- Amazon.co.jp ・本 (465ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150108267
作品紹介・あらすじ
理想の植民星を発見した探査船ケンタウルス号。だが、その唯一の帰還者で、異星生物を持ち帰った女性生物学者の報告が明かす恐るべき真実とは?…性心理を探求する「一瞬のいのちの味わい」、太陽フレアにまきこまれ、NASAとの接触を失ったサンバード号の乗務員が見た未来の地球の異様な姿を通して、ヒューゴー、ネビュラ両賞受賞の栄冠に輝く「ヒューストン、ヒューストン、聞こえるか?」など、つねにSF界に衝撃を与えつづけたティプトリーが、現代SFの頂点をきわめた傑作中短篇7篇をここに結集!
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
ローカスオンラインの20世紀オールタイム・ベストを眺めていると、中長編(Novella)部門の3位に「ヒューストン、ヒューストン、聞こえるか?」、57位に「「一瞬のいのちの味わい」が入っていたので再読。
ティプトリーの作品集のなかではいまひとつ印象が薄い本で、どうも読んだ記憶が曖昧だったが、うん、うん、やっぱり読みづらい。というのは「中長編」という長さが、なかなか中途半端で苦手なのだ。
ちなみにローカス賞では、
短編小説(Short Story)=7,500ワード以下、 中編小説(Novelette)=7,500~17,500ワード、中長編小説(Novella)=17,500-40,000ワードで、それ以上が小説(Story)となる。
また、1頁あたりは250ワードが基準だとか。
で、感想。
「ヒューストン、ヒューストン、聞こえるか?」は、「300年後の未来にタイムスリップすると、男は俺たち3人だけ!」…というエロゲみたいな設定。でも、そこは、ジェームス・ティプトリーJr.ことアリス・シェルドン。「男ってイヤねー、すぐ威張るし、戦争するし、宗教とか言い出すし、キャー射精したわ」と女性のおしゃべり的フェミニズムで木っ端みじん。男としてはなんともバツが悪い。
女性が、男性という異星人と出会うファースト・コンタクトものの一種でもあるのね。
「一瞬のいのちの味わい」もファースト・コンタクトものの一種。人口過剰から移住可能な星を探すために宇宙に出た探査隊が見つけた人類の目的、というネタは非常に面白くユニーク。だけどやっぱり中途半端に長く登場人物も多いので前半がだるい。バサッと短編で読みたかった。
「人間であることを文化や知能ではなく相互の生殖能力」と定義する「「汝が半数染色体の心」、反実験動物な典型的な話かと思いきやらラストが意外な「ネズミに残酷なことのできない心理学者」、短編でぐぐっと悠久な時間を語る「すべてのひとふたたび生まるるを待つ」なども面白かった。
ティプトリーが女性であることがわかった後の混乱についてふれたアーシュラ・K・ル・グィンの序文も秀逸。
ここには
本物の物語がおさめられています。 -
「ヒューストン、ヒューストン聞こえ るか」目当てで読んだが、それ以外 の、性を超越した二編に戦慄した。な んでここまで性を踏みにじり、そして 高尚なものにすることができるのか。
-
「ヒューストン、ヒューストン、聞こえるか?」評判通り良かった
-
ふむ
-
古書購入
-
名作だが読者を作品が選択する問題作
表紙 8点上原 徹
展開 8点1978年著作
文章 8点
内容 800点
合計 824点 -
不肖鴨、SF者人生ン十年を過ぎてそれなりの数のSFを読んできた自負があります。が、今でもティプトリーは読むのにある意味「覚悟」を必要とする作家です。数多いるSF作家の中でも、SFというフォーマットを用いて自分の表現したいことを最高の解像度で見せつけることに掛けては群を抜いているティプトリー。解像度が高過ぎて、時々「どうしても合わない」作品もあります。著しく読む人を選びますし、SF初心者にはまずおススメできません。
この短編集は、そんなティプトリーの作品群の中でも、特に作家本人の価値観が表現された作品が多いと感じました。モノによっては「露悪的」とすら感じてしまうぐらいで、ダメな人はとことんダメな短編集だと思います。やはりインパクトがあるのは、ティプトリーの特徴の一つでもある「性」をテーマにした3作で、よくもここまで性を(それすなわち「生」を)「単なる機能」として描けるものだと驚愕すらします。
全体的に暗いトーンの話が多く、読者を突き放すような独特の筆致も相まって、読後感は結構どんよりした感じ。決して面白くないわけではないんですが、それなりに気力が充実している時に読まないと、いろいろとぐったりしそうな本です。SF玄人向けですね。