発狂した宇宙 (ハヤカワ文庫 SF 222)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150102227

感想・レビュー・書評

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  • 題名と著者名だけは知っていたもの、やっと読めました。

    1954年アメリカはニューヨーク州。月ロケットが発射されたが失敗し、SF出版社社長の別荘に墜落。そこにいた社長、編集者、使用人など11人の遺体が発見された、うち編集者の一人の遺体は無かったが粉みじんになったと推定された・・ が、SF雑誌編集者のキースはパラレルワールドに行ってしまっていたのだった。

    発表が1949年なので現実の出来事とはずれがあるが、キースの行った世界では月へはあっというまに行け、太陽系内では月、金星、火星を地球人は征服。太陽系外のアルクトゥール星人が征服意欲の旺盛な星人として描かれている。この設定は15世紀とかの大航海時代の地球に置き換えたりして、74年前の作品でも読んでいて古臭さは感じなかった。他者の征服、というテーマは時間と空間を、いまのところ、超えるテーマかなと思った。また、人工頭脳メッキーという「意思の球体」が出てきたり、今はやりのチャットGPTの具現化じゃないか?などと驚く。

    ちょっとネタバレになってしまうが、パラレルワールドの具現内容はキースの思い描いたものだった、というあたりおもしろい。アーサー・C・クラークの描く未来世界はちょっと上品な感じがするが、こちらは主人公の男性目線で、しかも時間は同じなので、下世話な感じがする。でも49年のSF雑誌の世界をもじっているのかも。ってこれは解説で筒井康隆氏も書いてました。

    結末はひとひねりあるのだが、この終わり方なら、星新一あたりがショートショートで書いたら、すっきりするんじゃないかとも思った。


    解説が1976.12月付けで筒井康隆。この作品を初めて読んだのは元々社のSFシリーズとあり、元々社?知らないなあと思い検索すると、「第1期全12巻は、1956年4月から10月まで月2冊のペースで刊行。続いて第2期全12巻の刊行にとりかかったが、6冊まで刊行したところで、元々社が事実上倒産し、未完となった」とあった。「華氏451度」「憑かれた人」「新しい人類スラン」「人間の手がまだ触れない」など中学の頃から題名だけは知っているラインナップ。もしかして図書室にあったのか? 



    原題:WHAT MAD UNIVERSE 「この狂おしい世界」って訳してもいいかな。

    1949発表
    1977.1.15発行 1986.4.20第15刷 図書館

  • SF。多元宇宙。
    まさに奇想天外。
    主人公のような狂った世界を体験したら、本当に発狂するかも。
    ストーリー自体はかなり都合が良い展開で、けっこう単純。
    ドキドキハラハラしながら読む感じの、コミカルなエンタメ作品だと思う。
    もちろん好き。

  • 祖父、母と好きな作品。母に薦められて読んだらおもしろい!キースが訳もわからず追われているときは、はらはらしながら読みました。

  • 多元宇宙テーマのSF。主人公は、SF 雑誌の編集者キース・ウィントン。ある夜,月ロケットが地上に墜落した事故の巻添えになる。意識を取り戻したウィントン。だが、身のまわりの世界は何か異質であることに気づき始める…。彼は、事故のはずみで、もうひとつの宇宙にまぎれこんでしまったのだ。
    異星からの侵略者のスパイと疑われ、追われる身となる。そして、硬貨が廃止され、夜は「濃霧管制」なる濃密な暗黒物質で街が覆い尽くされる社会。一方、火星や金星、そして月への入植が進み、街には月人が共存している。 牧歌的、素朴というか、幼稚とすら思えるディテールとストーリー展開。1949年刊という時代性なのかな、と思いながら読み進めた。
     ところが終章に近づき、土星軌道上の地球防衛艦隊旗艦に舞台を移してからの、さらなるもうひとひねりが鮮やか。稚拙の感すら抱かせたもうひとつの宇宙の舞台設定の理由・根源が明らかにされる。その宇宙の成り立ち・ディテールがどこかマンガじみていた理由が判明するのだ。いわば、メタSFともいえる構造・構成になっている。
    舞台転換がスピーディで、物語展開はとっても自由。気楽に読み進めるのがよし。という作品。
     巻末の解説は、筒井康隆筆。これまたのびのび書いていて楽しい。

