シェイヨルという名の星: 人類補完機構 (ハヤカワ文庫 SF ス 4-3)

  • 早川書房
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150110628

作品紹介・あらすじ

第一級の犯罪者だけが送りこまれる、究極の流刑地シェイヨル。この星でどんな苛酷な刑罰が実施されているのか、知る者はいない。分かっているのはただひとつ、シェイヨルが"死"のない世界だということ。つまり、受刑者の苦難は永遠に続くのだ…表題作ほか下級民の反乱を率いた犬娘の悲哀を描く「クラウン・タウンの死婦人」など全四篇を収録。現代SFきっての名匠が抒情ゆたかに綴る謎と魅惑に満ちた未来史の世界。

感想・レビュー・書評

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  • 先日読んだ『鼠と竜のゲーム』があまりにも素晴らしかったので、意を決して購入しました。定価の倍したけれど…

    本作では下記の4篇とともに「人類補完機構年表」が収録されています。この年表は、断片でしか紡がれないコードウェイナー史の理解を促してくれる貴重な資料であります。

     ・クラウン・タウンの死婦人
     ・老いた大地の底で
     ・帰らぬク・メルのバラッド
     ・ショイヨルという名の星

    伊藤典夫氏の訳者あとがきでも触れられていましたが、コードウェイナー・スミスの作品は、どれも読み始めに苦労します(そういえばジェイムズ・ティプトリー・ジュニアやハーラン・エリスンにも同じ感想を抱いたなぁ)。
    何故なら、現代(或いは他のSF作品)と遥かに異なる文化、慣習、世界観を有しながらも、そういった予備知識が全く説明されることなく、物語が進んでいってしまうからです。まるで見知らぬ土地に捨て去られたような、読者を遠く突き放した作風は、しかし、著者が紡ぐ壮大な未来史の魅力の一翼を担うことに相違ないでしょう。

    さて、既に挙げた4篇はどれも粒揃い。
    とりわけ圧倒的な存在感を示す表題作では、パワフルにしてグロテスクな造形が頭から離れません(窓から覗けるゴー=キャプテン・アルヴァレズ巨像の強烈なインパクトといったら!)。
    しかし、そんな作品の中にも「湿っぽさ」は存在しました。<人間の再発見>に該当する時期でしょうか、幸福と引き換えに人道的な感情を失った真人たちへ、一石を投じる作品が目立ちました。そういう意味で、ド・ジョーンの殉教を劇場的に描いた「クラウン・タウンの死婦人」や「老いた大地の底で」は特筆もの。
    前者は著者が狙ったとおり聖典の一場面を読んでいるようで、いたく感動。

    ところで、SF作品を色々読んできて初めて訳者(というか伊藤典夫氏)に興味を抱きました。気概のこもったお方で、伊藤氏のお陰で当著はよりずっと面白くなったと思う。
    「鼠と竜のゲーム」と本作で、作品を時系列ではなく、散りばめて掲載した件には、全面的に賛同いたします。

  • 人類補完機構シリーズ2作目読了。やっぱり訳ワカラン導入部から始まり、どんどん物語に惹きこまれていく。「クラウンタウンの死婦人」と「帰らぬク・メルのバラッド」でお腹いっぱいなのに「シェイヨルという名の星」でトドメを刺される。あのスズダル中佐が??相変わらずク・メルは魅力的だが、猫耳という描写はどこにもないよ。

  • SF。中短編集。人類補完機構。すべて既読。
    残酷でグロテスクだが、それ以上に美しく感動的。
    「クラウン・タウンの死婦人」「帰らぬク・メルのバラッド」「シェイヨルという名の星」の3作が傑作。
    4作中3作とか内容濃いなー。

  • 「クラウン・タウンの死夫人」は、途中まで退屈だったが、感動して読み終えた。「シェイヨルという名の星」は、不気味な世界が印象的。「鼠と竜のゲーム」と同様、よく分からない話もある。"The Best of Cordwainer Smith"を通読したのは、たぶん今回が初めて。伊藤典夫訳。一九九四年六月三十日発行、定価600円(本体583円)。
    収録作品:「人類補完機構年表」(J・J・ピアス編)、「コードウェイナー・スミスのこと」(ロジャー・ゼラズニイ)、「クラウン・タウンの死夫人」、「老いた大地の底で」、「帰らぬク・メルのバラッド」、「シェイヨルという名の星」

