特捜部Q―吊された少女― (ハヤカワ・ミステリ 1901)

  • 早川書房
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感想 : 51
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  • Amazon.co.jp ・本 (621ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150019013

作品紹介・あらすじ

〈特捜部Q〉シリーズ。引退間際の警官からかかってきた一本の電話は、カールたちQのメンバーを十数年前に起きた異常な交通事故の捜査へと導くのだが……。デンマークの人気警察小説、第六弾!

感想・レビュー・書評

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  • ひっくり返してきたな〜
    尾美としのりじゃなかったお見事

    ただちょっとだるかったかな〜
    長いんだもん

    新興宗教みたいなんがストーリーの中心にあって、たまたま個人的に二作連続で宗教がらみの物語になっちゃったのでダルく感じたんだと思います
    もったいないことした

    それにしても特捜部Qの3人、いや今回ゴードンも頑張ったので4人にしてあげるか、が仲良しすぎる
    こんな仲良かったっけ?
    もうほんと今回は仲良しアピール回です
    特にカールとアサドの信頼関係がもう揺るぎないのよね
    なんか次回そのあたりが鍵になりそうな気がするな〜

  • デンマーク・コペンハーゲン警察内にある、未解決事件を扱う〈特捜部Q〉のメンバーの活躍を描くシリーズ第六作。

    今回捜査するのは17年前に起きた、少女が車に撥ね飛ばされ木に逆さ吊りになったまま絶命した凄惨な事件。
    この事件を生涯をかけて個人的に捜査していた警察官ハーバーザートが、自らの退官式で拳銃自殺したことをきっかけに〈特捜部Q〉が後を引き継ぐことになる。

    このシリーズの魅力の一つは〈特捜部Q〉のメンバーたちのキャラクター。
    リーダーのカールは基本的に面倒を嫌う質だが、なんだかんだで引き摺られていく。
    アサドはその名前通りイスラム圏の人間らしく、デンマークの慣習や社会からすると浮世離れ的な言動が目立つ。
    一番エキセントリックなのがローセで、カールやアサドの尻を叩いて自らも猛烈に仕事に取り組む一方で、ロマンスにも猛烈。
    さらにゴードンという新たなメンバーも加わるが、彼は一番常識的、だがこのメンバーの中では一番軟弱だ。
    カール、アサド、ローセ共に秘密を抱えていて、それが明かされそうで明かされない。

    本編の構成は過去の事件の話と現在の捜査状況とが交互に描かれる中で、過去の事件パートは徐々に時間が進み、やがて現在と交差する。この交差がどのような重要場面となるのか、交差後にどうやって〈特捜部Q〉と対決するのか、お楽しみだ。

    シリーズとしては、カールが〈特捜部Q〉に配属されるきっかけとなった、『釘打ち事件』の真実が気になる。『釘打ち事件』後にカールはトラウマにより記憶が曖昧になっているので、一体カールは何を記憶の底に閉じ込め、何が明らかになるのか、それが暗いものでないことを祈るばかりだ。
    さらに前作あたりから従兄弟からカールが伯父殺しに加担したという爆弾発言まで飛び出し、それが今作では親戚中に暴露されている。カール自身は全く身に覚えがないようだが、カールの記憶力の曖昧さが読者を不安にもさせる。
    こちらの結末も気になるところだ。

    肝心の本編の事件だが、何とも虚しくなるような話だった。こういう、無意識に周囲を惑わし傷付け、それでいてそのことに当人はまるで無関心で自分が一番純粋なままという人間が一番始末が悪い。周囲を振り回すだけ振り回しておいて、自分が一番の被害者だと本気で思っている。
    ハーバーザートが何故家庭を壊してまで、最終的には自殺してまで少女の事件に拘ったのか、それが分かっても逆に虚しさしかなかった。
    事件の関係者たち、ハーバーザートを含め、ここまでやったのに結局彼らは何を得て何を守ったのか。
    こういう虚無感を徹底的に突き付けるのは北欧ミステリーの特徴だろうか。


