ユ-ビック (ハヤカワ文庫 SF 314)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150103149

感想・レビュー・書評

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  • めちゃくちゃおもしろかった!
    めちゃくちゃおもしろかった!!
    めちゃくちゃおもしろかった!!!
    すごいっ。

    クライマックスから読後の現在、私の身体状況は「頭がクラクラして目の周りがピクピクして指先が痺れている」。
    体の様子はまるで過呼吸の時のようだけど、お腹の底から楽しくて、顔はにやにやしっぱなし。
    最高!

    私があらすじめいたものを書いて、一体何の意味がある?
    「わたしはユービックだ。(中略)わたしは<ことば>であり、わたしの名前は決して口にされず、誰も知らない。(中略)わたしはつねに在りつづける。」(p.315)
    この部分を引っ張ってくるぐらいしか、私にはできない!!
    あー、本当に、おもしろかった!!!興奮!

  • 超能力者による産業スパイ活動が日常茶飯事となっている近未来。超能力者集団の怪しい動きを阻止すべく集められた不活性者(超能力者の能力発現を阻止する能力を持つ者、いわば「反超能力者」)達を率いて月面に乗り込んだジョー・チップは、敵の返り討ちに遭って雇い主ランシターを失ってしまう。大きな痛手を受けて地球に帰還した彼らが見たものは、あらゆるものが古び朽ち果ててゆく恐るべき時間退行現象に見舞われた地球の姿だった。退行現象を止められるのはただ一つ、「ユービック」と呼ばれる謎の物質のみ。不活性者たちも一人、また一人と退行現象に巻き込まれて死んでゆく中、何とかこの現象を食い止めようと奔走するジョー。果たして時間退行現象の原因とは、そして「ユービック」とは?

    うひゃー、やられた。面白いですわ。
    冒頭の超能力者集団と不活性者集団の対決に至るストーリー展開で、これは手に汗握る超能力アクションが繰り広げられるのか!?と思いきや、この設定は途中からどうでもよくなりますヽ( ´ー`)ノいやホントにヽ( ´ー`)ノ。この「不活性者」というアイディアだけで充分SFが一本書けると思うんですけどね、ディックにはそんなことどうでもいいんですねぇ(笑)
    それよりもキーポイントになるのが、同じく冒頭に登場する「半生者」というもの。事故や病気で死にかけている人間を冷凍棺桶にブチ込んで死期を引き延ばし、遺族や関係者が必要な時にだけ、脳を活性化させてマイクを通して会話できるようにする。生者の都合で脳を活性化させられるたびに死へと近づいて行く、死んだわけではないけど生きているとも言えない存在です。この何とも気色悪い(ディックらしいとも言える)存在が最初にちらっと登場するのですが、これが後々大きな意味を持ってきます。

    ストーリーはディック作品にしてはかなりスムーズに読める方で、SFサスペンスとして、ちゃんと破綻なくまとまってます。とはいえ、物語全体に漂う不穏なムード、そこかしこに登場する薄気味悪いガジェットなどは実にディック的。時間退行現象が始まってからの重苦しい閉塞感に満ちた描写は、読んでるこちらも息が詰まってくるぐらい重い重い。救いがないのに前向きなラストも印象的。
    またこのラストがねぇ。それまでの謎が解けて一応スッキリしたなー、と気を緩めたところにえっ!?Σ(-Δ-;ですよ。ディック節炸裂ですねぇ。
    前回紹介した「虚空の眼」よりもディック臭が強い作品だと思います。でもかなり読みやすいので、初心者にもお勧め!(-_☆

  • ディック特有の現実と虚構、生と死のような相反するものの境界を崩し、曖昧にされた世界観が展開される。ストーリーは時間退行現象が始まる中で、少しずつ手がかりを見つけていくミステリーのように読みやすい。前半と後半で全く印象が変わるが、それにしてもコイン投入式のドアはめちゃくちゃ不便そうだし、何より主人公のジョーがお金なさすぎてそのへんの描写は面白く読めた。一番最後の章があることによって一気に本書を読んでいる読者自身も物語世界に引きずり込まれるのが終わり方としてベストだと思った。

  • 初版1969年の時代に1992年の未来を描いた作品。超能力者から一般人を護るための不活性者を擁する良識機関が存在し、そして冷凍処理された死者との対話が可能になった未来。超能力者を追って月に行ったランシターやジョー・チップ一行だが、相手の策略にはまってしまう。そこからの描写は、時間が逆行する中でジョーが中心となっての謎解きの様相を示す。題名となった「ユービック」が重要な小道具となっている。この世界観は映画『マトリックス』のような感じだ。

  • ※ネタバレあり! ここ以外でも決して裏表紙のあらすじは読まないように!

