火星の人 (ハヤカワ文庫SF)

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制作 : 小野田和子 
  • 早川書房 (2014年8月22日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (592ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150119713

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火星の人 (ハヤカワ文庫SF)の感想・レビュー・書評

  • 有人火星探査で事故にあい、火星に一人取り残されてしまう。
    食料は?水は?空気は?あらゆる知識と技術を駆使して、あるときは農家、あるときは建設屋、あるときは運転手となって1年以上火星でサバイバルを続けるのです。

    震災で水が少なくなって、頭も洗えない状態が続いて3日目、かゆいし気持ち悪いし、心底嫌になったものですが、これが1年以上・・・こういうちょっとした不快感・ストレスがが積み重なって、ミスやパニックにつながってくるはずなのですが。訓練をつんだ宇宙飛行士といえども、ここまでいけるのかと思うほどユーモアたっぷりに生き延びていきます。

    恐怖を感じるのは正しい状態、でもパニックにつなげてはいけない。正に生き延びる条件はこれに尽きるなぁ。
    ディックだったら、発狂していく姿を描いていくんだろうなぁ、と思ってしまうのは最近PKDに侵されてきている証拠か・・・。

    映画化の話も進んでいるそうで楽しみ。本当に監督はリドリー・スコット?
    独特の青い光を火星でどのように使うのかも気になります。

  • ここ最近読んだ中で間違いなく一番面白いSF小説。この作品のおかげで会社に通えてたようなもの(主な読書時間が電車通勤の時間のみ→会社行きたくないけど電車の中で続きが読めるぞ!→会社行こう)。

    火星に一人取り残された男の生き残りを賭けた戦いーーというあらすじを聞き、悲愴感漂う重厚なSFは今の自分には荷が重いかもと思って読むのを躊躇していたのだけれど(物凄く分厚いし)、全く予想を裏切られた。か、軽い……!ギャグ盛り沢山!まるでTwitterやブログを読んでいるかのような主人公の語り。楽しい。

    宇宙の知識に乏しく、理科や算数数学が苦手な自分にも「これはリアルだ」と思わせるところがすごい。それは主人公含め問題解決に臨む人物たちの思考の道筋がよく見えるからだ。だから失敗した時もなぜ失敗したのかがよく分かる。こんなに火星を身近に感じたのは初めて。今後じゃがいもをレンジでチンするたびにこの「火星の人」を思い出すだろう。映画が楽しみ。

  • 面白かった!
    SFにも翻訳物にも向かない頭で、カタカナやアルファベットだらけの名前をなんとなくで覚えて、水素がどうした酸素がどうしたとかいう化学な話題もなんとなくで眺め、とにかくいろんな「?」が頭を飛び交っていくのを見てみぬふりして読み進めた。
    時間はかかったけど、じっくりちゃんと読みましたとは口が裂けても言えません。
    それでも、問題解決に向けて一つ一つ着実にクリアしていくのが気持ちよかった。
    主人公のマーク・ワトニーはとにかく冷静で、どんな不測の事態にも驚く程的確な処置を施していく。
    ただただ感動の一言です。
    物語の終わりまでそれは一貫していて、キレたり、投げ出したり、諦めたりしないんです。本当に。
    すごい忍耐力だなと思う。
    素晴らしい能力です。

    そして、不運な事故で離れ離れになってしまうワトニーの仲間も。
    『宇宙兄弟』を読んだ時も思ったけど、宇宙飛行士になる人達って本当に素晴らしい人格の持ち主です。
    私には何をどうしたって無理。
    物語の最後の場面を読んでいる時に、この人達は生きるために命をかけているんだなと感じた。
    私自身は長生きなんてしなくていいから穏やかに生きていたい、なんて言ってきたけれど、言い換えるとそれは、命をかけるのが怖いから生きられなくてもいいと言っていたのと同じだったんだ。
    それは心の弱さ以外の何でもないということに気付かされました。
    この物語の中の人達は生きるために命をかけられる強さを持った人達です。
    彼らの輝きにただただ感動しました。

