渇きの海 (ハヤカワ文庫 SF ハヤカワ名作セレクション)

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制作 : 深町 眞理子 
  • 早川書房 (2005年7月21日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (431ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150115241

渇きの海 (ハヤカワ文庫 SF ハヤカワ名作セレクション)の感想・レビュー・書評

  • 2015年11月16日読了。塵の層に覆われた月面を観光飛行する『セレーネ号』が突然塵の中に消失した。船の探索・救助は可能なのか、搭乗者22名の生存は・・・?SFの巨匠による、まさに悠然たる筆致のSFディザスター小説。この人なら地球の海を舞台にしても同じように面白い小説を書けるのだろうと思うが、綿密な科学考証や「宇宙飛行士のむずむず」といったリアルなエピソードなどで高まる物語の迫真性がたまらない。危機的状況を「余興」で乗り切ろうとする提督の百戦錬磨の経験とユーモアや、自らの発見を虚仮にされるリスクを知りながらあえて発表する若き科学者のプロフェッショナルな態度など、人間の英知のすばらしさを歌い、「科学が人類の課題を解決する」という著者のゆるぎない確信が読んでいて心地よい。面白かった!『幼年期の終わり』だけしか読んでいなかったが、もっと読まねば。

  • 何度読み返しただろう。

    まだスプートニクの打ち上げよりも前に書かれたにもかかわら修正すべきところはないという驚きの作品。

    月面の海を航行する観光船が突如海に飲み込まれる。海を構成するのは固体と液体の悪いところばかりの性質をもつ細かい塵。この海の存在のみがSF的設定。閉鎖空間でのパニック・コントロールと次から次に発生する困難に立ち向かう乗員。パニック映画の王道をいく設定でクラークの独特の巨視的視点を絡めながら描かれます。

    自分がこの本を読みたくなるタイミングには傾向がやはりあったことに気づきました。困難な状況に陥っているタイミングなのでした。逃れられないし根本問題も解決することができない状況では、自分の持つスキルと周りの協力を引き出すことでしか脱出することはできない!今もって胸に響く傑作です。

  • 月が観光地となったそう遠くない未来。広大な窪みに何億年分もの塵が堆積した通称「渇きの海」をこの日も遊覧船<セレーヌ>号が観光客を乗せて走行していた。しかし、彼らはただただ不運だった。この日、渇きの海で何万年に一度しか起きないと言われている地殻変動が発生する。それでもセレーヌ号が沈んだのは地表からわずか15m。しかし、外壁の外は空気すらない、塵の世界。月から向けられた未曾有の牙に、人類の叡智を結集した救出劇がはじまる。

    古典SF。執筆されたのがもう55年も前だからか、良い意味で、B級映画のような面白さを感じました。いわゆるSF脱出モノですが、同ジャンルでは小川一水の『天涯の砦』が好きです。

  • とても面白かった。
    SFはあまり得意ではないけれど、これはとても読みやすく、月での風景がよく想像できた。本当にこんな世界があるんだと思い込んでしまうくらいにリアルな描写ばかりで、読んでいる間は間違いなく月旅行していた。でも、ところどころに古い機器の名前が出てきて、ああ、古典SFなんだと思い出さされた。それも含めて愛すべき世界観だと思う。
    最後までハラハラしました。

  • 1961年の小説。
    親の書庫から昭和52年に販売されたものを読了。

    現代から見れば、機器類の名称はレトロなものばかりだが小説全体の世界観は揺るがない。

    緻密な設定と襲い来る難題がそれを支えている。

  • 月の表面にある「渇きの海」。それは、あまりの細かさ故に液体のような特性を示すミクロの砂が海のように広がる月有数の絶景地である。観光客を乗せてこの「渇きの海」を遊覧する船が、突然の事故で「渇きの海」の底深くに埋もれてしまう。軽量のダストスキーしか近づけない「渇きの海」のただ中で、砂に埋もれた観光客と遊覧船スタッフを救い出すために、果たしてどんな作戦が取られたのか?救出作戦の顛末は?

