高慢と偏見、そして殺人〔ハヤカワ・ミステリ1865〕 (ハヤカワ・ミステリ 1865)
- 早川書房 (2012年11月9日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150018658
作品紹介・あらすじ
紆余曲折の末にエリザベスとダーシーが結婚してから六年。二人が住むペンバリー館では平和な日々が続いていた。だが嵐の夜、一台の馬車が森から屋敷へ向けて暴走してきた。馬車に乗っていたエリザベスの妹リディアは、半狂乱で助けを求める。家人が森へ駆けつけるとそこには無惨な死体と、そのかたわらで放心状態のリディアの夫ウィッカムが…殺人容疑で逮捕されるウィッカム。そして、事件は一族の人々を巻き込んで法廷へ!ミステリの巨匠がジェーン・オースティンの古典『高慢と偏見』の続篇に挑む意欲作。
感想・レビュー・書評
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英国ミステリの大家P・D・ジェイムズによる「高慢と偏見」の続編。
みんなオースティンが好きなのね~。
実力派なのでしっかり書き込まれ、19世紀初頭の捜査や裁判もありありと。
「高慢と偏見」のあらすじが最初にまとめられていて、その辛らつさがとてもオースティンぽい。
5人の娘を持つベネット夫人が4人までを結婚させられたのは幸運だったと思われていると。
美しく優しい長女ジェーンの幸運な結婚は祝福されたが、次女エリザベスの不釣合いな結婚は驚きとやっかみを招いたと。
ダーシーとエリザベスは当初反発し合っていたことを狭い世界の誰もが知っていたし、ダーシーは名門で格が違いすぎ、エリザベスが女主人となるペンバリー館はその地方随一の広壮な館だったから。
さて、二人はその後どうなったのでしょうか?
結婚後6年、子にも恵まれた二人はむつまじく暮らしていた。
エリザベスは召使達を思いやることで心をつかみ、女主人役も何とかこなしている。
姉のジェーン夫婦は近くに住み、今もよき理解者。
ダーシーの妹には、縁談が持ち上がる。
大規模なパーティーの前夜。
末の妹リディアが突然馬車で乗り付けて、泣き叫ぶ。
夫のウィッカムが殺されたかもしれないと‥
男達は森を捜しに行き、倒れている男性を前に「僕のせいだ」と嘆くウィッカムを見つけることに。
ジョージ・ウィッカムは、ダーシーとは幼馴染。
ダーシーの遊び相手だったために甘やかされて思い違いをして育ってしまい、大きくなってから身分の違いを思い知り、ダーシーに反目するようになっていた。
16歳のリディアと駆け落ちし、リディアの一生を台無しにするところを、ダーシーが金を出して説得し、正式に結婚させたという。
無実を主張するウィッカムだが、裁判の状況は不利な展開に。
エリザベスのためにもと悩むダーシーは、事件を解決に導けるか‥?
ウィッカムの存在をほとんど忘れてましたね~。
不愉快な人間だから(苦笑)
でも確かにこういう結婚で義理の兄弟だと、後の人生に絡んでくる可能性はありましたね。
そのへんの目の付け所はさすが。けっこう面白い人物になっています。
エリザベスが才気煥発なところを見せるのがほとんどないのが、不満。
それがもっとあれば、ぐっと印象が変わったでしょうに。
ダーシーの育ち方や置かれた立場、そのためにエリザベスとの結婚が難しかったこと、深い愛情で今はどれほど幸福かといったあたりはしっかり描かれています。
事件のための忙しさでろくに一緒にいられない夫婦が、最後にしっとり語り合うのが、幸福な余韻を残します。
作者は1920年生まれ。
ミステリ作家として巨匠賞など多数の受賞歴があります。 -
『高慢と偏見』から6年。
2人の息子を授かりペンバリー館で幸せに暮らすダーシーとエリザベス。
ある日領内で死体が見つかりそばにいた義弟が犯人とされ捕まってしまい…。
途中ドラマでペンバリー館の豪華さを見てイメージ修正しながら読んだ。
すると「それでいいの?」が「貴族だし…」になった不思議w
今更頑張って元ネタ読んでよかった。そしてやはりこちらの方が好き。
さて、『ゾンビ』はどうしたものか?w -
原作の雰囲気ぶち壊しだったらどうしようと恐る恐る読み始めたのだが、さすがP・D・ジェイムズ。読み応えのあるミステリーになっていた。
翻訳の力もあると思うが、18世紀から19世紀にかけてのジェントリ階級という『高慢と偏見』の世界にスッと入り込める。
これは、原作から六年後、エリザベスは今や二人の男子の母となり、ダーシー夫人としての地位を確立している。
そんな幸せなダーシー夫妻の生活に影を落とすのは、やっぱりウィッカム、リディア夫妻である。
相変わらず人のお金を当てにするような生活を続け、挙げ句の果てに、自分が殺人事件の容疑者にまでなってしまう。
事件が起こってからは、法廷もの的な流れにもなってしまうのだが、背後に隠されていた複雑な人間関係にムムムとうなってしまった。
しかし、六年もたって、いまだに昔の自分の態度を反省してるとか、ジョージアナとわだかまりがあるとか、ミスター・ダーシー、どれだけ引きずってるのよ!とおかしくなってしまった。 -
200年前に書かれたジェイン・オースティンの「高慢と偏見」の続編として、89歳になるミステリーの女王と言われる作者が2年前に刊行した新作。
ハッピーエンドの6年後、幸せなふたりがある事件に巻き込まれるというストーリー。
キャラクターが原作に忠実で、別の人が書いているとは思えませんでした。
89歳という年齢も信じられない!
