カルニヴィア 1 禁忌 (ハヤカワ・ミステリ 1875)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (453ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150018757

作品紹介・あらすじ

ヴェネツィアの教会の石段で、女性の死体が発見された。死体はカトリックの女性には許されない司祭の祭服を着て、腕には奇妙な模様のタトゥーがあった。憲兵隊の大尉カテリーナは捜査を開始する。その頃、米軍基地に赴任した少尉のホリーは、旧ユーゴ内戦時の記録の公開を求める女性と面会した。ホリーは記録を調べるが、やがてその女性の死を知る。カテリーナとホリーは協力し、ソーシャル・ネットワーク「カルニヴィア」の創設者ダニエーレとともに、二人の女性の死に潜む陰謀に迫る。壮大なミステリ三部作、開幕!

感想・レビュー・書評

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  • イタリアが舞台の、読み応えある怒涛のミステリ。
    三部作の一作目です☆

    ヴェネツィアのとある教会前で、司祭の格好で倒れていたのは実は女性。
    それはカトリックの教会では今もあり得ないことだった。
    捜査に当たるのは、憲兵隊の大佐ピオーラと、女性の大尉カテリーナ。
    イタリアの警察というのは複雑で、憲兵隊と別な組織が張り合っているんですね。

    米軍基地に赴任したばかりのアメリカ女性のホリー少尉も、捜査に関わってきます。
    イタリアの基地育ちのホリーは、故郷に帰ったかのようなくつろぎを感じていたのですが‥?

    ヴェネツィアっ子のカテリーナはすごい美人で奔放だが、野心家で何より大事なのは仕事。
    ホリーはもっと親しみやすそうな若い娘でおだやかな性格だけど、陸軍少尉ですから訓練で身につけた勇ましい所も。
    この二人に加えて、異色な人物が加わります。

    SNSで本物のヴェネツィアそっくりというカルニヴィアを作り上げた天才、ダニエーレ・バルボ。
    彼は幼いときに誘拐されて犯人に鼻と耳をそがれ、トラウマで自閉症になっていた壮絶な過去がある。
    豪華な古い館から出ることもなく過ごしていましたが‥

    イタリアにある米軍基地がそれほど大きいとは知りませんでした。
    ヴェネツィアというだけでも魅力がありますが、戦争犯罪、マフィア、米軍基地への反対運動、秘密組織の暗躍、カトリック内部や警察内部の葛藤、さらに男女の問題など、思わぬ要素がてんこ盛りで濃い!

    「ミレニアム」と比較されてしまうと、う~ん、どうだろ‥ていう気にもなりますが。
    読み応えは十分です!

  • カルニヴィアとは小説の舞台であるヴェネツィアを忠実に再現したミラー・ワールドであり、あらゆる噂と情報が行き交う匿名性を保った3Dソーシャル・ネットワークだ。この仕掛けを行き来することで主人公たちは謎の手がかりを得たり、敵の手から逃れたりする。現実にもこんな空間があったら便利そうだなあ。今のところは、本書をミラー・ワールドとして意識することで現実の歪みや問題、または希望について気づくことでも十分、意義がありました。お話はミステリ、サスペンス、歴史、エロ、グロ、旅情、グルメ、スパイ、政治、軍事、警察他てんこ盛りなので様々な観点から楽しく読めますよ。

  • 新聞の書評欄で見かけてから、読みたかった一冊。『ミレニアム』『ボーンアイディンティティー』シリーズ三部作と同様に、現実社会の事件、政治を丹念にリサーチし、1人はイタリアの女子憲兵、一人はイタリアに駐軍する幼少期をイタリアで育った女子少尉、そしてもう一人は、裕福な財閥に生まれながら、幼少期に誘拐事件に巻き込まれ耳と鼻を犯人に削がれるという大きなトラウマを持ちながら抜きん出た数学的才能で本物と寸分違わぬベネツィアという都市をネットの世界で構築し、誰もが仮面をかぶり決して履歴が表に出ない世界を構築した天才!。カトリックではあり得ない司祭の服を着て殺された女性の遺体を皮切りに、アンジェリーナジョリーが最近映画化した、コソボ紛争の中で市民達、とりわけ女性達がどのように扱われていたか、そしてその戦争に巻き込んだ物は、民族闘争を隠れ蓑にしたある民間傭兵部隊(アメリカ)、NATO軍が関わった
    非人道的な殺戮の歴史を闇に葬り去ろうとする団体との戦いになってゆく。作家ジョナサン.ホルトはこれが処女作!三部作の次回作が今から楽しみでたまらない!

