エデン (ハヤカワ文庫 SF 745)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (422ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150107451

作品紹介・あらすじ

惑星エデン-宇宙空間に巨大なオパールのしずくのように煌めくその星に、6人の地球人科学者を乗せた宇宙探査船が不時着した。だが、地表で彼らが見たものは、巨大な生体オートメーション工場と、その大量の廃棄物、そしてエデン人の累々たる死骸の堆積だった。一つの個体が労働部分と思考部分に分かれた複体生物であるエデン人に、いったい何が起こっているのか?地球人科学者はエデンの人との知的接触をはかろうと試みるのだが…。未知なるものとの出会いを豊かな想像力と哲学的視点から描き、『ソラリスの陽のもとに』『砂漠の惑星』とともに三部作を築きあげる問題作。

感想・レビュー・書評

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  • 面白かった、とはっきり言いづらくもあるが、超レム...。こちらの貧弱な想像力はしょっぱなから置き去りにされて、それでも前半は杯や渦巻旋盤の絵など描きながら(適当にしか描けないが)楽しく読んで、後半も半ばワクワクしながら読めたけど、レムの小説を読むと、何とも言えない複雑な気持ちになる。後味が悪い、というのとは違って、ただもう何とも言えないのだ。

  • 夏前に読み始めてようやく読了。
    途中、天橋立でバスの中に忘れて送ってもらったり、家の中で見つからなかったり。
    で、年末の大掃除からの現実逃避でようやく読み終わる。

    難解、というか描写が緻密なため集力を強いられた。

    エデンと呼ばれる地球型の星に不時着した宇宙船の隊員たちの
    エデン人とのファーストコンタクトの物語。
    でも、そこはレム。コンタクトしても理解はできない。
    生産したものをそのまま廃棄する意味不明の工場や、
    死体の山などに戸惑う地球人たち。
    終盤でようやく翻訳機(計算号!)を通じエデン人と会話を試みるが
    やはりすれ違いのまま。
    直った宇宙船でエデンを離れる。

    理解できない世界に出会ったときどうすべきなのか?
    こちらの価値観でその世界に介入してもいいものか?
    という難しい問題をSFとしてみせる。

    労働と思考の分かれた複合生物、匿名の独裁体制、生物学的改造と
    被適合者の抹殺…、不気味な「エデン」の社会は何かの比喩なのだろう。
    ナチスとソ連の間にあったポーランドという国を考えると複雑。

    この理解不可能な他者が、次の「ソラリス」へと続くのね。

  • このモヤッとした終わり方はいかにも。異星生物とのコミュニケーションなんて簡単にとれるもんじゃあないんだよ、と主張するレムさんお得意のファーストコンタクトもの。エデンに不時着した地球人が、スタートレックよろしく未知の惑星を探検してまわる。レムの想像力によって構築された世界観は、描写が具体的なのになぜか脳内で映像に変換できない。だがこれこそがSFとも言える。複体生物にしろ、奇怪な植物や謎の工場にしろ、とにかくすぐには理解できないものだらけだ。それでもその理解不能を楽しむのも良いかもしれない。これで三部作は読破したが「砂漠の惑星」が好みだった。

  • スタニスワフ・レムの三部作「ソラリスの陽のもとに」「砂漠の惑星」「エデン」。

  • ・高校の頃、立て続けにレムを読んでいた時期があり、本書もハードカバー版(しか当時はなかった)で読んだはずなのだが、全く内容を覚えていなかった。スタニスワフ・レムは何度か映画化された「ソラリスの陽のもとに」の原作者で、ポーランドのSF作家。人間の価値観や思考体系を超越した異星の生命体との邂逅をテーマにした「ファーストコンタクト三部作」で世界的に有名になった。本作はその第1作目で、この後に「ソラリス」「砂の惑星」が続く。

    ・惑星エデンへの不時着を余儀なくされた宇宙飛行士たち。面子はコーディネーター、サイバネティシスト、ドクター、物理学者、化学者、技術者の6名。幸いにもエデンの大気構造は地球と似たものだったので、宇宙船の修理と並行して、限られたリソースを有効活用してエデンの探索を開始する面々。精巧な人工構造物が発見され、明らかに高度にオートメーション化された「何か」の生産プロセスが稼働しているのだが、工場の中には、なかなかにグロい有機生命体の死骸が累々と積み上げられていた。他にも、荒涼とした大地に生息する悪臭を放つ樹木(のようなもの)、空を飛ぶ哨戒機のような物体などが6人の前に出現する。正直言って、それぞれがどんな事象なのか、把握するのに骨が折れた。頭が固くなってるからかな。

    ・それにしても6名の宇宙飛行士は、まさに人類の知性を代表したかと思えるほど知性的で忍耐強い。

  • 最後の部分の意味がわからない
    表紙   6点野中 昇
    展開   6点1959年著作
    文章   5点
    内容 710点
    合計 727点

  • 惑星エデンに不時着した宇宙宇宙探査船の乗組員たちが謎の文明の調査をする話である。1959年という時代背景で時代を感じさせる科学技術の描写(機械類に疎いので分かりにくい部分が各所にあった)、結構自由に探索する乗組員たち(今からみると危険への意識が割と大らか)、『ソラリス』に比べ地味な展開などなど読む上で多少難があるが、やや性急ながら終盤に訪れる謎解きはレムらしい知的興奮を与えてくれる。また未知なるものとの邂逅をあくまでも機械を介して成立させ、同時代の娯楽SFが陥りがちだった異星人を擬人化し安易な相互理解に落とし込まないところも先駆性を感じさせる。

  • 普通のSFからソラリスの間って印象。投げ出されてる感じがいい。

  • ファーストコンタクト3部作では最初に執筆された長編。レムの一群のSFに愛着を持つ読者には、この作家独特の世界性が読み取れて、楽しめると思う。レムというブランドを取り除いて、ひとつのSF作品として読むと「ソラリス」の感動には至らない。

  • 『ソラリス』『砂漠の惑星』はファーストコンタクトと呼べるレベルなのか怪しい次元であったが、本作はある程度は意思の疎通ができている。しかし、意思の疎通をはかった結末として何をするのか(しないのか)、その点は上記2つと類似があるし、それがレムの考えなのだろう。

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著者プロフィール

スタニスワフ・レム
1921 年、旧ポーランド領ルヴフ(現在ウクライナ領リヴィウ)に生まれる。クラクフのヤギェロン大学で医学を学び、在学中から雑誌に詩や小説を発表し始める。地球外生命体とのコンタクトを描いた三大長篇『エデン』『ソラリス』『インヴィンシブル』のほか、『金星応答なし』『泰平ヨンの航星日記』『宇宙創世記ロボットの旅』など、多くのSF 作品を発表し、SF 作家として高い評価を得る。同時に、サイバネティックスをテーマとした『対話』や、人類の科学技術の未来を論じた『技術大全』、自然科学の理論を適用した経験論的文学論『偶然の哲学』といった理論的大著を発表し、70 年代以降は『完全な真空』『虚数』『挑発』といったメタフィクショナルな作品や文学評論のほか、『泰平ヨンの未来学会議』『大失敗』などを発表。小説から離れた最晩年も、独自の視点から科学・文明を分析する批評で健筆をふるい、中欧の小都市からめったに外に出ることなく人類と宇宙の未来を考察し続ける「クラクフの賢人」として知られた。2006 年死去。

「2023年 『火星からの来訪者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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