ホミニッド: 原人 (ハヤカワ文庫 SF ソ 1-9 ネアンデルタール・パララックス 1)

  • 早川書房
3.60
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感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (519ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150115005

作品紹介・あらすじ

クロマニヨンが絶滅し、かわりにネアンデルタールが進化した世界で、量子コンピュータの実験をしていた物理学者ポンターは、不慮の事故でいずこかへと転送させられてしまった。一方、カナダの地下の研究所で実験を行なっていたルイーズは、自分の目を疑った。密閉した重水タンクのなかに異形の人物がいきなり出現したのだ!並行宇宙に転送されたネアンデルタールの物理学者の驚くべき冒険とは…?ヒューゴー賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • SF。人類学。並行宇宙。
    テーマが好きすぎる。
    SF的なアイディアも面白いが、法廷ミステリ的な要素もあり、ストーリーも面白い。
    これはシリーズ全部読もう。

  • 物語の幕開けは、ポンターという名のネアンデルタール人物理学者が住む、平行世界の風景から。彼の宇宙では、ネアンデルタール人が進化の頂点に立ち、クロマニョン人は遥か昔に絶滅するという歴史をたどっています。そして冒頭、量子コンピュータの実験中のアクシデントが、ポンターを我々の世界へと転送してしまいます。そんなポンターとカナダの研究者ルイーズとの出会いが、本作のストーリーです。

    ルイーズとポンターの出会いは、言葉の壁を超えた科学と好奇心の勝利を象徴しています。意識不明の状態で現れたポンターと、徐々に意思疎通を図るルイーズ。二人はお互いの世界を理解し合うようになります。その過程でポンターの社会構造や法廷の様式など、ネアンデルタール人の文化についても深く知ることになるのです。

    特に印象的なのは、ポンターの友人アディカーが彼の無実を証明するために法廷に立つシーンです。このエピソードは、異なる文化間の正義と法の解釈の違いを浮き彫りにする象徴的な場面でもありました。

    また、ポンターがなぜ私たちの世界に転送されたのか、ネアンデルタール人の絶滅の理由など、本作の物語には解き明かされるべき謎がたくさんあります。これらの伏線で、今後の展開への期待が、いやおうにも高まるんですよね。

    総評として、この物語の魅力は、異なる人種や文化を超えた交流と、科学的な探求を通じて、ネアンデルタール人と現代人の違いだけでなく、共通する人間性にも光を当てている点だと思います。異世界の生物が突如現れたことで、科学コミュニティや一般社会にどのような影響を及ぼすのか、ルイーズとポンターの関係がどのように進展していくのか、こうした要素がストーリーに奥深さを与えているのではないでしょうか。

  • カナダのニュートリノ観測所の重水タンクの中、いきなり男性の体が出現した。引き上げてみると、なんとそれはネアンデルタール人だった。ホモ・サピエンスが絶滅し、ネアンデルタール人が文明を築いている並行世界から転送されてきた彼。姿はもちろん、考え方や社会構造、性のあり方までまるで異なる人類間の邂逅で大騒動に。

    ミステリでそうであるように、設定のリアリティは置いておいて、そこを起点に織りなされる展開を楽しむのがソウヤー作品の読者の嗜み。異種人類との対比で相対的に我々自身や社会のおかしさが浮き彫りにされる。異種間で芽生えるほのかなロマンスは、はからずもネアンデルタールとサピエンスが交雑していた近年の発見を連想させる。

  • 初ソウヤー。
    面白かった。ネアンデルタール人が生きていて、科学技術を発達させていた平行世界。宗教の有無や言語、親族関係や裁判の社会制度など、遺伝子プールの浄化など別の宇宙人ではなく、地球と同じ環境で、ほぼ似た生物が進化していたら、こんな感じなんだろうなと思わせる。
    人類よりも知性があり社会性のある優しい生物、ネアンデルタール人とサピエンスの違いと、意識の分岐点など、そしてなぜ彼らが居なくなってしまったのかなど、数万年前に思いを馳せることができてワクワクする。
    p307「えーと、穀物からつくった食べ物ね。こちらの世界の人びとは、たいていはパンとか米を主食にしているの」「植物だけで六十億の人びとが快適にすごせているのですか?」「いえ、そうでもないわ。五億ほどの人びとには充分な食べ物がないの」「それはとても悪いことです」
    p319「ぼくの世界では、なぐるということは殺すということです。ですから、ぼくたちは絶対におたがいをなぐりません。」
    p339「いったん死んでしまったら、その人と仲直りをしたり、その人に償いをしたりすることはできませんし、そもそも道徳的な人生を送ったのですから、その人が現世の苦労を忘れて楽園にいるという可能性もありえないんです」
    p387「ぜんぶ」ポンターはゆっくりと、悲しげに首を横にふった。「マンモスをぜんぶ殺したのですか…」
    「あなたたちは思うままに殺す」「あなたたちがぼくたちを全滅させた」

  • クロマニヨンではなくネアンデルタールが進化した並行世界から量子コンピュータの事故でこの世界にやってきた、物理学者ポンターを巡る物語。

    こちらの世界では突然現れたネアンデルタール人に大騒ぎする人々と、いきなり異種霊長類の文明社会に放り込まれたポンターの苦悩を描き、あちら(ネアンデルタール人の)世界では突然いなくなったポンターを巡って、殺人容疑をかけられるポンターの相方アディターの無実を証明する法廷劇を描く。

    パラレルワールドものであり、異種進化ものであり、比較人類学ものであり、法廷劇であり、恋愛ものまで盛り込む、盛りだくさんの小説。俺が特に気に入ったのは異種霊長類でありながら、文明レベルは我々同等以上のポンターの目を通した、現代社会への皮肉と警鐘である。まるでガリバー旅行記な皮肉。特に宗教へのいびつさをポンターが痛烈に喝破するシーンは面白かった。
    「来世を信じるから故意の犯罪が起こる。生まれ変わって償えばよいと思うから。今の命限りであるなら償えないような行為は行えないはず」なるほど、そっちの方が分かりやすい!

    3部作の1作目、まだまだ回収してない伏線もあるし、気になる展開もあるし、こりゃ続編を読まない手はないぞ。

  • 良いですね。壮大なるほら話。やっぱりSFはこうでなくっちゃ。
    いわゆる並行宇宙もの。使い古されたテーマですが、何となく新鮮なんですよね。それはソーヤーが描いてみせるネアンデルタール人の世界の新しさでしょう。
    ソーヤーというともう少し突拍子も無いというか、ファンタジーに近い世界が多いと思っていたのですが、今回はいかにもSFという感じです(考えてみれば、この話も十分に突拍子も無いのですが)。それも1970年代の感じでしょうか。どこと無くJ・P・ホーガンを思わせるものがあります。
    3部作かな。次が楽しみです。

  • 分厚い3部作 読み易いが設定に無理がある
    表紙   5点岩郷 重力   内田 昌之訳
    展開   6点2002年著作
    文章   6点
    内容 715点
    合計 732点

  • 人間社会のおかしさを、原人の声を借りて語っているのがおもしろい

  • 地下深くで量子実験をしていた科学者は密閉された重水タンクの中に異形の人物が出現したのを発見する。
    もしネアンデルタール人とクロマニョン人が違う進化を辿っていたら

  • キリスト教色が強い

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