星の墓標 (ハヤカワ文庫JA―航空宇宙軍史244)

著者 :
  • 早川書房
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (377ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150302443

感想・レビュー・書評

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  • 航空宇宙軍史は何となく登場人物に思い入れて読むシリーズではないと思いつつ読んでいたのだが、途中で登場したタナトス戦闘団にはキャラ負けしてしまった。
    ダンテ隊長をはじめ副官のランスやら何やら、個性的というか男っぽいというか、固い設定の固い話の中での息抜きキャラのような彼らの遣り取りに、何度心を和まされたことだろう。
    いつまでも、こんなドタバタが続くと信じていたのだ。が。

    星の墓標は知能の高いシャチ、ジョーイ(ジョーイ・オルカ)に始まり、生体脳を積み込んだ宇宙船というモチーフを生み出し、舞台を海から宇宙へと移す。
    ジョーイの運命に涙しつつも読み進んでいき、宇宙の果てに決着するドラマの行方には思わず「やめてくれ!」と涙ながらに叫んでいた。
    こんな残酷な運命ってないだろう。そうも思うけれど、思えばこのシリーズは読む人のことなど(そして登場する個人の思惑なども同様に)頓着せずに進んで来たのだった。

    そして、あんなにも重要人物だと信じていた彼らの退場後も航空宇宙軍史は続いていくのだ。それこそが「史」だと言わんばかりに。

  • 昭和六十二年七月十五日発行の初版。作者があとがきで「ちゃんと長編を書きおえた」と書いているとおり、全体が一つの長編になっているが、どの話も独立した作品として読める。生物の脳を制御装置として兵器に組み込むというのは、第二次世界大戦末期の日本軍の特攻兵器と同じ発想だろうか。「星の墓標」という題名から「雲の墓標」を連想して、ふとそんなことを思う。もっとも、「雲の墓標」は読んだことがないので、見当違いの感想かもしれないが。最初に読んだときは、制御装置として組み込まれたシャチや人間の脳がそばに近づいた他人の精神に影響を及ぼすという描写にオカルトめいた印象を受けて、そこだけは好きになれなかったが、今回はそうでもなかった。これまでに読んだ「航空宇宙軍史」シリーズの作品の中では、この作品が一番印象に残る。
    収録作品:第一話「タナトス戦闘団」、第二話「ジョーイ・オルカ」、第三話「トランパー・キリノ」、第四話「星と海とサバンナ」

  • 切ない、とてつもなく切ないよ、これ。
    宇宙もののSFでこんな思いをしたのは
    アシモフの銀河帝国興亡史ぐらいだな。

    なぜかというと、この時代の宇宙技術には
    私たちの時代ではまあタブーどころか
    倫理的にあかん人間、もしくは知性脳を
    用いた操縦技術を使っていたから。

    そして、それらの戦いはやがて
    なくなっていって、時代は下り…

    どうやらある船の残骸に
    その技術があるという噂が流れて…
    二人の男がいくのですが…
    一人はそこに行き着いて自ら死を選んだのです。
    彼の船を、自らの体を使われるのを良しとせず。

    最後に取った行動はわかりますよね。
    そう、技術としてこれは
    飛び切り恐ろしいものだったわけですよ。
    お察しのとおりで。

  • 第2次外惑星動乱勃発記念。ひとり航空宇宙軍の足跡をたどる旅。
    なにやら、事件順に集めた完全版が出てきていて、どのような変更が加えられているのか気になるところではありますが。

    連作短編からなるこの作品、サイボーグ化した戦闘艦という異常兵器にまつわる戦時中から戦後のエピソードからなります。
    傑作!もう、ダンテ隊長が悲しい。涙

  •  どこからどう読んでもSFで、こんなタイトルだけれども、実は動物もの。泣いた。

  • 「航空宇宙軍史」シリーズ第3段。
    ジョーイ・オルカが地球の海から暗く寒い宇宙の海へ、そしてまた元の海へと戻ろうとする過程が切ない。
    これもまた絶版になっているのが惜しまれる。(既読未入手)

  • タナトス戦闘団って、なんかかわいそうだよね。

  • 曼陀羅(精神)とパンドラ(宇宙)の印象が重なりました。悪くないです。 ps 曼陀羅って「天を越える旅人」て題でした。

  • 1,900円

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著者プロフィール

1951年兵庫県生まれ。青年海外協力隊などを経て作家デビュー。SF小説、冒険小説、山岳小説など広い分野で高い評価を得ている。96年「白き嶺の男」で第15回新田次郎文学賞を受賞。主な著作に「航空宇宙軍史」シリーズ、「覇者の戦塵」シリーズ、『白き嶺の男』などがある。

「2019年 『硫黄島航空戦線』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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