  • 良かった。堪能しました。
    想像力をとことんまで走らせた結果、倫理観やコレクトネスみたいなものを超越して、テーマすらもなくなって、読者も置いてきぼりにして、残酷で稚気あふれる童話が現れる。そんな感じか。
    説明なしで頻出する用語とか、他作品とのリンクとか、現代につながる要素もたくさん。さすがはSFの古典的な名作。
    ところで、自分は各短編をどんな絵が合うかと思いながら読んでみた。その結果、
    「クラウン・タウンの死婦人」:手塚治虫
    「老いた大地の底で」:諸星大二郎
    「帰らぬク・メルのバラッド」:松本零士
    「シェイヨルという名の星」:吾妻ひでお
    の絵柄が合うんじゃないかと思いました。超個人的に。

  • 神曲煉獄篇が元本のようだが、
    罪(原罪)と生きることについて考えた。

  • 「アルファ・ラルファ大通り (人類補完機構全短篇2)」 に収載。

  • シェイヨルという名の星 (ハヤカワ文庫SF―人類補完機構シリーズ)

  • 読む人を作品が選ぶ本
    表紙   5点木嶋 俊
    展開   6点1975年著作
    文章   6点
    内容 790点
    合計 807点

  • コードウェイナー・スミスの人類補完機構シリーズの
    短編集その2。その1である「鼠と竜のゲーム」に
    比べるとSF的なアイディアよりも抒情的なロマンの方に
    重心が置かれているような気がする。4篇、どれを
    読んでも心が揺さぶられること間違いなし。

    この本で一番気に入ったのはロジャー・ゼラズニイによる
    「序文」だということを白状しておきます(笑)。

  • この本は長らくつんどく状態でしたが、シリーズものなので一気に。
    あとがきにもありますが、キリスト教の知識があまりない日本人には
    ピンとこないところもありますが、スミスらしい世界が感じられます。

  • 本短編集と先日読んだ短編集「鼠と竜のゲーム」が合わさって、
    ジョン・J・ピアス編 The Best of Cordwainer Smith(Ballantine Books, 1975)の全訳である。
    かなりツボにはまった作家、作品である。

    読者になんの断りもない用語がポンポンと出てくる
    独特の人類補完機構的世界が進行して行くのだが、
    何故か引き付けられのめり込んでしまう不思議な物語。
    傑作だなぁ。

  • コードウェイナー・スミスは、肌に合わないやつと合うやつの差が激しいんだけど(わたしにとって)、これはけっこう合うスミス。

  • やっと買いました。
    絶版で買えなかったコードウェイナー・スミスの本。
    やっと読めました。
    一万年以上続く人類の歴史。遠未来の物語。

    40年以上も昔に亡くなったコードウェイナー・スミス。
    10年前に翻訳された作品。
    それでも感動はこの本の中にある。


    『シェイヨルという名の星』はハヤカワ文庫から出版されているコードウェイナー・スミスのSF短編集です
    『帰らぬク・メルのバラッド』 も素敵なロマンスだし、『老いた大地の底で』は無茶なじいさんの戦いだし、 表題作の『シェイヨルという名の星』は人体の脅威を垣間見る事が出来る。
    コードウェイナーの宗教観や哲学に溢れた非常に読みにくい文章だけど、コツを掴めば心に残る話しばかり。設定がへんてこりんでおもしろいんやね(*μ_μ)
    そんな中、ボクがいつも感じてしまうのはコードウェイナー・スミスの動物への愛がたくさんつまているという事

    中でも『クラウン・タウン死婦人』は感動やった。
    人間は動物を愛するし、動物も人間を愛する
    ジョーンの「――だけど、いまでも愛してはいけませんか?」という台詞にボクは心を打たれました。
    どういう流れで、この台詞の感動に繋がるかは是非読んでほしい。ヒントはジョーンが犬から作られた下級民であること、それ以上はボクの口からは説明なんてできない。だって心で感動を感じてしまったんだから(*ч∀ч`。)+゚#


    まぁまぁ、本を読んでどう感じるかはその人の人生経験によって変わってくるけど、コードウェイナー・スミスの作品は読んでほしい作品の一つやね。
    SFなんて娯楽小説だとバカにしないで

  • キラキラしたお話。

  • 人類補完機構。4つの短篇が入っています。

    面白かった、と思うのだけどあまり覚えていないので暫定★3つ。

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コードウェイナー・スミスの作品

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