あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

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制作 : 公手成幸  浅倉久志  古沢嘉通  嶋田洋一 
  • 早川書房 (2003年9月30日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150114589

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あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)の感想・レビュー・書評

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  • 映画『メッセージ』を観たので確認のため再読。でもほぼ忘れてしまっていたので最初から最後まで新鮮な気持ちで読むことができた。やはり「あなたの人生の物語」は面白かった。新しい思考様式の獲得については、映画で省略されていた物理のエピソードがはっとするほど面白い(でも人類の頭脳はああいう世界認識をサポートできる気がしないのだけれど)。

    ほかの話は、楽しむには自分の頭が悪いのかも…というのもはさみつつ、「バビロンの塔」の世界や「人類科学の進化」「顔の美醜について」の思考実験ぽさが面白い。なかでも、「地獄とは神の不在なり」は面白さを超えて心に刺さるものがあった。というのも、自分の心に一神教はなくても因果応報的世界観がぬきがたく染みついていることに気づかされたし、そういう精神は、整理しきれないおおきな不運には負けてしまうのでは?という不安を強くかきたてられてしまったから。こういう話をすいすい書いてしまうテッド・チャンは頭がよすぎて残酷なんじゃないかと思うのだがどうなんだろう。直接のご縁はないから残酷でも残酷じゃなくてもいいですけど。

  • SF短編集。
    表題作は映画「メッセージ」の原作。
    テッドチャンを初めて読んだが、凄いです。ある空想的な設定の元に、科学的・論理的に、ストーリーを細かに進めていく。発想と話の展開のおもしろさ。
    ちょっと難しいが読み応えあました。

    他の作品も読んでみたいが、邦訳の書籍は他には出てないのだろうか。

    以下は読書メモ:
    バビロンの塔
    塔を登って天空にたどり着き、穴を掘っていたら出水。
    円筒印章のごとく天と地はつながっていた。

    理解
    ホルモンKにより理解力が異常に発達した男。
    映画 ルーシーみたいにも思う。

    ゼロで割る
    数学者が、1=2でありどんな数も同じであることを証明してしまって苦悩する。

    あなたの人生の物語
    映画「メッセージ」の原作。
    言語学者が宇宙人の言語を解明していく。
    ヘプタポッド ルッキンググラス
    目的論 表義文字 同時的認識様式

    七十二文字
    名辞という文字が力を持つ世界では、人類の世代交代が限界にきていた。
    名辞を操る命名師の話。

    人類科学の進化
    ショートショート
    人類と超人類

    地獄とは神の不在なり
    神が降臨する世の中。その際、祝福も災厄ももたらすことがある。
    人が亡くなった時、天国と地獄のどちらに行ったかがわかり、地獄の様子を覗くことができる。
    神への信仰とは何かを書くが、かなり難しい。

    顔の美醜について ー ドキュメンタリー
    カリー 美醜失認処置
    顔の美醜を判断できなくする処置に関する、いろいろな人のコメントや報道だけでドキュメンタリー的に展開する。

  • 再読。

    SF短編集。表題作『あなたの人生の物語』が映画化され(『メッセージ』)、現在上映中のよう。
    宇宙人と接触し、宇宙人の時間を超えた思考方法を手に入れてしまった地球人の話。
    10年ほど前、この小説を最初に読んだとき、これは「悟り」の話だと思った。
    しかしあらためて読んでみると、記憶していた以上に感情を揺さぶられる。この小説は「悟り」の物語であるけれど、その境地に立つための、凄惨で、慈愛に満ちた「覚悟」の物語でもあると思う。

  • 1.バビロンの塔  ネビュラ賞
    意外な結末。詳細に描かれる塔内での生活が面白い。

    2.理解
    人の知性が超越的に進化すると、どのように感じ考え表現するようになるかが描かれているのが興味深い。だが、こうなるならその理解力は欲しくはない。

    3.ゼロで割る
    数学は揺らぐことはないと思っていた自分には可能性を知ったのは目から鱗。

    4.あなたの人生の物語
    最後のルイーズの選択の部分は、自分だったらどうするだろう?ととても考えさせられた。毎日、終わりを見つめ、定まった結末を見つめ、自分なら生きていけるだろうか?毎日全てこれからの未来を知っていて、それをそのままに創り出すことを動機とする、未来を知る力は、私は欲しくない。

    5.七十二文字
    テッド・チャンの動く紙の動物と同様に、こちらも羨ましい、欲しい。「人間はその名辞の表現型であると同時に、その名辞の器でもある」「各世代それぞれが内容であり器であり、自己を維持し続ける反響の反響となるのだ」とはまさに、人間の遺伝子だと思った。

