祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)

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制作 : Greg Egan  山岸 真 
  • 早川書房 (2000年12月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150113377

祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)の感想・レビュー・書評

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  • ハードSFの大家グレッグ・イーガンの11の短編を収録した本書は、文中の言葉を借りるならば、「きみがきみであること」「自分が何者であるか」、すなわちアイデンティティを共通したテーマに据えている。

    SFの手法でアイデンティティを語る作品としては、個人的にはロボットを題材にした作品が多い印象を受けるのだけど、本書においてはそれに依存することなく、多彩な視点からアイデンティティを捉えている。

    ヒューゴー賞/ローカス賞を受賞した表題作もさることながら、次の2作品が特に素晴らしかった。

    ・『ぼくになることを』
     衰退する脳を排出し、その代わりに衰えることを知らない"宝石”を移植することが一般化した未来社会。"宝石”を移植しても、その人物の思考は従前までと何も変わらない(移植するまでの間、脳と"宝石”は常にシンクロナイズされているからだ)。だけど、脳のない人間は、果たして"人間"と呼べるのだろうか…
     "宝石”の移植を頑なに拒む主人公の顛末。それが、とにかく割りきれなくて、心に刻まれるほど気色悪い。

    ・『百光年ダイアリー』
     未来には行けないが、知ることはできる社会。主人公をはじめとした一般市民は、"未来の自分が記した日記"により、将来を理解していた。"自分という存在"は、過去と未来の自分によって形作られる。そんな社会を甘受していた主人公だが、ある日、歯車が狂い始め…
     アイデアとなにより展開が秀逸!これは面白かったなぁ。

    全作品を通じて、とにかく後味は良くない。
    心を覆い尽くすのは、不安。だけど一抹の希望が潜んでいることを否定できない。
    そんな不透明な心境に陥るのだけど、でもアイデンティティを認識した時って確かにそんな気持ちかもね。決して爽快な気分じゃないと思うんだ。
    そう考えると、微妙なセンチメントを表現してくるグレッグ・イーガンは、流石と言わざるを得ない。

  • 読んでみたかったグレッグ・イーガンを初めて読んだ。ハードSFの大家の短編集。日本向けに選ばれたらしい。
    かなり難しいSFでよくわからないのが多いが、なぜか癖になりそう。

    以下は読書メモ:

    貸金庫
    宿主を転々と移る人。目がさめると意識が違う人に移っている。その間の記憶を書きとめて貸金庫にしまう。そして、名前が死ぬまで変わらないことを夢見る。

    キューティ
    キューティキット(の安物のコピー商品)で妊娠して、キューティを産む男性。
    ちょっと狂ってて気持ち悪い。

    ぼくになることを
    「宝石」を埋め込んで脳を学習させ、「スイッチ」して永遠の頭脳を得る。自分とは何か。


    ゲイ、レズビアン。その発生を胎児期に防ぐ技術。その製品化が繭。

    百光年ダイアリー
    未来が決定している世界。将来に起こることがあらかじめわかっている。その通りに行動する。未来に従うのも「自由」だ。
    …かなり難しい話。

    誘拐
    妻の身代金要求の映話が突然かかってきた。
    スキャン アイランド コピー

    放浪者の軌道
    アトラクタ(吸引子)
    メルトダウン
    うーん、よくわからない。

    ミトコンドリア・イヴ
    量子古遺伝学 量子の相関性の理論を用いてミトコンドリアの遺伝子の相関性を分析し、真のミトコンドリアイヴを特定する。…よくわからん。

    無限の暗殺者
    平行世界 パラレルワールド
    S
    世界間転移
    〈渦〉カルト

    イェユーカ
    血液センサーと薬物合成ができる指輪

    祈りの海
    位相教 深淵教会
    ベアトリス
    橋のやりとり
    神を信じるとはどういうことか。難しい。

  • 2017/08/07-2017/08/09
    星5

    2017年10月18日にこの感想を書いている。サボっていたので随分遅くなってしまった。帰省する際の暇つぶしに途中の本屋で買ったこの本は、とてもおもしろかったことだけ覚えている。この文庫本は短編・中編集だ。1つとして面白くない話はなかった。多くの話を読み終えた後、僕は不安になった。自分とは何か、自己同一性とはどのようなことか、考えていたのだと思う。良いSFだった。

