バサジャウンの影 (ハヤカワ・ミステリ1914)

  • 早川書房
3.29
  • (2)
  • (7)
  • (5)
  • (0)
  • (3)
本棚登録 : 65
感想 : 6
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (442ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150019143

作品紹介・あらすじ

渓谷地方で相次ぐ少女殺害。女性捜査官のアマイアは捜査の指揮を執るため故郷に戻ってくる。シリアルキラーか、森に棲む伝説の怪人の仕業か? 歴史と伝説に彩られた秘境に展開するミステリ巨篇

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 深い森や谷、無数にある洞窟に漂う人の住処とは違う不思議な場所で起こる出来事。
    連続猟奇殺人事件は「人ではないもの」の仕業なのか?

    2013年スペインの女性作家によって発刊された警察小説は、“バスク バスタン地方”という特殊な場所を舞台としている。

    スペインといえば、バルセロナ、マドリッド、アンダルシアなどの地名が思い浮かぶ。
    ″レコンキスタ“イスラム勢力のヨーロッパ進出とキリスト教の失地回復としてイスタンブールとともに代表とされるコルドバなど宗教的な色合いが強く、また歌劇カルメンやサン・フェルミン祭などにみられる情熱的な印象のある一方、ロマ(ジプシー)やタロット占いなどが人の生活に根付いている。

    この小説でも、随所に幽霊やタロット占いの場面が登場する。
    バスタン地域やエリソンドに伝わる未知の生き物“バサジャウン”……熊でも鹿でもなく、ユキオトコやビッグフットにも似た生き物……物語中でも森の中でふとしたところで出会う。

    一方で、母子の関係、姉妹間の確執などが主人公に襲いかかる。

    多少強引な展開でも、スペインそれも”バスク“という特別な場所に連れてってくれるミステリー小説の旅は、満足できる内容でした。

  • なんだか受け付けなかったので流し読み。保守的どころかこの作者の内面化ミソジニーがすごい!という感じ。母親との関係とかフローラのキャラとかリアリティなさすぎて最早ギャグみたいになってる。三部作との事で読み進めれば違う感想持てるのかな?翻訳も合わなかったので読まないと思う。

  • なんかダラダラ まったく乗れなかった

  • スペイン・バスク地方の地方都市で起きる不可思議な連続殺人。地元出身の女性警官アマイアを中心とする捜査が滞るなか、人々の間では伝説の大男バサジャウンの仕業だとの噂が流れはじめる……
    主人公の造形は割にありきたりな感じだが、彼女を取り巻く家族との愛憎入り混じる関係が、事件の展開と上手く絡み合い、物語に膨らみを与えている。伝説やタロットカードといった道具立てを単なる迷信で終わらせないところも、この小説の雰囲気に合っていると思う。
    ただ、被害者の遺族(それも複数)と加害者の関係者が、小さな地方都市で顔を付き合わせて今後も変わらず暮らしていけるのかと考えると、結末にはけっこう疑問も残る。その辺りも含め、続編も期待したい。

  •  ちょうどポケミスで手に取った本書がスペインのミステリという珍しいものだったので、一月のスペイン旅行の間に読むという計画を立てたのだったが、観光とアルコールと時差呆けなどで毎日が睡魔との闘い、1/4程度しか読めずに持ち帰ることになる。

     バスク地方のバスタン渓谷で、次々と少女の死体が見つかり、その捜査責任者に任命された女性捜査官アマイア・サラサスは、暗い想い出の残る故郷エリソンドの町に戻ってこの捜査に当たる。

     捜査そのものでぐいぐい進むのかと思いきや、快調なストーリーにブレーキをかけるかのように、本書はアマイアのトラウマともなっている過去の記憶をサブ・ストーリーとして語り出す。そしてアマイアの部下の捜査官たちとのそれぞれのやりとりも、銘々の個性を浮き彫りにさせるように丹念に書き込まれ、捜査ミステリをまるで断章として切り出すかのように分厚い描写で肉付けしてゆく。

     要するに、旅行で疲労した神経のもとで就寝前に手頃な本として読むには少し重たい。むしろしっかりと時間を作ってじっくりと取り組んで読みたい作品なのである。娯楽小説としてばかりではなく、バスクの民の歴史を抱える山村の、民俗学的純文学としても十分に評価されるべき作品でもある。

     アマイアは三人姉妹の三女で、長女と次女が代々続いてきた老舗の菓子製造業を継いでおり、それぞれの夫や兄弟同士の確執を原因とする混乱したシーンが連続する。アマイアの次第に明らかになる過去と家族の衝撃的事実と、現在の混沌が重なりぐつぐつと沸騰する家族の物語は時としてメインストーリーを食うばかりである。

     家族たち、捜査陣、事件に関わる協力者たち、そして死んでいった何人もの少女たちとその風変わりな殺害現場。様々な切り口からの興味を惹きたてて、泡立ってゆく煮汁のように、バスクの冬を切り裁く本作は、三部作の序章であり、映画化され今春スペインで公開を待たれ、予告編の動画も既に見ることができる。人気を得た本書は、その美しい自然が既にファンの観光先として注目されるなど、この山村にとても影響力を与えてしまったということである。

     そんなことであれば、先のスペイン旅行コースこの土地も組み入れるべく努力しておくべきであった。

全6件中 1 - 6件を表示

ドロレス・レドンドの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
アンソニー・ホロ...
ベルナール・ミニ...
ピエール ルメー...
ベルナール・ミニ...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×