    クラークがこの作品を執筆した当時、月表面には「渇きの海」のようなエリアが実在すると考えられていたそうです(実際には観測されていません)。この作品の真骨頂は、執筆時点における最先端の科学理論を前提として広げ得る想像力の範囲内で100%物語を構築している、つまり「その時点での嘘は一切ついていない」ということ。まるでドキュメンタリーを読むかのような筆致、まさに未来の「プロジェクトX」。ハードSFの代名詞・クラークの面目躍如たる佳作です。

    ただし、あくまでも月面の一エリアでの出来事の描写に終始するストーリーですから、スケール感はかなりこじんまりしてます。また、いかにもクラークらしく、キャラクターの人物造形はステロタイプで深みはありません。それでも面白い、と思えるのは、ひとえにこの作品がジャンルSFだからだと鴨は思います。SF初心者にこそ読んで欲しい作品ですね。

  • 1961年の小説。ただ図書館で手にとっただけだがたいそう有名らしい。月で旅行ができるようになって、砂の海を観光中、地震が起こり砂の海の中に船が沈んでしまう。"塵"の圧力、酸素、温度…様々な問題が矢継早に起こるのは見所満載。閉鎖空間の中の人間関係。考えられる限りの技術を用い、救出に全力を上げる月の技術者達。偏屈だが有能な天文学者。スクープを追い求める記者。まるで壮大な映画を見ているようだった。

  • 斬新で見た事もない情景を、これ以上ないほどリアルに感じさせる筆力。その異世界で繰り広げられるサスペンスフルなストーリー。
    SF設定のディザスター物の中で最も魅力に満ちた物語、それが巨匠A・C・クラークの「渇きの海」だ。
    月にある「流れる砂の海」その砂の海に沈んだ遊覧船。SFとしての設定がストーリーに寄与し、それが新たなセンス・オブ・ワンダーを生み出す。SFでなければ生まれ得ない感動が本作にはある。SFが好きなら必読の傑作だと思う。

  • ああ、クラークの書いた本を読んだなぁ、という感じ
    クラークの宇宙ものだけあって、考証はさすが

    但し、前半活躍してた登場人物を中盤以降もフェードアウトさせまいと無理くり登場させた挙げ句、結局よくわかんない感じになったり、円盤信者が変なタイミングで目立ったり、薬物中毒者のくだりって必要?とか、登場人物がイマイチ。
    登場人物のエピソードは思いつきで書いてる?と思ってしまう。なんとなく坂の上の雲を連想した。

  • 2011年6冊目
     月面の恐ろしいほどの流動性を持つ砂の海に飲み込まれた遊覧船の救出劇。クラークの本はこれで3冊目だけど、科学考証の迫力は半端ないと思う。

  •  「不朽の名作」という言葉がある。月を舞台にしたSF作品というと、これだけ科学が進歩した今、古くさい話のような印象を持つかもしれないけれど、冗談じゃない。「不朽の名作」という言葉、「不朽」という言葉は、まさにこういう小説のためにあるのだと思う。
     僕は個人的に「アポロ13」という映画が好きなのだが、あの「実話」が、この小説のおもしろさとほぼ同じラインに沿っているのに驚いたりする。現実の事故をおもしろいと言うことはできないけど、つまりこのSFは、今後現れるかもしれない現実の事故を、完璧に予言したものと言うことになる。それだけなら、それで終わりなんだけど、それだけでもすごい。
     だが、たとえば「呼吸」の問題と同じ重さで、「退屈」の問題が取り上げられているあたりにすごさを感じる。で、それがどれほど小説の世界に深みを与えていることか。すばらしい。一人でも多くの人に読んで欲しい作品である。

  • SF好きと称しながら、クラークしか読んでいないのは偏食というもの、だけど彼を読み尽くすだけで人生おわっちゃう、ってくらいたくさん本がある。

    「2001年宇宙の旅」「幼年期の終わり」は、あまりにも有名。どちらも大学時代に読んで哲学書とみまごうほどに、(そういえば、大学のインド哲学通論の教授が、ウパニシャドを研究するなら「幼年期」を読めとおっしゃっていました) 内容が華麗だったので以来手に取って、読めるものは読む。長そうなら断念。


    月に塵のような小さな粒子で出来た湖があり、そこを観光船が遊覧している道中、予想もつかなかった出来事が起こる。

    その塵をとりまく、人間の攻防や心理状況がリアルに描写されており、わくわく感でいっぱいになる。

  • まさかの自然災害に巻き込まれた月の観光(宇宙)船。乗員上客の22人はの命運は? 救出に全力を傾ける技術者たちは報われるのか…!? 先が知りたくてガツガツ読みました。淡々と、でも静かに熱く、さらりと、でもじんわりと深く、特に最後の数ページ、上客22人が助かるのか助からないのかというシーンは非常にドラマティックで映像を見ているかのようでした。私の大好きな「楽園の泉」に読後の余韻では及ばないですが、SF好きなら読んでおくべき1冊。

  • 色々な人が乗り合わせるから心強くも、不安にもなる。この本の登場人物はあまりドキドキの要素にはならなかったが、一難さってまた一難の救出劇はドキドキ。

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