- Amazon.co.jp ・本 (471ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150111922
作品紹介・あらすじ
医学博士のホブスンは、死にかけた老女の脳波の測定中に、人間の「魂」とおぼしき小さな電気フィールドが脳から抜け出てゆくのを発見した。魂の正体を探りたいホブスンは自分の脳をスキャンし、自らの精神の複製を三通り、コンピュータの中に作りだした。ところが現実に、この三つの複製のうちどれかの仕業としか思えない殺人が次々に…果たして犯人はどの「ホブスン」なのか?1995年度ネビュラ賞に輝く衝撃の話題作。
感想・レビュー・書評
-
SFジャンルではあるが、ストーリーの構造は寧ろミステリ。後半のサスペンスフルな展開はハリウッド映画を見ているようだ……。
引っ掛からない点が無いわけではないが、勢いで読ませ切るパワーはある作品だった。
瀬名秀明の解説が、本作を的確に紹介していると思う。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「医学博士のホブスンは、死にかけた老女の脳波の測定中に、人間の「魂」とおぼしき小さな電気フィールドが脳から抜け出てゆくのを発見した。魂の正体を探りたいホブスンは自分の脳をスキャンし、自らの精神の複製を三通り、コンピュータの中に作りだした。ところが現実に、この三つの複製のうちどれかの仕業としか思えない殺人が次々に…果たして犯人はどの「ホブスン」なのか?1995年度ネビュラ賞に輝く衝撃の話題作。」
-
まあまあだった。いや、面白くはあったんですが、私が求めているのは人間ドラマとかドキュメントじゃなくて、SF!スキャンされた人格の科学的な想像とか考察なんだ!と思ってた。とにかく寝取られた男が愛しい妻を思ってうだうだしている話が半分近くを占めて、もどかしかった。
魂の考察、胎児の魂のありかなど、ソウヤーは、「人間」の境界に、特に生殖の方面で大胆に踏み込んでいくなーと思った。それは面白い。
何が本物の人間なのか?父親の存在。魂は?ホルモンや肉体に左右されるのは人間ではないのか?不死性を持たせたシムは?魂波は何を示しているのか?
p403 ほんもののピーターはどれなのだろう?毎朝ベッドから起きあがるときの、ものぐさで短気な男なのか?それとも、カフェインという薬が魔法のように作用したあとでオフィスに到着するときの、集中し、活力にあふれた男なのか?
刺激物と抑制物、阻害因子、男性ホルモンと女性ホルモンを取り去ったら、人間にはなにが残るのだろう?(略)そうした病がその人物の実体をあらわすわけではないー問題は魂なのだから。
自分をそのまま写しとったコントロール。新しい魅力的な連結、笑いを追い求めるスピリット。宇宙の続く限り学び続けるアンブロトス。
p432だが、いずれは克服できる。広漠たる関係においては、広漠たる人生においては、あんなことはささいな事件にすぎない。
p440 ピーターは、胸をどきどきさせながら、息を引き取るサンドラをじっと見つめて、魂波が部屋のなかを移動していくしるしを探しもとめた。
なにも見つからなかった。 -
古書購入
-
う〜〜ん、初読だと思って買ったのに、読み始めたとたんに再読と気付いた。もっとも幾つかのシチュエーションを覚えているくらいで、ストーリーそのものはすっかり忘れてしまってるので、楽しく読めました。
コンピューター中に再生された人格が出てくるところなど、半ばサイバーSFに分類されるのかもしれません。しかし、この作家らしく余りSFっぽい小難しさも無く(本当にハードSFが好きな人から見れば、多分いい加減な設定なのでしょうが)、ミステリー仕立ての非常に読みやすい作品です。
今回読んで、所々の章末に挿入されるニュース報道の上手さと、エンディングの爽やかさが妙に印象に残りました。
-
面白いがロビン・クックが書きたいような作品
表紙 6点小倉敏夫 カバー造形 松野光洋
展開 5点1995年著作
文章 6点
内容 500点
合計 516点 -
脳の活動をスキャンすることで自分の“魂”をコンピューターに展開できるようになっている世界。デジタル化された“魂”(人口生命のようなもの)と、そのオリジナル?の魂から寿命などの制限を取り除いた不死をシミュレートする魂と肉体の制限をすべて取り除いた死後の世界をシミュレートする純粋な魂を作成し、それらが意思を持ってネットワークに放たれたことで、殺人事件などの騒動が起こる。
いろいろ話の展開に多少ひっかかるところがあったり、今となっては古い技術が使われていたりするものの、基本的には物語に引き込まれるように読み進められる。純粋にストーリーを楽しめた。
本のジャンルとしてはSFなのだが、殺人事件の真犯人を探すところはミステリーになってくる。犯人がリアルな人間ではなく、コンピューターで動いているプログラム(魂のシミュレーション)だというのが面白い。舞台設定はサイバーパンクなSFなのだが、ミステリーをSFの世界にもっていくとこんな感じになるのかなというところ。2045年といわれている技術的特異点(シンギュラリティ)を迎えると、このような犯罪も発生するのだろうかと考えると、フィクションではなくなる日がくるのではないかと読み終えてから思った。 -
学生時代、臓器摘出手術の立ち会いで、ひとの死の判定に疑問を抱いた若かりしピーター・ボブスン。彼は、医学博士となった後、観測対象である老女が死ぬ寸前に「魂」とおぼしき小さな電気信号が脳から抜け出ていくことを測定する。「魂」の正体を探るボブスンは、友人にして天才サカール・ムハメドの助けを借りて、自らの精神を三通り、コンピュータ上に複製する。
ひとつ、肉体を持たず、死後の正をシミュレートした「スピリット」。ふたつ、肉体的に不滅であり、不死の正をシミュレートした「アンブロトス」。さいごは、変更を加えず、比較対象として複製した「コントロール」。
複製の観察は、ボブスンに貴重な知見をもたらすが、なんと、複製の誰かが関与したとしか思えない殺人事件が発生する。果たして、犯人はどの「ボブスン」なのか…
ネビュラ賞に輝く本書は、あらすじから解るとおり、とても面白そうなSFミステリーで、確かに、後半の疾走感は素晴らしいものがありました。とっつきやすい物語は決して揶揄されるものではなく、むしろ幅広い層に受け入られやすい良作に仕上がっているように思えます。
ただ、これまで「フラッシュフォワード」や「さよならダイノサウルス」を読んできて思うのが、この著者、物語はキャッチャーで面白いのだけど、アイデアとドラマとビジョンのバランスがどうにも良くなくて、どれも中途半端に感じるのです。特にビジョンの差し込み方に違和感ばかり。これは本書でも感じられて、そのおかげで、どうもスッキリしない。というか、ビジョンを示す割りにインパクトが希薄すぎるんですよね。
まあ、このあたりは相性かもしれませんが…物語は好きなんだけどなぁ。