いつから「いちば」で無くなったのかと
    びっくりした覚えがある

    間宮陽介は
    イチバとシジョウの違いについて
    イチバが目に見える場所を意味すのに対して
    シジョウは抽象的で目に見えない概念だとした
    アダム・スミスの詭弁によって学問が形成された

    日本語の責任は立場から生じるのであり
    選択から生じるのではない
    自由には責任を伴うと言われても日本人にはしっくりこない
    人間から縁を外して自由にするとタガが外れてしまうから
    縁という責任をもたせる必要がある

    利己心とは虚栄心であり
    虚栄心とは他人が見る自分に振り回される姿である

    疑うことに依拠せず信じることに依拠して独善に陥らず
    心理を探求する道である (ポラニーやフロム)

    経済現象という事実はない
    利己的な損得感という屁理屈を
    合理的な学問に仕立てたのが経済学である
    恋愛も最適化で成り立っているという屁理屈で
    ノーベル賞を取っている人もいる
    人間を集めただけでは群れでしかなく
    コミュニケーションの質を上げることで社会が生まれる
    手段でしかないお金を目的にしてしまうと
    コミュニケーションが壊れる

  • 経済学、苦手でした。お金の話がまず苦手、円高は数字が低くなる??レベルで逃げ回ってきました。でも、日本国の借金が 1,000 兆円と聞かされると、「それは人間のスケールじゃない」と怒りが沸き、貨幣のくせに人間を殺すのか!と挑む気持ちになった。で、頭のいい人に教えを乞う。日本国の借金への処方箋などではなく、「生きるため」を証明するべく西洋的自我の病根から鮮やかに切り出されエキサイティングです。いわゆる経済学では全然ない…。もう一回読む。面白いです(2019-07-25)

全28件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

東京大学東洋文化研究所教授。1963年、大阪府生まれ。
著書『「満洲国」の金融』『貨幣の複雑性』(以上、創文社)、『複雑さを生きる』(岩波書店)、『ハラスメントは連鎖する』(共著、光文社新書)、『生きるための経済学』(NHKブックス)、『経済学の船出』(NTT出版)、『原発危機と「東大話法」』(明石書店)、『生きる技法』『合理的な神秘主義』(以上、青灯社)、『生きるための論語』(ちくま新書)、『満洲暴走 隠された構造』(角川新書)ほか

「2021年 『生きるための日本史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

安冨歩の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×