凍月 (ハヤカワ文庫 SF ヘ 2-15)

  • 早川書房
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本棚登録 : 99
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (255ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150112424

感想・レビュー・書評

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  • SF。月。宗教。政治。
    『女王天使』のあとの物語、『火星転移』の姉妹篇とのこと。これらの作品は未読でも、問題なく読めます。

    "地球から、冷凍保存された人間の頭部410個がもちこまれた。"

    背表紙のとても面白そうな文句のわりには地味。
    序文の通り、"政治"をメインテーマに、主人公ミッキー・サンドヴァルの成長を描いた作品という印象。
    とはいえ、SF的に面白いシーンもいくつかあり、特にラストの氷穴でのシーンは想像力を刺激される。
    『ブラッド・ミュージック』でも感じたが、この作者とは文章や世界観が合うようで、とても読みやすい。甘めに☆4評価。

  • ベア好きでないと読みにくい中途半端な作
    表紙   5点小阪 淳
    展開   6点1990年著作
    文章   6点
    内容 600点
    合計 616点

  • 凍月と書いて「いてづき」。
    なんともどんぴしゃで、詩的なタイトルをつけたものだとまず感心。
    地球から飛び出し、月にコロニーを作り始めた人類。22世紀には月の人口は200万を超えていた。月では家系を元とした経済的なつながり(BM)が、地球でいう国家の働きを担っていた。
    その中でも歴史は古く、有力なサンドヴァルBMの一族の青年の物語である。

    サンドヴァル家の中でも有力家系の長女、ロザリンドの夫である天才科学者・ウィリアム・ピアスの指揮の下では、月にある天然の洞窟を利用して、絶対零度達成の実験が進行していた。
    そこへロザリンドが地球で冷凍保存されていた人間の頭部を持ちこんできた。その頭の再生に成功すれば、有機的なデータベースとして活用できる、というのがロザリンドの主張であった。
    ロザリンドの弟で主人公のミッキーは、ウィリアムとロザリンドの研究をつぶさに見つつ、科学の道ではなく政治の道を歩むことを決意していた。
    ふたりの研究が合わさったとき、月には何が起こるのか。
    そしてその研究にミッキーは何をもたらすのか。

    登場人物が生き生きと描かれ、細かな科学技術の説明はあるにしろそれが物語の妨げにはならず、そして語り口のまるで詩のような美しさ。
    絶対零度と月。
    空に浮かぶ銀色の月には、とても似合っている感じがする

  • 地球からの植民者が独特な社会を形成している22世紀の月。ここ月で、絶対零度の実現を目的とする実験が大掛かりに進められているが、実験施設の余剰分を効率的に活用すべく地球から持ち込まれたのは、冷凍された人間の頭部410個だった。死者の”意識”を巧く活性化することができれば、一大データベースを運用することが可能になると思われたが、思わぬ政治的圧力がかかり実験は中止の瀬戸際に追い込まれる。一方で、絶対零度実験の方も予想外の展開を見せ始め・・・

    中編と言っても差し支えのない小品ながら、様々なアイディアがぎゅっと濃縮されて詰まっている、読み応えのある作品。といっても、全体的な印象は淡々とストーリーが進む感じで、詰め込まれたアイディアの割に読後感は地味ですヽ( ´ー`)ノ
    不勉強な鴨には物語の要諦となるメインのガジェットが今ひとつ理解できず、よくわからないままあれよあれよという間に読了してしまった、というのが正直な感想です。それでも、クライマックスで繰り広げられるワン・アンド・オンリーな世界崩壊のイメージには圧倒されました。いかにもグレッグ・ベアらしい、彼の代表作たる「ブラッド・ミュージック」にも通じるイメージの奔流ですね。

  •  第28回星雲賞・96年度SFマガジン読者賞授賞という言葉に釣られて買った。この姉妹編である「火星転移」はネビュラ賞をとっているようだ(こっちは未読)。ライナーには「熱力学が崩壊するとき、月を異変がう・・・」とあり、面白そうだと思わせるでしょう?

     巻頭には、日本語訳出版のために書き下ろした著者自身の序文があり、それが下手な解説よりもずっと作品を、いや作品の背景を解りやすくしている。多少これを読んでおかないと、いきなり本文からだとついていけないかも知れない。

     というのも、テーマの中に政治や宗教が入っているから。こういうのが入ると(悪いわけではなく私は好ましいとすら思うが)、日本人の感性では理解しにくい所もあるから。

     で、ストーリー。月で絶対零度の達成の研究を行っている。そこにその実験とは全く別個に、冷凍された過去の人間の脳が運び込まれる。このふたつの仮想を元にストーリーが展開する。私としては冷凍脳のストーリーが無く、絶対零度だけで書いて欲しかった作品なんだが、どちらかというと比重は冷凍脳に片寄っているようだ。

     ラストの絶対零度達成の描写は少し分かりにくい。訳が悪いのか、私の空間イメージの構築力がないのか。映画になったらどうなるんだろうなぁ。全体的に、SFとしてはちょっと歯切れが悪い作品だと私は思う。でも、なかなか力の入った作品であることは確かなので、先に書いた「火星転移」を読んでみようと思う気にさせるこの「凍月」だった。

  • タイトルに惹かれて買った本。「政治は省け」と言う言葉が妙に記憶に残ったと言うか、何処に行ってもそういうのは同じだなあと思ったとか何とか。
    ちなみに読み返す事が多い為、もう1冊買い直すかどうか悩んでたりする本でもあったり。(2005年夏に買い直したらこの画像通りの帯付きでしかも初版だったと言うオチが付きました←しかも中古ではなく新品)

  • 「火星転移」の序章のような話。後に読んだけど。話は淡々としているけど、感覚的な表現がいい部分もある。

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