老いたる霊長類の星への賛歌 (ハヤカワ文庫 SF テ 3-3)

  • 早川書房
3.53
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  • Amazon.co.jp ・本 (465ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150108267

作品紹介・あらすじ

理想の植民星を発見した探査船ケンタウルス号。だが、その唯一の帰還者で、異星生物を持ち帰った女性生物学者の報告が明かす恐るべき真実とは?…性心理を探求する「一瞬のいのちの味わい」、太陽フレアにまきこまれ、NASAとの接触を失ったサンバード号の乗務員が見た未来の地球の異様な姿を通して、ヒューゴー、ネビュラ両賞受賞の栄冠に輝く「ヒューストン、ヒューストン、聞こえるか?」など、つねにSF界に衝撃を与えつづけたティプトリーが、現代SFの頂点をきわめた傑作中短篇7篇をここに結集!

感想・レビュー・書評

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  • ジェームズティプトリージュニアはすごいなぁ。いつもそう思う。何がすごいのか? それは命に関する緻密な描写と随所に感じられる懐の深さ。

    大抵のSF作品は時が流れるにつれて時代遅れになる傾向にあるんだけど、彼(彼女)のSFは生命に関するとても根源的な要素が描かれているので、今でも、多分100年後でもその発想力に度肝を抜かれる。例えるなら、アガサ・クリスティのミステリがいつの時代でも通用するのとおんなじ感じ。

    好きな作品は下記の通り。

    汝が半数染色体の心… 染色体の単数体(XかYのみの1つの染色体を持つ)フレニと、その倍数体であり単体生殖をするエスザアンの奇妙な関係が描かれる。彼らは一世代ごとに交代し、お互いに親と子の関係(フレニがエスザアンを生み、エスザアンがフレニを生む)である。
    主人公たちは調査隊として彼らの星に赴き、彼らが「人類」か否かの認定に、彼らと交配が可能かどうかを基準にするんだけど、この場合フレニが人類でエスザアンは違うとなるのが面白い。また、フレニには、単体の染色体の持ち主ならではの魅力(混じりけなしのXまたはY染色体の顕現)があるという。どんな姿なのか見てみたい!

    一瞬の命の味わい… 人類自体が精子で他の星系にいる卵子に飛び込んでいく存在でしかないという話!
    もうすごすぎる!どうやったらそんなの思いつくんだろう!? エヴァとかもそういう内容だよね。そしてその本題に入るまでの宇宙船の中の人間関係も緊張感があり、退屈しない。

    解説や前書きで、この作品群がジェームズティプトリージュニアが女性であることが判明しつつある時期のものであることが触れられている。そのせいか、性にまつわる話が多く、作品の中で女性の存在感が強くなっているように思える。
    ジェンダーフリーが比較的進んだ現在では、まえがきのル・グウィンの言うとおり、これらは本物の作品で、そこに作者の性別なんて関係ないと思うし、そう考える人の方が多いのでは。とはいえ、上記の作品の傾向に加えてバッドエンドが多いことから、当時の作者の気持ちや周囲からの反応を想像してしまう。
    でも、そのペテンにかけたこと自体が、作者自身の魅力になってるのだから、やっぱりジェームズティプトリージュニアはすごい!

  • ローカスオンラインの20世紀オールタイム・ベストを眺めていると、中長編(Novella)部門の3位に「ヒューストン、ヒューストン、聞こえるか?」、57位に「「一瞬のいのちの味わい」が入っていたので再読。

    ティプトリーの作品集のなかではいまひとつ印象が薄い本で、どうも読んだ記憶が曖昧だったが、うん、うん、やっぱり読みづらい。というのは「中長編」という長さが、なかなか中途半端で苦手なのだ。

    ちなみにローカス賞では、
    短編小説(Short Story)=7,500ワード以下、 中編小説(Novelette)=7,500~17,500ワード、中長編小説(Novella)=17,500-40,000ワードで、それ以上が小説(Story)となる。
    また、1頁あたりは250ワードが基準だとか。

    で、感想。
    「ヒューストン、ヒューストン、聞こえるか?」は、「300年後の未来にタイムスリップすると、男は俺たち3人だけ!」…というエロゲみたいな設定。でも、そこは、ジェームス・ティプトリーJr.ことアリス・シェルドン。「男ってイヤねー、すぐ威張るし、戦争するし、宗教とか言い出すし、キャー射精したわ」と女性のおしゃべり的フェミニズムで木っ端みじん。男としてはなんともバツが悪い。
    女性が、男性という異星人と出会うファースト・コンタクトものの一種でもあるのね。

    「一瞬のいのちの味わい」もファースト・コンタクトものの一種。人口過剰から移住可能な星を探すために宇宙に出た探査隊が見つけた人類の目的、というネタは非常に面白くユニーク。だけどやっぱり中途半端に長く登場人物も多いので前半がだるい。バサッと短編で読みたかった。

    「人間であることを文化や知能ではなく相互の生殖能力」と定義する「「汝が半数染色体の心」、反実験動物な典型的な話かと思いきやらラストが意外な「ネズミに残酷なことのできない心理学者」、短編でぐぐっと悠久な時間を語る「すべてのひとふたたび生まるるを待つ」なども面白かった。
    ティプトリーが女性であることがわかった後の混乱についてふれたアーシュラ・K・ル・グィンの序文も秀逸。

    ここには
    本物の物語がおさめられています。

  • 「ヒューストン、ヒューストン聞こえ るか」目当てで読んだが、それ以外 の、性を超越した二編に戦慄した。な んでここまで性を踏みにじり、そして 高尚なものにすることができるのか。

  • 「ヒューストン、ヒューストン、聞こえるか?」評判通り良かった

  • ふむ

  • ル・グウィン繋がりでティプトリーの傑作中短編集
    彼女が彼女に依頼されて書いた序文が全てを語ってる

  • 古書購入

  • 名作だが読者を作品が選択する問題作
    表紙   8点上原 徹
    展開   8点1978年著作
    文章   8点
    内容 800点
    合計 824点

  • 不肖鴨、SF者人生ン十年を過ぎてそれなりの数のSFを読んできた自負があります。が、今でもティプトリーは読むのにある意味「覚悟」を必要とする作家です。数多いるSF作家の中でも、SFというフォーマットを用いて自分の表現したいことを最高の解像度で見せつけることに掛けては群を抜いているティプトリー。解像度が高過ぎて、時々「どうしても合わない」作品もあります。著しく読む人を選びますし、SF初心者にはまずおススメできません。
    この短編集は、そんなティプトリーの作品群の中でも、特に作家本人の価値観が表現された作品が多いと感じました。モノによっては「露悪的」とすら感じてしまうぐらいで、ダメな人はとことんダメな短編集だと思います。やはりインパクトがあるのは、ティプトリーの特徴の一つでもある「性」をテーマにした3作で、よくもここまで性を(それすなわち「生」を)「単なる機能」として描けるものだと驚愕すらします。

    全体的に暗いトーンの話が多く、読者を突き放すような独特の筆致も相まって、読後感は結構どんよりした感じ。決して面白くないわけではないんですが、それなりに気力が充実している時に読まないと、いろいろとぐったりしそうな本です。SF玄人向けですね。

  • ファーストコンタクト的な中短編7つを収める。過激でどこか突き放した冷たさがある作品が多い。予定調和とか全然無視なので最後まで緊張感があって面白い。「一瞬のいのちの味わい」と「すべてのひとふたたび生まるるを待つ」が良かった。

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