山椒魚戦争 (ハヤカワ文庫SF)

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  • 早川書房 (1998年12月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (502ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150112523

山椒魚戦争 (ハヤカワ文庫SF)の感想・レビュー・書評

  • 山椒魚なんて見たこともなくて正直よくわかりません!? 手の生えた巨大なおたまじゃくし? でかいイモリかな? やれやれ……こんな頓珍漢で読み始めてみました。

    こちらの談話室で教えてもらったチェコの作家カレル・チャペック(1890~1938年)。彼の戯曲『ロボット』も面白い作品ですが、『山椒魚戦争』はさらに読みごたえ満載です! はじめの視点だったヴァントフ船長がいつのまにかフェイドアウトしたり、山椒魚の生態に絡めた興味深い記述の数々などは、さながらメルヴィル『白鯨』のよう。物語はSF仕立てで、時系列的にすすみながら洒脱で読みやすい、でも中身は濃厚で私好みですが(笑)。

    「私がこの作品で描いたのは、ユートピアではなく、現代なのです。……今われわれが生きている世界を、鏡に映しだしたものなのです……私にとって問題なのは、現実だったのです。……現実で実際に起こっていることに気を配らない文学、言葉と思想にできるかぎりのあらゆる力をふりしぼって、そういうことに反応しない文学――私の目指す文学はそんなものではないのです」 (「作者の言葉」より)

    当時のチェコを含めた中央欧州の小国が、イギリス、フランス、旧ソ連、ドイツなどの列強に虐げられていく歴史的背景や、人類の愚かさや滑稽味がおもしろ可笑しく織り込まれています。「山椒魚」をして織りなしていく、ジョージ・オーウェル『動物農場』風のディストピア小説といってもいいかもしれません。

    「……なによりおそろしいのは、この従順で、愚鈍で自己満足している文明化された平均的しろものが、大量に繁殖して、何百万、何十億もの同じ山椒魚が生まれている、という事実である」

    当時のチャペック作品は、ナチスドイツに狙われるほど過激なもので、秘密警察の魔の手を逃れることができたのはまさに奇跡……その直前のクリスマスの日、チャペックは急病でこの世を去ったよう……。
    歴史という怪物に呑み込まれてきた現在のチェコには、フランツ・カフカ、ヤロスラフ・ハシェク、ミラン・クンデラといった魅力的な作家が多くて、読むたびに驚きの連続です。カレル・チャペックのこの作品も秀逸で、翻訳もよく、解説も丁寧です。しかも表紙の山椒魚くん、Win-Win微笑よろしくその手にはナイフと真珠貝……でもそれほんと!?

    ★★★
    以前からチェコの作家にはまって読み漁るものの、あまりにも凄まじい歴史の荒波に打ちひしがれてしまいます(-_-;)

    1933年――ドイツ・ナチス党が第一党になり、国境を接していた旧チェコスロバキアに対し、ズデーデン地方の割譲を強要

    1935年――『山椒魚戦争』発刊

    1938年――「ミュンヘン会議」イギリス、フランス、ナチスドイツ、ファシストイタリアが、ズデーデン地方の割譲を決め、旧チェコスロバキアは国土の重要地を失う

    1939年――それを契機にナチスドイツのチェコ侵攻、以降、占領が続く

    1945年――ナチスドイツの敗戦により占領から解放されるも、こんどは「ヤルタ会談」(スターリン、ルーズヴェルト、チャーチル)により、東ヨーロッパ全体がソ連圏に組み込まれる

    1968年――「プラハの春」民主化運動の高まり。ソ連が武力介入。最悪の監視社会・警察国家となる

    1989年――民主革命により、約41年の共産党独裁政権が崩壊

    1993年――スロヴァキア独立。チェコは多党制民主主義国家に戻る

  • 1936年の作品 まさに古典である
    表紙   7点竹内 通雅  来栖 継訳
    展開   5点1936年著作
    文章   5点
    内容 750点
    合計 767点

  • 様々な風刺が含まれているのはわかる。特に後半は面白かった。なんか『白鯨』みたいな構成で。
    でもねえ、ちょっと長かったなあ。途中で若干倦んできてしまったってのが正直なところ。あと、最後はちょっと端折りすぎじゃない?いやまあ、面白かったんだけどね。

  • まずこれがWW2の前に書かれたということに衝撃をうける

    山椒魚がはじめは愚鈍な動物だったのが知識と力を得て人間に叛旗をひるがえすわけだけど自我とかはないままで本質が全体主義みたいな生き物。
    芸術とか文化もわからなくて、ただ繁栄に向かうだけ。まさに動物。現代人にも当てはまる人いそうだけど。
    そういう山椒魚は人間より明らかに強い。この戦争を収めるためには仲間割れしかない。
    ということで、山椒魚に民族意識が芽生えて西と東に分かれて同士討ちを始めて全滅させる(作者が)。
    この拘泥がなければ最強の軍隊だったのに。でも故郷に拘泥する生き物を古い体質から抜け出せない敗者と見るか、本当の心があると見るかの間には深い溝がある気がする。
    私は拘りって好きだけど。

  • 岩波・創元・ハヤカワのこれに小学館版地球人ライブラリーまでなぜか持っている

  • この本を初めて読んだのは高2の夏、衝撃だった。

  • 05/11/19読了。
    カレル・チャペックという人は何故こんなことが思いつくのか?今なお読み続けられているというのは、それだけ素晴らしい作品だということだ。

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山椒魚戦争 (ハヤカワ文庫SF)の作品紹介

赤道直下の島の入江には黒々とした不思議な生物が棲んでいた。現地では山椒魚に似た姿から、魔物と怖れられていたかれらだったが、じつは高い知能をそなえていたのだ。自然の中で生きる無垢な山椒魚が現代文明と出会ったとき、その内面に生じた重大な変化とは?チェコが生んだ偉大な文学者カレル・チャペックが、人間社会と山椒魚の出会いを通じて人類の本質的な愚かさを鋭く描き、現代SFの礎となった名作。改訳決定版。

山椒魚戦争 (ハヤカワ文庫SF)はこんな本です

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