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闇の左手 (ハヤカワ文庫 SF (252))

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制作 : Ursula K. Le Guin  小尾 芙佐 
  • 早川書房 (1978年9月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (379ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150102524

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闇の左手 (ハヤカワ文庫 SF (252))の感想・レビュー・書評

  • 寓話や象徴的な描写が細かく散りばめられ、異世界の描写も(かなり地球に近いとは思うが)地球との異質さが強調されていてよかった。
    この話の一番の見所は山岸真氏の解説にもある通り、後半の脱出行。同じテントの中で陰陽について、友情について、愛についての思索を深めるシーンが素晴らしい。
    違うからこそ、その間に愛が生まれ、架け橋となる。ただ、両性具有のゲセン人の架け橋の要石は血と骨で完成してしまっている。冒頭も、終盤も。
    タイトルの闇の左手は脱出行の途中で出てくる民話。
    光が闇の左手、左手と右手が決して同じ形状をしていないように男と女が同一になることはないが、鏡像体になっているからこそ、左手と右手を重ね合わせることができるのかもしれない。

  • ヒューゴー賞、ネビュラ賞受賞作品。言わずと知れたSFの名作。
    これが続き物(ストーリーがではなくて同じ世界設定の別の小説がこれの前にあるという意味)であることをあとがきで知った。そちらを最初に読んでいれば、もっと最初から入り込みやすかったかもしれない。
    訳もすごくよかった。章ごとに書き方が変わっていて、良い訳者さんだなと思った。

    全編通してとにかく寒かった!笑 冬に読めば雰囲気出て良いかな。
    これが名作だっていう前情報がなければ序盤で読むの挫折してしまっていたかも。なぜならこの小説は報告書とか伝承とかいう形をとって進むから、世界観や用語説明が一切ないのだ。
    しかし完璧に構築された世界設定や文化は、読み進めるうちにだんだん理解できるようになってくる。手探り状態で異星に来てなんとか適応しようとする使者ゲンリー・アイと同じ目線でこの世界を体験しているような気分になれるのだ。
    たとえば何度となく出てくる「シフグレソル」、読むうちになんとなく意味がわかってくるのだけれど、日本語に訳すとなるとなんだろう? 体面? 面子? 儀礼? 形式? 礼? うーん。わからないけれども、わかる。他言語を体得する時の気分そのものだ。

    それにしてもいやほんと、完璧な異世界構築には脱帽する。これがほんとの「異世界もの」だよ。ここまで徹底するのにはどれだけの知識と調査と細かな想像力が必要だったのだろう。そこに住む人間の性質に極寒の環境や動植物の存在が大きく影響しているとか。世界構築がいちいち論理的。戦争という概念がないなんて我々には信じられない国々のことも、ただのifの夢物語なんかじゃなくて「こういう文化、環境、歴史だからこそないんですよ」という説明をちゃんと与えてくれる。素晴らしいね。

    さてこの小説を特徴づけている両性具有、ジェンダーの話。ケメル期とか、動物の発情期みたいなものだよね。そう考えると確かに年がら年中ケメル状態の我々の方が異常だよなあ。実際の動物にも両性っているわけだし、突拍子のない空想と言う風には思えなくなってくる。我々の常識で言えば一見ありえない体の構造をした人々なのだけれど、読了する頃にはゲンリー・アイと同じようにこっちの方が変な人間という風に思えてくるものだから不思議だ。

    本書の所々で「男性的」または「女性的」な特徴について言及されているわけだけれど、性が固定されていない世界で唯一性が固定された「男性」のゲンリー・アイが男性性や女性性に考えを巡らせる様は面白い。目の前の人間をつい男性っぽいとか女性っぽいとか考えてしまったり、この人のこういう部分は酷く女性っぽい、とか思ったり。その視点はその星の人にはないもので、本人たちは今自分男寄りだわー女よりだわーとか微塵も考えていない。ゲンリーに染みついた思い込みからつい考えてしまうこと。それで、特に初期のゲンリーは男/女という二元論で人を捉えようとしがちだということがわかる。でも終盤ではその二元論的思考からも脱却しようとしている。
    ジェンダー問題を考える画期的な素材の小説にもなり得るけれど、一方で男性的な性質女性的な性質もはっきり書かれているわけで、はてさてジェンダー論者はこの小説をどう評価しているのやら。気になるところ。

