- Amazon.co.jp ・本 (477ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150019075
作品紹介・あらすじ
〈英国推理作家協会賞最優秀新人賞受賞〉犯行を予告し、次々と斧で市民を襲う殺人鬼〈アックスマン〉。現場には謎のタロット・カードが。警部補マイクルは凶行を食い止めることが出来るのか?
感想・レビュー・書評
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傑作である。
凝ったプロット、哀しみを背負ったキャラクターたちの確かな造型、「この時・この人」でなければならなかった必然性の綾、どれも新人離れしている。
「あの『ニューオーリンズの斧男』事件の真相は実はこうだったのかも!!??」的な実録殺人マニアな楽しみこそないが、うまく史実にのっかったものだと思う。現代の(マニア以外の)読者にとっては、ニューオーリンズといえばもっぱら「洪水」ではないかと思うが、それをも取り入れた手腕はみごと。市長が「市民の皆さんがこのような被害に見舞われることは今後二度とない」とか宣言しちゃったりするんである。100年後からそれを読んでいる我々にしてみれば、アイタタ…としか言いようがない。殺人・音楽・それ以外と、くすぐりネタを3つも仕込んでいるのだ。
また時代小説としても一級で、女性や黒人が直面する残酷な抑圧がなまなましく描き出されている。汚職・暴力・差別ついでに喫煙が当たり前な100年前の世界が肌身に迫るだに、こんな地獄を二度とふたたび顕現させてはならないと思ったり、いやそも100年後の我々は本当にこれを「過去」となしえているだろうか…? と思ったり。
邦訳は今のところこれだけだが、シリーズとしては3作まで刊行済み。題して「The City Blues Quartet」なのだそうで…最終巻も鋭意執筆中とは、実に頼もしい限りである。
ただひとつだけ言うならば、リ(ト)ル・ルイスに関しては、早々にネタを割らないほうがよかったのでは…なんなら、最後まで苗字は出さなくてもよかったかもしれない。
2020/12/15読了詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2020/5/30購入
2020/6/17読了 -
最後まで続くミステリー。結末はこれだったか。
クレオールなので ラフカディオハーンを思いだしたが、1か所、懐かしく登場した。 -
とっちらかってたけど、最後は綺麗に収束。
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マニーフレッシュの地元がニューオーリンズと知り、漠然と憧れ、その後ジャズの聖地とやっと知ったわけでございます。自分にとってこの本は教科書のようなものでございました。合衆国の中でも独特の歴史を歩んできていて各地区ごとに人種のコミュニティができており、それによって今回の事件が起きてしまった訳ですが。コミュニティ自体は悪くないのだが、なぜだか対抗意識が生まれてきて命を奪ったりするのは、本末転倒でございます。しかし集団にいると麻痺してくるのです。そこにあるルールが自分の天命であるかのように。
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1910年代のニューオリンズで謎の連続殺人が起きる。被害者は斧で残虐に殺されている。人種ごとにコミュニティがあり激しい差別が公然と行われている中での事件で、市民は互いに疑心暗鬼になる。釈放されたばかりの元汚職刑事、その刑事を売って皆から白い目で見られている捜査官、探偵を夢見る女の子、それぞれが各自のやり方で謎に迫る趣向が面白い。文章は固く、構成ももう少し工夫が欲しいところだが、何よりこの時代やニューオリンズという地域が持つ独特の空気感とか魅力の描写が上手くて引き込まれる。あまりにも悲しい犯人でやるせないが、光の見えるラストにほっとした。
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ジャズは物語の展開にそれほど関係なし。関係ないが、ジャズ溢れるニューオーリンズの雰囲気や、ルイ・アームストロングを意識した登場人物の設定なんかは普通に楽しめる。結末はもうひとつ。
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1日平均70ページ。1週間かけて読んだ。登場人物がなかなか覚えられないし、展開が頭に残ってなくて、はて・・・?
できれば一気に読みたかったのですが、それでも十分面白く読めた。
ジャズがもっと物語の中で重要な意味を持つのかと思ったけれど、そうじゃなかったのが少し残念かな。 -
このシリアルキラーのアックスマンに『マークスの山』のマークスの面影が重なるのは私だけ?少女探偵のボディーガードというか、ナイト気取りのサッチモが微笑ましい。同じ事件を追いかけている三人が殆ど出会わず、それぞれに真犯人や黒幕を突き止めるって、面白いパターン。