2010年宇宙の旅〔新版〕 (ハヤカワ文庫 SF) (文庫) (ハヤカワ文庫 SF ク 1-49)

  • 早川書房
3.95
  • (30)
  • (44)
  • (30)
  • (1)
  • (1)
本棚登録 : 443
感想 : 27
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150117337

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 十数年ぶりに再読。「作者のノート」の裏話が楽しい。リアリティ溢れる船内の様子や木星とエウロパの生物の描写に、著者の想像力の冴えを感じる。終盤のハルとチャンドラとの会話には息が詰まった。ラストではエウロパの生物のために木星の生物が犠牲にされたわけで、こんな大きな決断を平然と下してしまう「彼ら」の力が恐ろしくなった。エピローグもワクワクさせてくれて良い(この頃の人類はどうなっているのだろうか)。

  • 小説の続編でなく、映画のストーリーに続くもの。その割り切りと進取の姿勢に驚かされました。大いなる存在との遭遇よりも宇宙旅行冒険譚として楽しめる内容でした。

  • もはや説明の要すらない大傑作「2001年宇宙の旅」の9年後を舞台とした続編。設定上は、小説版ではなく映画版の続編となっており、遺棄されたディスカバリー号が漂流しているのは木星衛星群の宙域です(この辺りのいきさつは、クラーク自身による「作者のノート」に詳しいです)。

    宇宙飛行士4人が死亡、1人が行方不明となったディスカバリー号事件から9年後、木星衛星群探検のきっかけを作ったヘイウッド・フロイド博士は、ディスカバリー号回収のためにHAL9000の生みの親・チャンドラ博士と共にロシアの宇宙船に乗って木星へと旅立つ。9年前と何ら変わらぬ政治的な駆け引きに翻弄されつつも、ボーマン船長が残した謎のメッセージを頼りに木星周辺での探索を続けるフロイド博士が観た事件の真相、そして更なるモノリスの企みとは?

    前作の小説版は、いわゆる「ハードSF」としてきっちりと作り込まれた物語的ダイナミズムが最大限の効果を発揮した傑作だと、鴨は思っています。映画を観る限りだと何が何だかよくわからないんですけどねヽ( ´ー`)ノ小説版では、TMA-1の存在理由もHAL9000が発狂する過程もボーマン船長が変容したものが「何か」もSFとして全てちゃんと説明されており、SFとしての(実にクラークらしい)オチも付いています。
    続編である「2010年」も、前作のテイストを引き継ぎ、「ハードSF」として隙のない、きっちりと美しく構成された物語世界が展開されています。まぁ、モノリスによる変容後のボーマン船長(であったもの)が登場したり、コンピュータであるHAL9000の「意識」がディスカバリー号消滅後にも精神体として生き残ったり、多分にオカルティックかつスピリチュアルな描写もそこかしこに見られるのですが、クラークのスゴいところはそれがハードSF世界の一風景として何ら違和感なく存在しうるというところ。ボーマン船長(であったもの)がクルーにとある警告を発して以降の物語の緊迫感は、タダものではないです。最終的に警告を受け入れたクルーが危機一髪で木星圏を脱出する描写に、鴨は痺れましたね。これぞハードSF!

    この「ハードSFっぽさ」に加えて、いかにもこの作品がクラークらしいポイント。それは、地球人類の未来に対するニュートラルな視点です。
    物語の途中で、どこかで読んだような気がする一章が挿入されます。実はこれ、前作「2001年宇宙の旅」と全く同じテキストによる、モノリスの存在理由を説明する一章なのです。地球人類のちっぽけな自尊心など全く意に介さない、巨大な存在の提示。そして、物語の最後の最後に登場する、モノリスによって選ばれた「地球人類以外の知性」。地球人類の存在意義を徹底して客観的に見つめる、「幼年期の終わり」にも通じるクラークの冷徹な視線を感じます。
    そんな壮大なヴィジョンを提示しつつも、その一方でフロイド博士の離婚騒動とか宇宙船クルー内の恋愛模様とか、ものすごく卑近な地球人類ならではの人間模様も描いてみせたりして、あぁもぅこれだからクラークやめられないのよヽ( ´ー`)ノ
    面白いです!

  • 「2001年宇宙の旅」といえば、スタンリー・キューブリックの映画で有名ですが、その原作者(というか小説版)がビッグ3、アーサー・C・クラークであることは、たぶん知ってる人は知っている。本書は、映画版「2001年宇宙の旅」を下地にした続編です。なぜ映画版と記載したかというと、原作と映画版では舞台が違うんですね。原作は目的地が土星であるのに対して、映画版は木星。ということで、本書では木星を舞台に話が展開していくことになります。

    素晴らしい作品の続編、かつ、特にその続編が当初計画されていなかった場合においては、どうしても続編自体が蛇足と思われたり、一作目と比較されて下にみられる印象があります。ところがどっこい、本書は一作目をうまいこと補完しつつ、この宇宙に対して新たな示唆を与える内容で、とても興奮に満ちた作品でした。序盤〜中盤は、ただ物語が進捗していく感じですが、終盤に繰り広げられるスペクタルは想像力を刺激されます。
    しかし、なんか人間に対してすごいドライな印象を受ける結末でしたね。その辺は続編以降で明らかになるのかな?ただ、続編以降の評価がよろしくなく、なんとなく先に言及した蛇足感のある内容でないことを祈るばかり。。。笑

