思考する言語(上) 「ことばの意味」から人間性に迫る (NHKブックス)

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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140911303

作品紹介・あらすじ

人は思考の基本となる概念を生得的にもつ。それは「所有」「移動」「目的」などの概念で、言語に組み込まれ、単語の「意味」や、単語と構文の結びつきを規定し、また、これらの概念を柔軟に組み合わせて人は思考する。give、put、takeなどのベーシックな動詞の概念を手がかりに、文法を知らない幼児が複雑な動詞構文をどのように習得し、人の心がことばの意味をどう表象するのかを明らかにする。極端な生得説や語用論、言語決定論を実証的に退け、思考と言語のダイナミックな関係を解き明かす。

感想・レビュー・書評

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  • 人の心はことばの意味をどう表象するのか。ベーシックな動詞の概念を手がかりに、極端な生得説や語用論、言語決定論を実証的に退け、思考と言語のダイナミックな関係を解き明かす。【「TRC MARC」の商品解説】

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  • 情報を考える新しい切り口by先生

  • 1096円購入2012-01-19

  • ネイティブが奇異に響く構文をノンネイティブはどのように見分ければよいのでしょうか。ネイティブが無意識の内に把握している内容所格構文と容器所格構文との違いを、ノンネイティブはどのように身に着ければよいのでしょうか。本書で奇異に響く構文として挙げられていた<I coiled the pole with a rope>など、平気で書いてしまいそうです。

    特許において権利範囲が定められるクレームの表現ついては精密さが求められます。ノンネイティブにとって最も取っ付き難い時制を気にする必要性は少ないと思います。しかし、機能的な表現をする際に使用される動詞ともなればそうは行きません。

    <光る>一つでも様々な表現があり、権利範囲を規定するのにどの言葉が適切か判断することはかなり困難であると思います。そもそも、ノンネイティブであれば言葉のストックが少ないことが一般的であると思われるので、迷う必要すらないかもしれません。

    パテントエンジニアにとっては何よりも<書く能力>が求められるます。文章を書くには様々な言葉が必要です。とにもかくにも語彙を増やすべく多種多様な文献(和洋問わず)に接するべきだと思います。

  • ピンカーは幼児の言語獲得の専門家、この本は人間がどのように世界をとらえるかということを言語を通して考察している。第一章は全三巻(日本語訳)の総論で、ことばと思考、ことばと現実、ことばと社会、ことばと感情、ことばの人間関係などについて、問題点を列記している。第二章では動詞構文から人間本性の考察をおこなっており、人には一般化をする、ある一定の一般化はさける(動詞の不規則変化など)、その例外は予測不能である、子供は間違いを全て直されるわけではないという事実から出発して、地と図の反転による全体効果、変化と移動、移動と所有、受益や被害、使役構文と自由意志などを考察し、基本的には言葉の背後には認知や物理的理解や因果関係など「思考の言語」があると指摘している。つまり言語の言語があるとするのである。ピンカーは自らの立場を概念意味論とよび、第三章では概念生得説・ラディカル語用論・言語決定説と比較をしている。極端な概念生得説は単語の意味は原子のように合成不能で、5万個の概念をもって人は生まれてくるとしている。ラディカル語用論は語に意味などなく、その場で意味はつくられるという。「奥のハムサンドが会計だって」というウェイトレスの言葉などが例にあがる(ハムサンドは人を指す)。言語決定論はサピア・ウォーフの仮説とそれを新たにした新ウォーフ主義で、簡単にいえば「言葉によって人は思考するから、指し示す言葉がなければ、それについて思考はできないとする説であり、左右の概念がない言語を話す人々の行動などが例にあがっている。ピンカーによればこの三つの学説は言語の一面しかとらえていないとされる。極端な生得説は「思考の言語」から意味を分割できるので、単語原子説はなりたたず、したがって5万もの生得概念は必要ないとする。ラジカル語用論については語がその場で定義されるだけなら、言語は新しい考えを人に伝えることはできないとする。コンピュータによる単語ネットワークからの意味解釈シュミレーションも単純な例以外はだめだそうだ。言語決定論については人類学者による実験のあいまい性を指摘し、言語はそもそも「こころ」の解釈をまって意味が生じるもので、言語がこころを規定しているのではないことを強調している。概念意味論はこの三つの立場を調停するものである。