     

  • 最初の数十ページで引き込まれる。ワクワクドキドキ、これからどうなるんだろう。今、ここにある世界がどういうものなのかの謎解きは本当に楽しい。主人公と同化する感じ。
    謎解き部分はちょっと笑える。なんじゃそりゃ。それもまた良し。

  • 多元宇宙論的SF。とある事故で平行世界に飛ばされた主人公の奮闘を描く。後半には若干のスペースオペラ要素も。発表は1949年で、可能世界の現実性についてのデヴィッド・ルイスの議論以前。この時代にこれだけのものを書いたことに驚嘆せずにはいられないが、今の目で同趣の作品と比較しても、傑作の一つに数えて良いと思う。読後の余韻として残ったのは、この結末がハッピーエンドかどうかという問い。この世界・あの世界・その世界において、また主人公にとって、どうか。作品は判断を読者に委ねている節がある。他の人の感想を聞きたい。

  • とある雑誌でこの「発狂した宇宙」の記事があった。たしか昔読んだはずだが、ストーリーを思い出せないので再読。
    元祖平行宇宙物。SFには時代とともに陳腐化する物もあるが、この小説は大丈夫、何しろ無限のあらゆる前提の平行宇宙があるのだから、何でもあり。

  • ロケットが墜落した衝撃で、パラレルワールドに飛び込んでしまうドタバタ。

    このパラレルワールドが並大抵のものではなく、宇宙旅行も当たり前なら、宇宙人による地球人の大殺戮も当たり前と、読んだ人以外何書いてんのかわからないと思うが、要はSFの世界に飛び込んでしまうわけだ。H.G.ウェルズは歴史家になっていたりして、SF読みにとってはクスリとくる設定。

    ただ一つ引っかかり続けるのが、自分の知り合いが超有名人になっている。なぜか…という理由も、きちんと最後で拾われて説明される。最初の前振りも生きてくる。そしてそこで予想したオチに…。

    SF業界などの内輪ネタをふんだんに散りばめ、星間戦争から何から詰め込みまくって、更には文章がうまいし訳もいい。面白くないわけがないのです。

    代表作は「火星人ゴー・ホーム」だそうで、こちらも読みたいが、なかなか手にはいらないのだよなあ。

  • フレドリック・ブラウンの処女長編は多元宇宙の古典的名作です。
    刊行されたのが1949年だけあって、本書では月人が地球上を闊歩したり、火星人や金星人なんてものが存在してたりします。だから古臭いと言われるとそこまでなのですが、どちらかというと開けた夢があって良いなあと思うのです。
    こんなにだだっ広い宇宙なんだから、こんな宇宙があってもいいじゃないか、もっと多様な異星人と交流して、時には種の存続をかけた恒星間戦争をしてもいいじゃないか。そんな未来に寄せる期待溢れる夢でいっぱいな小説です。
    無論、これは当時と比べ、ある程度宇宙の輪郭がぼんやりながらも解ってきた現代だからこそ抱く思いなのかもしれません。また、本書が刊行された時代は、このような作品で溢れかえっていて、この作品が特別そうだというわけではないのでしょう。その点を踏まえて、解説で筒井康隆氏が雄弁に語っていましたが、この作品がパロディちっくで、茶化した体の作品であったとしても、こどもっぽい無邪気さが感じられるのは、著者自身がこんな宇宙を夢見ているからではないのかなぁ。
    「天の光はすべて星」を読んだ際にも感じましたが、著者のこういう無邪気で夢見る作風がとても好きだと改めて認識した次第です。

  • ●内容
    ・77年刊行の多元宇宙ものの長編。
    ・SF雑誌編集者が、ある事故をきっかけに「発狂した宇宙」に迷い込む。


    ●コメント
    ・違う世界で違う常識の元、予想もしない危険を潜り抜けつつ真相に迫っていく様子は好奇心をかき立てること著しい。物語の後半で読者は「元の世界」と「狂った宇宙」のつながりを知らされる。
    ・ユーモアに定評がある著者らしく、物語のラストは一般のSFとは少し異なる。

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著者プロフィール

フレドリック・ウィリアム・ブラウンは、アメリカ合衆国オハイオ州シンシナティ生まれの小説家、SF作家、推理作家。ユーモアあふれるショートショート作品で知られている。

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