  • 優れた作品だが読者を選ぶ、私には分かりにくい
    表紙   3点小阪 淳   山岸 真編・訳
    展開   6点2000年著作
    文章   4点
    内容 510点
    合計 523点

  • 『宇宙消失』に比べると格段に読み易いイーガンのSF短編集。
    悲し過ぎる「キューティ」
    LGBT。正常と異常の意味を考えさせられる「繭」
    決められた未来の罠、ミステリとして秀逸な「100光年ダイアリー」
    人類皆兄弟か!?人類史を辿る「ミトコンドリア・イヴ」
    宗教体験の「祈りの海」

    後者2つは解説を書いている瀬名英明のパラサイトイブ、ブレインバレーを彷彿とさせる。

  • ある晴れた朝、少年は目ざめると、きょうの自分はなんという名前だろうと思った

  • 相性がよくないのか、引き込まれない。世界観はしっかり理解できるが興味がわかない。

  • #ひとつの短編内でのアイデアの突き詰め方がすごい。平行世界のイーガンたちが、あらゆる可能性を持ち寄って検討したみたい。唸ったのは「貸金庫」「放浪者の軌道」「祈りの海」。

    #「誘拐」はこの方法で父母・祖父母を再生させていけば、最終的にはミトコンドリア・イヴまで辿りつけるんじゃない? 自分のファッションが場違いかどうかが進むべき方向の目安、という「無限の暗殺者」には笑った。Tokyo No.1 Soul Setの「Rising Sun」のPVを、このイカれた世界のPVに認定。♪ありとあらゆるものが今姿を変えていく〜

    (2009/03/20)

  • 小学校の理科の時間に、口の粘膜を綿棒ですくって顕微鏡にかける実験があった。接眼レンズを覗くと、本当に教科書で見たような細胞があった。
    「祈りの海」の主人公が覚えた衝撃は、そのときの記憶に似ているかもしれない。

    地球とは別の海の星で、主人公の「ぼく」は暮らしている。幼いころにある体験をして、それ以来大いなる女神の存在を信じている。しかし、成長した彼が自らの研究で判明させたのは、その体験が単に微生物の排泄物がもたらす幻覚だったという事実だ。
    信じていたものから神秘的な(俗悪な)ヴェールを剥ぎ取られ、主人公の拠り所は一気に瓦解する。

    発想の点では、「誘拐」の、「人の心の誘拐」が一番刺激的だった。ただ、ヒューゴー賞を獲ったのは「祈りの海」だというのには納得する。
    人は知性という松明で世界を照らしてきた。明るすぎる松明は人自身をも照らしてしまう。暗闇からぬっと現れる顔面像は、人が望むナルシシズムの幻想を少なからず壊してきた。
    けれど人は、「祈りの海」の主人公のように前に進める。進むしかない、とも思う。

    イーガンのようなSFは、もちろんScienceFictionだけれども、知性を足場に世界を覗きこむことにおいて、現実とあまり変わらないように感じる。この小説の知性の光によって、わたしたちは太陽のもとで腕に走る血管の網目模様を見るように、わたしたちの意識の組み合い方を見ることが出来る。

  • 日本オリジナル編集の短編集。これが1冊目になるようだ。解説は瀬名秀明。
    他作品の解説でも、本作の解説でも触れられている通り、ほぼ全編に渡り、アイデンティティが重要なテーマとなっている。登場人物は多かれ少なかれ、『自分』というものについて何らかの問題を抱えていることが多い。
    個人的に印象的だったのは、『繭』『誘拐』『ミトコンドリア・イヴ』『イェユーカ』『祈りの海』。中でも『繭』で描き出される世界はショッキング。

    テーマが共通しているので、あまり一気に読むと飽きるかな~と思っていたのだが、杞憂だったようで良かったw

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二万年前に惑星コブナントに移住し、聖ベアトリスを信奉する社会を築いた人類の子孫たち。そこで微小生物の研究を始めた敬虔な信者マーティンが知った真実とは?ヒューゴー賞・ローカス賞を受賞した表題作、バックアップ用の宝石を頭のなかに持った人類の姿を描いた「ぼくになることを」ほか、遙かな未来世界や、仮想現実における人間の意志の可能性を描く作品まで、多彩な魅力あふれる11篇を収録した日本版オリジナル短篇集。

祈りの海 (ハヤカワ文庫SF)のKindle版

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