しあわせの理由 (ハヤカワ文庫 SF イ 2-4)

  • 早川書房
3.69
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  • Amazon.co.jp ・本 (447ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150114510

作品紹介・あらすじ

12歳の誕生日をすぎてまもなく、ぼくはいつもしあわせな気分でいるようになった…脳内の化学物質によって感情を左右されてしまうことの意味を探る表題作をはじめ、仮想ボールを使って量子サッカーに興ずる人々と未来社会を描く、ローカス賞受賞作「ボーダー・ガード」、事故に遭遇して脳だけが助かった夫を復活させようと妻が必死で努力する「適切な愛」など、本邦初訳三篇を含む九篇を収録する日本版オリジナル短篇集。

感想・レビュー・書評

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  • ◯難しいSFのお話もあれば、普通の物語として面白いものなど、お菓子の袋詰めみたいな短編集。
    ◯個人的にはチェルノブイリの聖母がSF感がなくて面白い。ハードボイルド探偵小説的な良さがある。
    ◯一番気になっていたボーダーガード。出だしの量子サッカーでだいぶ痛めつけられたものの、後半は人類に普遍的なテーマである死と、それを乗り越えた人類の苦悩を描いていて興味深い。想像もつかない未来だから、登場人物の考え方に納得できないように書いているのか、あまり共感はできない。
    ◯しあわせの理由は感情ですらコントロールできる場合、それはもはや人間の感情といえるのか、というテーマを読み取れる。ボーダーガード共々興味深い。
    ◯理系の人たちは入りやすいというイーガンのSFだが、普通の小説としても読める…とあるが、設定として科学的な根拠があるものをSFというのか、それこそロボットアニメのようなそれっぽいものもSFというのか、よく分からないと思いながら読んでいたが、後者でしか馴染めない人でも割と読めると思う。面白かった。

  • 表題作『しあわせの理由』
    脳の幸福を感じる部分が、脳内の腫瘍により過剰になりすぎた男の話。
    手術で腫瘍を摘出しなければ命の危機という絶望的な状況にも関わらず主観的には幸福感と万能感で満たされた日々を送る。しかし手術が成功し命の危険が無くなり不自由のない生活が訪れた後、自身の生活において一切の幸せを感じることができなくなってしまう。
    後の手術で、何に対して幸福を感じるかを自分自身で選択できるという状況になるが、幸福や興味の対象を自分でボリュームつまみを回すかのように選択することで得た幸福は本当の幸福なのか…

    人間にとっての幸福とは極めて主観的なものであるということをストーリーを通して再認識した。

  • 短編集、イーガンを読むのは二冊目。SF部分が難解で読みづらい話も混じっているけれど、それを差し引いてもべらぼうに面白い。人間とはどういうものか、生きるとは、幸福とは何か、そういうものへの問いかけだと思う。

  • 本編もですが、あとがきがハイレベル。
    適切な愛、しあわせの理由の、話では科学の果てを考えさせられますね

  • SF界の巨匠、グレッグ・イーガンの、表題作含めた短篇集。最も印象に残っているのが、やはり表題作である「しあわせの理由」。若くして大変な病に冒されるが、死が近くなるに連れて病気の影響により、脳のしあわせを感じる分泌物(だったっけ?)が多くなり、しあわせを感じていく。両親は何とか息子を治そうと、大金をはたいて病院を移し、手術を行う。そのお陰で病気はだんだんと治っていくが、しあわせを感じることがなくなっていく・・・
    物語自体のネタは、現代では似たようなものが多々あるものの、話の流れ、テンポが良く引きこまれていく。
    しあわせって一体何なのだろうと考えてしまう、人気のとおり面白い一作だった。

  • SFを読む時には、自分の世界観が大きく揺さぶられることを期待する。イーガンは初読だが、残念ながらそうした期待を十分に満たすものではなかった。『しあわせの理由』は、「これがイーガン」なのか、「こういうイーガンもある」のか解らないのだが。いずれの短篇も近未来を舞台に描くが、テクノロジーの上からはまだ実現されておらず、その限りではSF的なのだが、物語の本質においては、むしろ現代社会と人間の問題を描く手段なのではないかと思われる。個々の世界は細部まで緻密に描かれてはいるが、SFに感じる特有の「ふるえ」がないのだ。

  • 初イーガン。
    SFでありながら哲学的で文学的。
    愛とは何か。
    幸福とは何か。

    「チェルノブイリの聖母」が一番好きだけど、これはSFジャナイ系。

    「しあわせの理由」は幸福について考えてしまった。
    自分でしあわせをコントロールできたら。
    それはしあわせなのか、ただの選択の結果なのか。
    でもしあわせってそんなたくさんの選択の結果でもあるよね?

