ジェイクをさがして (ハヤカワ文庫 SF ミ 2-1)

  • 早川書房
3.63
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本棚登録 : 248
感想 : 23
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150117627

作品紹介・あらすじ

ロンドンは、どこからともなく出現した謎の存在"イマーゴ"に幾度となく蹂躙され、無秩序状態に陥っていた。わずかに残った数千人の市民は、レジスタンスを組織し抵抗運動を続けていたが、容赦ない攻撃を繰り返すイマーゴの前になすすべもなかった…。グロテスクなイメージに彩られたローカス賞受賞の傑作「鏡」、世界の終焉を迎えつつあるロンドンを彷徨う男を描いた表題作ほか、英国SF界の旗手による全14篇を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 訳が悪いのか、ちっとも面白くない。原作が面白くないのか。これ、ローカス賞?

  • SFというよりホラーの風合い。ピリリとしたアイデアの短編が並ぶ。どれも読者を「?」の立場に立たせることで引きつけ、結末も基本的にオチやカタルシスをつけることなく宙ぶらりんの余韻を残す。センス・オブ・ワンダーを感じさせる。

    ただ並んだ短編がどれも似たような傾向、手法であるがために、やや、おなか一杯感がでてしまうのが残念。余裕やユーモアもあるのだが、技術的にうますぎるが故にフックが足りなくなっている感じもある。クトゥルーものが何篇か。

  • 『都市と都市』はSFと言えなくもなくもない気もしないでもなかったが
    短編集のこちらが本来の持ち味か
    本来ってあちらが別物でもないだろうけれど
    怪異な事件が起こるわけではなく
    どれも視点人物から幻想覗くような都市舞台のファンタジー
    文化の背景を説明したりせずに
    土台前提とした結構なので
    こちらに果たしてどれだけわかれているか手の届かない感じ
    日本でいえば昭和郷愁みたいなもので
    国外文化向けでない作品

  • ジェイクをさがして (ハヤカワ文庫SF)

  • 2017.6.1(木)¥310(-2割引き)+税。
    2017.6.28(水)。

  • どれもオチがすっきりしないのだが、これは良い不条理感!
    表題作:滅びていく世界の不気味で無気力な感じと、その中で主人公が彷徨っている夢のような感覚がとても好き。ラストも、全然理屈になっていないのだがなぜか主人公が納得しているというのが夢の中の思考みたいでおもしろい。
    ボールルーム:途中まではベタなホラーだったが、ラストがよくわからず混乱。夫にも読んでもらったら、「もともと家族客を呼び込むために、オカルト的な手段でボールルームに子供を集めており、その術が暴走して幽霊を呼び込んでしまったのではないか」という解釈で、納得。
     基礎:これもオチは投げっ放しだが、一応わかる。意図的に事故を起こして地中の死者たちに生贄をささげたつもりが(ホラーで死者が生きている人間を呪い殺したりするから、この発想はそんなに唐突ではないと思われる)、全然効果がなかったということだな。塹壕にコンクリートを流し込んで埋め立てていくシーンの悪夢感が良い。印象としては明るくて静かなのだが、静かな狂気と絶望が感じられる。
     道路が戦うやつ:これはあまりビジュアルイメージが想像つかなかった。道路がいつの間にか入れ替わっているというところは面白い発想だと思ったのだが。
     使い魔:色んな廃棄物や動物の体の一部を使って自分の体を作っていく描写が、単に悪趣味なグロさではなく、なんか知的というか…。この作者のこういう雰囲気が好き。
     窓:これも発想はおもしろい。でもオチの印象がうすいかな。
     クリスマスのやつ:発想がおもしろい。ラストで、子供たちがネットで独自に進化しているのは、大人から見るとちょっと怖くもあり、希望が持てるようでもあり、という感じで後味は悪くなかった。
     ゲーム・ネットオタクの友人の話は、募金サイトの偽善的でむかつく感じはリアルだが、それと真剣に戦う友人のエキセントリックな感じが良い。
     鏡:うーん…いまいち、モノローグの言葉遣いがわかりにくくて頭に入ってこず、あまり楽しめなかった。ガラスの鏡と水面の違いが鍵になるのか?とおぼろげながら思っているが、全然理解できてない。落ち着いたら再読してみようかな。

