最終定理 (ハヤカワ文庫SF)

  • 早川書房
3.08
  • (2)
  • (5)
  • (12)
  • (3)
  • (2)
本棚登録 : 132
感想 : 9
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (552ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150118945

作品紹介・あらすじ

コロンボの大学に通う青年、ランジット・スーブラマニアンの熱烈な興味の対象は数学だった。なかでも夢中だったのはフェルマーの最終定理で、彼はその新たなる証明方法を日々追究していた。いっぽう宇宙の彼方では、超知性をもつ異星人たちが強力な破壊兵器を生み出す人類を憂い、地球へと艦隊を発進させていた…。巨匠アーサー・C.クラークが、フレデリック・ポールとともに自身の愛するものすべてを詰め込んだ遺作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 主人公ランジット・スーブラマニアンは、スリランカ人数学者。彼は、ワイルズによるフェルマーの定理の証明はフェルマーが発見した真の証明ではあり得ず、美しくも簡潔な真の証明を自ら発見しようと数論にのめり込んでいく。順調に学生生活を送っていたランジットは、ひょんなことから海賊一味によるクルーズ海賊行為に巻き込まれ、通訳としてこき使われた揚げ句に誤って司直に逮捕され、拷問を受けることになってしまう。が、そのどん底の生活のなかで見事フェルマーの定理の証明を完成させたランジットは、救出されるとたちまち時の人に。

    その後、紛争絶えない世界に平和をもたらすべく、サイレント・サンダーという非致死的ながら破壊力抜群の新兵器が開発され、国連の下新たに組織されたパクス・ペル・フィデムが管理・運営して紛争当事国を無力化していった。また、スカイフック(宇宙エレベーター)が完成し、月で行われた低重力下での筋力飛行レース(月世界初のオリンピック)がきっかけとなって月観光が盛んになっていく。ランジットの娘ナターシャは、低重力飛行レースの選手として大活躍し…。

    こうした近未来の地球の動向を尻目に、宇宙では、銀河系の一画に存在する暗黒物質の細流の渦のなかに住むという、高度知性体グランド・ギャラクティクスは、地球人類による核兵器の使用を察知すると有害な種族と認識し、配下のナイン・リムズに地球監視を強めさせ、宇宙の殺し屋ワン・ペイント・ファイヴズには艦隊を組織して地球へ急行させ、サイレント・サンダーの使用を察知すると地球殲滅の最終結論を下した。

    とまあ、色んな出来事が起こりつつもストーリーは淡々と進んでいく。フェルマーの最終定理は地球各地で頻発する地域紛争には影響を与えないし、ましてや宇宙人による地球殲滅行動とは全く無関係だ。ランジットは、フェルマーの最終定理を証明したことによって一躍著名人となるが、パクス・ペル・フィデムやその背後にいる超大国に政治利用されるのを拒否し、賢い妻と共に良識派の知識人として世界の動きを冷静に観察する。

    全ての出来事が、結末に向かって(予定調和的に)繋がっているという感じがしないところが、かえって読んでいて心地よかった。面白かった。

  • 読みながら劉 慈欣の「三体」を思い起こしました。 いずれも日常と宇宙のつながりが紡ぐ物語で、人類が危機を迎え、克服する話です。

    本書はクラークの遺作で、クラーク90歳、ひきとって書きあげたフレデリック・ポールは89歳だったそうです。

    前半部の描きこみに比べ、後半からスピードが上がっていくというか、急展開だったり、細部を意図的か飛ばす部分に難を感じる部分もあるかもですが、小野田和子さんの訳がよいのか、文体はリズムがあり読みやすかったです。

  • 最終定理 (ハヤカワ文庫SF)

  • アーサー・C・クラークの遺作。フェルマーの最終定理を解くスリランカの少年が成長していく物語。SFだし宇宙人も登場するけど人類との時間と空間のスケールの違いがゆっくりと全体ストーリーの関わっていく。

  •  SF界の巨匠ふたりがタッグを組んだ長編。正直言ってびっくりする。

     中身は、ちょっと寓話っぽいすてきなSFである。フェルマーの最終定理に挑戦する主人公が、なかなか魅力的だ。

     ハードなSFを期待して読んでいるとびっくりはする。ちゃんと、異星人による地球侵略とかになってきて、その宇宙人の感じなどは、それこそ「スターウォーズ的」である。巨匠の茶目っ気かな。どちらかというとほほえましく読める。

     SFとして目新しいものがあるわけではないのだけど、重力エレベーターだったりプログラムとしての生物だったり、さまざまなアイデアが上手く組み合わさっている。新しいアイデアと言うよりも、巨匠たちがそれぞれの名作で創作し、「SF的現実」となったものを持ち寄って組み合わせ、ひとつの世界を作っているという感じだ。しかも、そういった点については、実にがっちりとハードSFである。

     一番心に残るのは、この作品に込めら得たテーマである。タイトルの最終定理というのは、もちろん主人公の人生に大きな影響を与えるフェルマーのものだろうけれど、もうひとつ大きな作品中の意味があると思う。それが、最後の方になってグンと心にしみてくるのである。

     アーサー・C・クラークの遺作になるという。彼のメッセージをちゃんと受け止められる人類でありたいものだと思う。

  • 久しぶりのクラーク。
    数学の定理には疎く、どうかと思いながら読んでみた。
    一人の数学者の生涯としては、恋愛もあって興味深く読めた。
    数学や宇宙の話がもっとよく理解出来たらよかったな

  • ザ・クラークという話
    宇宙エレベータ、スリランカ、坊さん、地球人を監視する宇宙人、ソーラーセイル、海水の温度差による発電etc(ここまでくると、イルカは出てこないの?と思える)
    ただし、懐かしさがある分、新しさは薄いし、その割には色々と詰め込みすぎている(同性愛、海賊、嫌な中佐、ロバート、大学の講義etc)

    情報だけになって永遠に生きるマシン・ストアドというアイディアは、名称含め、さすがに古すぎるし、話のサゲで使うほどではない。

    構成も、いきなり裏話的な事情を明かし、終わりも事情を喋りすぎ。フィクションにしても、一線を越えないようにして欲しい

    肝心の最終定理は、あまりストーリーに絡まない。話したいストーリーがないのではないかと思う。(この話を要約すれば、地球で核が炸裂し、粛清する必要ありと思った宇宙人が地球に向かったところ、サイレント・サンダー(ネーミングがださすぎる電子機器無効化装置)によって地球の社会情勢が落ち着きだしたので、粛清やめました。最終定理関係ない)

    数ページ読めばクラークだと分かるので、クラーク好きな人は楽しめる

  • クラーク爺さんの最終作。
    前半はだるいけど後半面白かった。
    ただ、ワイルズに謝ったほうがとか思ったwww

全9件中 1 - 9件を表示

アーサー・C.クラークの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ジェイムズ・P ...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×