  • 3度目の有人火星探査は、その6日目に発生した猛烈な火星砂嵐によりミッションを中止せざるを得なくなる。退避の最中、不運にも折れたアンテナが主人公マーク・ワトニーを襲う。砂嵐の中に姿を消したワトニー、脈拍ゼロを告げる生命信号。苦渋の決断で火星を去るクルー一行であったが…なんと、ワトニーは生きていた。
    本書は、奇跡的に一命を取り留めたワトニーが荒漠たる赤の惑星で、地球への生還に向けて生き延びる姿を描いた傑作ハードSFです。

    おおんもろい!!
    面白い理由を事細かに記してしまうと、反って面白くなくなってしまいそうですが、魅力は大きく2つ。
    1つは、水、酸素、食料、その他もろもろの問題に対して、徹頭徹尾、科学的なアプローチを行っていること。これが、本書がハードSFと評される所以でしょうが、こんなにも読みやすいハードSFは中々ないだろうなぁ(といっても、その科学的な描写はほぼ理解できてません…)。物語は後半、ワトニーが砂塵風に直面するところ、「さすがにここは運頼りだよなぁ」と思っていたら、太陽光パネルの発電量により砂塵風の輪郭を測定する方法で問題を退ける姿をみて、「すっすげぇ」と思ったのは自分だけではないはず。「複雑きわまる問題と解決のひとつひとつを検討しているうちに、そうでなかったら気がつかなかった些細なディティールが、マークの解決しなければならない重大な問題になった。」とは、解説で引用される著者の言葉ですが、よくここまで思いつくもんだ…

    魅力の2つ目は、ユーモアたっぷりなワトニーの造形。ぶっちゃけ、このユーモアのおかげで最後まで楽しめて読み進められたものです。
    「いやもう、すこぶる順調!生きのびられる可能性が出てきたぞ」→次頁「最悪だ。もう死ぬ!」
    「アイイイイイー!」
    「委員会の連中全員に、おまえらの母親は娼婦だと伝えてください。」
    「なにゆえディスコ!?」
    うーん、すばらしい。20世紀FOXが映画化するみたいですが、頼むからこのユーモアさは削らないでおくれよ。

    ワトニーの魅力をもうひとつ。ワトニーは幾度も「こりゃダメだ」な状況にぶち当たるわけですが、きまって次のようなフレーズを発します。
    「状況はきのうほど絶望的ではないような気がしてきた」
    「事態は見た目ほどひどくはなさそうだ」
    「解決できそうな気がする」
    これは、わが身を振り返ってみて、ちょっと考えさせられるぞ。こういうフレーズは、解決に向けて頭をフルに搾らないと出てこないだろうなぁ。これから意識していこう。

    ところで、2012年8月に火星探査機キュリオシティが火星に到着し、アメリカのオバマ大統領が2030年代半ばまでに火星の有人探査を表明するなど、なんだか火星に対して拓けた話題が垣間見られる昨今なだけに、(本書のような事故は決して起こってほしくはありませんが)火星をテーマにした本が注目されるのは嬉しいことですね。

  • これほどジャガイモの栽培ばかりしているSF小説がかつてあっただろか。

    火星探査ミッション中に災害に巻こまれ、幸か不幸か生存してたった一人、火星に取り残された主人公。
    助けもこないし、水も食料もおまけに酸素までもそんなにない。
    確実に人が来るであろう次の火星ミッションは4年後。
    彼はその日まで生き延びることはできるのか?

    手に汗握る宇宙サバイバルが描かれているます(主人公のキャラと文章はユルいけど)
    こりゃもう一巻の終わり、といった中で、限られた資源を最大限生かして、生存の道を探ります。
    先述のジャガイモ栽培に始まり、酸素の確保、水の生産etc
    一見、「趣味の園芸」っぽいストーリーが続きますが、それ以外はいたってハードSF。
    特に、地球との通信手段を確保するために彼がとる行動は、現代の宇宙ファンにとっても拍手喝采です。

    物語が進むにつれ、主人公だけでなくNASAのスタッフの奮闘も強調されます。
    「限りある資源を最大限生かす」がサバイバルものの醍醐味ですが、主人公だけでなくNASAスタッフまでも、ありとあらゆるものをいたるところからかき集めて彼の救出に取り組む姿が、映画「アポロ13」を超えるスケールで繰り広げられます。

    新しい星でうまくやっていけるかな。
    遠い空の向こう、君は何を思うの。
    たぶんできはずって思わなきゃしょうがない。

    どこかのワンルームのディスコみたいになっちゃいましたが、チャレンジ精神とあきらめない心に感動する、宇宙ファンのための作品です。
    マッドデイモンって誰?って人にも、かなりおすすめ!

