- Amazon.co.jp ・本 (116ページ)
- / ISBN・EAN: 9784142230778
感想・レビュー・書評
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戦争という凄惨な状況が、人間をいかに追い詰めるのがわかりました。それでも人間は歴史を繰り返すのでしょうか?
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太平洋戦争時に、フィリピンにて絶望的な状況に置かれた兵士の話。孤独の中で心理描写が見事。
民間人を殺してしまった事に対して、
「軍隊の一員であれば敵兵を殺すことは罪に問われない、民間人を殺すのは軍規違反だが、このことがばれなければいい。」
ということろで、時として集団に属すると個人の倫理感を無視する行動に出れる怖さをしった。
これは現在の会社でも同様のことがおこりえる・・
そして、女性を撃ったのは偶然だと、自分を合理化しようとする中、「自分が悪いのではなく、国家が私に銃を持たせたのが悪い」とも言っている。
自己正当化、責任逃れ。罪悪感を何とか自分の中で論理的に解決させようとする人間の姿もみえた。 -
テーマとしてはこの季節に定番の戦争もの。原書を読んでいないのにその状況が伝わってくる。最後のいわゆる最近は戦争前夜みたいだという論調には理解はできなくはないけれど,同調できない。むしろこの原書が安っぽくさせてしまっているとさえ思ってしまう。ここで書かれているのはざっくり言ってしまえば「手段」の話であり,批判しているのは「目的」の話。「手段」の話について批判的に思う人は決して少なくないのではないかと思う。そう思っていないのであれば,それこそこの本を読めばいい。でも「目的」の話はもっと複雑だと思うんだけどなぁ。
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「大岡昇平『野火』」島田雅彦著、NHK出版、2017.08.01
95p ¥566 C9493 (2017.09.02読了)(2017.07.30購入)
Eテレの番組テキストです。8月ということで、戦争がテーマの本が選ばれました。
大岡昇平の『野火』は、読んでいるのですが、どんな内容だったのか忘れてしまいました。
番組を見て、そんな内容だったのかと、思いました。
島田さんの切り取り方がユニークで、感心してしまいました。特に2回目の「兵士たちの戦場経済」。面白い切り口だと思いました。
戦争では以下のようなことがありそうです。
・敵を殺す。戦闘で撃ち殺す、刺し殺す。捕虜や傷ついて動けないものを、殺す。
・敵が迫ってきて撤退するとき、自力で移動できない人をおいてゆく。
捕虜になってはいけない。手榴弾を渡しておく。
・飢えに苦しんで、人肉を食べる。
・神はいるのか、神の裁きはあるのか。
『野火』でも、上記のいくつかのことについて言及されているようです。
大岡昇平 略歴
1909年、東京市牛込区新小川町に生まれる
1929年、京都帝国大学に進学、フランス文学
1934年、国民新聞社入社(1935年、退社)
1938年、帝国酸素入社(1943年、退社)
1939年、アラン『スタンダアル』翻訳
1941年、スタンダール『ハイドン』翻訳
1944年、バルザック『スタンダール論』翻訳
1944年7月、出征。フィリピン戦線、暗号手
1945年1月、米軍の捕虜に
1945年12月、帰国
1946年、『俘虜記』を書き始める(1951年まで)
1950年、『武蔵野夫人』刊行
1952年、『野火』刊行
1967~1969年、『レイテ戦記』雑誌連載
1971年、『レイテ戦記』刊行
1988年12月25日、死去
【目次】
【はじめに】「反戦小説」にとどまらない『野火』
第1回 落伍者たちの自由
第2回 兵士たちの戦場経済
第3回 人間を最後に支えるもの
第4回 異端者が見た神
☆関連図書(既読)
「野火」大岡昇平著、新潮文庫、1954.04.30
「ながい旅」大岡昇平著、新潮文庫、1986.07.25
「オペラ偏愛主義」島田雅彦著、NHK知るを楽しむ、2008.06.01
「徒然王子」島田雅彦著・内澤旬子絵、朝日新聞・朝刊連載、2008.11.30
「ソポクレス『オイディプス王』」島田雅彦著、NHK出版、2015.06.01
(2017年10月5日・記)
内容紹介(amazon)
人間を人間たらしめるものは何か
太平洋戦争末期のフィリピン戦線における一兵士の異常な経験を描いた『野火』は、1952(昭和27)年に発表されるや大きな反響を呼んだ。戦争、人間、神、倫理──本作に込められた多彩な主題を、作家・島田雅彦が読み解く。番組の第4回では、2014年に本作を映画化した塚本晋也監督がゲストとして登場予定。 -
17/08/02