資本主義はいかに衰退するのか: ミーゼス、ハイエク、そしてシュンペーター (NHKブックス 1258)

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  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140912584

作品紹介・あらすじ

20世紀を代表する経済学者の新たな側面に光を当てる!

経済成長に影が差し、資本主義が行き詰まりを見せる現状を「予言」したシュンペーター。「イノベーション」を信奉した彼が、「資本主義が衰退する」という矛盾した結論になぜたどり着いたのか──。落日のハプスブルク帝国で生まれ、同じウィーン大学で学んだミーゼス、ハイエクとの比較という、従来なかった視点から時代の息遣いとともに描き出す。

感想・レビュー・書評

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  • 20世紀前半に活躍したウィーン大学出身の3名の経済学者たち。彼らが、社会主義に反対の立場だったことは良く知られているが、いずれも資本主義の成功のゆえに、精神の形骸化による衰退を論じていたということは驚きである。イノベーションという概念で起業家精神を主張するシュンペーターも、そして右寄りのイメージが強いハイエクも資本主義の末路を心配していた。それが民主主義と自由主義を標榜する日本においても現在進行していることを改めて痛感し、彼らの慧眼に恐れ入る次第。経済学だけではなく、政治哲学ともいうべき領域に彼らが踏み込んでいることは全く未知の領域だった。
    シュンペーターの「資本主義・社会主義・民主主義」は一度読んでみたいものだ。
    ハイエクの「自由主義」の中の言葉は正に今の政権を予言しているかのようで驚き。引用したい。「余りに広範かつ複雑なために多数決によっては効果約に処理できない任務を政府が背負い込むとすれば、事実上の権力は、民主主義的統制からますます独立する官僚制的装置に継承されるであろう、というのが不可避的なところと思われる。それゆえ、民主主義による自由主義の放棄は、結局、民主主義の消滅に導くということは十分にありうる。とりわけ、民主主義が向かいつつあると思われる種類の統制経済は、その効率的運営のために、権威主義的権力をそなえた政府を必要とする、ということはほとんど疑問がありえないのである。」これは保守の論客佐伯啓思が書いている言葉とも一致する。「民主主義も同様です。 民主主義そのものが大事なのではなく、民主政治で国民の意思を吸い上げることによって、 国民の中にある文化や価値の重要なものが政治の場に表現されるこ
    とが大事なのです。したがって、日本人がいかなる文化を重んじ、いかなる価値観を持つかがある程度了解され、ハッキリしてこなければ、自由も民主主義もうまく機能しません。」

  • 東2法経図・6F開架:331.72A/N62s//K

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著者プロフィール

1962年、宮崎県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、京都大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。現在、京都大学大学院経済学研究科教授。著作に、『今こそ読みたいガルブレイス』(集英社インターナショナル新書)、『英語原典で読むシュンペーター』(白水社)、『現代経済思想史講義』、『経済学者の勉強術』、『来るべき経済学のために』(橘木俊詔との共著)、『ブックガイド基本の30冊 経済学』(編著、以上四冊は人文書院)など多数。

「2021年 『16歳からの経済学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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