紙の動物園 (ケン・リュウ短篇傑作集1)

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制作 : 伊藤 彰剛  古沢 嘉通 
  • 早川書房 (2017年4月6日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (263ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150121211

紙の動物園 (ケン・リュウ短篇傑作集1)の感想・レビュー・書評

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  • 予備知識なく、ハヤカワ文庫SFっぽくないタイトルと表紙につられて購入した短編集。

    著者は1976年中国生まれ、パロアルト育ち。ハーバードを卒業しマイクロソフトで勤務したのちにハーバード・ロースクールを卒業したという経歴。

    どの話も簡単に読めるショート・ストーリーだけど、世界観や視点が独特なものとなっている。それぞれの物語の終わりを過度に引っ張りすぎることなく、その後の展開を読者が想像することとなる。この本に収録されている話のほとんどが、中国・アジア・漢字といったアジア要素を取り込んだサンエンスフィクション物語となっている。

    別の単行本も読んでみたい。

  • 中国系アメリカ人作家によるSF。サイエンスフィクションというよりは、ファンタジーやif世界ものの話が多く含まれている。

    冒頭に収録された表題作は、親孝行したくなる話なので、全国のお母さん好きは必読。全ての話に中国の要素が絡められており、時には歴史のお勉強じみた部分もあるが、中国の歴史的背景や政治が、それだけでディストピアの題材になりうることの証左になることが伺える。

    中国人としてのコンプレックス、アジア人の西洋に対する憧れ、年頃の少年の心に宿る刺々しい感情など、アジアにルーツを持ち、海外の視点から自国民を眺めることができる男性の描く心の機微は秀逸の一言。同じアジアに生きる人間として、共感する描写がいくつもあった。

  • 「おすすめ文庫王国」からのチョイス、今年の2冊目はSF部門1位のこの本で。
    正直言うと、表題作とそれに続く2つ目のお話、ちょっと肌が合わなかったのだけど、3つ目の「結縄」から興が乗ってきた。
    最先端の物理科学の世界と古代から続く理屈を超えた不思議の世界、あるいは西洋的なものと東洋的ものが、得も言われぬ融け合いかたをする。
    「結縄」結んだ縄に手を走らせることで結び手の思いを感じ声を聞くという、言葉をこのように表現するだけでも驚きだが、それにタンパク質のアミノ酸配列を重ねるとは更に驚く。
    「心智五行」なんだか懐かしい手ざわりだなぁ。
    「文字占い師」歴史の出来事に対する批評となっている物語であるが、漢字の成り立ちに対する独自の読み解きがストーリーに絡んでいって新鮮。

  • 国と国籍と人種、魔法と科学、愛情と人工知能、進化と安定、歴史のIfなど、様々な縦糸と横糸によって編み出されるとても綺麗で残酷な一面を持つ物語。短編集だが、本のタイトルにもなっている「紙の動物園」には心打たれる。大きな流れに翻弄されながらも、大切なものを取り戻そうとする努力、しかし、それは取り戻せそうもないものであり、まだ失っていないとすると、私たちはそれを大切にしなければならないのだと思う。

  • しみじみと読了いたしました。感想は下巻「もののあはれ」でまとめて。

  • 短編集だし、読みやすいのだけれど、ひとつひとつが重く胸にきて、なかなか読み進められずようやく読了。本を読んで泣くことは多いけれど、こんなに泣いたのはあまりないかもしれない。
    SFとしては感傷的、ファンタジー寄り、という意見を読む前に耳にしていて、確かに情緒に訴えかけるところが大きいかもしれないけれど、個人的にはそれも含め、良さとして読めた。ファンタジー好きで、SFを読み慣れていない私だからかもしれないが。
    どの作品も、静かで、哀しく、寂寥感が漂う。そして、ままならなさと無力感を感じさせられる。ノスタルジックで、不思議な話たち。収録作品のどれも好きだけれど、表題作の「紙の動物園」が、最初だけに衝撃的で、いちばん印象に残っている。でも同じくらい「文字占い師」も。未来への希望が感じられる「心智五行」も良かった。

  • 心智五行

  • 作者のことも、本書のことも全く知らない状態で、書店で見かけて装丁とタイトルに惹かれて購入した。単行本で刊行された短編集の上巻という位置づけだったので、下巻の『もののあはれ』も同時購入。ケン・リュウ氏は中国出身だが、作品は英語で書かれたようだ。そのためか、翻訳本であっても、中国語小説とは違う感触がある。現実的な悲劇も、情緒的な衝撃も、一貫したトーンで綴られるこの温度感、レイ・ブラッドベリを思い出させる。
    母の持つ文化的背景と共に、母と心寄り添わせて生きること自体を拒絶した息子が母の言葉と再会する表題作をはじめ、本書に収められた短編はどれも、喪失と後悔、あるいは正義と虚しさ、といったものがテーマに据えられているように思う。正しいと感じる価値観に従って生きること。そのために振り捨てた何か、見て見ぬふりで置き去りにした何かが、いつの間にか自分の足元に落とし穴を作っている、そんな感じ。
    誰でも、自分は正しく生きていると思いたい。そうでなければ顔を上げて生きていけない、という人もいるかもしれない。けれど、向かい側に否定されるべき価値を据えなければ成り立たない「正しさ」というものは、“すべての人にとって正しい”ものには決してなりえない。否定される側は黙って、または淡々と狡猾に、もしくは投げやりに、絶望して、「正しさ」に飲み込まれていく。けれどそこには、折りたたんだ紙の中にしみ込んだ思いのように、飲み込まれながらもらしたつぶやきやため息が漂い残る。靄のように残るそれらの温度が、重たさが、作品を読んだ後にずんと存在感をもって胸に残る。

  • いずれも,作者が中国生まれであることをすごく意識させられる内容.搾取され,虐げられる後進国の悲劇,とでも言おうか.
    中国系の作者の本は初めて読むこともあって,経験したことのないトーンであると感じた.

  • ファンタジーの存在する世界のオリエンタリズム。
    行きつ戻りつしながら読みたくなってしまう。

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紙の動物園 (ケン・リュウ短篇傑作集1)の作品紹介

第一短篇集である単行本『紙の動物園』から、母と息子の絆を描いて史上初のSF賞3冠に輝いた表題作など、7篇を収録した短篇集

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