  • 火星有人飛行の飛行士は6人。火星到着後6日で1行はすさまじい嵐に見舞われ、撤退を余儀なくされた。マーク・ワトニーはその一員だったが、宇宙船への避難の際のトラブルで1人火星に残されてしまう。
    火星に残されたたった一人。地球との通信手段はその時点でなし。ただし火星で暮らす設備は今のところ残っている。

    その状況からのサバイバルである。
    最初から最後までほぼ止まること無く読み終えられること請け合いの傑作SFと思う。
    当初、火星での暮らしぶりが順調なので、あれ、こんな早くに予定通り進んで残り持つのかなと思ったが、やはりトラブルはつきもの。
    ワトニーは自らの専門である植物学まで駆使しながら解決していく。

    初歩的な科学の知識と、諦めない心が大切なことを実感させられる。

    読んでよかった。

  • これは面白い!宇宙開発SFとして、サバイバルものとして、傑作だと思う。どっちも好きなジャンルとは言えない私も、これには文句なし。着地点が見えているミッション遂行型のお話を、これほど楽しんで読んだことがあっただろうか、うーん、記憶にないなあ。

    この分厚さからして、主人公ワトニーには次から次へと困難がふりかかるのだろうな、サスペンスのためのサスペンスなんじゃないかなという予想は、前半当たりで、後半はまったくの外れ。火星にたった一人取り残されたワトニーが直面する難題には、実にリアリティがある。

    とは言っても、この小説の一つのキモである、科学的・技術的な部分は、ハード・ソフトともに、私にはよくわからなかった。しかーし!それなのに抜群に面白いのだ、これが。実際非常に正確な内容らしいが、自らの知識や技術を駆使して、なんとかなるはずだと目の前の問題を一つ一つ解決していく姿は、それだけで感動的だ。数字や計算も結構登場するけれど、それが何と言うか、とても「オタク的」(良い意味でだよ)で、楽しくなったりして。

    まったく、状況は絶望的なのに、読んでいてつらい気持ちにならない所が、本書の最大の美点ではないだろうか。ワトニーは、死と隣り合わせの日々の中、おそらく誰にも読んでもらえないログに、また、NASAとの交信成功後全世界に中継されるやりとりの中に、おバカなギャグを盛り込んじゃう。こんな強くて、明るくて、優秀な人、いないよねえ。でも、いいじゃないか、SFなんだから。

    火星上での奮闘と並行して、NASAの動きも語られる。あら、組織での駆け引きとかがワトニーの運命に影響するという、イヤーなパターンかなあと思ったらば、これも外れ。腹黒い奴は登場せず、何と某国までが救出に協力するんである。いやもう、清々しい。あり得ないけど、いいじゃないか(以下同文)。

    しかしまあ、つくづくアメリカ人って「究極の状況で個人が頑張る」ストーリーが好きだなあと思う。これが受けるのは当然だろう。映画化も必然(誰がワトニーをするのか?ということと、ジャガイモの有機栽培をきちんと映像化するのか?という点が気になる)。とにかく、じめじめしないオタク的エンターテインメントの快作だ。

  •  火星探査中の事故のためたった一人で、火星に取り残されてしまったワトニー。限られた物資の中、ワトニーは知恵を絞り火星でのサバイバルを開始する。

     ハードSFなので専門的な話が出てくるものも、小説全体を通じて面白かったです!

     火星でのサバイバルでどんな問題が出てくるかというと、機器や通信の話はもちろんですが、食料や水も大事な問題です。ワトニーは水素と酸素を電気分解して水を作ったり、ジャガイモの栽培に挑戦したりします。

     ジャガイモの栽培の肥料に自分の排泄物を利用し、肥料を作ったりと、宇宙で生活する上での問題も、そしてその解決方もあくまで現実的です。こうしたリアリティあふれるサバイバル方法が読んでいて面白いです。

     そしてワトニーの語り口も魅力的。絶望的な状況に陥りながらも、その語り口はユーモアが溢れています。こうして読んでいると、火星生活もそんな悪くないんじゃないか、と思わされるほど(笑)。

