ディアスポラ (ハヤカワ文庫 SF)

  • 早川書房
3.84
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本棚登録 : 1119
感想 : 77
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  • Amazon.co.jp ・本 (520ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150115319

作品紹介・あらすじ

30世紀、人類のほとんどは肉体を捨て、人格や記憶をソフトウェア化して、ポリスと呼ばれるコンピュータ内の仮想現実都市で暮らしていた。ごく少数の人間だけが、ソフトウェア化を拒み、肉体人として地球上で暮らしている。"コニシ"ポリスでソフトウェアから生まれた孤児ヤチマの驚くべき冒険譚をはじめ、人類を襲う未曾有の危機や、人類がくわだてる壮大な宇宙進出計画"ディアスポラ"などを描いた、究極のハードSF。

感想・レビュー・書評

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  • 難解さで知られるイーガン作品のなかでも、比較的とっつきやすいと思います。
    人間の、というより知性のアイデンティティを極限まで突き詰めた小説です。

    ちなみにとある漫画で「イーガンを理解している人はいないけど、理解したふりをするのが通の読み方」みたいなことを、さもSFあるあるっぽく言ってました。
    そういう斜に構えた読み方はせず、純粋に楽しみましょう。

  • いやー、まいったまいった。全然わからんかった!わけのわからんことを考える人が世の中にはいるもんだなぁ。
    人格をソフトウェア化して、仮想都市で生き続ける世界。星の終わりによる不可避の終末。それから逃げる/新たな世界に進出する過程「ディアスポラ」を描く。
    なんやようわからんかったけど、最後の方に主人公たちは一応の安全への道を手にいれるのね。新しい世界への切符を手にいれる。でもそれを得る過程でみつかった、さらに先を行く人「トランスミューター」を追いかけることを選ぶ人がいて。まだ見ぬものを求めるって、なんなんだろうね。こんな世界に生きている人がいるんだろうなぁ。

  • すごく難解で世界観が理解できるのかあやふやなまま読み進めましたが、ハマリました。
    とてもスケールが大き目の前に広がる宇宙が頭の中に浮かんできます。さすがに多次元の空間は想像しがたいですが・・・
    人が肉体を捨てて生きていく世界、孤児として創出されたヤチマが宇宙の果てまでも追求する真理。
    何度読んでもあきません。
    読めば読むほどもっと理解したくなる作品。

  • 「30世紀、人類のほとんどは肉体を捨て、人格や記憶をソフトウェア化して、ポリスと呼ばれるコンピュータ内の仮想現実都市で暮らしていた。ごく少数の人間だけが、ソフトウェア化を拒み、肉体人として地球上で暮らしている。“コニシ”ポリスでソフトウェアから生まれた孤児ヤチマの驚くべき冒険譚をはじめ、人類を襲う未曾有の危機や、人類がくわだてる壮大な宇宙進出計画“ディアスポラ”などを描いた、究極のハードSF。」

  • ディアスポラ、ようやく読みました。正直今までのイーガンの本の中では一番わかっていないで読んでいる部分が多かったと思うのだけど、話自体はなんとか追っていました。作中人物ほど、何かが明らかになった時に驚嘆できないのが残念だけど仕方がない笑

    解説の大森望の言葉が最大級の賛辞でぜひ引用したい。
    グレッグ・イーガンは、疑問の余地なく、現在の地球上で最高のSF作家である。…SF史全体を見渡しても、思考の徹底度においてイーガンを凌ぐ可能性があるのは、かろうじてスタニスワフ・レムぐらいだろう。イーガンはほとんど独力で現代SFの最先端を支えている。…「グレッグ・イーガンがSF作家でいてくれてよかった」という気分になるのが主観的宇宙論三部作だとしたら、SF読者にとっての『ディアスポラ』は、「いままでSFを読んできてほんとうによかった」という気持ちにさせてくれる小説だ。イーガンと同時代に生きているしあわせを心から喜びたい。