  • 大好き。

    生まれてから今まで、もやもやしていたことが、この1冊にすべて書いてあった。

    個人的には下巻より上巻が好き。
    たまたま手にできて、良かった。

  • 英語の動詞を空間認知などの視点から分類しなおすと、やはりそこには規則が見られる。ではこのような認知機能が万人にあると仮定するなら言語決定論には根本的な誤謬があるのではないか、という言語学者に対して言語学と論理、科学の視点をフルに応用しながら一撃を加えた一書。

  • [図書館]
    立ち読み:2010/12/27

  • 言語という窓から人間の認知の仕組みを覗いていく興味深い一冊。上巻では、英語の様々な動詞構文をとりあげ、そこから人間の持つ思考の要素として物質・空間・時間・因果を抽出していく。このプロセスは、英語が得意な人が読むと本当に面白いかも。たぶん、なんとなく感じていたことがクリアに説明されていく感じなんだろう。残念ながら私の英語力ではそういう感覚は味わえないのだけど、それでも構文を手掛かりに人間の認知の仕組みを覗いていく展開は面白かった。
    しかし、一番興味深かったのは、むしろその後の展開。自分に対立する三つの理論「極端な生得主義」「ラディカル語用論」「言語決定論」への反論が、鮮やかな手並みでなされていて、一読の価値がある。特に最後の「言語決定論」(言語が人間の思考の枠組みを決定するという仮説)は広く人文系に流布していて、下手すると現代文の教科書・参考書レベルでもまことしやかに語られている例もある。国語科の教員はここだけでも目を通しておくと良い思う(ちなみにここで論駁されていたツェルタル族の空間認知の話は、私も以前「もし右や左がなかったら」という本で大変興味深く読んで知っていたのだけど、ここでの反論を読むとピンカーに軍配を上げざるを得ないと思った)。

  • [ 内容 ]
    人は思考の基本となる概念を生得的にもつ。
    それは「所有」「移動」「目的」などの概念で、言語に組み込まれ、単語の「意味」や、単語と構文の結びつきを規定し、また、これらの概念を柔軟に組み合わせて人は思考する。
    give、put、takeなどのベーシックな動詞の概念を手がかりに、文法を知らない幼児が複雑な動詞構文をどのように習得し、人の心がことばの意味をどう表象するのかを明らかにする。極端な生得説や語用論、言語決定論を実証的に退け、思考と言語のダイナミックな関係を解き明かす。

    [ 目次 ]
    第1章 ことばは世界をどう捉えるか―五つのトピックから(ことばと思考のかかわり
    ことばと現実のかかわり ことばと社会のかかわり ほか)
    第2章 動詞構文から見える人間本性―概念意味論のダイナミズム(動詞と構文の複雑な関係 幼児はいかに所格構文を習得するのか 地と図の反転―認知の柔軟性 ほか)
    第3章 こころは「意味」をどう表象するか―三つの理論の検証から(五万個の生得的概念?―極端な生得主義 「動詞の意味」は分解できる―極端な生得主義への反論 ことばの意味など存在しない?―ラディカル語用論 ほか)

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著者プロフィール

スティーブン・ピンカー(Steven Pinker)
ハーバード大学心理学教授。スタンフォード大学とマサチューセッツ工科大学でも教鞭をとっている。認知科学者、実験心理学者として視覚認知、心理言語学、人間関係について研究している。進化心理学の第一人者。主著に『言語を生みだす本能』、『心の仕組み』、『人間の本性を考える』、『思考する言語』(以上NHKブックス)、『暴力の人類史』(青土社)、『人はどこまで合理的か』(草思社)などがある。その研究と教育の業績、ならびに著書により、数々の受賞歴がある。米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」、フォーリンポリシー誌の「知識人トップ100人」、ヒューマニスト・オブ・ザ・イヤーにも選ばれた。米国科学アカデミー会員。

「2023年 『文庫 21世紀の啓蒙 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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