  • 2001年の続編だけどこっちの方が好き。
    凄すぎて言葉にできない。

  • 2001年宇宙の旅の続編(ただし小説版ではなく映画版の設定を引き継いでいる。)

    ソ連国籍のレオーノフ号に、アメリカ組のフロイドら3人がソ連宇宙飛行士たちと同乗し、2001年に乗員を失ったアメリカ船ディスカバリー号を回収することを目的に木星へ向かう。
    フロイドらはディスカバリー号の回収を行いつつ、木星軌道に浮かぶ、前作から謎に包まれていた物体モノリスに接近し、その調査に挑む中、モノリスが驚くべき行動にでる。


    文系人間の私にはちんぷんかんぷんの内容が多く、かつ人名が紛らわしいの何ので追いつくのに必死でした。ですが理屈はわからなくても情景が目に浮かぶ描写で楽しみ、モノリスの行動に度肝を脱ぎ、主人公たちの関係性やたわいもないやりとりにほっこりし、上っ面だけですが十分に楽しめた作品です。

  • 面白かったけど、謎が多いまま。

    2001年宇宙の旅は、原作と映画が後の方でずれたため、映画の内容に合わせて少し書き換えられている。
    土星だったのが木星に。などなど。

    9年前に土星(設定が今回木星へ変更)の調査に行った宇宙飛行士たちの中でボーマンだけが、星がいっぱいという言葉の後いなくなった。
    今回は宇宙船ディスカバリーを探しにいくことと、ボーマンはいったいどうなったかの調査のため旅立つ。

    ハルを復活させたけど、覚えてなかった。
    今回のハルはちゃんと仕事をしていた。

    フロイド博士だけが、ボーマンの意識と接触し、早くここから去った方がいいと忠告される。

    なんとか、みんなを説得させたが、帰還初期にとんでもないものをみる。

    木星がザガートカ(モノリス操作する意識?)によって消滅?めっちゃ小さくなった後、生まれ変わり大きくなり太陽になった。

    地球にとって太陽が2つに。
    しかも、夜が短くなった?ようだ。

    エピローグで、エウロパ人について書かれていた。
    ボーマン意識からのメッセージ(ハルが伝える)には、エウロパだけには降りるなと。

    エウロパ人からも、地球人がいるかわかってないようで、何やら光(宇宙船)が移動していると思っている。
    何か他のものがいると思っている。

  • ハルがどうして反乱を起こしたのかはわかった。
    神がどういった存在かとか、精神と肉体の関係性、どちらが重要な存在かだとか、SFというよりは哲学的な小説だと思った。

    チャン博士が見つけた木星の衛星にいた魚みたいな生き物は、木星が太陽になった後どうなったんだろう。続編を読めばわかるのかな。

  • ストーリーが映画の続きだったので、ちょっと混乱しながら読み進めた。
    全体的にもうちょっとすっきりしててもいいかなと思わなくもなかった。
    映画も観たけど、まぁなんというか観なくても別に良かった。

    2010: Odyssey Two(1982年)

  • これも、結構前に購入したのだが、なぜかそのまま積ん読になっていた。2001年宇宙の旅を読んでから10年以上経っており、内容も忘れていたので、最近また2001年を再読してから読んでみた。
    続編だと聞いていたのだが、(新販)ということもあってか、色々と手直しをしたと書かれていた。旧版の方は読んだことはないのだが、やはりその時代を反映した形で書き直されるのだろう。2001年では米国とソ連という大国が出ているが、今回はすでにソ連はなくなっている。この小説での国際情勢の変化はよくわからないが、今回の内容は、米国とロシアの協力がテーマに書かれていたように思う。

    主人公が、ボーマンからフロイド博士に変わっている。ボーマンが星の子になった後にどうなったかは、残念ながら今回もよくわからなかったが、まあ、このわからないところが魅力的なのかもしれない。
    今回は、HALとチャンドラ博士の会話はあるものの、どちらかというと人間同士のやりとりがメインのドラマのように感じた。所々わからなくなったり、前回は土星がターゲットだったはずが、いつの間にか木星に焦点が当てられていたり、流れがなかなか複雑だが、物語は楽しかった。

    もう2010年は一昔前になろうとしているが、未だ人類は有人ということでは木星にたどり着いていない。実際、「ザガートカ」みたいなものってあるのだろうか。昔はそういうものに憧れて、良く空想にふけったりしたが、今でもこんな小説を読むと、当時の高揚感が蘇って来る。

    しかし、結局TMA1とかザガートカについては、決着していない。これは続編で明らかになるのだろうか。まだ続編を読んでないので楽しみである。

全27件中 1 - 10件を表示

アーサー・C・クラークの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ベルンハルト シ...
ウンベルト エー...
グレッグ・イーガ...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×