    本筋とは外れるが、デンマークでは本名すら明らかではない人物を警察で雇えるのか、離婚しても契約で元妻や義母や義理な息子にまで縛られるのかとか、日本では考えられないようなことが分かって興味深い。またLGBTに最も理解のありそうな国だが、身内のこととなると話は別というのも興味深い。

    • goya626さん
      特捜部Qは、何冊か読んでカールたちには親しみはあるのですが、この本は読みたいような、読みたくないような。
      特捜部Qは、何冊か読んでカールたちには親しみはあるのですが、この本は読みたいような、読みたくないような。
      2019/11/24
    • fuku ※たまにレビューします さん
      goya626さん
      本編以上に、登場人物たちが抱える秘密が明かされるのが、早く見たいような怖いような気持ちです。
      goya626さん
      本編以上に、登場人物たちが抱える秘密が明かされるのが、早く見たいような怖いような気持ちです。
      2019/11/24
  • 【カール 最大の危機迫る!?】

    北欧ミステリーの人気シリーズ【特捜部Q】第6弾。

    引退間際の警官からかかってきた一本の電話は、カールたちQのメンバーを十数年前に起きた異常な交通事故の捜査へと導いていく……

    前作の【知りすぎたマルコ】と違い、こんがらがった複雑な糸をひとつひとつ解いていくようなストーリーだった。
    展開もゆっくりめで、途中読みにくいエピソードもあったが、ラストの畳み掛けとどんでん返しはさすがである。

    轢き逃げ犯は全く想像していなかった人物だったので、散りばめられた伏線を探す為にも再読しようと思う。

    今作は新興宗教が事件に絡んでおり、ひとりの導師がキーマンとなっている。
    とくに導師の心情がまったく描かれていないのがこの作品の面白い所だ。
    読者は導師の心情や人物像を想像しながら読んでみると更に面白いのではないだろうか。

    最初のシリーズから登場する“釘打事件”やアサドの秘密も出てくるのだが謎が深まるばかりだ。
    どうオチをつけるのか最後まで見届けたいと思う。

    純粋な気持ちが引き起こした悲劇が描かれた1冊だ。


    こんな人におすすめ .ᐟ.ᐟ
    ・北欧ミステリーが好きな人
    ・どんでん返しが好きな人
    ・宗教がテーマのミステリーが好きな人
    ・倒叙ミステリーが好きな人

  • デンマークの人気ミステリ、特捜部Qのシリーズも6作目。
    個性的な特捜部の面々は、またしても思わぬ成り行きに巻き込まれる。

    17年前の事件をとりつかれたように捜査していた刑事が、退官式で自殺してしまう。
    ボーンホルム島で、少女がひき逃げされた事件だった。
    後を託されたと張り切る助手のローサらに、しぶしぶ重い腰を上げるカール・マーク警部補。

    一方、あるスピリチュアル系の団体があり、指導者アトゥは神々しいような長身の美形で、人を惹きつけるカリスマ性があった。
    その片腕の女性ピルヨは、実務面を受け持ち信頼も厚いが、アトゥに近づきすぎる女性はひそかに遠ざけてきた。
    ピルヨの視点での重いストーリーが交互に語られ、いつもと一味違う雰囲気に。
    はらはらと事件解決を願う半面、いずれは追い詰められていくだろうピルヨが何だか気の毒なような。

    誤解や偶然の重なり合う意外な展開で、読ませます。
    愚かさと哀しさと。
    謎の過去を持つカールの部下アサドは、危機に際して、何ともたくましい。移民で、警察官ですらないただの助手なんだけど、教養もある人物。
    警部補のカールは刑事としては有能だが、世渡り下手で組織でははみ出す傾向があるタイプ。
    特捜部に飛ばされ、周りに振り回されているのをいつも面白おかしく描かれていますが、実は寛容なところもある?
    孤独がちなカールが感じるアサドとの友情が一抹の救いで、胸打たれます。