    ここでもう全部述べられている気はするのですが、残念ながら『ディアスポラ』を読んでも、「いままでSFを読んできてほんとうによかった」という深い感慨にまではたどり着けなかった。おそらく先に三体を読んでいるからで、もし三体以前に読んでいたらきっとそういう気持ちを得ていたのではないかなと推測している。三体の方がわかりやすかったのもあり、途方もない彼方まで飛んでいくということに対してドーパミンドバドバにはなれなかったよう。それを考えると三体、それから他のSF作品で『ディアスポラ』に影響されている作品は山ほどあるんだろうなあと思う。とはいえ最後読み終わった後の読了感は何とも言えない、じーんとしたものだった。どうしてここまできたのか?に対する答えが態度として理解されたときの感動(言葉でなく)がそこにあった。

    といいつつ、私はむしろ最初のヤチマが自我を持つまでのシーンに感動を覚えていた。生命の誕生ともいうべき工程が丁寧に描かれ、そこで自分なるものが発生する神秘・不思議に惹かれた。
    あとはオーランドとアトランタで会うところもそのあとのトカゲ座の災害のシーンも好きだったな…。イノシロウ…(ちょこちょこ日本っぽい名前出てくる)

    そして本作でもメインテーマの一つは「私とはだれなのか?」というアイデンティティの問題。
    「別の目標を見つけて、それを新しい目標に決めることはできるだろうけれど…そのときもぼくはぼくなのか?」(p.237)

    「ぼくらの現状は、それとは正反対だ。際限のない選択肢がある。ぼくらがほかの宇宙航行文明を見つけることの必要な理由は、それだ。…ぼくらは同じ決断に直面して、いかに生き、なにになるべきかを理解した他者を見つける必要がある。ぼくらは、宇宙に存在することの意味を知る必要がある」(p.290)
    ここは後のパオロ・ヤチマの先へ先へという原動力に繋がる場面でもあるけれど、心打たれたシーンだった。ともすると、もうなんとなくやるべきことをやったと思いがちな人生において、まだまだやるべきことがあるだろうと叱咤激励してくれる。まあパオロは最後やるべきことはやりつくしたとなるのだけど、それはあそこまで行ってこそ、そう思っていいのだと思いました。

    それにしてもイーガンはどうしてこんなに彼方まで自分の想像力を飛ばせるのか、不思議でならない…
    「…だが何兆タウものあいだに、ハーマンは人生経験の記憶の大半を消去し、十回以上も人格を書きかえていた。以前パオロはきかされたことがある。「おれは自分自身の曾々々孫だと思っている。死ぬのもそんなに悪いものじゃないね、何度にもわけて経験するなら。それは不死と同じだ」(p.298)

    次は残していた主観的宇宙論三部作の三作品目である万物理論を読む予定。

  • めちゃくちゃ読むのに時間かかった。そして全部理解できたとは言い難い。それでも「読んでよかった、SFってすごい」と唸らせる。宇宙はどのように広がっていて、人類はそれをどのようになら体験・知覚できるだろうかという想像力の限界に挑むハードSFの極地。

  • 3.85/1037
    『30世紀、人類のほとんどは肉体を捨て、人格や記憶をソフトウェア化して、コンピュータ内の仮想現実都市で暮らしていた。《コニシ》ポリスでソフトウェアから生まれた孤児ヤチマの驚くべき冒険譚をはじめ、人類を襲う未曾有の危機、人類の企てた壮大な宇宙進出計画《ディアスポラ》などを描く、究極のハードSF』(「Hayakawa Online」サイトより▽)
    https://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/11531.html

    冒頭
    『ヤチマは、ポリスをとりまくドップラー偏移した星々を見渡した。天空を横切る凍りついた同心状の色の波を、膨張から収束へとたどる。自分たちが追っている相手とついに出会ったとき、どう自己紹介すればいいのだろうと思いながら。』