    と、最初に断っておかないといけないぐらい、この裏表紙のあらすじはひどすぎる。要約にもなっておらず、作品を正確に捉えていないばかりか、核心部分(しかも残り100頁を切った部分)にまで踏み込んでネタバレをしている。まさか表紙が変わっても直っていないとは思わなかったが、このネタバレを避けて読むのはもはや様式美だろう。自分の場合は無理だった。と、いうのも自分がこの小説のあらすじを知ったのは巻末の作者の別作品紹介で、そこに堂々とユービックのあらすじ、もといネタバレが書いてあったのだ。田舎だと回避不可でしたねw

    それはともかくとして、まず驚くのはSFガジェットの豊富さである。消費社会をあざ笑うかのようなコイン投入しないと動かない家電製品全般に、半生者という、死者とコンタクトできる施設など、世界観が魅力的である。テレパスに対抗するための不活性者(イナーシャル)という超能力を中和する存在なども面白い。特にプレコグによるビジネスの未来予知や、相手の申し出の裏をかくためにテレパスに心を読ませるというのは実にSF的な、近未来の情報戦っぽくて笑ってしまった。かと思えば、因果律にまで及び、過去に起こった出来事を書き換えて現実をパラレルワールドの方へスライドしてしまう脅威の能力者の女パットなど、そのイマジナリーの飛躍はとどまる所を知らない。

    そんな能力者が月に集結し、爆弾による騙し討ちに遭うわけだが、ここから能力者同士にバトルロイヤルになるかと思えばそうはならず、爆発の影響で訪れた時間退行現象という謎の超現象から逃げ惑うサイコ・サスペンスへとジャンルはガラリと変転する。肉体が対抗してミイラになる様や、珈琲のクリープが腐ったり煙草が風化してボロボロになる描写は中々にゾッとしてしまう。合間に挟まる死んだはずのランシターからのメッセージも相まって、事態は悪夢的な様相へと変貌を遂げる。

    そんな現象の果てにたどり着いた真相は意外の一語であり、ここに来てようやく作品のテーマが現実の虚構性とそれらの喪失であるということに読者は気付く。実は死んでいるのはジョー・チップのほうだという真実がその現実の不確かさを暴き、そこから章ごとに注釈として付いていた謎の物質ユービックが時間退行現象の対抗策としてその正体が明らかになる。そして黒幕かと思われたパットではなく、純粋悪だったのは、冒頭でランシターと妻の会話を邪魔していた半生者の子供ジョリーであり、怪物的な少年が姿を表わすことにより、物語は一気にクライマックスへと突入する。随分遠いところを彷徨った本作の物語ではあるが、凄い角度のロングパスで冒頭の話とクライマックスが繋がるさまは見ていて惚れ惚れとする。綿密な計算されたプロットいう印象はあまり受けず、とっ散らかりそうになった話のパーツが、後から意味を帯びて浮かび上がったような、そんな不思議な読後感だった。小説の定石からは逸脱しているが、この作品丸ごとで現実感をあやふやにしているのは純文学的な要素も感じて実に素晴らしい。ユービックとはまさに万能で、神の意匠ではあるのだが、それに反して挟まれた説明はひどく大衆的な万能アイテムに過ぎず、ここにディックの対比表現の上手さや皮肉のセンスが光っている。オチもまたループめいたゾッとするものであり、まさに悪魔的な読後感であった。ネタバレ表記こそ至極残念な本作だが、それを踏まえても名作であることに疑いの余地はない。

  • あらすじがネタバレと聞いたので一切見ずに読んだが、おおう、なんだこれ、すごい世界だ。と思わず嘆息してしまう。

    超能力者、半超能力者という語感から、X-MENのような展開を予想していたら話は凄まじい勢いで違う方向に転がっていく。グイグイ読ませる怪作だった

  • 時は、1992年。
    読心能力者(テレパス)や予知能力者(プレコグ)といった超能力者がはびこる世界。不穏な動きをみせる超能力者を阻止すべく月面へ向かったランシター率いる不活性者らは逆に超能力者の反撃にあってしまう!
    辛くも超能力者の攻撃を逃れた技師ジョー・チップは他の不活性者らとともになんとか地球へ帰還するが…更なる異変が彼らを待ち受ける。

    ミルクは腐敗し、タバコはひからびる。
    退行していく時間によって、次々に倒されていく不活性者たち。
    死んだはずのランシターから贈られる謎のメッセージ。
    敵は誰で、何が起こっているのか。生き延びるためにはどうすれば…!
    そして、ユービックとは何なのか…!

    これはやられた。ディックおもしろすぎ。
    スリル溢れる展開と複雑に絡み合ったミステリアスな物語は、最上のエンターテインメントといっても過言ではない。

    超能力が産業スパイ目的で悪用されていたり、それを阻止する不活性者がビジネス化されていたり、自宅のドアを開くためにわざわざ5セント支払う必要があったりと、この独自の進化を遂げた世界観だけでも十分な面白みがあるのに…それらはあくまで背景でしかない。もう全ッ然関係ない。

    序盤にパットの能力を見せ付けられた瞬間から、どこまでが真実か解らなくなってしまった。ディックって人は、にくいことをしますね。
    物語も終盤に入り、複雑に絡み合ったいくつかの事象は整頓されて、やれやれ一安心したのも束の間、ラストで再び頭を抱え込むことになった。
    ディックって人は、ホントにくいことをする。

  • ディック2冊目。
    アンドロイドより面白い。
    amzonのレビューにジョジョっぽいと矢鱈と書いてあるが、確かにジョジョっぽかった。

  • とてもおもしろい。

    最後の章に疑問が残ったが、とある説を聞いて全てが繋がった。

  • 現実が何か分からなくなる作品で、
    ディックらしさが出ている。

    ユービックというスプレーが出てくるのだが、
    ユービックの効果がなんなのか分からない、
    敵も味方もわからない。
    でも面白い。

    途中で出てくるCMの宣伝が、
    ユービックの謎を増やし、
    読んでいる者を混乱させる。

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