  •  ボーンホルム島で少女が車にはねられた勢いで木に宙づりになって死んだ事件の捜査に特捜部Qがかかわることになる。位置関係がわからないので、デンマーク国内なのにスウェーデンにはいってからフェリーで渡るというのが??だったが、地図を見て納得。デンマークは北欧だと再認識した。元の捜査担当者で退職日に自殺したハーバーザートの残した資料と意味ありげな家族、一方で独立してつづられる胡散臭い宗教団体の主導者アトゥとピルヨ。どこかでつながるんだろうなとはわかるが、例によって一進一退の地道な捜査が続く。最後に真相が二転三転して意外なところに転がってゆく。かなりの長編だがさすがに達者な著者は話のもたせ方はうまく、中だるみしないで読める。ちょっとした運命の歯車のかけ違いという結末の余韻もいい。カール、アサド、ローセのチームも相変わらずだが、ちょっとアサドが精彩を欠いているかなと思いきや、最後にカールとアサドが捕らわれて絶体絶命の危地に陥ったところからの超人ぶりはさすがにすごかった。

  • 特捜部の面々の掛け合いは相変わらず楽しく。
    だけど、今回それほど悲惨な描写がなかったので物語に沈んでしまったような気も。いや、変に浮き上がらずそれはそれでよかったんだけど。
    今回は人を愛した故の悲劇。容疑者をひたすら庇う取巻きの狂気が痛い。
    シリーズ全体の謎も少し前進。

  • ゴードンにイライラしていた人に朗報。この巻でゴードンは特捜部Qの仲間としてカールたちに認められます。

    トラウマ克服カウンセラーが言っていた、フランクは人を操ることを目的に自分の催眠術の技術を盗もうとしていたということ。だとすれば、今回起きているすべての殺人事件は、アトゥ(フランク)に心酔していた者たちが起こしたことであり、アトゥがそうなるように操っていたんじゃないかと思いましたが…。しかし、アトゥ自身がカールたちのゲーブルをペンチで切り、警察と救急車を呼んだことやアルバーテの死の真相を確かめるためにビャーゲに会いに行ったことは何も知らなかったかのような行動にも思える。(逮捕を免れるための工作かも)
    アトゥが懇意にしていた女が何人も姿を消していたり、しんでいることに何も気づかないほどアホではないと思うので、やっぱり、アトゥが人をあやって殺人というのがこの事件の真相かなって思います。

    初期の作品ほど暴力的な殺人は起こらないので事件の規模は下がりますが、相変わらず面白い作品でした。

  • 特捜部Qシリーズ第六作。きっかけはボーンホルム島に勤務する警官からカールにかかってきた一本の電話だった。退職を前に心残りの事件の再捜査を依頼するものだったが、相変わらずやる気のないカールはすげなくあしらう。翌日、定年退職を祝うパーティーの席上で、電話の相手ハーバーザートが拳銃自殺してしまう。むげに拒否したことが引鉄を引かせたのだろうか。カールは重い腰を上げるしかなかった。

    事件は十七年前に自動車事故として処理されていた。ハーバーザートは、そのために家族を失ってまでも、なぜかその事件について長年独自の捜査を続けてきた。主を失った家には捜査資料が山のように残されていた。ローセはそれを署に持ち帰り、捜査を開始。前作から殺人課の課長になったビャアンの肝いりで、ゴードンという新人が仲間に加わる。即戦力とはいえないものの要員だけは着実に増えている。

    アルバーテという少女は、男の子の間で人気者だったが、早朝自転車で走っているところを轢き逃げされ、木に逆さ吊りになって発見された。車体の屋根に曲線の一部が見えるワーゲンのバスの写真が残され、その傍に男の姿が写っている。どうやらハーバーザートは、この男が犯人だと考えていたらしく、捜査はその線でなされたようだが、懸命な捜査にも関わらず車も男も見つからなかった。

    今回の主題は、スピリチュアルやヒーリングといったもので、この作家には珍しく太陽信仰と世界各地の宗教との関係に関する詳しい解説が開陳され、ぺダンティックな要素が盛り込まれている。いつもながら何か新味を持ち込むことで、マンネリ化を避ける工夫がなされている。複数視点で描かれるのはいつも通りだが、殺人の実行犯とカールたちの捜査との間に置かれた時間差は前作『知りすぎたマルコ』に続いて、ほとんどない。