  • 本書はベネチアを舞台に、ベネチア貴族の引きこもり天才ハッカーとアメリカ軍の新人女性士官、情熱的なイタリア人女性警官の1男2女が、国際的な謀略に巻き込まれていくミステリー小説です。

    カトリックが禁忌とする女性司祭の死体発見から始まるストーリーは、コソボ紛争をめぐる謀略、戦争犯罪、天才ハッカーが作ったバーチャル・ベネチア・サイト、カルニヴィアへの攻撃といった様々な要素が織り込まれ、これにアクションシーンやら上司との不倫やらが彩りを添えていると言う、

    「ネタになるもの、突っ込めるだけ突っ込みました」的な"てんこ盛り"ストーリーでした。

    これは本業が広告会社のクリエイティブ・ディレクターである著者が「売れる小説とは何か?」と言う事を考えた結果なのでしょうか?

    仮にそうであれば、二転三転するストーリーや誰が敵か味方か確信が抱けない様など、ストーリーがよく練られているにも関わらずどことなくチープな印象をぬぐえないのは、この所為なのかも知れません。

    正にエンターテイメントを追求した大衆小説と言った所です。

    とは言え、あまりに俗すぎてうんざりしてしまうのかと言えば差にあらず。
    十分楽しめますので、”歯ごたえ”のある娯楽小説をお求めの際にはお勧めです。

    ちなみに本書は著者のデビュー作にして「カルニヴィア」3部作の第一作目。
    まだまだストーリーは続き、第一作目で出会った3人の関係が今後どうなるのか等、読者の想像力を刺激する終わり方をしています。

    尚、後書きによれば、まだ原著の方ですら次巻が出版されていないとか。

    次巻が読めるのはいつになるのでしょうか・・・

  • 図書館で。
    ヴェネツィアは行ったことないですがなんとなく潮の匂いが嗅げそうなお話でした。結構生臭く、淀んでると汚水の匂いがしそうな感じの描写がリアルだなあ、と。
    という訳でイタリアの警察事情とか知らないので警察機構が重複してるとか本当なのかな?とか思いながら読みました。

    それにしても貧しい国の弱い立場の女性が食い物にされるのはいつの時代も変わらないんだなあ、とげんなりします。日本だって以前は貧しい農村から、今は多分海外から女性を風俗に無理やり従事させてるんだろうなあ…と思うと胸が痛いです。ボスニアの内戦は相当ひどい状況だと聞いたことはありますが…本当に胸糞悪い事態だったんですね…。今のISとかでも相当残虐な事が行われてるんじゃなかろうかと思うと…なんとかならないのかなあと無念で一杯です。

    お話に出てくるカルヴィニアは是非訪れてみたいなあ。個人情報が吸い取られるのは怖いですが飛行機に12時間以上乗って行くよりもオンラインで1秒かからず観光出来るならその方が良いなあ。3部作みたいなのでこの3人組がこれからどう動くのか楽しみです。

  •  最近はポケミスでも、相当数、新時代のエンターテインメントと思われる小説が多く散見されるようになった。アメリカの作家であっても、米国国内舞台に限らず、かと言って国際冒険小説というジャンルでもなく、東西ヨーロッパや中南米などを舞台に異国人を主人公にした作品などを果敢に綴ってゆく作家が多くなったように思う。

     その背景としては異国の状況や歴史が調べやすくなった情報社会の進歩ということが十分に考えられると思う。図書館で文献を検索しなくてもあるレベルのものまでであれば、ネットを検索してみるだけでも一通りの情報が得られる現在、国境なき世界に勇躍活躍の舞台を求める小説作品が増えてゆくのもむべなるかな、というわけであろう。

     さてそんなネット社会を背景に、ヴェネツィアというこれまた迷宮要素の高い、歴史も地理的複雑さも兼ね備えた都市を舞台に、英国作家のジョナサン・ホルトが新鮮な作品をかつ三部作という予告付きで世に贈りだしているのをご存知であろうか。

     一見簡単に見える事件の深層に向かって捜査を進めるのが、ヴェネツィア憲兵隊の大尉カテリーナと、イタリア駐留米軍少尉ホリーという二人の女性。それぞれが別々の軌道を経て、同じ事件、同じ闇の奥に存在する謎に行き当たり、小説途中で合流してゆくという構成である。