    気になると言えばもう一つ、所謂「腐女子」の方々はこの小説を腐女子的な目線でどう楽しむんだろう? 終盤のゲンリーとエストラーベンに芽生えた友愛、あれは感動的だ。しかしBL?ではありえないし。ケメルに入れば自動的に男役女役に一時的に性別が固定されてしまう世界で腐女子的な楽しみ方はどのようにするのか、気になるところ。

    そしてジェンダー関連で最後に。ル・グィンって女性だったんですね……。読み終わった後知って、物凄くびっくりした。だって文章が感傷的じゃなくてす... 続きを読む

  •  思いつきで借りるにしてはボリュームのある本でした。ゲド戦記は読み始めたら大変だろうと思ってこっちにしたのですが……こっちもなかなか。

     技術とか科学とかサイエンスな方向のSFではなくて、社会学とか、民族学とか、心理学関係の要素が強い、文系SF。刺激を受けたこと、じっくり考たいこと、読み返して堪能したい部分、要素盛りだくさんで、とても楽しかったです。こういう、いろいろ考えたくなるSFは好きー。
     男性、女性という区別がない異性側が、最初は変わった設定だなぁと思ったけれど、社会の仕組みやメンタリティへの理解が深まるにつけ、納得できてしまう。とても合理的で、皆の納得する仕組みになっているんじゃないかと思っていまう。その過程が楽しかったです。

     あと、ル・グィン名物なのかな、旅。
     到着すること自体が目的の旅なので、もう、めっちゃ消耗しながら旅をする。これが、着いた先で何かと戦わなきゃいけないような話だったら、こんなにキャラを消耗させるわけにはいかないもんなぁ。
     旅自体がとにかく過酷で、体力減らしながらの極限状態が鬼気迫っておりました。こういう状況だからこそ、さらけだせるものがある……っていうことなんだろうけど、それでも容赦ない。

     見た目に騙されちゃうのか、どうしても、私は男性と男性の……のように見えてどきどきするのですが。そういう見方はすべきじゃないんだろうなと思いつつ……やっぱりどきどきするのです。まあ、これは仕方がないこと、うん。多分。

  • The story follows an envoy of the Ekumen, Genly Ai, a male protagonist from Terra. His mission is to persuade the nation of Gethen to join the Ekumen, though cultural barriers prevent him from doing so.

    For one, the people of Gethen are completely gender-less; they are neither "male" or "female". The concept of sex is an integral part of this novel, as seen through the interactions between Genly and Estraven. Despite fixed gender identity, Genly and Estraven form a strong, loving relationship through many obstacles they face together, but one that does not necessarily equal to romance. What's a relationship without a particular categorization or a purpose? It leaves the reader questioning about our existence - how do we define ourselves as a human being?

    I found this idea extremely relevant to today's society as "feminism" and "sexism" are becoming hot topics in our day to day conversations. But what do we essentially want to accomplish? And where do we draw the lines between gender equality vs gender absence? The question remain unclear and uncertain, but it gives a slight preview on what the world could look like if we removed gender roles out of our system.

  • ゲセン人の性格が掴みづらかった。

  • 両性具有の人の事を想像するのが難しかった。小柄な男性としか思い描けず。ジェンダーの問題を語っているみたいだけど、あんまり伝わってこない。どちらが妊娠するか分からないのは面白い。氷原の描写が長く感じた。指輪物語見たいだ。

  • 久々に辞書を引き引き読み進める。重厚なSFを読むこの幸せ……!
    『どうして人は国家を憎んだり愛したりするのですか?(中略)わたしはその国の人間を知っている、その国の町や農場や丘や川や岩を知っている、山あいの斜面に秋の夕日がどんなふうにおちていくか知っている、しかしそうしたものに境をつけ、名前をつけ、名前をつけないところは愛さないとはいったいどういうことだろう?国を愛するとはいったいどういうことだろうか?国でないものを憎むということだろうか?そうだとしたら、いいことではない。では単なる自己愛だろうか?それならいい、しかしそれを美徳とするべきではない、公言するべきではない……わたしは人生を愛する限りエストレ領の山々を愛するが、こうした愛に憎悪という境界線はない。その向こうについて、わたしは無知なのだと願っている』P.262
    その向こうについて、わたしは無知なのだと願っている。

  • 叛逆航路の元ネタ、似過ぎだ、集中できない程に

  • 裏表紙のあらすじを書き写しますと

    遥かなる過去に放棄された人類の植民地、雪と氷に閉ざされた惑星ゲセン。「冬」と呼ばれているこの惑星では、人類の末裔が全銀河に類をみない特異な両性具有の社会を形成していた。この星と外交関係をひらくべくやってきた人類の同盟エクーメンの使節ゲンリー・アイは、まずカルハイド王国を訪れる。だが、異世界での交渉は遅々として進まない。やがて彼は奇怪な陰謀の渦中へと……