    きっかけは十七年前に轢き逃げ事件にあるのだが、殺人は現実に今起きているのだ。<人と自然の超越的統合センター>の導師アトゥは、近づく人を魅了するカリスマ的な力を持っていた。その右腕であるピルヨは、アトゥを愛していたが、アトゥは彼女以外の女性と次々関係を持っていた。嫉妬の鬼と化したピルヨはアトゥに近づいた女を次々と消していく。果たして、アルバーテもまたピルヨの手にかけられたのだろうか。

    いつものことながら、事件解決の手がかりを見つけてくるのは、ローセたちチームのメンバーで、今回はなんと車椅子に乗れるようにまで回復したハーディが、すごい手助けをしてくれる。もっとも、カールやハーディを襲った例の事件についても、ハーディは記憶に残る手がかりをもとに事件の捜査をするように迫るが、カールは煮え切らない。カールにとってこれが最重要な事件だというのに、何がカールに一歩踏み出すことを躊躇させているのか、興味は募るばかりだ。

    今一つ、伯父殺しの共犯だと言いふらしていたロニーが死に、葬儀の席で遺言が披露される。それには、あらためて伯父殺しを自白し、カールがその間よそ見をしていてくれたことに感謝し、遺産を半分遺すと記されていた。死者の口から出た言葉は重く、カールは身に覚えのない罪を背負わされたことに驚く。ロニーの狙いは何だったのか。相変わらず、始終パニック発作に襲われ、離婚の条件だった義母への面会を前妻に請求され、カールは多事多難。

    頭よりは足を使うタイプのカールとアサドは、次々と関係者を訪ねては質問をし、相手の反応を見ていく。アサドによる強引な質問による揺さぶりや、厳しくねめつけるような凝視は、相手の告白を引き出す絶好の手段。このコンビの息がぴったり合ってきたことをうかがわせる。カールが自分の葬式で悲しむ人物としてアサドを一番に挙げるほどに。今回も相手にこっぴどくやっつけられ、太陽光発電によって感電死させられそうになる二人だが、絶体絶命の時、互いに相手を思いやるところがぐっとくる。

    それにしても、最後は二人揃って痛い目に遭わされるのがこのシリーズのお約束であることは重々承知だが、妊婦が屈強な刑事二人相手に争って、最後はロープで縛りあげるというのはいくらなんでも無理があるのではないだろうか。細かなことを言い出すときりがないが、これまで何度も難敵を相手にしてきたアサドにしてはちょっと無様すぎる。自分の親指をアース代わりに使うことで、カールを助けようとするアサドの犠牲的精神を描くために、この窮地が必須だったことは分かるとしても、だ。

    十七年前の事件の真犯人は誰か、というのが最後まで残された謎。犯人として考えられた人物が、二転三転した後で、やはり今回もどんでん返しに遭う。最近、エンディングに凝るようになってきたことは読者としてはうれしいのだが、正直なところ、愛する男のために次々と殺人を犯してゆく女の姿を、ハラハラドキドキして追ってきた読者にしてみれば、これが真相だったのか、という解決は、すとんと腑に落ちる展開とは言えない。一人の少女の存在が多くの人の死を招くことになった。そのアイロニカルな結末に苦い味が残る。

  • 嫉妬、嫉妬、嫉妬の本作。
    今回は新興宗教も絡んで、今までとはまた違った雰囲気でした。
    特捜部Qができてもう7年になるらしい。
    その割にチームのアサドの秘密、ローサの秘密はほとんど明かされず。でもそれでいいのかも。
    早く新しい作品が読みたい。
    ミステリとしても面白いけど、背景や人間関係が描き込まれていて、良いです。

  • 続巻が楽しみなシリーズ。個性豊かな登場人物の秘密もまだまだのこったまま。カールとアサドの関係にグッとくる。本筋の捜査のほうも小刻みな場面切り替えで飽きさせない。

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