    6.人類科学(ヒューマン・サイエンス)の進化
    超人類と共存している人類に残された学究の可能性を説く論文風の話。

    7.地獄とは神の不在なり
    天使の降臨、地獄の顕在が実際にある世界。設定はすごく面白いが、天使の降臨がすごく理不尽で、かつ結末も理不尽。

    8.顔の美醜について――ドキュメンタリー
    ドキュメンタリー風に賛否様々な意見が紹介される体裁で、ユーモア(皮肉かも)があり面白く読みやすい。

  • あまり意識はしなかったのだけれど、テッド・チャンの小説は私の嗜好に合致していて読んでいて気持ちよい。というのも、氏の作品は一口にSFとは言い切れない、ファンタジーや歴史的要素が多分に含まれたものだからだと思う。

    個人的には巻頭の「バビロンの塔」が一番面白かった。バビロンの塔をどんどん建てていく人々が、バビロン的な世界観のなかで天の頂上に達し、そのさらに上を目指すとき、そこに神はいたのかという話。不思議な読書体験だったし、こういう語り口があるのかと感嘆した。

    惜しむらくはテッド・チャンが非常に寡作な作家だということ。一冊でファンになってしまいました。

  • エイミー・アダムス主演の Arrival の原作。
    フシギでよくわからない映画だったので、原作借りてみたけれど、こっちの方がもっとわからない。
    映画にはでてこない 変分原理、っというのが出てくるというので、そこが説明されてるのかな?と思ったけれど、知ってる人はわかる、というだけのこと。
    映画を見てなかったら、何の話かさっぱりわからなかったと思う。

    SF=サイエンス・フィクション、そもそもは数学や物理化学の概念を織り込んだ小説作品、なんだよね ....
    うぅむ、歯が立たない ...

    振り返ると、映画はとってもよかった!と改めて思う。

  • 表紙からして全力で宣伝をかけている通り、映画「メッセージ」の原作である表題作「あなたの人生の物語」をふくむSF短編集。この作品がこの1冊に占める割合はそんなに多くないので、まずこの分量を良く映画にしたな、と思うはずだ。
    SF、というと我々が生活している実社会とは大きく離れた世界観や科学技術を取り入れるイメージが強いだろうが、収録作品の多くは実社会をベースにしており、また科学についても世界観に影響を与える前段階、「その技術の誕生により世界がどう変容するか」という描き方をしているように思う。つまるところ、我々が実際に生活する社会のif思考実験だ。
    そして、多くの作品においてその題材は、「人間の認知」と「世界(科学技術をふくむ)」のやり取りをテーマとして描き出しているように思う。科学技術や世界観の変化によって、人の認知の枠組みは変容するのか。人がそれまでと異なる認知をし始めたとき、世界に対してどのような影響を及ぼすのか。そのような問いが現実感を伴って書かれているのを読むとき、我々は実際にそのような変容があったら自分はどうするのか、と思わずにはいられないだろう。
    そうして考えていくうちに、きっと気が付くはずだ。フィクションレベルまで行かなくとも、現実の社会においてある程度この作品を読むことによって得た「認知」が、現実の社会における生き方にも影響を与えているということに。
    それほどの力を持った作品であるので、多くの人に読んでもらいたいとは思う。が、いかんせん文が難しい。ある程度「学問」というもののイメージが付いていないと、作品の特性上学者が出てきて、彼らが話すことがどう論理的なのか判別しにくくなるだろう。自分で学問を始められる大学生辺りからチャレンジしてほしい。

  • 映画がきっかけで鑑賞後に読了.
    各作品に概ね共通して,言語と概念との対応付けと,宗教的なテーマに対する科学的な理論立てというのが著者にとってのメインテーマとして存在しているようである.
    表題作自体は,私にとっては映画のほうが分かりやすかった.ただ,変分原理が云々という辺りは,映画では説明がなかったので,なるほどそういう背景だったのか,と納得できた.
    一通り読んだが「理解」と「ゼロで割る」は今ひとつ理解が及ばなかった.あと「七十二文字」の「名辞」が何の単語の訳なのかが分からず(調べたところ"name"だった),イメージをつかむのに時間を要した.終わってみると「名辞」はDNAのことを指していたようにも見える.

