探偵はひとりぼっち (ハヤカワ文庫 JA ア 3-5)

著者 :
  • 早川書房
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本棚登録 : 930
感想 : 75
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  • Amazon.co.jp ・本 (535ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784150306816

感想・レビュー・書評

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  • お友達のマサコちゃんの殺人事件に探偵さんが追いかける。
    背後関係が複雑でドンドン孤独になっていく感が凄い。

  •  『探偵はバーにいる』でススキノ探偵の<俺>がデビューしたのが1992年。本書は長編第四作で1998年。28歳だった<俺>も中年の領域に入り、可愛い恋人もできて、多くのススキノの脇役たちとの繋がり方もよりいっそう年輪を経て、磨きがかかっている。

     ハードボイルドの探偵はたいていどこか孤立した存在で反社会的な傾向があるものだが、このシリーズの主人公も例外ではない。そればかりか、むしろへらず口を武器に、真っ向から多くの社会の側から押しつけられる価値観に牙を剥いたりもする。

     オカマのマサコちゃんが嬲り殺しにされる事件に端を発する、かなり奥深い今回の事件も、社会の闇に切り込んでゆく颯爽たるナイトの物語でありながら、ススキノで酒ばかりカッ食らう快楽主義者の<俺>は欠点だらけで親しみやすい非常に身近な存在であり続ける。まあ、それがこのシリーズの最大のポイントなのだけれど。

     この主人公を作り出すことでほとんど成功したシリーズではあるけれど、ぶつかる敵の大きさは巻を重ねるごとにどんどん巨大になってゆくイメージがある。本作では権力に影響を与えることのできる代議士の不正に挑戦。

     北の街のリアルな描写のなかで、ゆったりと好きな映画を好きなように語る主人公の面白おかしさがあるかと思えば、一気に緊張に持ってゆく権力機構の闇の暴力が取って代わる。これ以上ないようなメリハリがこのシリーズの厚みである。娯楽性と、何とも言えぬ人間たちの物語。友情、そして愛情の物語である。探偵を取り巻く生活の匂い。それを書き切ることのできる筆力の確かさ。

     この頃から東直己の作品から大きな作家的自信を、こちらとしても感じ取ることができるようになってきた。多作とは言えない彼が、作家という商売だけで飯を食えるようになるための、試練をクリアしてゆく様子が、何とも頼もしい限りである。

  • 映画と原作はだいぶ違うようだ。タイトル通り、ひとりぼっちな〈俺〉。誰もが目を背ける中、独り立ち向かう姿はこれまで以上にハードボイルドだった。分厚さを感じさせないテンポで話が進んでいくが、かなり読み進めても事件が解決しそうにない。どうやって畳むのかな?と思っていたら、、予想外に呆気ない幕切れ。肩透かしな真相だったものの、凝った事件を楽しむというより、真相に至るまでの〈俺〉の奮闘(脇役達の活躍も含めて)を楽しみたいので、十分満足できた。

  • ハードボイルド!
    ただただ、訥々と自分のやり方を通す。
    男の子なら憧れますよね、そんな生き方。

  • みんなに愛されていたオカマのマサコちゃんが、めった打ちにされて殺された。若いころに彼と愛人同士だったという北海道選出の大物代議士が、スキャンダルを恐れて消したのではないかという噂が流れはじめる。マサコちゃんの友人だった俺は、周囲が口を閉ざすなか調査に乗りだした。やがて、身辺に怪しげな男たちが現われ、奇怪な事件が…

  • 映画観終わってすぐ映画館の下の本屋で買って読みながら帰っててその日のうちに読み終わったので、映画とちょっとごっちゃになってる。
    映画1作目のバーにかかってきた電話はかなり原作に忠実だったけどこれはけっこう違うんだね。
    とはいえ大筋は一緒だから結末とかはわかってるんだけど、おもしろかった。
    他のも読みたいけど映画になるなら映画を先に観たいからなー。
    そして春子が何者なのか気になるんだけど消えた少年て映画にならないかな。

  • みんなに愛されていたオカマのマサコちゃんが、めった打ちにされて殺された。若いころに彼と愛人同士だったという北海道選出の大物代議士が、スキャンダルを恐れて消したのではないかという噂が流れはじめる。マサコちゃんの友人だった俺は、周囲が口を閉ざすなか調査に乗りだした。やがて、身辺に怪しげな男たちが現われ、奇怪な事件が…日本推理作家協会賞受賞作家が描く、軽快なハードボイルド・シリーズ第4作。

  • (2015.7.18)
    (535P)

  • 2014.11.20ー76
    探偵シリーズ4作目。
    オカマのマサコちゃんの惨殺犯と噂のある代議士の後援会長の甥を追い詰めるものの犯人は見当違いとの結末はあっけないが、東直己ワールド全開で一気読み。

  • ☆3.0
    うーん…。
    何だかあっけない終わり方。

    「俺」がオカマのマサコちゃんの死の真相を追うことで、色々な勢力に狙われ、強力な親友、高田まで負傷して入院。
    窮地に陥った「俺」がどのように奪回していくのか、と思いきや、アレ?これで終わり?って感じで肩透かしをくらった気分。

    色んな「大人の」事情に真っ向勝負を挑む「俺」の無謀さにハラハラしつつも、胸がすく思いをしていたのでちょっとがっかりしてしまいました。

    ストーリーは変えてあるものの、映画の方が面白かったです。

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著者プロフィール

一九五六年札幌生まれ。本郷幼稚園中退、本郷小学校卒、東白石中学校卒、札幌東高等学校卒、小樽商科大学中退、北海道大学文学部哲学科中退。
現場作業員、ポスター貼り、調査員、ガードマン、トラック助手、編集者、広告営業、コピーライター、受刑者など諸職を転々。
一九九二年『探偵はバーにいる』(早川書房)で小説家としてデビュー。同作は、一九九三年『怪の会』激賞新人賞受賞。
二〇〇一年『残光』(角川春樹事務所)で日本推理作家協会賞受賞。

「2010年 『北の作家 書下ろしアンソロジーvol.2 utage・宴』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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