     そして終盤は、食料が無くなるまでに火星から脱出するため火星を横断することになります。もちろんその横断も一筋縄ではいかなくて、砂塵に飲み込まれそうになったり、火星の崖から転落したりと、危機の連続です。

     こうした広大な宇宙を前に、人間は無力なのか。火星の厳しい環境は、人間に対しそう問いかけているように思います。そしてワトニーは意識的にか、無意識的にかは分かりませんが、自らの知恵と行動力、そしてユーモアで、その問いに”NO”を突きつけます。人間の強さが宇宙でのサバイバルを通して描かれるのです。

     そして、ワトニーの最後のログは、人間個人の話だけでなく、人類全てが持つある力を肯定してくれています。ハードSFでも描かれるのは技術の凄さではなく、人の強さと優しさなのです。だからこそ、自分はこの小説を想像以上に楽しめたのだと思います。

     この小説が映画化した『オデッセイ』も間もなく公開されるみたいで、久しぶりに映画館に行こうかな、と思いました。宇宙SFは小説で物語や技術を、映画では壮大な宇宙を映像で楽しめるということに最近気づき始め、宇宙の小説も、そして映画も気になり始めている今日このごろです。

    第46回星雲賞〈海外長編部門〉


    以下、引用です。小説の最後のページのひとつ前、p573より。





     ぼくを生かすためにかかったコストは何億ドルにもなるはずだ。ばかな植物科学者ひとりを救うために、なんでそこまで?
     うん、オーケイ。ぼくはその答えを知っている。一部はぼくが象徴しているもののためだろう。――進歩、科学、そしてぼくらが何世紀も前から描いてきた惑星宇宙の未来。だが、ほんとうのところは、人間はだれでも互いに助け合うのが基本であり、本能だからだと思う。そうは思えないときもあるかもしれないが、それが真実なのだ。
     ハイカーが山で遭難したら、捜索隊が組織される。列車事故が起きたら、献血する人の行列ができる。地震で都市が崩壊したら、世界中の人が緊急救援物資を送る。これは深く人間性に根ざした行為だから、どの文化圏でも例外なくおなじことが起こる。たしかになにがあろうと気にもかけない大ばか野郎もいるが、そんなやつより、ちゃんと気にかける人間のほうが圧倒的に多い。だからこそ、何十億もの人がぼくの味方をしてくれたのだ。
     めっちゃクールだろ?

  • 死んだと思われ、1人火星に取り残された宇宙飛行士が限られた物資と、自分が持つ知識・技術を総動員して生き残る努力をしていく。
    科学的表現が長々続くとちょっとすっ飛ばしましたが、ものすごーく面白かった!
    何より主人公のキャラクターがとても魅力的。
    「みてみて!おっぱいーー(・Y・)」は衝撃的な名言だわ。
    無事地球に帰還するところまで読みたかったなあ。

  • ☆5つ

    これはもうどこからどう読んでも「海外小説翻訳作品」です。
    文体というよりもジョークの内容が西洋西洋しています。
    ”まったくどうやったらそんな風にうまくやれるのかね”とか ”そんなバカげたことをするぐらいなら・・・” など、そこらじゅうが西洋(米英?)独特の言い回しだらけです。

    で、正統派? SF小説です。算数の得意な人は「ふむふむ」と読めるかもしれません。

    でもそんなことより一番大事なのは、この本はシーナ兄いのおすすめ本だということです。
    みなさん心して読んでくだされよ。すまぬ。

    で、すごい作品です!
    この物語は近く映画化されるそうですが、そうなったらわたしは絶対に観に行くでしょう。

    DVDになるまで待つ、なんてみみっちい事はせづに大枚をはたいて映画館へ見に行くでしょう。それほど興奮するくらいこの物語は面白い。

    但しですよ、充分に楽しむためには少し科学の素養は必用です。子供が観ても面白くわないだろうということです。こういう発言に気分を害さなかった人だけ読んで観てくれればいいと思います。

    誠にすまぬ(-.-)

  • この話は、嵐に遭遇に火星へと取り残された主人公マーク・ワトニーが、限られた資源と自らの知恵を駆使して過酷な火星でのサバイバルをたった一人で生き抜くハードSFです。

