青ひげ (ハヤカワ文庫 SF ウ 4-13)

  • 早川書房
3.67
  • (22)
  • (37)
  • (44)
  • (4)
  • (2)
本棚登録 : 290
感想 : 28
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (374ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150112059

作品紹介・あらすじ

わたしはラボー・カラベキアン。亡き妻の大邸宅に孤独に暮らす老人だ。かつては抽象表現派の画壇で活躍したこともあったが、才能に限界を感じて今では抽象画のコレクターに甘んじている。そんなある日、若くエネルギッシュな女性が現われ、わたしの人生も大きく変わることになった。彼女は、わたしが誰一人入らせない納屋にいったいどんな秘密があるのか、興味を示しだしたのだ。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • やっと読了。思っていたより大作だった。

    「猫のゆりかご」を読んだあと、heidiに「青ひげ」を薦められた。「猫のゆりかご」でヴォネガットに一定のイメージができちゃったので、「泣けるよー」と言われてもピンとこなかった。
    でも確かに”泣ける”話。泣きゃしなかったけどね。

    架空の画家ラボー・カラベキアンの一代記。この名前、あんまり大仰なもんだから、半分くらい読むまで主人公の名前だとうまく認識できなかった。

    おとぎ話だと思うんだけど、何とも変わってる。皮肉と怒り?悲哀?。しつこいくらい、自分と世界をシニカルにこき下ろす。熱さを感じるくらい真剣な皮肉。

    作中に出てくる女性、サーシ・バーマンにはほんと我慢ならなかったけど、この人物をはじめ極端にデフォルメされた人物がうまい。「猫のゆりかご」と同じ人が書いてんのかあ、と思ったけど、ムダがないなあと感じるあたりは確かに同じ。時期が後だから当然ながら、よりこなれた感じもするし。

    面白く、ずっとわかりやすい話だった。「猫のゆりかご」がダメな人にも薦められるかも。
    でも最後はちょっと……クサイかなあ。それがいいんだけど。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「クサイかなあ。それがいいんだけど。」
      うんうん。大いに頷く!
      「クサイかなあ。それがいいんだけど。」
      うんうん。大いに頷く!
      2012/08/30
  • 読み終わっての印象が薄いのだが、それはこちらの読み方が悪いせいなのかもしれない。

    ヴォネガットの小説はこんなものだという先入観があって、期待通りにならないので、アレレという状態のまま最後までいってしまった。

    こちらの読み方が雑で急ぎすぎということもあるけれど、それだけ前期の作品群のインパクトが強かったのだ。

  • 青ひげ (ハヤカワ文庫SF)

  • SFを読んだ気はしないがヴォネガットマニアには感動作
    表紙   7点和田 誠
    展開   7点1987年著作
    文章   7点
    内容 731点
    合計 752点

  • 2007/08/01 購入
    2007/08/06 読了 ★★
    2014/10/10 読了

  •  画家ジャクソン・ポロックがモデル。
     年を取った画家の自伝という形をとり、回想と現実の世界が行ったり来たり。全体的に偏屈な年寄りの独り言のような感じを受ける。
     しかし、カート・ヴォネガット流の皮肉とあたたかさ、根底に流れる力強い意志が、ビリビリ伝わってくる。
     年を取って、失ったもの、忘れていたものを振り返った時、人は何を感じるのか。そんなお話。

    【ジャクソン・ポロック(1912~1956)】
      抽象表現主義の画家。この主義はアクション・ペインターとカラーフィールド・ペインターの二つに分けられる。前者は特別に何かを書こうとしたのではなく、絵の具に仕事をさせ、見方は観賞者に任せる。ジャクソンはこのアクション・ペインターの先駆者らしい。

  • 初めて読む作家だったので知らなかったが、どうも有名なSF作家らしい。ただ、この作品は現代を舞台にした一般小説。
    タイトルが「青ひげ」だし、粗筋に「鍵のかかったジャガイモの納屋」の存在がかかれているし、最初はもっとじっとりした、退廃的な話かと躊躇していた。が、実際のところはまるで違った。
    軽妙な乾いた文章で綴られる内容は、私が想像した陰鬱な雰囲気は全くなかった。扱っているテーマや作中で語られる歴史はなかなか重いのだが、その辺をさらりと読ませる。

    私は昔から、芸術というものがまるで分からない。
    絵画や音楽は授業レベルの通りいっぺんの知識しかないし、実物を前にしても、ぞくぞくするような「美」を感じることはあまりない。元々凡庸な感性しか持っていないうえに、それら強く興味を惹かれることがないからだろう。
    だから、作中に繰り返し出てくる「魂のない絵」というのがどういうものなのか、うまく想像できなかった。「魂がない」としてもとても精密に描かれているなら、私はそれだけで賞賛してしまいそうだ。この言葉も意味が経験的に分かる人が読むと、受ける印象も強いのだろう。そう思うと残念。
    芸術論を理解できるかどうかを抜きにしても、過去と現在が交互に描かれる物語はとても面白かった。こういう老人の回想ものを読むと、生きていくのもそんなに悪くないと思えるな。

  • 人間讃歌。に、辿り着くまでの人生劇場。結局どんなにブサイクな生き方をしていても自分だけには正直でいればなんとか形になるさ、とヴオネガットは言ってくれているような気がした。沢山の登場人物が自殺したり、戦争で死ぬが一様にいえぬそのいきさつの描き方に優しさを感じた。根底に流れる戦争体験からの思想に今現在生きる僕は学ばなければならない。

  • 今度は画家の話

     楽しみにしている作家の(けっこう)最新作。1987年である。戦争体験を持つ画家が自らの人生を振り返るというスタイルで書かれる。細切れに小さなセンテンスが区切られていて、あっちこっちへと時間がいったり来たりするものの、絶妙のタッチで読者が混乱することがない。多少冗長とも思える350ページの長編もスムーズに読むことができた。

     本来自分の死後にのみ公開する予定だったジャガイモ小屋に残した最後の作品とはどんなものなのか? このテーマを最後まで引っ張りながら、ラストで一気にその作品を見せる。主人公である画家がそれを公開する気になる部分といい、公開したときにとかれる自らに課した呪縛みたいなものがラストを締めくくる。なかなかいい本だった。

  • クリスマスキャロルのようなお話です。
    なにがしかの誇りを持っていたい人へ。

全28件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1922-2007年。インディアナ州インディアナポリス生まれ。現代アメリカ文学を代表する作家。代表作に『タイタンの妖女』『母なる夜』『猫のゆりかご』『スローターハウス5』『チャンピオンたちの朝食』他。

「2018年 『人みな眠りて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

カート・ヴォネガットの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×