  • 半端ねえ……。
    すべての短編が、思考実験のような、それでいて物語性もある緊張感をはらんだものだった。

    やはりなんつっても「あなたの人生の物語」が評判通りの傑作で、一度目にぐるっとひっくり返される感覚を味わって、二度目読んでようやくそれなりに理解。映画も見た。映画も好きだったけど、やっぱり原作のヘプタポッドの言語の描写と、それを習得することによって思考様式まで身につけていく過程の描写が好き。なんだか、ほんとうにありそうに思える。
    >「ぜんぜんすごい」
    >信じられない。わたしの仕事仲間が、「すごい」に「ぜんぜん」をつけるような人間だったとは。
    なんてくすっと笑ってしまうようなところもあって。(←語尾まねっこ。)翻訳たいへんだっただろうな。でも大変読みやすい。
    最初の「バビロンの塔」もおもしろかった。先日ブリューゲルのバベルを見たので、れんがを運び上げる過程など、現実感を持って迫ってきた。
    「理解」は「あなたの~」とちょっと似ているところもあるかな。超人的な認識力を持つにいたったふたりの心理戦は鬼気迫るものがあって、なかなかの緊迫感なんだけど、絵面を想像すると超地味(笑)。映像化はぜったいできないであろうw
    あとは最後の「顔の美醜について」が、やはり徹底した思考実験のようなんだけど、おおぜいの人の言葉だけで描かれていて面白かった。
    「七十二文字」や「地獄とは~」は、よくわからなかった(^_^;; 

    しかしここまで練りに練った完成度を求めたら寡作になるのもむべなるかなで……なんとも悩ましい作家ですね。

  • 全体として、私の思っていたSFとは違っているように感じたけれど、それは私があまりSFを読んでいないからだろう。
    『バビロンの塔』
    たとえば、亀の上に象がいて…という世界観、そういう私たちの世界とは違う世界観を描いた作品。それは円筒形で、空あるいは宇宙という天井があって…。旧約聖書では神の怒りに触れてバビロンの塔は崩れるけれど、ここでは神という不確かな存在ではなく、世界の秩序がそうさせるようだ。それは新しい、世界の、あるいは科学の認識を思わせる。
    『理解』
    脳の機能が統一的全体像(ゲシュタルト)を把握できるまでに高度化していったら? そこでの戦いはもはや行動を起こす必要すらなくて。でも、最後は陳腐なゲーム展開のようで、残念な作品。
    『ゼロで割る』
    しばらく前に、光速を超える速度が観測されたかも、というニュースが流れたけれども、あの時に感じたものと似ているかもしれない。自明だったはずの土台が崩れ去った時、それは数学の話だけれども、同時に他のものにも波及してしまうかもしれないのだ。たとえば、夫婦関係とか。
    『あなたの人生の物語』
    外国語で話そうとする時、その外国語の構造でものを考えるように、ヘプタポッドの言葉を学んでいくうちに、ヘプタポッドの思考回路で世界を認識するようになる。それは新しい世界の獲得だ。ヘプタポッドがなぜやって来たのかは分からずじまいだし、でもヘプタポッドには見えているものがあって、その理解の一端が、ルイーズに娘の人生を理解させている。自由であることと自由でないことは等価なのだ。
    『七十二文字』
    人類に絶滅が迫った後に、研究開発された新たな名辞は、まるで私たちのようだ。それならばこれは私たち新たな人類が生まれる前夜の話。
    『人類科学の進化』
    ある一定年齢までに触れたことのない技術は、使いこなすことができない。そういう意味では、これは近未来の話ではなく、現在の科学技術の寓意であると思う。
    『地獄とは神の不在なり』
    ここでは実際に天使が降臨するわけだけれども、地上に起こるすべての事象は偶然の産物だ、ということを言っているように感じる。神のご加護だとか天使の光だとか奇跡だとか、そこに意味を見出すのはいつも人間であり、そういう意味でそこに意味は存在しない。真の信仰者となったニールは地獄へ行き、天国の光によってニールは「盲目」となった。そしてその事こそが真の信仰者の条件となるのだ。
    『顔の美醜について――ドキュメンタリー』
    自ら決めることの難しさよ。なんだかんだと理屈を並べてみても、結局は自分が得をする方を選びたいのだ。何が最善であるかよりも。

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地球を訪れたエイリアンとのコンタクトを担当した言語学者ルイーズは、まったく異なる言語を理解するにつれ、驚くべき運命にまきこまれていく…ネビュラ賞を受賞した感動の表題作はじめ、天使の降臨とともにもたらされる災厄と奇跡を描くヒューゴー賞受賞作「地獄とは神の不在なり」、天まで届く塔を建設する驚天動地の物語-ネビュラ賞を受賞したデビュー作「バビロンの塔」ほか、本邦初訳を含む八篇を収録する傑作集。

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