    こう書くととても堅苦しく見えますが、読んでいてまったくそんな感じはしません。もちろん主人公であるワトニーの状況は実際に常に死と隣り合わせですし、問題を解決したと思えば更なる難題が襲い掛かります。
    しかしそれでもワトニーはそんな絶望的な状況を持ち前の明るさで次々と乗り越えていきます。
    ログという形の一人称で綴られる話からは、ワトニーのユーモアさが余すことなく溢れ出ています。その魅力的な性格と軽妙な語り口調の影響で、難しい単語や用語が次々と飛び出すにも関わらず、読んでいてまったく苦に感じないほどです。

    多少ご都合主義とも取れるような展開もありますが、無理難題を無茶苦茶な手法で乗り越えていく展開はハリウッド映画にも通じるものがあります。SFというジャンルではありますが、万人にオススメできる一冊です。


    長々と書きましたが要約すると、超面白いSFでした。

  • 事故で火星に一人取り残された人のサバイバル。ハードSFであり、エンジニア小説であり、エンターテイメント。ものすごく面白かった。
    何と言っても、主人公の性格、語り口。明るさとユーモアと、時々覗かせる本気のバランス。現実を受け止めつつ、絶望しない。これはある意味で「ビジョナリーカンパニー」なんかの事業のサバイバルにも通じる条件。囚人のジレンマと着実な歩み、ってやつ。
    また、翻訳が素晴らしい。ここに使われているのは、今の言葉だ、と思った。
    最後に、エンジニアとして感動したのが、砂嵐の場面。仮説を立て、データでこれを実証して、実行の判断をする、それを可能にする技術を選ぶ。素晴らしいです。この人はきっと優秀なエンジニアに違いない。

  • 一気読み。
    「超」ハードSFだけど、めちゃくちゃ面白い。世評やあらすじでちょっと興味を持ったけど、いざ現物を目にするとその厚さに恐れおののいた理系オンチ(私です)は、まず冒頭を5ページなりと立ち読みしてみることをおすすめします。止まれませんよ。

    そのココロは、まず主人公のキャラがいい。タフで、聡明で、機転が利いて、明るくて、まず誰からも愛されるパーソナリティである。
    そんでもって、ハードSFの「ハード」な部分の書き方がうまい。厨房の時はSFマガジンなんか買っていたのに、アタマがついていかなくて脱落した理科70点野郎の私にも、充分理解できました。
    そしてこれが小さくない——ストーリーに、ムダなハラハラ部分がない。読者をハラハラさせるためだけのハラハラ、この世に神はいないのか…と絶望させられるようなむやみな悲惨が。登場人物はみな善人で、有能で、心をひとつにして難しいミッションに挑む。1人の生命を救うために世界がひとつ(比喩ではない)になって、フィクションには(そしておそらくはノンフィクションにも)ありがちな、足を引っ張ってくるイヤなヤツなどひとりもいない。言うなれば「おとぎ話」なのかもしれないけれど、いいじゃないですか、二次元でくらいおとぎ話にひたっても。空気も水もない酷寒・無人・不毛の地にただひとり取り残されるなんて、それだけで充分悲惨な話なんだから、それ以上に悲惨な要素など要らない。
    何回笑って、何回泣いたかわかりません。「いい話が読めたなー」と、ひたすら心地よい読後感が残りました。すばらしい!

    2014/11/2読了

  • 火星にたった一人で取り残されたクルーのサバイバル。紛う方なきハードSFである。火星のロビンソン・クルーソーと表されていたが本当にピッタリの例えだ。

    最初は食料を作るための土づくり。酸素を作って、水を作って……と生存のための地味な作業から始まる。過酷な条件の中でも健闘する主人公だが成功と同じくらい次から次へと問題が起こりそれを解決していく。解決方法が凄いリアルというか科学的で、この物質が何リットルでこれがあるからこの物質は何リットルできて……とか、発生する熱量は何カロリーでとか、電力は何ワットできるからこれくらい賄えて……とこんなに具体的に数字を出して計算するシーンの多い小説はSFのジャンルを置いて他には存在しないだろう。というかSFの中でもこれくらい徹底している作品はあまり見かけないので、SFファンは「久々にハードなのが来たぞ……!」と興奮してしまうのである。

    そしてそんな状況であるにも拘らず、主人公マークは非常にタフというか前向きでユーモアがある。マークの手記が基本の文章となるが、本当に軽妙な語り口である。割と序盤で地球側(というかNASAに)生存を確認され、以降は一人称となるマークの手記とNASAの面々を書く三人称視点が交互に書かれることになるが、巻末の解説にもある通りマ-クの語りのほうが圧倒的に魅力的。約580ページの厚い本だがどんどん読めた。