    しれっとSF世界観な短編集。説明なしに展開するストーリーに、あ、これこういう世界なのね、と理解するのに数秒とまる。
    おもしろかった。

  • 全9話の短編集。いずれも違和感なく未来世界を感じることができた。さまざまな科学ジャンルにおいてこんな小説をかける著者の深い知識を敬服する。ただ、科学背景のいくつかは難解でよく理解できなかった。言葉で表現するのは難しいですね。
    また、科学背景だけではなく、登場人物の心理描写もしっかり描かれているのだが、ちょっと感覚が合わないところもあり、総じてのめりこんで読むほどの魅力を感じることができなかった。
    そんな中でも一番面白かったのは「チェルノブイリの聖母」。未来感は薄いかもしれないが、ハードボイルドな探偵が登場するミステリーな話、この話のみ休みなしで一気読みした。

  • ◆結論 ~ 星の数 ~
    ★★★:「費用と時間」をかけても読んで欲しい、「内容」が非常に良い(30%)

    ◆感想文 ~ 読む前、読んだ後 ~

    ◇読む前の感想

     組込み技術者養成合宿の実行委員の方に「面白い本、ない?」という質問に答えて頂きました。そのときの二冊のうちの一冊がグレッグ・イーガン著「プランク・ダイヴ」、しかし、図書館に置いてありませんでした。(残念)代わりに、図書館にあって、且つ書評が高いこの本に挑戦してみることに。(楽しみぃ(^^))

    ◇読んだ後の感想

     断言します。著者は相当高い「組込みエンジニアマインド」を持っています。間違いありません。(なぜ「組込みエンジニアなのか?それは、私がそうだからです。それ以上の深い意味はありません。(^^;))
     例えば「道徳的ウイルス学者」というお話。ここでは、ある天才科学者が性的にだらしない人間を滅ぼすため、秘密裏にウイルスを開発します。その考察が凄いんです!シーン分析というか、背反検証というか、間違えて善良な市民が死ぬことが絶対に無いよう、あらゆるシチュエーション、外乱、環境の組み合わせを想定し、検討し、その対策を打つのです。その描写が圧巻!これはですね、実際にこういう仕事をやった人じゃないと、ここまで書けないですよ。いや、本当に。

     9本の短編小説から成る本書は、前述のように、どの話も奥行きが深く、深く、深いです。深淵です。しかも、科学的描写に関しては、もう、訳が分からんとです・・・。(あ、いや、これは私の読解力と知識がショボいだけです・・・。すみません。orz)

     そして、最後の解説でビビりました。完全に無防備なところに強烈パンチを喰らった感じです。なんと、東大の坂村先生。(この人って、こういう本の解説を書くんや・・・。凄い人は、凄いなぁ・・・。)←と思いました。
     その解説のなかで、私の読書人生の転換期とも言える「ソフィーの世界」という、懐かしいタイトルを見つけて、また吃驚。
     という訳で、色んな意味でとても美味しい本でした。(^^)

    (参考:評価基準)
    ★★★★★:座右の書である、または、座右の書とすべきである(10%)
    ★★★★:自分の知り合い、友人、家族全員が読んで欲しい(20%)
    ★★★:「費用と時間」をかけても読んで欲しい、「内容」が非常に良い(30%)
    ★★:暇な時間で読めば良い(20%)
    ★:読んでも良いが強く薦めない、他にもっと良い本がある(20%)

  • 短編集というだけあって、やはりどれも短くまとめられている。それは当然のことではあるが、短編集と言うのはどれも短くまとめようとしてイマイチ話にのめり込めない。(少なくとも自分は)
    ボーダーガードという話に至っては、専門用語だらけの未来のスポーツの話だったのか、読んでいてさっぱり意味がわからなかったのではじめの数ページで読むのをやめてしまった。
    本の題名にもなっているしあわせの理由は、色々と考えさせられることがあってとても読み応えがあった。あるにはあったが、やはり一冊丸々使ってもっと掘り下げてもらいたい話でもあった。おもしろいだけに残念であった。
    おそらく自分には短編集という形態は合っていないのだと思う。

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著者プロフィール

1961年、オーストラリア西海岸パース生まれ。SF作家。西オーストラリア大学で数学理学士号を取得。「祈りの海」でヒューゴー賞受賞。著書に、『宇宙消失』『順列都市』『万物理論』『ディアスポラ』他。「現役最高のSF作家」と評価されている。

「2016年 『TAP』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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