- Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150121266
感想・レビュー・書評
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1冊目で「飽きちゃう」とか言いながら、読んでしまいますね。「飽きてネージャン」なのかもしれませんが、まあ、惰性ですかね(笑)
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地球を脱出した播種船に乗る主人公は船を救うために帰って来れないミッションに向かう表題作ほか、「紙の動物園」とペアとなるケン・リュウの短編集。
「紙の動物園」を読んだならこちらも読まねばなりません。「紙の動物園」が実に抒情的でファンタジーを感じさせるものだったのに比べるとしっかりしたハードSF寄りの印象を受ける作品群で、色味の違いを楽しめました。「選抜宇宙種族の本づくり習性」が印象的で、想像力ふくらむSFだった一方で「円弧」「波」はおそらくひとつの作品なのだと思いますが、不老不死というテーマの中で想像力をいっぱいに広げた火の鳥みや「三体」みがあってやはりよかったです。個人的には「良い狩りを」が厨二病臭が濃くて好きでした。これなんかは手塚治虫の「悪右衛門」とか「ハトよ天まで」なんかの怪異と人間の恋を思わせますし、ブラックジャックの鳥人間を思わせもします。こういうのを読むと手塚治虫ってやっぱすごいんだな、とか感じますね。
そんなこんなで良い本でしたが、個人的にはやはり「紙の動物園」の方が心に響きました。 -
さまざまな角度から宇宙と人類(と人類ではないが生物たち)の物語を描いた短編集。
私が気に入ったのは、某海外SFのような抒情的で切ない余韻を残す表題作の「もののあはれ」(これが原題というのがまた良い…)と、古き消えようとしていたものが未来を得ていく物語「良き狩りを」の二作です。
後者については訳者があとがきで言われているとおり、古き消えゆこうとしていた「魔」なる存在が、ああいった形で生まれ変わるという「転回」が、小気味よくそして美しくたくましく描かれていて、とても素敵に感じました。ラストの一文がすべてですね。
映画化されたという「円弧」もまた、SFに普遍のテーマである生死の概念において深く切り込んで可能性を描いていて、自分がその選択肢を得たらどうするのだろう、と考えました。死に抗えないからこそ生が輝くのか、死を乗り越えられたら生の可能性が広がっていくのか。主人公と寄り添ったり、先に旅だったり、離れたりしていく人々とともに、そんな空想を楽しんだりもしました。
テーマこそ大きくときに難解さも含んでいるのですが、台詞ひとつや風景の表現などがとても細やかに親しみやすく描かれていて、「紙の動物園」同様に読んでいて物語世界に心地よく浸り楽しむことができました。 -
初めて読んだ中国SF。
近未来的なテーマや物語の流れには毎回慣れなかったけど、新しい世界を見せてくれて、柔軟な発想をくれた。
いくつか素敵な物語があったけど、最後の「良い狩りを」が1番よかった。
いつもと違う読書体験。ほかの作品も読んでみたいと思った。
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SFを中心とした短編小説。アークなど短編ながら読後は長編を読んだような満足感を得ることができた。紙の動物園とはまた違った魅力がある短編集。
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もしまた、生死の相にあづからずといはば、まことの理を得たりといふべし。
徒然草の第93段にある一節ですが、〝生〟とは何か?を考える時、どうしても〝死〟を考えてしまいます。
卜部兼好は、
生死にとらわれないで生きているなら、人生の真理を知っている。
(違ってたらごめんなさい)
としているのですが…
シンギュラリティ(特異点)としての死、それを克服したその後の選択は人それぞれ(なはず)で、死を考えなくていい生ってなんなの?となります。
永遠の生命を最初に得た人が、それを諦める最初の人になる。
円弧をこしらえるために。
始まりの〝(〟があり、終わりの〝)〟がある。
とても哲学的だ、と思う。
日本オリジナル第一作品集その2。 -
綺麗で少し距離がある文章という感じがする。
・もののあはれ
最期の選択がどうだったかは置いておいて、
父から伝えられた言葉や共有した感覚やそれを表す言葉が
ほんのり明るくて温かくて良いな。
・選抜宇宙種族の本づくり習性
カル,イー族のつくり出したものを見てみたいな。
それぞれの種族の名前にも何か意味があるのだろうか?
・どこかまったく別な場所でトナカイの大群が
次元を変えて生きるとか、意識体だけになるとか、人を星に飛ばすとか
そういうアイデアってSFでは繰り返し使われているものなんだな。
・円弧(アーク)
死ぬことの怖さと生き続けることの怖さはどちらの方が大きいのかな。
生き続けたことのある人は今はまだ存在しないから
実際そうなってみて初めてわかることもあるのかな(全く想像のつかないけれど、起こりうる問題のような)
・1ビットのエラー
SE職だった友人が読んだら、もっと楽しめるのだろうか。
・良い狩りを
どう終わるかを想像しながら読んだわけではないけれど、
そんな終わり方をするとは思わなかった。 -
郷愁と意思を感じさせる静かな強さを持ったうつくしいSF。未来を見てきたのかと思うほどの著者の想像力に驚く。