    ネット上で無償公開で連載していたものを、まとめてキンドルに出したら三万五千以上ダウンロードされ、大手出版社から声がかかって製本化。20世紀フォックスが映画化の権利を取得……という経緯も面白い。ネット上での個人出版が容易になった時から、こういう人がどこかで現れると思っていたので、今までの出版業界では見つからなかったかもしれないタイプの作品を読めたことも含めて良かった。

  • 映画「オデッセイ」の原作。
    火星探索ミッションでトラブルにより火星に一人取り残された主人公の生還劇。植物学者でありエンジニアである主人公が、現場にある物を駆使していかに生き残るかを描く。
    とにかく描写が細かくて、リアリティが半端ない。次のミッションで火星に探査船が来るのがいついつだから必要なカロリーと水の量を計算し、その分の食料(じゃがいも)を栽培したり燃料から水や酸素を作ったりする。科学的な知識や植物学の知識が分担に盛り込まれており物語に説得力を持たせている。途中色んなトラブルが発生し、なかなかうまくいかない。すごい宇宙船が出てきたり、火星人に襲われたりなどの出来事がないにも関わらずクライマックス感がものすごい。いいSF作品だった。

  • 主人公目線だけでなく地球と仲間目線のリアルタイムでの対応があって、あとがきにあるように“立体的”に感じられた。
    さらに問題をクリアして順調にいったかと思うとまたあらたな問題が起こったりして、最後まではらはらした。
    主人公が逆境でも人間臭くて、こういう人がほんとに強い人なんだと思う。
    おもしろかった。
    映画見損ねたので機会があったら見たい

  • 映画を観ていたので、
    結末はわかっていたのだけれど、
    それでも面白く、驚きとともに読んだ。

    こんなに長い間、一人いたのに、
    彼は生き抜くことを常にチョイスし続ける。

    冷静でウィットにとんだ手記を読むと凄い精神力だと感じる。

    「可愛がられキャラ」のワトニー。

    皆に愛されてる感じがした。いやぁ、よかったぁ。

    NASAと通信できるようになった時のやりとりがツボ。

    JPL:「発言には気をつけてほしい。きみが打ちこんだ内容は全世界に生中継されている」

    ワトニー:見て見て!おっぱい!->(.Y.)

    もう、お茶目なんだから。

  • 映画「オデッセイ」の原作本。半年近く積み本にしてあったのだが、『バーナード嬢曰く。』の神林に触発されてSFを読みたくなったのでついに読むことに。

    骨太のハードSFだった。でも科学的な部分も、SF初心者&文系の私がまあ理解できるくらいに平易な説明でされていて、しかも説明調ではなくてすんなり入ってくる。翻訳もすごいね。
    彼のログが始まるソル6から、ログを読み進める形で物語が進んでいくのだけれど、リアルタイムで火星ニュースを見ている気分になってずっとドキドキしっぱなしだった。マーク・ワトニーのユーモアっぷりがたまらん。決してパニックにならないし、何かを呪ったりネガティブになったりしないし。マジ人格者。
    マークの性格について、作中でフライト・クルー担当心理学者がこう言っている。マークのログを読んだらこの分析がかなり的を射ていることがよくわかるだろう。
    「たいへん聡明な人ですよ。もちろん、全員そうなのですが、彼はとくに創意工夫に富んだ人で、問題解決能力もすぐれています」
    「それに、彼はとても気立てがいいんですよ。いつも陽気で、すばらしいユーモアセンスのもちぬしです。ジョークがポンポン出てきますしね。打ち上げ前の何週間か、クルーにはきつい訓練スケジュールが課されていまして、そのときは全員がストレスを感じて不機嫌になりがちな兆候を示しました。彼も例外ではありませんでしたが、彼の場合、それが、いつもよりたくさんジョークをいってみんなを笑わせるというかたちで出ていましたしね」(p141)