  •  『ペルディード・ストリート・ステーション』を読み終えて、私はミエヴィル中毒になった。これはミエヴィルの短編集。『ペルディード』ふたたび、と思っていると、やはりちょっと違う。彼はホラーとかウィアードの作家ということになっており、そういう掌編が並ぶ。マンガも。

     何だかダメになったロンドンでジェイクと別れた話。建物の基礎の声を聴く男。デパートのボールルームの怪異。魔法使いの使ったスプラッタな使い魔の行状。ある言葉を聞くと脳の一部が蠕虫状になって脳を食い荒らしてしまう病気についての医学事典の記載。クリスマスのあらゆる細部が商標登録されてしまったロンドンのお祭り騒ぎ。外界の線が相貌になって迫ってくることから逃れようとする老婆。などなど。
     いずれも奇妙な話だが、現実世界に悪魔が登場するような類のホラーではない。森永のコマーシャルに「誰もいないと思っていても、どこかで、どこかでエンゼルが」という歌があったが、これ、改めて考えてみるととても不気味な歌であって、ミエヴィルの不気味さも日常に天使が浸透してくるような不気味さである。福山庸治の『臥夢螺館』というマンガを思い出した。そういえば『ペルディード』もそんな天使(?)が解き放たれたことで話が進んでいく。
     そしてオチがないのも特徴。

     『ペルディード』の終盤にかけて、苦しい戦いを強いられる主人公たちが見守るなか、突然、敵方の中に現れて、彼らと言葉を交わすこともなく、何だか解らないが手助けしてくれる「お祈りジャック」。曲者揃いの『ペルディード』の登場人物の中でも最高にファンキーな彼を扱った「ジャック」だけが、ニュー・クロヴゾンを舞台にした作品だ。

     最後に「鏡」という中編が収められている。鏡の向こう側で長年、人間のまねを強いられてきた存在が、自由を求めてこっちに飛び出してきて崩壊したロンドン。どうやら「ジェイクをさがして」と同じ舞台らしい。
     この不気味な手応え。

     しかしやはり長編が読みたいと思ってしまったことも事実。

  • 異世界からの侵略。しかしこの短編集の中でフォーカスされている主人公の多くはそれに立ち向かうヒーローではなく、その事態の中でときに端役、ときに傍観者ですらあり、それ故の葛藤/混乱/苛立ち/諦観/疎外感/無力感が切なく描かれる。そして主人公、ことごとく孤独。というのが14編中の半分以上。こういうの好き。と言いつつ思いっきり立ち向かおうとしちゃう『もう一つの空』もお気に入り。「ネクタイだった。」の脱力も楽しかった。『鏡』は、訳の所為か原文からなのか、なんだかリズムが合わない感じでいまいち入り込めなかった。残念。

  • いや~思った以上に楽しめました。SFというより仄かなホラー(シュールさもあり)を彩った幻想小説、と言った方がしっくりきます。いろんな世界観を描いていてそのひとつひとつが異形たちの物語で、これがたまらなく魅力的。グロテスクな場面と共に、異形たちの息づかいがすぐそばで感じられるような描写に引き込まれます。物語の不確定さ、歪んだ世界の不安定さがまとわりつく感覚。不気味さを感じながらも離れがたい感じが好き。お気に入りは「ジェイクをさがして」「基礎」「ボールルーム」「使い魔」「仲介者」「もうひとつの空」「鏡」。(2010年12月読了)

  • 『ジェイクをさがして』
    『基礎』
    『仲介者』
    『もうひとつの空』

    が好き。

    ほとんどの作品にオチがないと言われているが、
    そもそもこういう物語にオチは必要ないだろう。
    不思議な余韻が、読後もしばらく続くところが良いのだ。

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