     そしてさらに本書の邦題タイトルともなっているカルニヴィアというソーシャルネットワークの創設者ダニエーレ・バルボという天才奇人がまたも異なる道から合流して三人のトリオが出来上がるというあたりが本作品のハイライトである。

     ダニエーレというキャラクターが凄まじい。幼少期に誘拐され、切り取られた耳と鼻を資産家の父に送りつけられた末に解放されるという強烈なトラウマを抱え自閉症に陥るが数学の天才でもあるダニエールは人間との繋がりに関心を覚えず、全くの虚構の世界でありながらヴェネツィアそっくりの架空都市カルニヴィアをネット上に作り出し、そこでは絶対的な匿名性による情報の王国が築き上げられている。

     捜査に行き詰まった時の検索基地として存在するカルニヴィアという仮想都市を使っての敵と見方の化かし合いがある一方で、現実世界での血と暴力に満ちた闘争もあり、その向こうに見え隠れするのはボスニア内戦を通して行われた多くの兵士たちの殺戮と狂乱であり、NATOや米軍の暗躍でもあった。主人公の二人である女性の視点から女性犠牲の歴史を真っ向から凝視して提示して見せた作品でもあり、多くの犠牲者の墓の上に築かれた壮大な物語は、ある正義の意志で貫かれた本物の輝きを感じさせる。

     崇高な精神と泥沼のような世界悪がカオスのようにごった煮にされた町ヴェネツイァ、もしくはカルニヴィアで繰り広げる新時代の冒険小説が誕生。一話完結の型式なのでシリーズ2や3の登場を待たずして楽しむことができる大作である。

  • 「ミレニアム」のイタリア版みたいな紹介のされかたしてたけど、三部作の第2巻まででてるシリーズの第1作。憲兵隊のの女性士官と駐イタリアのアメリカ軍基地の女性将校、2人の立場の違う女性が物語を動かしていく。カトリックのしきたりとかイタリアの警察の二重構造とか、国家警察と憲兵隊とふたつの警察があったり、マフィアとか目新しい話がたくさん出てくる。

  • 面白いのに中途半端なところで終わってしまった!1作目の内容を忘れないうちに早く2作目出版されて欲しい。

  • 『チャイルド44』でデビューしたトム・ロブ・スミスもオックス・ブリッジの英文科卒だが、こちらも処女作とは思えない出来。魅力的な人物造形、複雑で秘められた歴史的背景を巧みに配したプロット、クライマックスに向けてさらに勢いがつくストーリーテリング。「この国で統制が取れているのは犯罪組織だけ」など、イタリア人にとっては恥部とも思われる暗部も包み隠さず描かれるが、この国への熱い思いは揺るがない。ヴェネツィアっ子の主人公は、検死の時も食事の時も足を濡らしながら平然としていられるし、ゴンドラの上でも決して転ばない。

    解説では、『ダ・ヴィンチ・コード』や『ミレニアム』を彷彿とさせると書かれているが、後半の逃亡劇では、TVドラマの『24』のバウアーとクレアの関係を彷彿とさせるほどスリリング。とにかくダニエーレのキャラクターが凄すぎる。誘拐によって鼻と耳をそがれ、極度の人間不信から古い館に引きこもる。数学をこよなく愛し、ヴェネツィアの街を正確に再現した電脳空間を作り匿名で集える交流サイトを立ち上げる天才プログラマー。

    舞台となったヴェネツィアに関連した、気に入った文章をいくつか。「頽廃の上に築かれた美しいこの街にはイタリア文明の栄光と殺人集団が同居していて、都合の悪いことは、香水を振りかけて覆い隠しているのだ」「あの水も引いて、ヴェネツィアはまたきれいな街に戻るはずだ。潮が秘密を洗い流してくれて」

  • ヴェネツィアを舞台に憲兵隊と米軍の女たちが禁忌にからむ謎に迫り、自分たちの立ち位置を再認識することになる。このテーマ、やりすぎると引いてしまうこともあるが、この女たちについては三部作だという続きがどう展開するのか興味あり。そしてSNSカルニヴィア創設者のダニエーレ、きみのキャラならまだそれじゃ済まないでしょ、派手にやらかすのを期待。

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