- Amazon.co.jp ・本 (544ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150019051
作品紹介・あらすじ
夏を迎えてにぎわうエーランド島。しかし訪れた人々の中には、暗い決意を秘めた人物もいて……。そして起きる事件に、老船長イェルロフはどう動くのか。エーランド島四部作、感動の最終巻登場!
感想・レビュー・書評
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スウェーデンとは橋続きのエーランド島。20世紀初頭に生まれたイェルロフとアーロン。イェルロフは船乗りに、アーロンは?・・・・ 21世紀になろうとする今夏、アーロンは帰ってきた。義父とともに渡った”新しい土地”から。ミレニアムの夏の、帰ってきた老人と、南のフロム家一族の少年ヨーナス、そしてイェルロフの長いひと夏の出来事。”新しい土地”で過酷な歴史の中に漂った、泳いだ、アーロンの人生が胸をしめつける。
ヨハン・テリオンは「黄昏に眠る秋」を少し読んで放り投げてしまっていた。が、これは最初からぐいぐい引き込まれた。なんといってもアーロン。20世紀を生きたある男の断面、をアーロンに見た。設定が21世紀になろうとする夏、ということで、老人二人と片や11才のヨーナス、人生の終盤と、さあこれからだ、という対比にぐっとくる。
土地持ちのフロム家のリゾートを中心に、関係者の行動が2,3ページつづ人物の見出し付きで綴られるのでわかりやすい。イェルロフ、ヨーナス、”帰ってきた男” リゾートで働くリーサ。並行して昔の出来事が1931年七月、あたらしい国、とか年月日がついて語られる。
たら? れば? は歴史では言ってはいけないというが、アーロンの人生を思うと、新しい国に行かなければ? 義父が別の考えだったら? と思ってしまう。でも妻と娘には恵まれたのでそれが救いだ。
2013発表
2016.3.15発行 図書館詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この土地の夏だからか、登場人物は多い。そして重くつらい過去が現在に影を落としている。相変わらずイェルロフおじいちゃんの頭は冴えていて、周りの人の手を借りながらうまく立ち回る。最後のほう、とてもさみしかったが、”それはまだだよ”と言われているようで、心が温かくなった。表紙絵は暗示している。でも事件は予想外の派手さだった。
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巻末の解説で「文章を読むという行為が確実に報われることを保証する」とあった。まさに、この一文に尽きる。長いシリーズ全4作を見事に訳し切られた三角和代さんに沢山の感謝を。そして、寡作であるらしい作者のテオリンさんがゆっくりとでも次回作をものされることを期待する。
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ミステリー。とはいえ推理を問う部分は薄く、癖のある人々の物語と人間関係が中心に描かれる。
男性的で暴力が支配的なスウェーデンのミステリーの世界も、スターリン時代と照らし合わせると、カリフォルニアのように明るい。その位、旧ソ連にまつわる回想シーンが殺伐とした内容(史実に基づくだけに)だった。
複数の人の視点が入れ替わり語り、時に過去の話が挟まれる構造だが、きちんと書分けられているので、混乱することはない。 -
エ-ランド島に行って見たくなります。
情景描写が緻密で、作品の中に入り込んでしまいました。
話は独立しているけれど、1作目から読むのをお勧めしますよ。 -
エーランド島ミステリー四部作の最終話「夏」
シリーズ中最も賑やかなエーランド島で、舞台となるリゾート地もにぎやか。
対照的に描かれるのは、20世紀に出現した「ソビエト連邦」という国の内情。
希望と絶望の果てにひたすら「帰る」ことを夢見てきた一人の男の物語は、シリーズ中最も重い。
あんなに強大だったのに既に歴史地図にしか載らない「過去の国」。
でも、そこで行われた史実は、関わった人の記憶と共に生きている。
人にとって「帰るべき所」とはなんだろう。
終盤で、エーランド島から離れる船を前に娘は「父さん帰ろう」と言う。父にとっては「帰ってきた」場所から再び離れることになるのに……。
ラスト、イェルロフの乗る舟をエーランド島に「帰す」風とカモメたちが、彼を絶望から救い出す……あのまま終わらずによかったです。
これで春夏秋冬に合わせて全編終了しました。
変わらないこの島の自然や不思議な出来事を背景に登場人物の心の旅を描く、とても印象に残るシリーズでした。 -
この雰囲気の描写を維持すんのも大変やったやろけど、見事完結。
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エーランド島最終章。
犯人は20世紀初頭、義父と真天地を求めてソビエトに発った老人だ。極寒のシベリアや暗いKGB時代と、夏の賑わいをみせるリゾート地での出来事が交互に語られる。イエルロフの鋭くも愛のある眼差しが、事件を少しずつ紐解いてゆく。