泰平ヨンの航星日記〔改訳版〕 (ハヤカワ文庫 SF レ 1-11)

  • 早川書房
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感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (555ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150117252

感想・レビュー・書評

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  • 変人学者の累計


    “すでに常識だが、近頃の学者は書斎派と逍遥派にわかれている。書斎派は伝統的な方法で研究を行っているのだが、逍遥派の面々は休むことなくありとあらゆる国際会議や学会に顔を出す。逍遥派の学者はバスや待合室、飛行機、ホテルのバーでも専門書を読んでいる。

  • ポーランドのSF作、スタニスワフ・レムによる連作短篇集。泰平ヨンが大宇宙で繰り広げた数々の旅について、本人が綴った日誌という形でユーモラスに描かれている。語り口が軽妙でリーダビリティが高いため、レム未経験の読者にこそお勧めしたい。あとは『どくとるマンボウ~』などのエッセイシリーズが好きだった方もぜひ。
    (経営工学系 B3)

  • 新訳と改訳の違いってどんなんでしょうか?

  • 「英雄的な宇宙旅行士・泰平ヨンの膨大な航星日記を編纂した作品」という形式で展開される本書は、東欧SF界の巨星、はたまた知の巨人と評されるスタニスワフ・レムのユーモアたっぷり(シュールさ満点)の連作短篇集。

    本書では計14つの日記を紹介。宇宙旅行士・泰平ヨンがビンケンバヒヤ重力渦に突入した結果、時間の流れがゆがんでしまい、火曜日や木曜日、金曜日の自分が出現し、ついには、100人を超える自分とひとつの宇宙服をめぐって議論を交わす…などなど、その全ての日記は、まあとにかく奇想天外で奔放な内容ばかり。これまでに読んだレムの作品は「ソラリスの陽のもとに」と「砂漠の惑星」の2作品のみ。だからか、レムといえば生真面目な作家という印象が強かったのですが、どうやらそれは誤りのようです。読んでいて「バカSF」という言葉さえ頭を過ぎったぐらいですが、単なる「バカSF」あるいはユーモアでシュール溢れる作品に留めないのが流石のレムらしく、訳者あとがきで説明されるように、それら日記の全てにおいて深い考察の片鱗を感じられます。とりわけ、宗教がはらむ矛盾、クローンや人体改変の行き着く姿については(もちろんこれらに限らず)、バカらしい展開の裏で、鋭く不気味に見透かしているレムの影がみえるのが恐ろしい。

    そんなユーモア溢れ、深い洞察を秘めた作品とはいえ、全14つの日記(約530頁)を一度に読むのは、なかなかしんどかった…ちょっとずつ読み進めるのが正解かもしれません。

  • 泰平ヨンという人物が時間的、空間的、思考的に旅をする文章をメタフィクション風にまとめたSF作品。元ネタとなっている知識が幅広い。さらに、本が書かれた当時の社会問題やそこへの批判の目が鋭い。初めはコメディSFのように読んでいたが、寓話的に示唆される倫理や哲学、道徳の問題に打ちのめされてしまった。レムすごい。

  • スタニスワフ・レムの作品の中では、『ソラリス』と並んで有名なのがこちらではないだろうか。
    SFのありとあらゆる『お約束』的なテーマを用いつつ、コミカルなドタバタ劇を展開し、全体を俯瞰するとメタフィクション的な構造を持っている、良い意味で『何でもあり』な内容。一見するとハチャメチャになりそうなのに、纏まっているところが凄いw
    一番有名なのは、冒頭の『第七回の旅』だろう。船内にひしめく無数の『自分』の姿は、想像するといっつも笑ってしまうw

  • 2014/5/6購入

  • 伝説の宇宙飛行士、泰平ヨン。彼の航宙日誌に書き記されていたのは、何人もの「私」との遭遇に、ロボット国の顛末、空飛ぶジャガイモを巡る騒動に果ては宇宙創成までだった!?

    レムに初挑戦。大笑いしました。
    お気に入りは空飛ぶジャガイモ騒動記。未確認ジャガイモ様物体の存在の有無を巡り、ああだこうだと様々な論点の論理・議論がこれでもかと出す人々と、それに実際のジャガイモを捕まえてくることで議論に蹴りをつける教授との対照がいい。机上の空論だけではいかな論理といえども無力だなあ、と思いました。

  • 2012年2月8日読み始め 2012年2月15日読了
    スタニスワフ・レムというと難解なSFというイメージですが、これはハチャメチャっぷりが楽しい本です。ちょっとモンティ・パイソンみたいな感じ?宇宙飛行士泰平ヨンが様々な星に行って様々な体験をして帰ってくる、そういう話がたくさん入ってます。
    しかしそこはレムで、人間の行い、政治や宗教に対しての風刺もたくさんでうーんと唸らされる話が多いです。
    ですが、この本長いです…ちょっと最後の方は飽いてしまいました。

  • 宇宙を旅する泰平ヨンの奇想天外な冒険を集めた連作短篇集。

    冒頭から「序文」でのお遊びにニヤニヤ。軽妙な語り口のホラ話のなかに詰め込まれた、哲学・宗教・歴史・科学に対する考察やアイロニーにも圧倒される。
    「ドラえもんだらけ」風味の「第七回の旅」、水棲人の「第十三回の旅」、宗教ネタの「第二十一回の旅」と「第二十二回の旅」、じゃがいも論争の「第二十五回の旅」、メタフィクションぽい「第二十八回の旅」あたりがお気に入り。

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著者プロフィール

スタニスワフ・レム
1921 年、旧ポーランド領ルヴフ(現在ウクライナ領リヴィウ)に生まれる。クラクフのヤギェロン大学で医学を学び、在学中から雑誌に詩や小説を発表し始める。地球外生命体とのコンタクトを描いた三大長篇『エデン』『ソラリス』『インヴィンシブル』のほか、『金星応答なし』『泰平ヨンの航星日記』『宇宙創世記ロボットの旅』など、多くのSF 作品を発表し、SF 作家として高い評価を得る。同時に、サイバネティックスをテーマとした『対話』や、人類の科学技術の未来を論じた『技術大全』、自然科学の理論を適用した経験論的文学論『偶然の哲学』といった理論的大著を発表し、70 年代以降は『完全な真空』『虚数』『挑発』といったメタフィクショナルな作品や文学評論のほか、『泰平ヨンの未来学会議』『大失敗』などを発表。小説から離れた最晩年も、独自の視点から科学・文明を分析する批評で健筆をふるい、中欧の小都市からめったに外に出ることなく人類と宇宙の未来を考察し続ける「クラクフの賢人」として知られた。2006 年死去。

「2023年 『火星からの来訪者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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