    あとがきに書いてあったのだが、この小説で起こる山場、言い換えればマークが突き当たる問題は「彼の置かれた状況から当然そうなるものでなければならない――あるいは、できれば、前の問題を解決した結果、意図しない形で発生した問題でなければならないと決めた。彼は想定を超えて長期にわたり使用された機材の故障でひどい目にあうかもしれない。でも、稲妻に打たれ、そのあと隕石の直撃をくらってはならない」という信念のもとに描かれている。そう、これこそがこの物語を面白くしている最大の要素だ。徹底したリアリティ。ちょっとしたミスとか、経年劣化とか、ドラマチックでも何でもないことによって引き起こされるきわめて現実的な問題。もし稲妻に打たれるとか宇宙人に遭遇するとかいう問題が生じていたのなら、まったく興醒めもいいところだ。

    それから、宇宙飛行士って「物凄く優秀なこども」のような人たちなんだと思った。好奇心とか夢とか目標とか仲間の命とかそういうことが最優先で、あんまりリスクのことは考えない。徹底したポジティブ。ただし楽天家ではない。宇宙飛行士ってすごい。改めて尊敬。全方面パーフェクトじゃないとなれない職業だ。

    科学館に行きたくなった。「オデッセイ」も見たくなった。

  • 「NASAオタク小説」 確かに!
    映画『オデッセイ』を観にいったのですが,とても面白かったので原作を拝読。なるほど映画はいろいろ換骨奪胎されてるんだなあという印象。映画を見て印象的だったシーンのいくつかは,完全に映画オリジナルのもので驚きました。
    原作は,解説にも書いてあったけど「NASAオタク小説」だと思う(それがいい!)。ヒューマンドラマ要素は少なめで、主軸はあくまで過酷火星サバイバル。その描写の細かさは,もはや酔狂の域。聞くところによると作者の趣味は「ひとつの宇宙飛行計画を最初から最後まで綿密に想像すること」。いやあ変態小説だ。面白かったです。

  • マーク・ワトニーは、僕たちにたくさんの大事なことを教えてくれた。

    問題には優先順位をつけること。
    問題はひとつずつ解決すること。
    テストを怠らないこと。
    いい仕事をした仲間にはビールをおごってやること。
    そして、ダクトテープは崇拝されるべきだということ。

  • 火星で暮らすマーク・ワトニーの(なぜか筆が乗りに乗った)生存日記を読み進めていく時間は本当に楽しい時間だった。
    彼は持ち前の専門的な植物学知識と科学技術
    ユーモアとポジティブマインドを武器にただ一人取り残された火星の上でサバイブしていく。

  • こいつは面白い!
    週末だけで読み終えちゃった。
    映画を見るつもりだったのに、ツタヤに並んでる本を見かけて読みたくなって、「途中まで読んで映画見に行けばいいか・・・」なんて思ったけど止まらなかった。
    なんでこんな話がかけるんだろう、ぽっと出の新人作家が!「レッドオクトーバーを追え」以来の衝撃じゃないのか!(なんてな)
    この小説がヒットするなんてアメリカ人は知的水準高いんだろうなぁ

  • 火星への有人飛行が出来るようになるくらいの近未来が舞台です。火星探索ミッション中に事故で火星に一人取り残されることになった植物学者兼エンジニアが、残された機材と限られた資源、知識と行動力と前向きなメンタルをフル活用してサバイバルする話です。

    宇宙人は出てこないですし、超常現象もありません、陰謀や犯罪も無いです。ドロドロした愛憎劇もありません。登場人物はみんな良い人です。

  • ベッタベタな(アメリカ的)SF。良い意味で。
    活字なのに映画館にいる気分になる。良い意味で。

    ジェットコースターのように展開が進行し、さくさく読める。1ソル(火星における1日の単位)で読了できるのでは。

    文系の人は読むのがちとつらいかも。
    映画もみてみたいな。

  • 面白い!

    訳の分からない、異星人や、天変地異が有るわけではなく、ただ純粋に、アクシデントがあり、そして科学的な問題点で構成されているという所が、また良い。

    この作者の処女作品らしいですが、こう言う才能のある人が居るんですね。しかもこの作品、最初は無料で、作者本人のHPからダウンロードする形態の、言ってみるとある意味同人誌と言うか、単なる趣味の範疇であったという所が凄い。それがあれよあれよという間に、映画化されるんですからねぇ。

    読んでいる最中、頭の中では、マーク・ワトニーは映画版の主人公のマット・デイモンの姿に置き換わっていました(笑)

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