    ゲセン人は、人生の大半は男でも女でもないけれども、月に一度のケメルと呼ばれる発情期のときにどちらかになる。男になるか女になるかは選べないので、ある年には父親になって、次の年には子供を産むこともあり得る。当然性別による差別はない。作者はフェミニストなので、こういう設定があるんですけど、これは何より他者との相互理解がテーマですね。ゲセン人から見ると、男性のアイは、四六時中発情している変質者になる。一方アイからすると、男女どちらとも言えない相手にどう接していいか分からない。後半はアイとカルハイドの宰相エストラーベンが、何もない大氷原を二人で旅するんですけど、この旅でお互いに心を通わせていく過程が素晴らしいんです。特にエストラーベンがケメルに入ったときなんか、ドキドキです。想像するようなことは起こりませんので安心してください、ですが。
    特に最後が美しいし、なんとも言えない余韻にひたります。

    これは、ハイニッシュ・ユニバースという同じ世界観を共有したシリーズの一つで、他に「ロカノンの世界」「所有せざる人々」などがありますが、これが一番手にはいりやすいかと。ル・グインのSFは哲学的で、ドキドキの冒険物ではないですが、好きな人は絶対ハマると思います。

  • 文化人類学の影響を感じる宇宙ファンタジー。途中でウラのウラを読んで結末を予想したものの、予想以上に素直な結末を迎えた。3D映画としてヒットしたアバターはこれの影響を受けているような気がする。

  • 20151106
    まるで読みながら自分自身が異星の異文化の中へ入り込んで行くような感覚。序盤はとっつきにくいが、舞台となる惑星ゲセンの説話や、調査報告書、伝説などを挟みながら、複眼的・重層的に語られる語り口は圧巻。地球人である主人公ゲンリー・アイとゲセン人エストラーベンが文化や生態の違いをこえて、また困難極まる氷原の逃避行を経て友情を結んでいく経緯は感動的で、ラストでエストラーベンがアイの目の前で銃殺されるシーンでは涙を禁じ得ない。ゲド戦記と同じく、新たな発見を期待してもう一度読み返したくなる傑作。

  • 惑星「冬」にたったひとりで降り立つ主人公。“国としてのこだわりを捨て、ひとつの星として開国して欲しい”と粘り強く交渉するが、陰謀や政変に巻き込まれ追われる身となる。
    「冬」で進化した人類は両性を持つ種族で、いわゆる「女性的」「男性的」という感覚がないのが面白い。

  • 「ゲド戦記」などでおなじみのル・グインの作品。わたしは彼女の作品は初めてとなる。この作品は、ヒューゴー賞とネビュラ賞を同時に受賞した作品である。ヒューゴ-賞にしろネビュラ賞にしと、女性作家が受賞したのはこの作品が初めてなのだとか。
    もちろん、賞をとったから面白いのだというつもりはないが、いろいろな意味でエポックメイキングな作品として紹介されている。

    人類が地球のほかにも存在しており、その人類たちで組んだ同盟「エクーメン」の使節として、ゲンリー・アイは惑星ゲセンへやってきた。雪と氷に閉ざされた惑星<冬>。その過酷な環境ゆえに、遥か過去に人類がやってきて放棄した植民地。
    彼はもちろん外交関係を開き、同盟加入を促すための使節である。
    まずカルハイド王国をたずね、そこでエストラーベンという実力者に庇護されつつ国王に会える日を待ちつづける。
    この星の人類は両性具有という性質を持つため、特異な社会を形成していた。
    そんな中、アイは惑星を巡る陰謀に巻き込まれていく。


    前半はひたすらゲセンの社会や風景を描写する文章が続く。
    カルハイドとオルゴレインという2大国の様子が、緻密な文章で描かれていき、まるで自分がそこを知っているかのような錯覚を覚えさせる。
    しかし圧巻はその後半。
    惑星<冬>の中でも一番寒く過酷な地域を選び、脱出劇を試みるアイとエストラーベン。その過酷な自然描写、異性人とのたった二人きりの逃避行の中で芽生える確かな友情が、細かに、しっかりと、丁寧に描かれている。
    そしてエストラーベンの故郷で迎えるラストシーン。
    真摯な心は、万国共通なのかもしれない。

    どうやら彼女の作品は<ハイニッシュ・ユニバース>と呼ばれている未来史が基本となっているものが多いようだ。
    この作品もそのうちの一冊。
    ぜひ他のこの未来を見てみたいと思う。