    原書名:『Diaspora』
    著者:グレッグ・イーガン (Greg Egan)
    訳者:山岸 真
    出版社 ‏: ‎早川書房
    文庫 ‏: ‎519ページ

  • 順列都市が私達の精神がデータ化されるまで、また自律するAIが誕生するまでの話だとしたら、これはデータ化された私達が幾重にも別れて(データ化されているので、クローンを生み出すのは簡単です)さまざまな宇宙に拡散し、探索をするさらに未来のお話でした(根源的には、未来の滅びを避けるための手がかりを探索の目的にしています)。
    私達が気づいていないだけで、私達の生きる空間はトランスミューターのような存在とは既に繋がっているのかも。トランスミューターが進化の果てに獲得したのが、あらゆるものに干渉しすぎない「自制」の力であったことがとても印象的でした。
    3次元以上の世界って想像するのが難しいですが、かなりイメージが掻き立てられます。
    あと、主人公のヤチマのようにマイペースに生きることは辛くなく生きるコツなのかなと思いました。イノシロウ、オーランド、パオロ…様々な人物の末路が描かれますが、自分の中に生きることの答えを見出したヤチマの行き方は最も自分自身という存在にとって幸福なことのように思います。

  • 本書『ディアスポラ』には「拡散」という意味と「離散」という、似て非なる概念が内包されている。著者のイーガンがそれを意識したかどうかはわからないが、タイトルは作品のすべてを表しているように思える。
    コンピュータによる制御で「精神胚」。それは規則的な数字を発生させ、それを超大に増殖させ続けると必ずどこかで起こるバグの発生によってきっかけを与えられ、やがてひとつの個性に達する。バグは、その可能性はどれほどゼロに近くてもゼロにはならない。それを「宇宙の根源的意志」と捉えることもできるだろう。ランダムに発生するミス(バグ)はやがて同時生産的に創造される他の数値の蓄積とは、少しずつ異なる構成を持つようになる。このような「不確実性の増殖」から「個性」が誕生し、やがてそれ自身が自らを問うようになって自我(あるいは知性)が誕生する。この辺りは細胞の増殖や脳内シナプスの連携などをインスパイアさせる。いずれにせよ、このような計画的数値の増殖作業には、背景となる関係性が限りなく稀薄にみえる。その起源はあくまで数値の集合体のなのだから、主人公であるヤチマはコンピュータが作成したソフトウエアから誕生したという意味で「孤児」のようなものだった。
    彼は自らの生の意味を「探究」に求めた。自らを「真理鉱山」と呼ぶ知識の集合体に置き、絶えざる質問と答えを繰り返しながら、知識を増やしていく。それは恰も、数値の集合体が自我を生んだように、知識の集合体が超自我に到達すると信じての作業のようにもみえる。
    ヤチマは、生きるということ、存在するということを通じて意識(自我)を追究しつつ、仲間とともに自らをさらにスキルアップさせながら、直面する危機と、あるかもしれない可能性(トランミューターの探索)を求め続ける。存在とは3次元(あるいは4次元)的なものばかりでなく、5次元、6次元と無限に続くものであって、認識も作業も感覚も、すべてがその次元によって展開されるものだがから、従来的な3次元宇宙との接点は限りなくゼロに近い。その事実を少しずつ拾い上げながら、生きることの意味を探しつづける壮大なスペースオペラだと言える。

  • 順列都市が面白すぎて期待値を上げて読んでみたが,完全に置いていかれた..
    話が全然入ってこなかった.

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著者プロフィール

1961年、オーストラリア西海岸パース生まれ。SF作家。西オーストラリア大学で数学理学士号を取得。「祈りの海」でヒューゴー賞受賞。著書に、『宇宙消失』『順列都市』『万物理論』『ディアスポラ』他。「現役最高のSF作家」と評価されている。

「2016年 『TAP』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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