最後のユニコーン (ハヤカワ文庫 FT 11)

  • 早川書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (307ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150200114

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  •  ユニコーンは,たったひとりで,ライラックの森に住んでいた。自分では気がついていなかったが,彼女はとても年をとっていた。もはや,無邪気な海の泡の色ではなく,言ってみれば,月の夜に降る雪の色に近かった。けれども,瞳はまだ澄みきっていたし,疲れの色もなかった。その動作も,まだ海面を走る影のようだった。
    (本文p.7)

  • これは一体どういう話なんだろう。メタ・ファンタジーとでも言うべきか。

    筋としては割とファンタジーの王道で、世界の森からユニコーンがいなくなってしまったため、ただ一匹だけ残っていたユニコーンがどこかに消えてしまった仲間のユニコーンを探しにいく、という話。途中、魔女や魔術師、野盗、王子、意地の悪い王などが現れ、ユニコーンも人間の女性に変化するなどし、いろいろあり、最後は大団円。

    興味深いのは、登場人物たちがファンタジーの文法に自覚的なところで、これが作品に独特の味わいを与えている。例えば、王子は自分が幻想文学における登場人物の一類型としての王子であることを作中で自覚しており、彼は毎週のように魔女や怪物と戦いに行ってはその労苦をぼやいている。

    しかし、だからといって、このメタ・ファンタジーとしての要素が物語の筋に大きな影響を与えているという点は見受けられなかった。そのため、物語としてはいくらかまとまりに欠ける。作者の伝えたいであろう主題も(あればの話だが)よくわからない。

    強いて言えば、記号とその計算に堕している多くの幻想文学に対して、記号的な登場人物を持ち出してそれを皮肉ってみせ、さらにそれを実在しうる、一つの人格として顕現させる術を示してみせた、というところだろうか。

    あんまりごちゃごちゃ考えるような話ではないのかも。

  • 2回目のトライ。おとぎ話系は、あまり得意じゃないが、今回は、ちゃんと想像しながら読み進めるようにして、まだ読み続けている。飽きないで最後まで読みたい。

  • 隠れた名作です。

  • モダンファンタジーの傑作。
    最後のユニコーンが新天地を目指す。
    全編に靄のかかったような独特な雰囲気は、なかなか昨今のファンタジーに出せない味だと思う。

  • 純粋無垢な、伝説の存在であるユニコーン。ある日、一頭のユニコーンが「あなたは最後のユニコーン、仲間は誰もいない」という噂を聞きつけたことから、仲間を捜しに旅立つ・・・。人を愛することの美しさと、無垢な存在で居続けることの難しさが、ファンタジーという作品を通じて語られる。新しい世界に踏み出し、新しい自分を捜すときには、今までの自分は変わらざるを得ない。時として、今までの自分を捨てなければならないほどの事態にすら直面する。

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