  • 20代の時、読もうと思ったけど、文章が頭に入ってこないので挫折。ところが20年経ってふと手にとってみたら読めた。それでも最初は理解できないところがたくさんあり、翻訳なのに洋書を読んでいるような気分だったが、結局最後まで読んでしまった。SFだが文化人類学を踏まえたハードな異世界ファンタジィではあるけれど、本質的には恋愛小説だと思う。萩尾望都のSFとか影響を受けていると思った。確かに名作。登場人物を整理してもう一度読み返したいと思う。

  • そんなに派手さのあるストーリーではなくて、気がついたら読み終わってた。使節としてやってきた主人公と、その星の住人の一人であるエストラーベンとの心の交流がこの作品の軸なんだけど、そこにあまり感情移入出来ず

  • すごく読みにくかったけど ずっしり頭に残っているという事は 面白かったんだなぁ〜

  • ル・グィン作品の熱心な読者ではないので的外れなのかもしれないが、SFというよりはやっぱりファンタジーっぽい世界だった。
    文化人類学的なアプローチやジェンダーがよく話題になるル・グィンだが、そういった側面を抜きにしても面白い。確かにSF(ファンタジー)的な世界ではあるが、作中で描かれているのは割と普遍的な価値観であり、人間であったりするように思う。

  • 重厚さと読みやすさを併せ持った名作。雰囲気も抜群にいい。

  •  読み返すのは4回目か5回目。でも、今回でようやく物語の本当の面白さが分かったようにも思います。(←遅い)ゲセン人の不思議さに気を取られがちだったが、それ以上にエストラーベンという個人が魅力的であり、最後には性差など(たとえ両性具有であろうと)結局は問題ではないのだ、という気持ちになりました。またきっと読み返します。

  • 両性の人々しかいない社会の思考や性質に驚くことしきり。
    これまで両性の存在そのものに神話性を見ていたが、ここで語られる人々は生々しく、冬の冷たい重さに耐えるだけの存在感があった。
    異星からの来訪者と彼を迎えたゲセンの者とそれぞれの視点から語られ、星や国の神話・伝承を挟むことで前半は短編集のようだったが、後半の旅路はすべてをまとめあげて重厚。

  • 入り込みすぎて、読後こころが…持て余すほど重い…

    ル=グインの描く未来世界、もうひとつ(?)の宇宙での話。
    極寒の常冬の星に住む、両性具有(?)の人々と、そこに降り立った大使の物語。

    ル=グインの作品の魅力は、何と言ってもその世界観の広さと重厚さだと思います。
    ひとつの連続した宇宙の話を書きつつ、そこに存在する星々は多様で、われわれとは全く違う世界、文化、宗教、生態系で生きている。そんな世界を次々と描き出す作者に、畏れすら抱くほどです。

    今回の作品も、ゲセンの世界が目前に迫るようでした。
    当初は大使ゲンリーと共に、未知の世界に戸惑い、好奇心を感じ、緊張感を持って受け止めました。そしてクライマックス、男と女である「異星人」(ゲセンの人々から見て)に再会するときには、顔をあげればそこにいる人々であるにも関わらず、再度ゲンリーと共に驚き、当惑します。
    あの長い作品を読むうち、私も彼とともにゲセンに暮らしていたような感覚がありました。

    前半部、何もかも異なる星での暮らし、交渉、結末…そして、壮大な後半部に描かれる、文化や背景をすべて超えたふたりだけの真っ白な向き合いと、私の思うどの形とも違う「愛」

    苦しくて愛おしくて、言葉になりません。

    それでも、人のこころから生まれるのは、未知への好奇心、未来への希望。
    ラストシーンに、彼の子に救われました。

  • 本当に人同士が分かり合えるには、共通の体験が必要に感じた。互いに理解し合うためには、信頼という土壌が必要

  • 重厚。異星の文化を真正面から朗々と/切々と、学者の目で/個人の目で描き上げた作品。政治的ファーストコンタクトものとも言えるけど、主人公は迎え入れる側ではなく単身切り込む側。極寒の星で政治の道具として扱われ/疎ましがられつつ、唯一心を通わせた現地の失脚王と共に亡命の旅をする。文章カタめなのと固有の単語が多くてやや読み進め難いが、文化的差異ゆえの行き違いや、それを乗り越えて相互理解が芽生える様子には心が躍る。政治的な云々より、一般人であるセレムの息子の最後の台詞がコンタクトSFの正道でやはりぐっと来る。

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