中継ステーション〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫 SF シ 1-5) (ハヤカワ文庫SF)

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制作 : 片山若子  山田順子 
  • 早川書房 (2015年12月18日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150120450

中継ステーション〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫 SF シ 1-5) (ハヤカワ文庫SF)の感想・レビュー・書評

  • 銀河の星々を結ぶ中継ステーションと聞いてイメージするのは、羽田のようなハブ空港。
    行きかう人々。
    雑踏の中で次々に起きるアクシデント。

    などを想像してはいけない。
    アメリカの片田舎のそのまた人里離れた一軒の古ぼけた一軒家。
    そこに何日かに一回の割で訪れる宇宙人たち。
    人型の異星人もいるが、植物型、液体型・・・さまざまな異星人たちと、イーノックはとれる範囲で最善のコミュニケーション、つまりおもてなしをする。
    そんな牧歌的な日々。

    近所づきあいはしない。
    新聞や雑誌を届けてくれる郵便配達人だけが、唯一の友人と言える。
    ライフル銃を小脇に抱えて日に一時間程度の散歩と、自家用のささやかな畑仕事。
    ごくごく狭い世界で日を送るイーノックは、地球で唯一、異星人が日常的に地球を訪れていることを知る存在。
    圧倒的に高次な文明や科学に触れながら、それでもイーノックは地球と縁を切ることはできない。
    それはイーノックが地球人だから。

    100年以上も年を取ることなく住んでいる人間がいるらしい。
    そんな噂を聞きつけ、2年の調査を行ったCIA。
    思わぬところから地球外生命の存在に気づく。

    イーノックの家から少し離れたところに暮らすフィッシャー家。
    当らず触らずの関係を長年続けていたが、生まれつき耳が聴こえず話すこともできない娘、ルーシーに対する家族の暴力を見て、ついルーシーを匿ってしまったことからイーノックへ悪意を募らせることになる。

    銀河の星々の平和と繁栄のために必要な「タリスマン」と、その媒介者がここ数百年現れず、銀河本部も危機を迎えていた。

    100年以上変わらぬ日々を送ってきたイーノックの周辺が一転、俄かに慌ただしくなる。

    誰にも秘密を打ち明けることができず、大いなる孤独のなかに100年を過ごすことは、どれだけ淋しいことだろうか。
    想像の中に造り出した友人を、異星人の進んだ科学が実体化させる。
    しかしそれすらも、最終的にはイーノックの孤独を深めることになる。
    けれどイーノックの心はいつも静謐だ。

    1960年代に書かれたSFは、今の作品に慣れた目で見るとのどかである。
    そして冷戦状態に対する絶望と、ひとりひとりの個人としての人間に対する信頼が、シマックらしい。

    解説が、SF作家・評論家の肩書の付いた森下一仁、森下一仁、森下一仁なんです!(超大事なので三回書きました)
    言われてみればこの作品、解説が森下一仁ってぴったりだ。
    選んだ人、センスあるなあ。

  • もっと淡々とした物語を想像していたのだけど、結構波乱。地球の歴史から切り離され星々の旅人をも見送るしかない中継ステーションの管理人の、孤独を感じた。アメリカの片田舎が舞台、ということろもより寂寥感を増しているのか。

  • 2016/10/10購入
    2016/11/14読了

  • アメリカ中西部の片田舎でひっそりと暮らすイーノック・ウォレス。閉鎖的な土地柄に守られて余計な干渉を受けずにただ一人生活するイーノックは、実は齢100歳を超えながらほとんど歳を取らず、銀河の星々を渡る旅人を送り迎える「中継ステーション」の管理人を務めていた。異星の旅人とのひとときの交流を心のよすがに、永遠とも思える孤独の中に生きるイーノックの周辺で、彼の存在を嗅ぎ付けて正体を暴こうとする不穏な動きが見え始める。大切な中継ステーションと自分自身の生活を守るため、イーノックが取った行動とは、そしてその結末とは?

    古き良き、暖かくも寂寥感溢れるSF。
    1963年の作品です。牧歌的で懐古的な舞台設定の中、根っからの悪人はほとんど登場せず、ファンタジーのような優しい物語世界が紡がれていきます。如何にも古いSFらしく、詰めの甘さがところどころに感じられますし、訳文の生硬さもちょっと気になります。が、それでも忘れ難いこの瑞々しさ。

    この物語は、大切なものを守り続けることを建前にして変化することを拒否してきた主人公が、自ら変化することを選び取るまでの物語でもあります。彼が変化を選択したことによって、世界もまた変革し、物事が良い方向へと転がり始めたように見える、その陰で主人公が感じる救いようの無い寂寥感。このハッピーエンドとは言えないラストシーンが、この作品の真骨頂だと鴨は思います。変わりつつあるアメリカの風景を目の前で見てきたシマックの心象風景が、そのまま反映された作品なのかもしれませんね。

  • アメリカの片田舎にある何の変哲もない一軒家が、実は銀河の星々を繋ぐ中継ステーションだった!という飛躍がまず素晴らしい。一見するとワンアイデアものにも思えるが、冷戦という時代設定における核の恐怖であるとか人類の進化といったテーマも内包した奥深い作品。

    様々な生態を持つ宇宙人たちが主人公の中継ステーション管理人・イーノックの元に訪れ、コミュニケーションをして去っていくという図式は藤子・F・不二雄の『21エモン』を彷彿とさせるが、あの作品の持つほのぼの感とは対照的に本作に漂うのは圧倒的な孤独と厭世的な雰囲気だ。ほぼ不老不死となったイーノックは老郵便配達夫の他はほとんど話す人もなく、殆どの人には先立たれている。自らの創りだした幻影すらも彼の元を去っていく。そしてこの孤独の外に「銀河文明における地球の孤独」がある。冷戦下の核に怯える時代を背景にした第二の『幼年期の終わり』のような作品。物語の後半にライフルとメアリを手放すイーノックの姿が強く印象に残る。

