ヴァーミリオン・サンズ (ハヤカワ文庫 SF 691)

  • 早川書房
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本棚登録 : 87
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (305ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150106911

感想・レビュー・書評

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  • 後に見られるドぎつい皮肉や毒は薄めでファンタジー要素強めだが、これはこれで素晴らしい
    この時点で後の作風に見られる特徴的なエッセンスも随所に散見される
    現実の生々しさより非現実性の方が強いが、それが良い
    舞台設定が実に良く、砂漠だがギラギラしていない、人物もどこか乾いている
    ここでは終わりを描くというより、終わった後の世界を描いている
    それは索漠とした虚無感にどこか安心を感じるような、どこでもない感情の終着点だ
    過ぎ去った夏か終わらない夏休みの中か、または廃墟で時間の流れを見出すようなロマンを感じる
    夏休みの読書感想文におすすめ

    大休止と浜辺症候群というキーワードが出てくるが、打倒すべき障害というよりあるべきものとして肯定的に描いている
    登場人物はなにかしら手の届かなくなった過去に囚れているが、底が見えないバーミリオンサンズのキャパシティは全てを収容する
    個々が固定観念を克服するためには、こういった何か超越した世界が必要なのだろう
    冒頭の作者のステイトメントにあるように、遊びが仕事で仕事が遊びになるというくだりは完全に同意。文明が行き詰まった先に求める理想郷は現実も夢もまぜこぜ調和して混ざり合った世界なのだろう
    例えばバーニングマンなど現実的に実践しようとする動きもあり、未来予測は的確で、現代人の心理傾向を鋭く拘えている

    これこそ詩のような『スクリーンゲーム』、ストレートな怪忌憚『歌う彫刻』、記号部品のように消費され消える現代のコンテンツのありようを示唆している『スターズのスタジオ5号』など各話は結構バラエティに富んでいる。『希望の海、復讐の帆』の絵の合成は今のAIの概念だし、スターズ~の詩の生成マシンはまんまchatGPTではないか
    その中でも作者にしては比較的すっきり爽やかな余韻で終わる『スターズのスタジオ5号』が特に良い
    シニカルな芸風だと思っていたが、情感や詩情も大切にしていることがよくわかる
    人物自体が台詞で心情を多くは語らず他の状況描写で説明し、影響受けたのか知らないが村上春樹にも似た作風だが、こっちは読めてしまうのはなぜだろうか
    どれだけ大仰な比喩表現を重ねても、くどくならず逆に持ち味になるのは類まれな才能だ

    あまり細かいことは気にせず伸び伸びと描いている気がするが、70年代以降書かなくなったというがどういう心境の変化があったのか
    後の作品に比べ現実逃避的な側面の強い内容であることが、興味深い
    この時点で十分に作風は完成しているのに、年齢を重ねてさらに激烈に攻めていったことがすごい。あとやっぱりこの作者の教養の幅広さは異常だ

  • オールタイムベスト39位

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    【要約】


    【ノート】

  • 名作とは思うがこれ以上前衛的になると読めなくなる
    表紙   7点上原 哲
    展開   7点1971年著作
    文章   7点
    内容 730点
    合計 751点

  • 古書店でもけっこうな値段がしていて読めなかったのだが、いただいてやっと読めた。久々のバラード。砂漠のリゾートを舞台にした連作SF?落ち着いた文章は美しいし、芸術を題材にしていて面白いなとは思う。が、天国のようなリゾート生活を体験している身としては、なんだかお尻の居心地が悪い。

  • やっぱり未読未購入の為詳細はそれからってコトで。ちなみにこの本の“サンズ”はSaGaFrontierでのとは違って砂の方らしいですって事だけ。

  • バラードは何を読んで何を読んでいないのかもう忘れた

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