ただ原作ファンとしては、続編はミステリーじゃなくてもよかったなぁとも思ってしまいました。 -
『高慢と偏見とゾンビ』を読む前に、『殺人』を読んでしまっていいのか?と、本を買う前に躊躇したけど、いいです。ゾンビはもういい。
P.D.ジェイムズはきっと原作が大好きで、だから主要人物が犯人になることはないだろうと思っていた(だって作品に対する冒涜だし、原作ファンが怒るよね)。原作の雰囲気や世界観をそのままに、ミステリを展開。少し忘れている部分も、これを読み進めているうちにいろいろ思い出しました。
ミステリにどっぷりはまる週末読書、たのしかった。
3/14追記:ロンドンでの証言台に立ったダーシーはとても立派だったと思います。 -
エリザベス、ダーシーらの人物造形を、きちんとオースティンの作品から受け継いでいるのが小気味よく、前作を楽しんだ感情をそのまま持ちながら読めたのは満足。
ただ、途中からなんとなく怪しいと感じた人たちが、予想通り結末にからんできて、そして最後の大団円的な終わり方は、以前のジェイムズっぽくないような。
まあ、他人のキャラクターだから、暗鬱とは終わらせられなかったと思うけど。 -
大好きなダーシーさんに会いたくって、読んじゃった。
「高慢と偏見」のその後、なんとあのペンバリー館で殺人事件が!
感想は、
設定は別に「高慢と偏見」でやらなくてもよかった、
でも、「高慢と偏見」の設定では無ければだれも読まないと思う!
犯人が誰か知りたくて、
最後まで頑張って読んだけれど。
なんだかフィッツウィリアム大佐がさあ…
まあ、もともと無理は承知、です、けど、ね。
「高慢と偏見」の世界は、
恐ろしいほど失われて、魅力的な人が不在になっている。
終盤の展開は、無理やり・ごり押し・ねじ伏せ・振り切り、
とにかくあっけにとられるばっかりだ。
例えれば、
修学旅行の荷物を作っていてかばんがいっぱいで
無理やりチャックを閉めていて、
「あ、あれも入れるんだった!」ってなって、
それもギュウギュウ入れて閉めて、
ふぃ~、やれやれ、全部入った、入った!みたいな感じ。
やっぱりダーシーさんに会いたければ
普通に会おう(オースティン版で)、と思った次第。 -
WOWOWで、プライドと偏見の放映記念のプレゼントに当選した1冊。
元ネタ未読の人にも役にたつはずの前置がなかなか読みにくく、10年積んでしまいました…ようやく読めました。
相変わらず元ネタ未読、映画も未見、PDジェイムズも未読…でも、おもしろかったです。
なかなかいくらなんでも…という部分も3つくらいあるんですが、火サスや土曜ワイドなどを楽しんだ世代なら、そんなこと気にしないで読めます(笑)
時代の雰囲気も感じられ、なんだか良かったです。
さて、ダーシーは、私にはコリン・ファースのイメージですが、みなさまはどうでしょうか。
星3つじゃホントは少ない…でも、ちょっと強引な展開に4つじゃ多いかな。3.6ぐらいです。
でも、時代を感じるためにも読んでほしいな、と思う1冊です。
コメントありがとうございます!
お読みになったのですね~。
これは面白かったです☆
ジェイムズはさすがによく読みこん...
コメントありがとうございます!
お読みになったのですね~。
これは面白かったです☆
ジェイムズはさすがによく読みこんで解説していますよね。
エリザベスの結婚がやっかみを招いたとか、それがなぜどれぐらいなのか、日本人にはわかりかねるところ。
当時殺人事件が起きたらどうなるかという展開も。
ダーシーの内面は「高慢と偏見」にはあまり出ていないから、そこを一番書きたかったのでしょうね。
エリザベスがちゃんとやっているのを力説したいあまり、きちんとした奥様になりすぎちゃったみたいな。
でも二人が幸せなのは私も嬉しくて、満足しました~!