    それにしてもシマックは語り口がとても上手い。「アメリカの片田舎に住む不老不死の青年」という都市伝説めいたミステリーからはじまるという出だしもワクワクさせてくれるし、ちょっとした情景描写も細やかでありながら、飽きさせない。後半のアクションシーンを除けば比較的地味な内容にもかかわらず一気呵成に読んでしまえる傑作。

  • で、結局どうなるの?ってのが正直な感想。ニンジンハンターがニジンハンターになってたのは意図的なものなの?←こういうのが気になるのは話に集中してなかった証拠だわ(笑) 戦争を起こさないためにやるべきことは人類の愚鈍化。これ、ゾッとする。愚鈍化によって、戦争の道具も含め機器等が作れない、物があってもそれが何なのかわからない。銃器も弾を撃ち尽くせば、その製造法がわからない。とにかく今あるものが無くなれば、それを作るだけの頭脳と技術がない。現代でそれが起こると、そこまで技術を戻すのにどれだけの時間がかかるのか。ほんと恐ろしい。

  • わたしの中にメアリはもういない。

  • 寛容が肝要。時代を映した優れた寓話。
    これが書かれた頃は冷戦が更に強まっている時期で、米国は外側ではキューバ危機やらベトナム介入でゴチャゴチャし、内側では公民権運動やらケネディ暗殺やらでゴチャゴチャしていた。そんな中でシマックが何を思い、何を願って本作を書いたのか…大事なのは正義でも愛でもなく寛容なのだ。

  • 優しい世界。
    この表紙の絵まんまです。
    中はキッチリSFなんですけど、どこかファンタジック。
    ザンスシリーズの山田さんの手腕なのかしら。

    中盤まではイーノックの静かな生活が中心に
    描かれており、
    (其処で退屈だと切らないで頑張って!)
    後半は急展開。

    映像化されたりしてもおかしく無さそうですが、
    この優しい世界を読んだ人の中だけで
    こっそりひっそりして置いてもいいのかな。

  • 2016/01/12 購入。高校生ぐらいの頃に読んだ大好きだった作品。シマックの作品の中では、「都市」に次いで好きでした。山田順子さんはファンタジー系でお馴染みの訳者さんでどうかなとも思ったけど、結局買ってしまった。

  • 少年期の終わりを象徴的に描いているようにも思える。誤読の可能性もあるが。(書きかけ)

  • ずいぶんと長い間、待っていたような気がする。
    やっと読めた。そして、うん、こういうのが読みたかったんだよ。満足。
    そもそもこんな作品が絶版だとか、それ自体、どう考えたって、ものすごく、ものすごくとんでもない間違いだったって話だよ、まったく。
    ついでに『都市』やら『シマックの世界』、その他いろいろも復刊希望。
    でも、訳はちょっと微妙かもしれない。

  • クリフォード・D・シマックが贈るヒューゴー賞受賞の本書は、やさしさに溢れた作品です。

    アメリカ中西部、ウィスコンシン州の片田舎。農家住まいの元北軍兵士イーノック・ウォレスは齢124にして、外見は30歳にも届かぬ不思議な男。じつは、彼の一軒家は銀河の星々を繋ぐ中継ステーションで、彼はその管理人なのだ。地球でただひとり異星人と接する男。その存在を怪しむCIAが調査を開始し…

    解説でも触れられていますが、銀河を結ぶ中継ステーションが舞台にも関わらず、物語のおおくは、ウィスコンシンの片田舎が誇る緑豊かな自然の描写にあてられます。これは著者自身がウィスコンシン州出身であるように、彼の生まれや育ちが影響しているようです。そんな物語は終盤、銀河本部か地球のどちらに所属するかに迫られたイーノックが、無意識のうちに地球を選択する考えに行き着いたのは、風光明媚なこの大地に魅せられていることも一因といえるでしょう。
    自然は決してやさしいものではありませんが、それらを愛しむ人のこころはやさしさで溢れるようで、これは書き手のシマック自身に言えることかと。だからこそ、イーノックに聾唖のルーシー、異星人のユリシーズにヘイザーなど、基本的に本書の登場人物はやさしきこころを持つものばかりなのです。勿論そうでない人物も登場しますが、それらは恐怖心のつよい臆病者として描かれています。恐怖心とはやさしさを覆い隠すもの。シマックは、こんな風にやさしさに対する存在を表したかったのかもしれません。

    さて、本書では《タリスマン》とやさしきルーシーの感応によって、地球には平和が、銀河には団結が訪れます。終盤の予定調和的な展開にはすこし疑問が残るものの、この結末には、なんだか著者の思いが感じられるところ。いつ再び大きな戦争が起きないとも限らない世の中、自然への敬意、愛情をもった著者が、やさしさ(ここでは「思いやり」といった方がよいでしょうか)がついに人々の恐怖を掻き消す様を願ったように思えるのです。
    (個人的には、それが人の手では作られない《タリスマン》のお陰となるのがう~んって感じです…)

    いずれにせよ、本書は、片山若子氏の暖かみのある素敵な装丁も相まって、こころ穏やかになる作品でした。

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中継ステーション〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫 SF シ 1-5) (ハヤカワ文庫SF)の作品紹介

片田舎にある平凡な農家こそ宇宙をつなぐ中継基地だった……珠玉の長篇、新訳版登場。

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